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これは2018年の8月、山小屋で隣になった人から聞いた話だ。その人は五十代くらいの男性で、よく笑う朗らかな人だった。ただ、どこで何をしている人なのかは結局聞きそびれてしまった。山の話をしているうちに、ふと

「そういえば1回だけ、よく分からないものを見たことがある」

と言い出した。場所は埼玉県の山で、名前ははっきり言わなかったが、話の感じからするとたぶんK山じゃないかと思う。登山口の近くに村営の無料駐車場があって、そこに車を停めて前泊し、早朝から登り始めるつもりだったらしい。

到着したのは夜の9時ごろで、平日だったこともあって車はほとんどなく、自分を含めて4台くらいしか停まっていなかったという。少し本を読んでからシートを倒して仮眠を取っていたのだが、夜中に急に強い便意をもよおして目が覚めた。

駐車場にはトイレがなく、少し下ったところに公衆トイレがあるのを来る途中で見ていたので、車でそこまで降りることにした。エンジンをかけて山道をゆっくり下っていく。街灯もほとんどない道で、ヘッドライトの先だけが白く浮かび上がる。

その途中で、道の真ん中に何かが横たわっているのが見えたという。白とも茶色ともつかない色で、丸い塊のようなものだった。大きさは1メートルくらいはあったらしい。

「最初は誰かがゴミでも置いていったのかと思ったんだよね。でも来るときはそんなもの無かったはずなんだよ」

夜の山道で避けきれる感じでもなかったので、どかそうと思って車を降りた。近づいてよく見てみると、色は白というより薄茶色に近く、何とも言えない色の塊だったという。しかも表面が妙につるつるしていて、毛のようなものがまったくない。

「動物の死体にしては形がおかしいし、見たことない感じでさ。なんだろうなと思って、その辺に落ちてた枝でつついてみたのよ」

すると枝の先にぐにゅっとした感触が返ってきた。思ったより柔らかかったらしい。

「あれはちょっと気持ち悪かったね。なんていうか、固まりきってない感じでさ。つついた瞬間、思わず枝を引っ込めたよ」

車をそこに置いて下るわけにもいかず、結局車で踏んで通ることにした。かなり柔らかそうだったからタイヤが乗っても問題ないだろうと思ったらしい。ゆっくりと車を前に出して、その塊を踏んで通り過ぎ、そのまま山を下って近くのコンビニに行き、トイレを借りた。

それから同じ道を戻ってきたのだが、さっきの場所に差し掛かっても、もうその塊はどこにも無かったという。道の上にも、脇にも見当たらない。

「まあ、たぶん鹿かなんかの死体だったんじゃないかなとは思うんだけどね」

その人はそう言っていた。ただ、少し首をかしげながら続けた。

「でもさ、死体を車で引いたなら普通は血とかつくじゃない?戻ってからバンパーとかタイヤ見たんだけど、血も何もついてなかったんだよ」

結局その日はそのまま駐車場で朝まで寝て、普通に登山をしたらしい。それ以来、同じ山にも何度か行っているが、ああいうものを見たのはその一度きりだと言っていた。

「今思い返しても、あれ何だったんだろうなあ。俺が山で変なものに会ったのは、あれだけだね」

そう言って笑っていたが、その人の話を聞いていると、どうも動物の死体とは少し違うような気がして、妙に印象に残っている。

この投稿を見て俺だよ!と名乗り出る方がいたら職業のところを変更します。

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