16.起こした奇跡
ロゼは余っているローブの袖を捲り上げ両手をぐーぱーぐーぱーと握っては広げを数回繰り返し行商箪笥に手をかける。引き出しから取り出したのは三本のシリンジ、そして押子のセット。白い手袋を両手に嵌め、何も包んでいない薬包紙をテーブルの上に敷く。そこに以前Bに飲ませるといった大量の針から五本ほど取り出して並べた。そしてランサーを睨みつけるように見上げる、
「毒を吸いだそうってのか?それは無理だぜ?キングコブラの毒の注入量は凄まじいって聞くからな」
「違います。毒を無効化するんです」
「・・・・・その瓶に入った薬で?」
「そうです」
「・・・・・。」
ついにランサーは黙る。黙ってロゼの動きを見るだけになった。ロゼはシリンジの先に針を取り付けると瓶に入った黄味がかった薬を吸い上げる。用意した三本のシリンジに薬を入れるとブラッドに目をやり「確認したいのですが、本当にキングコブラですか?」さっきまでの声の震えが嘘のように、ブレることなくはっきりとした声で訊ねる。「さあ?僕、そんなの見分けつかないし」ブラッドは小首を傾げた。「コブラは種類によっては毒を吐き出すので近くにいる人も危険ですよ」ロゼはブラッド、そしてBを羽交い絞めしているアーノルドに目配せする。「え?そうなの?じゃあ、アーノルドかかっちゃうじゃん。どうする?」ブラッドも恐れ戦くこともなく陽気な声でアーノルドを見た。
「・・・・・一瞬で終わらせろ」
「一瞬?」
「すぐ咬ませるんだ」
「そんなに上手くいくかな?コブラの気分ってのもあるでしょ」
「それを上手く使ってこそ始末屋だろ」
「さすがにコブラで始末するのは初めてなんだけど。だからワクワクする」
ブラッドはさっきから嬉しそうに声を弾ませている。そんなブラッドを見てアーノルドは眉間に皺を寄せ口を強く結ぶと、羽交い絞めしていたBを床に押し付けネクタイで手を縛った。口を解放されたBが叫ぶ。「ひぃいいい!!やああ!!だ!!!誰かたすけてええ!!!」悲鳴が部屋の中に虚しく響く。
「どこ咬ませたらいいんだろ?僕、蛇使いじゃないし、よくわかんないんだよね」
「ならやめてええ!!今すぐやめてええ!!」
「手か足にしてください。心臓から遠いところがいいです」
「ちょっと冷静すぎじゃない!?ロゼちゃん!!俺の命がかかってるんだよ!?」
「じゃあ縛られてる手でいいか」
「そうですね」
「なに敵同士で打ち合わせしてんのお!!?おかしいでしょ!!」
「Bさん、上手に咬まれてくださいね。でないと助けられないかもしれないので」
「ロゼちゃん!?ちょいちょい怪しいと思ってたけど、俺のこと本当に嫌いだよねえ!?俺は咬まれたくないんだよ!!まだ死にたくないの!!」
「大丈夫です。・・・・・多分」
「多分じゃダメなんだってええええ!!!」
「みんな俺の命を軽んじすぎだよ!!俺をなんだと思ってんの!!」泣き喚くBをしり目に着々と準備を進めるロゼに向かって「じゃあ!!じゃあ!!せめて冥土の土産がほしい!!」Bが大声を出す。
「冥土の土産?ですか?」
「ロゼちゃん!!俺にキスして!!」
「はあああああ!?」
「キスしたい!死ぬ前に一度くらい好きな子とキスしたい!それなら未練なくあの世に逝ける!!」
「い・・いやだ!!」
「いいじゃん!!減るものじゃないし!!俺は死んじゃうんだよ!?この後、数分後にはあの世に逝っちゃうんだよ!?命あるだけいいじゃん!!」
「大丈夫だって言ってるじゃないですか!!」
「嘘だ嘘だ嘘だ!そうやって俺を騙そうとしてるんだ!もうこうなったら騙されるし命も差し出すから、せめて!せめて!死ぬ前にロゼちゃんと熱い口づけを・・」
バシャとロゼはBの顔にランサーの飲みかけていた酒をかけた。空になったグラスでBの頭をゴンゴン叩き「ほんっと!!碌なこと言わない!!・・・もう知らないから!!Bさんなんかどうなったって知らないんだから!!」力加減もせずグラスを頭に叩きつけるロゼは「いたい、いたいって」殴られても嬉しそうにしてるBが腹立たしくて仕方がない。「うわ、ドMだ」Bを見下すブラッドが小さく呟いた。
「なんなんだ・・・、あのバカは」
「あなたの部下でしょう」
ランサーの言葉にガナッシュが即座に突っ込む。「ロゼ、彼の言うことなんか聞かなくていい。危ないからこっちにおいで。ロゼの身の安全がなにより大事だから」その言葉に背筋を伸ばしたBは、アーノルドに押さえつけられているのにも関わらず必死に上半身を起こし「それって俺のことはどうだっていいってこと!?ガナッシュ君のせいでこんなことになってるのに!!」半泣きになりながらガナッシュに顔を向けようとする。そんなBに向かってガナッシュは「元凶そっちなんだけど」Bに聞こえたかわからないくらい小さい声でぼやいた。
ロゼは手に行商箪笥を持ってBから遠ざかる。「ちょっと!ロゼちゃん!!」Bに名前を呼ばれながらもそれを無視してロゼはガナッシュとランサーの近くまで移動すると「デート一回!それ以上は嫌だ!」怒りと嫌悪を露わにして言い放つ。「やっすっ!!俺の命安すぎ!!」そう言いながらも嬉しそうにしているBに全員呆れ顔だった。
「いいか、ブラッド。殺るのはBだけだ。俺にもアーノルドにも何もないようにしろよ」
「殺るって言った!?ボス、やっぱり俺のこと殺す気なんだ!!」
「わかってるよ。アーノルドの位置は危ないけど、アーノルドって不死身って言われてるしなんとかなるでしょ」
「俺だって致命傷受けたら死ぬに決まってる」
「Bを盾に上手く逃げてね。そしてB、避けるんじゃないよ」
するとブラッドは間髪入れずに持っていた細長い木箱の蓋を開けて乱暴に上下に振る。箱の中から出てきたのは三メートルほどある大きな蛇。「ぎゃあああ!!!ほんとに蛇だああ!!」Bの絶叫が部屋に響いた。ブラッドは「あっち、あっち」と木箱で蛇をBの方に押す。「やめてやめてええ!!」床に押し付けられていたBはアーノルドによって身体を起こされ、グッと前に突き出される。
突然のことに驚いているのは蛇も一緒。落ち着かない様子で身体をくねらせていたが、騒ぐBの声に反応するようにBの方向を向いて鎌首を上げた。首部分のフードが徐々に広がっていく。「きたきたぁ!!これぞコブラだ!!」嬉しそうにブラッドがその場で小さく跳ねる。
「いけっ!Bを咬め!!」
「ちょっとおお!!マジで怖いんですけど!!チョー怖いんですけど!!こっち見てる!!こっち見てるよ!!」
キングコブラはフードを広げ少しずつ鎌首を持ち上げると、B目掛けて顔を振り下ろした。「ひぇぇやぁぁああああ!!」逃げられないBは縛られた手で防御すると「いだーあああああっ!」手の甲にガブリとコブラの牙が刺さった。「ブラッド!すぐ戻せ!!」すぐさまランサーが大きな声を出すと、籠手を嵌めた手でブラッドはコブラの頭を殴る。コブラは勢いのまま地面にペチンと沈み、もう一発ブラッドが殴ると伸されたキングコブラは木箱に戻された。
「さあ!!見せてもらおうか!!聖女様の聖なる力ってやつを!!」
ロゼの隣でランサーが大きな口を開けて笑う。ロゼはすぅっと大きく息を吸ってゆっくり吐き出す。震えだしそうになる手に力を入れるとそこに誰かが触れた。身体を縛られているガナッシュが拳をつくっているロゼの手に顔を寄せている。「キングコブラは致死率100%。もし助からなくてもそれはロゼのせいじゃない。どうなってもここは俺がどうにかするから・・」話途中のガナッシュの言葉を遮るようにロゼはその場にしゃがみこんでガナッシュと目を合わせた。
「ガナッシュさん、私のこと信じてください。絶対に助けますから」
ロゼは自分の首にかかっている金のネックレスを握る。「絶対、絶対なんです」眉をハの字にしながらも、必死に口角を上げて笑うロゼにガナッシュはゆっくり頷いた。
ロゼは白いローブを脱ぎ捨てテーブルに用意していた薬の入った注射器と元から置かれていた酒瓶を持ちBに駆け寄る。手を縛っていたネクタイを外し咬まれた手の上部を軽く縛る。恐怖に怯え大きく息をしているBの傷口に酒をぶっかけ、すぐ注射針をBの腕に打ち込んだ。
「うっうっ・・・ロゼちゃん。俺、死んじゃうよね。だって、アイツ、本当にコブラだったよね」
「泣かないでください、Bさん。大丈夫ですから」
「死んじゃう・・・そんなの嫌だよぉ・・・」
「Bさん、相手してあげられないかもしれませんけど、ずっと喋っててください。意識があるのか確認したいので」
「なら相手してよぉ・・・」
ロゼは二本目の注射器に手を伸ばす。そしてまたBの腕に打ち込んだ。「時間、確認してください。キングコブラの神経毒は死に至る時間がとにかく早いです。その時間を過ぎたら死を回避したと、毒は無効化されたということにしてもいいですよね」薬を注入しながらロゼはすぐ隣にいるアーノルドを見上げる。アーノルドはランサーへ目配せして「三十分。それで手を打とう」ランサーが頷いた。
「痛いですか?」
「痛いに決まってるよ・・・。咬まれたところがずっとジンジンしてる。あと熱い。全身が熱いよ・・・。」
「身体がびっくりしてるんですよ。急に異物が入ってきて驚いてるんです。頑張ってください。生きることは苦しむことですから」
「急に哲学っぽいこと言い出したぁ・・・」
ロゼは三本目の注射器に手を伸ばす。さすがに怯んだBが「一体どれだけの量を俺の身体に入れるの・・・?俺、どうなっちゃうの・・・?」ぐすぐす泣きながら訊ねる。「ケチったら死にますよ。私だって貴重な薬をこんな形で消費したくなかったんですから」問答無用でまたBの腕に注射針を打ち込む。「・・・俺、身体中がボコボコに膨れだしてさ、そこから弾けるみたいにバーンって」夢を見ているかのようにひとり語り出すBに「SF映画の話してる?」ブラッドがロゼの上から覗き込んでくる。
「それが現実に起きたら面白いなー。ねえねえ、今からBは破裂する?」
「破裂?」
「身体の内側からボコボコって膨らんできてバーン!」
「SF映画の話ですか?」
「そう」
「映画・・は観たことがないのでわかりませんけど、多分、想像しているものにはならないと思います」
「えー、つまんない」
ブラッドは口を尖らせてロゼの隣に腰を下ろす。Bの腕に注射針を打ち込んでいる様子をじっと見つめて「いや、もしかして超人的な能力を手に入れている?」ブラッドは尖らせた口を今度はアヒルのくちばしのような形にする。ロゼは不思議なことばかり言うブラッドに小首を傾げたままテーブルの傍に移動して注射器の針を交換し始めた。そしてまた一本の注射器に薬を吸いだす。
「B、どう?死にそう?」
「死にそう」
「元気に見えるけど」
「元気なわけないじゃん!!あんなデカいコブラ!しかもキング!生きた心地しなかったよ!!」
「そう?僕、ワクワクした」
「ブラッドさんと一緒にしないで!!」
「・・・・・元気じゃねぇか」
今度はアーノルドがBを覗き込む。ゆっくりランサーもBに歩み寄ってきた。ロゼはもう一本、Bに注射針を打ち込むと、Bの長い前髪を顔の横によけていつも隠している目を晒す。吊り上がった目からは涙が零れていて汗と共に顔をびっしょり濡らしていた。腕を縛っていたネクタイを外すとロゼはそのネクタイで汗と涙を拭う。
「ううっ・・・みんなにこうして覗き込まれると、いよいよ最期のお別れなのかなって気がしてきた」
「逆に俺らは死にそうにねぇお前に戸惑ってるけどな」
「アーノルドの二つ名あげちゃえば?殺しても死なない不死身の男ってやつ」
「いらな・・い。そんな名前持っちゃったらブラッドさんに狙われそうだから」
「うん。色々試したい」
「いやだああ・・・・」
ランサーが腕に嵌っている時計を確認する。「・・・二十分」小さく呟いた。ランサーは脱ぎ捨てられていた白いローブをガナッシュに投げ、身体を縛っていたロープを切る。「交渉に入る。聖女様を連れてこい」とガナッシュに告げた。
ガナッシュは高い位置からBを見下ろすと「あ・・、ガナッシュ君。俺、君のために命を捧げたよ。ずっと俺のこと疑ってたみたいだけど、俺、約束守ったよ」とBが声を震えさせながら言った。「・・・・演技入ってない?」本人曰く死にかけている人間に冷たい言葉のガナッシュ。Bは上半身を起こし「この期に及んでそんなこと言うなんてガナッシュ君の人でなし!!なんでこんな人がロゼちゃんに好かれてるのかわかんないっ!」と、いつもの調子で声を張り上げる。すると安堵した表情でガナッシュが息をついた。「やっぱり演技だった。死にかけの演技なんかよしなよ。本当にそうなったらその苦労が台無しだよ」珍しく優しくBに笑いかけるガナッシュは、白いローブをロゼに羽織らせると腕を取って立ち上がらせた。
「やだっ!俺が弱ってるからってロゼちゃん連れていかないで!」
「最後の仕事があるから」
ロゼはガナッシュに手を引かれるとランサーが座るソファの前に座らされた。ガナッシュの手が腰に回り身体が密着させられる。
「・・・・・二十五分」
「・・・・・・。」
「毒はこちらが用意したものだ。さっき炎を上げたように、そっちが細工できるものじゃねぇ。・・・・ということは、聖女さんの聖なる力に完敗だ」
「約束通り、大貴族様を聖女さんに返してやる」ランサーが背筋を伸ばして告げた。ロゼは小さく頭を下げる。ガナッシュは何も反応がなかった。
「最後に聞かせてほしい。聖女さんは・・・本当に聖女なのか?」
「・・・・・・。」
「信じる信じないの話じゃねぇが、ネラルク大公国の王子を救った話は俺でも知っている。そしてその王子と言われている大公の息子であり後継者でもある彼が奇跡を起こしたお嬢ちゃんを買った、というそちらが言う話も出来すぎが故に頷ける。だからこそ訊きたい。・・・聖女は存在するのか?」
ランサーは両膝に肘をつき、身体を前のめりにさせながらロゼを見た。ロゼはゴクッと固唾を飲む。なんといえばいいかわからない。なぜなら自分は聖女に扮しただけで本当の聖女ではないからだ。ガナッシュがロゼの腰に回している手に力を入れ、更にロゼの身体を自分に引き寄せた。
「あなたは今、奇跡を目の当たりにしました。それが事実です」
「・・・・・・。」
「あと、訂正していただきたい。私は彼女を買っているのではありません。私が惚れているだけです。だからネックレスを贈った。これは敬愛の証なのです。間違った解釈はご遠慮いただきたい」
ガナッシュは厳しい顔つきのままランサーを見つめる。「そうか、悪かったな」珍しくランサーはガナッシュから目を逸らしテーブルに置かれたままの薬瓶や注射器を見て「想像していたものとは違ったが・・・奇跡だということは認める」空になった瓶を取り上げた。
「さあ、Bを連れて出ていけ」
「いりませんよ。優秀な部下として今後も使ってあげてください」
「ちょっとお!!ガナッシュ君!!いい加減にして!!」
猛毒を受けたとは思えないくらい元気に飛び上がったBはアーノルドとブラッドを掻き分けロゼの隣に並ぶ。「ボス!今までありがとう!アドベントの邪魔は絶対にしないから、このあと俺を始末にこないでね!」とロゼの腕を引っ張りソファから立ち上がらせる。
「ロゼ、とかいったか?お嬢さん」
「・・・・え?」
「最初から最後まで素晴らしかったよ。俺が今まで相手にしてきたどんな相手よりも君が最高に楽しかったぜ。次会うときは違う形で会おう。俺もお嬢さんを買いたいが、そちらのご主人様はどうにも譲ってくれそうにないんでね」
「だから買ってないといってる」
「力になってやるぜ?だから、また会おう」
「マフィアにお世話になるつもりないんですけど」苦い顔をしてガナッシュも立ち上がる。ロゼの行商箪笥を引き、Bとロゼと一緒に部屋を出た。薄暗い廊下を出て階段を下りる。密造をしている場所とは違い、あっさり一階に降りて酒場を出る。外には今にも酒場を燃やそうとロゼが預けた爆竹を手に突撃しようとしていたフラミンゴとテールズがいた。
「ちょっ!?なにしてるんですか!?」
「・・・おおっ!?ガナッシュ!!無事だったか!!・・・・よかったぁ」
その場にへたり込んだフラミンゴはガナッシュを見上げて「おっせぇんだよ!!プランBに移る寸前だったわ!!」と声を荒げた。「・・・なんですか?プランBって」へたり込んだフラミンゴを覗き込みながらガナッシュが訊ねる。「所定の時間を過ぎても戻らなかったら店を燃やす計画立ててたんだよ!パニックの際にBが二人を連れて逃げ出す強行突破作戦だ!」顔を真っ赤にして声を張り上げるフラミンゴに「なんて無謀な作戦・・・」とガナッシュは小さく笑った。
「ガナッシュを連れて戻ってきたってことは、ロゼの作戦が成功したんだな!?ロゼ!!よくやったな!!俺は最初、あんな作戦上手くいくわけねぇと心配で居ても立っても居られなかったんだが」
フラミンゴの顔を見たロゼは、その場にへなへなと座りこんだ。そしてポロポロと涙を零す。「おぉ・・ロゼ」フラミンゴがロゼに擦り寄った。ロゼは一気に気が緩み「ふぅ・・う、・・・っく、フラ・・ミンゴ、さぁああん」声を上げて泣き出す。フラミンゴはロゼを抱きしめ「よくやった!!偉いぞ!!偉いぞロゼ!!」何度も何度も頭を撫でた。その隣で限界がきたBがバタンと倒れ地面に這いつくばる。
「俺も、もう限界」
「お前はどうしたんだよ」
テールズがうつ伏せになっているBを見下ろす。「聞いてよ!!テールズ!!俺、コブラに咬まれたんだ!!キングコブラ!!死ぬとこだったんだよ!!」うつ伏せのまま声を荒げるBに「・・・元気だなぁ」テールズは呆れた顔で言う。
「褒めて!!俺のことも褒めて!!」
「はいはい、お前もよくやったよ。・・・フラミンゴさん、俺、コイツを医者のところ連れていくから」
「あー、いい、いい!俺が知り合いの医者呼んでくるから、宿屋で待っててくれ!・・・ガナッシュ!ロゼのこと頼む!」
フラミンゴはもう一度ロゼを抱きしめ頭を撫でると、泣いているロゼから離れ、走って医者を呼びに行く。ガナッシュはロゼの前に膝をつき嗚咽を上げながら泣いているロゼの涙を拭った。
「よかった・・・、よかったあ・・・ガナッシュさん!!」
「うん・・・。ありがとうロゼ。助けにきてくれてありがとう」
ガナッシュもロゼを抱きしめる。強く強く。ロゼもしがみつくようにガナッシュの背中に手を回した。「怖かったんです・・・!!怖かったぁ!!」大粒の涙を流しながら声を上げるロゼの頭を何度も撫で「もう、大丈夫。ありがとう。ありがとう」とガナッシュは声をかけた。
「・・・・・・俺も、頑張ったんだよ?テールズ」
「わかってるよ。けど、全てはロゼのおかげだろ?拗ねるなよ」
テールズはBを背負い「痩せ型のくせに、重たいなぁ」とぼやきながら歩き出す。Bは顔をロゼに向けたまま「・・・ねぇ、テールズ」と小さく呼んだ。
「・・・・・聖女って、本当にいたんだね」
テールズは小さく笑い、Bを背負いなおすと「ああ、聖女様はいるんだよ」と、ガナッシュにしがみついて泣き喚いているロゼを見て言った。




