光
これは沖縄で昆虫採集をしている友人、Mとの体験談だ。
Mと私はクワガタやカミキリムシを探すのが趣味で、夜になると森へ入って朝まで虫を探すようなことをよくしている。
私は別の虫を探したかったので、Mと森の入り口で別れることにした。
「深夜1時くらいに迎えに来てくれ」
そう言われ、約束の時間に車で森の入口へ向かった。
その森の近くには県外から来た学生向けの寮がある。
森の入口に車を停めると、奥の方から人影がいくつか出てきた。
ジャージ姿の高校生だった。
5,6人ほどいたと思う。
深夜の森から突然現れたのでこちらも少し驚いたが、向こうもヘッドライトに照らされた瞬間、立ち止まって驚いた様子でこちらを見ていた。
おそらく学生たちは、森の中から見えた車の明かりを引率の先生か、あるいはおばけとでも思ったのだろう。
何人かで顔を見合わせると、そのまま足早に寮の方へ帰っていった。
しばらくして、森の奥からMが戻ってきた。
虫かごや採集道具の積み込みを手伝いながら私は言った。
「さっき、学生いたぞ。光が見えてお前もびっくりしただろ」
「ああ、何人かいたよな」
「やっぱり見えた?」
「そりゃ、暗闇だから光はよく見えるさ」
M曰く、1時前くらいに森の奥で作業していると、入口の方から小さな光がいくつか見えたらしい。
懐中電灯かスマホの明かりだろうと思った。
するとその後、人の話し声が聞こえてきた。
男の声。女の声。
何人かで話しているような声。
内容までは分からないが、雑談をしている感じだったという。
「だから学生だと思った」
深夜に装備無しで森へ入るのもどうかと思うが、学生ならそういうこともあるだろう。
そう思って気にしなかったらしい。
私は違和感を感じて、言った。
「いや、女なんていなかったぞ」
Mは眉をひそめる。
「は?お前、脅かそうとしてる?」
M曰く、確実に女の声がしていたそうだ。
声変わり前の学生だとしても、女としか思えない声だったという。
「……分からん、森の中だし、お前の聞き間違いじゃないか。あるいは他の入り口から出て行った奴がいたとか……」
「……うーん」
Mは納得していない様子だったが、私がふざけていないということが分かると、それ以上は話さなかった。
結局、その後は何も無かった。
強いて言えば付近に森の付近には自決地があったが……今となっては確かめようもないので、Mが間違っているのか私が間違っているのか、2人とも正しいのか……何も分からない。




