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じゅぼっこ

これは友人のバイク乗りから聞いた話だ。

彼は仕事が終わったあと、真夜中にバイクで出発して、そのままどこかでキャンプをして一泊して帰るというのが趣味らしい。

あるとき山梨の西湖の近くまで走り、湖畔のキャンプ場でテントを張った。夜は静かで、遠くでバイクの音が時々するくらいだったという。

その日は近くに四人組のグループがいて、自然と話すようになった。きっかけは単純なもので、サンドイッチを少し作りすぎてしまったので分けたところ、向こうがドライフルーツとお菓子をくれた。

それで少し世間話をして、焚き火のそばで他愛もない話をしていたらしい。夜もだいぶ更けたころ、その4人のうちの一人がふと思い出したかのように、

「元々肝試しに来たんですよ、俺ら。肝試し一緒にやりません?」

と言い出した。西湖の周りは森が深く、夜は前も見えないほどになる。周りの3人も、

「そうだよ、目的を忘れちゃいかんよな」

「うんうん」

とうなづいている。

軽いノリで始まった話だったが、さっきまで一緒に食べ物を分け合っていた手前、断るのも変な感じがして、結局バイク乗りも付き合うことになった。ルールは簡単で、森の中に1人ずつ入っていって、15分経ったら戻ってくるというものだ。

森の入口はキャンプ場のすぐ脇にあり、昼間に見たときもかなり鬱蒼としていたが、夜になるとさらに暗く、懐中電灯を向けても木の幹ばかりが浮かび上がる。

じゃんけんか何かで順番を決めて、まず一人目が森の中に入っていった。15分したら戻ってきて、特に何もなかったと言う。それを何人か繰り返して、やがて自分の順番が回ってきた。

とりあえず森の中に入っていく。木が密集していて、足元には落ち葉が厚く積もっている。少し進んだところにちょうど切り株があったので、そこに腰を下ろして時間を潰すことにした。

暗い森の中で15分というのは意外と長く、風で枝がこすれる音や、どこかで鳥が動く音がやけに大きく聞こえる。

ライトで照らしながら時計を見て、きっちり15分経ったところで立ち上がり、来た道を戻った。ところが森の入口まで戻ってみると、さっきまでいたはずの4人がいない。懐中電灯で辺りを照らしても、焚き火の明かりもない。

「ああ、そういうことか」

とその人は思ったらしい。よくある肝試しのからかいで、自分が森に入っている間に姿を隠したんだろうと。どこかで様子を見て笑っているのかもしれない。

そう思ってそのままキャンプ場に戻った。ところが自分のテントのところに戻ると、そこには自分のテントしかなかった。さっきまであったはずの四人分のテントも、焚き火の跡もない。

少し手の込んだ悪戯だなと思ったが、車の中に隠れているとか、どこかで見ているのだろうとそのときは考えた。疲れていたこともあって、結局そのまま寝てしまったという。

翌朝起きても、やはりその4人組は戻ってこなかった。少し妙に思ってキャンプ場の管理者に聞いてみたところ、

「昨日はそんなグループ来てませんよ」

と言われた。バイク乗りは、自分の記憶違いかと思ったが、どうしても気になって前日の森の入口まで行ってみた。昨日歩いたあたりまで進むと、あの切り株があった場所に出た。

ところが様子が少し違っていたという。昨日はただの古い切り株だったはずなのに、その周りから細い若い木が何本か生えていた。四本ほど、まるで切り株の中心から伸びるように立っている。そのうちの1本に、何かが刺さっているのが見えた。

近づいてみると、それは昨日4人組に自分が渡したサンドイッチだった。パンが枝に突き刺さるように引っかかっていて、ちょうど百舌鳥の早贄はえにえみたいな形になっている。足元には、あの4人組からもらったお菓子の袋が開いたまま、お供えのように並んで置いてあった。バイク乗りはその場で急に嫌な感じがして、すぐに森を出て帰ったらしい。

あの切り株から生えていた若い木は、どれも妙にまっすぐで、人が立っているみたいに見えたそうだ。

西湖は、青木ヶ原樹海に一番近い湖でもある。じゅぼっこという妖怪がいて、あまりに血を吸いすぎた木々は化けるというが、彼が見たのもその仲間だったのだろうか。

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