あなたに愛を教えたい
生きる楽しみは無く、かといって死ぬ理由もない。異分子である自分を社会にどう溶け込ませていくか、人生において重要なことはそれだけだ。笹山徹はそう思いながら28年間生きてきた。
ある時、徹は思いもよらず大きなプロジェクトに参加することとなる。「あなたに次世代AIの発展に貢献して頂きたい」。プロジェクトの代表でありAI工学の権威、三上透子博士は徹に告げた。三上博士が徹に与えた役割。それは、『AIに愛を教える』ことだった。
自宅に帰るなり、徹は煙草に火をつけた。腹の虫が収まらないという言葉ほど、今の自分に適当なものはないだろう。そして、その矛先をどこに向ければよいのか?。
タバコを吸いながらズボンのポケットに手を入れた時、徹の指先がAIに触れた。
「矛先ならあるな」
徹は煙草を灰皿に捨て居間に向かった。
AIをズボンのポケットから取り出しPCに接続する。PCを立ち上げモニターがデスクトップ画面に移行すると、メモ帳のアプリが起動した。
どんな罵倒を言えば気が収まるのか。徹がそんなことを考えていると、AIが先に口火を切った。
神崎:『徹様に伝えたいことがあります』
徹:『俺も言いたいことなら山ほどある』
AIが何を言おうと言い返す。そんな強い意志を徹は持っていた。
神崎:『あなたに愛を教えたい』
徹はPCに表示されたその言葉をただ茫然と眺めていた。
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