↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
6/12

第五章 ・ 思慕



 王宮の東翼にある、小さな談話室。


 窓辺の長椅子に腰掛けたレオンハルトは、向かいに座るアレクシスを眺めながら、手にしていた紅茶のカップをソーサーに戻した。


「ところで、アレクシス」


「なんですか? 殿下」


「セレスタンの演奏、そろそろ聴きたいんだが」


 あまりにも率直な言葉に、アレクシスは思わず眉を上げた。


「……急になんです?」


「急じゃないだろう。最後の演奏会から、もう半年だぞ」


「半年……」


 口に出してみると、思っていた以上に長い時間だった。


 右手の怪我は、とうに治っている。


 弓を持つことも、指を動かすことも、もう問題はない。


 それでも、アレクシスはセレスタンとして舞台に立っていなかった。


「あの音色を半年も聴けていないのは、なかなか寂しいものだ」


「……殿下、セレスタンのファンだったんですか」


「今さら何を言っている。おまえの演奏会を、私がどれだけ楽しみにしているか知っているだろう」


「知りませんでした」


「嘘をつけ」


 レオンハルトは呆れたように笑った。


 幼い頃から知っている従兄の、こういうところは昔から変わらない。


 王太子としての立場を離れれば、レオンハルトは遠慮なくアレクシスにものを言う。


 セレスタンのことも、彼がただの気まぐれで始めた道楽ではないと、誰よりもよく知っていた。


「それに、母上も気にしていたぞ。セレスタンはいつ戻ってくるのか、と」


「……王妃様までですか」


 アレクシスが小さく息を吐くと、レオンハルトは楽しそうに笑った。


 けれど、その笑みはすぐに穏やかなものへと変わった。


「まあ、急かすつもりはない。おまえにはおまえの事情があるのだろう」


「……はい」


「ただ、ひとつ教えてくれ」


 レオンハルトは、まっすぐにアレクシスを見つめた。


「おまえはもう、弾きたくないのか?」


 アレクシスは、すぐには答えられなかった。


 弾きたくないわけではない。


 楽器を手に取れば、指は自然と動く。旋律を思い浮かべれば、頭の中には音が鮮やかに広がる。


 音楽そのものを嫌いになったことなど、一度もなかった。


 ただ、黒い仮面をつけ、セレスタンとして舞台に立つ自分を思い描くと、以前のように心が動かなかった。


「……わかりません」


 ようやく口にした答えは、自分でも驚くほど正直なものだった。


「弾きたくないわけではありません。でも、以前と同じように舞台に立てるかと聞かれると……自信がないんです」


「以前と同じである必要があるのか?」


「え?」


「おまえは、いつもそうだ。何かを始めると、納得できる形になるまで徹底的にこだわる。セレスタンもそうだったのだろう」


 レオンハルトは、カップの中で揺れる紅茶に目を落とした。


「だが、半年も経てば、人の気持ちだって変わる。おまえ自身が変わったのなら、演奏だって変わっていいんじゃないか」


 アレクシスは黙って聞いていた。


「……まあ、これはセレスタンファンとしての意見だがな」


「最後に余計なことをつけ加えないでください」


「大事なことだろう?」


 レオンハルトは悪びれもせず笑った。


 レオンハルトはそれ以上、セレスタンの復帰を求めなかった。


 けれど、帰りの馬車に乗り込んだあとも、アレクシスの心には、従兄弟の問いが残り続けていた。


 ――おまえはもう、弾きたくないのか?


 答えは、まだ見つからなかった。



 ◆



 数日後。


 アレクシスはリディアを誘い、王都で開かれる室内楽の演奏会へ出かけた。


 セレスタンの出演する演奏会ではない。宮廷楽師と、近頃評判の若い演奏家たちによる、小規模な催しだった。


 会場は、貴族たちが音楽を楽しむために設けられた瀟洒な音楽堂だった。大広間ほど華やかではないものの、磨き上げられた床や柔らかな色合いの壁紙が、落ち着いた雰囲気を醸し出している。


 客席に並んで腰を下ろすと、リディアはプログラムを開いた。


「今回は弦楽器が中心なのですね」


「ええ。前半は弦楽四重奏、後半はヴィオラ・ダ・ガンバも加わる編成だそうです」


「まあ。それは楽しみです」


 リディアの顔がぱっと明るくなる。


 その表情を見て、アレクシスも自然と笑みを浮かべた。


 彼女は、本当に音楽が好きなのだ。


 誰かに勧められたからでも、貴族令嬢として教養を示すためでもない。旋律を聴き、その響きから何かを感じ取ること自体を楽しんでいる。


 それは、セレスタンの演奏会に来ていたときも、こうして別の演奏家の音楽を聴いているときも変わらなかった。


 やがて、楽師たちが舞台に現れた。


 最初の曲は、穏やかな旋律が幾重にも重なっていく、繊細な弦楽四重奏だった。


 リディアは背筋を伸ばし、音楽に耳を傾けた。


 第一ヴァイオリンが主旋律を奏でると、ヴィオラがその後ろを支え、チェロが深い響きを添える。旋律が受け渡されるたびに、曲全体の表情が少しずつ変わっていった。


 曲が終わると、リディアは小さく息をついた。


「素敵でしたね」


「ええ。特に中盤、チェロが主旋律を受け取るところが印象的でした」


「私もそう思いました。最初はヴァイオリンの音色が曲を引っ張っているのに、チェロに旋律が移った途端、同じ曲なのに景色が変わるようでした」


「景色、ですか」


「はい。最初は陽の光が差し込む庭のようだったのに、途中から木陰に入ったような……。でも、暗くなるわけではないのです。少しだけ、落ち着いた気持ちになるというか」


 リディアは言葉を探すように、プログラムの端を指でなぞった。


「同じ旋律でも、誰がどんな音色で奏でるかによって、受け取る印象が変わるのですね」


「そうですね」


 アレクシスは、彼女の横顔を見つめた。


 音楽を聴いたあと、彼女はいつもこうして、自分の中に生まれた感情を丁寧に言葉にする。


 演奏の巧拙だけではない。どの音に心を動かされ、どんな景色を思い浮かべたのか。


 彼女の話を聞くことは、アレクシスにとっても、ひとつの楽しみになっていた。


「アレクシス様は、どのように感じられましたか?」


「私は……」


 答えようとして、少し考える。


「旋律が受け渡されるたびに、同じ言葉を違う人が語っているように感じました。それぞれの楽器に違う個性があるからこそ、ひとつの曲に奥行きが生まれるのでしょうね」


「まあ……素敵な表現です」


「リディア嬢の言葉を聞いて、私も考えたくなっただけですよ」


 リディアは嬉しそうに微笑んだ。


「こうして、演奏会のあとに感想をお話しできるのも楽しいですね。同じ曲を聴いていても、感じ方は少しずつ違いますから」


「私も、そう思います」


 アレクシスは穏やかに答えた。


 以前は、誰かと音楽を聴きに行くこと自体、さほど多くなかった。


 セレスタンとして舞台に立つときは、演奏する側だった。客席にいる人々が何を感じているのか、想像することはあっても、ひとりひとりに尋ねる機会はない。


 けれど、リディアと一緒に演奏会へ出かければ、同じ音楽を聴き、互いの感想を交わすことができる。


 そんな時間が、思っていた以上に心地よかった。


 後半の演奏が終わる頃には、窓の外の陽も傾き始めていた。


 最後の曲は、ヴィオラ・ダ・ガンバが主旋律を担う、静かで美しい作品だった。


 深く柔らかな音色が、ほかの弦楽器の響きと溶け合っていく。


 リディアは、最後の一音が消えるまで、じっと舞台を見つめていた。


 やがて演奏が終わり、客席から拍手が湧き起こる。


 リディアも微笑みながら手を叩いた。


「本当に素晴らしかったです」


「お気に召したようですね」


「はい。特に最後の曲は、もう一度聴きたいと思いました。ヴィオラ・ダ・ガンバの音色は、深いのに、どこか人の声に似ている気がします」


「人の声、ですか?」


「ええ。言葉にはならないけれど、何かを伝えようとしているような……そんな響きがあるのです」


 アレクシスは、ふと黙った。


 自分もまた、音楽で何かを伝えようとしてきた。


 けれど、いまの自分は何を伝えたいのだろう。


 その問いが浮かんだとき、客席のあちこちで人々が立ち上がり始めた。


 リディアもプログラムを閉じ、膝の上に置いていた手袋を手に取る。


 そのときだった。


 視線が、ほんの一瞬だけ、舞台袖へと向いた。


 演奏を終えた楽師たちが退場していく。その向こうに、次の演奏家が現れる気配はない。


 リディアは、すぐにアレクシスのほうへ視線を戻した。


 ――また、いつか聴けるかしら。


 心の隅に、そんな思いがよぎった。



 セレスタンの音楽を、もう半年も聴いていない。


 今でも、彼の演奏を思い出すことはある。あの深い音色や、旋律の合間に生まれる独特の間。最後の一音が消えたあとも、しばらく心に残り続ける余韻。


 どうして演奏会に現れなくなったのか、理由はわからない。


 ただ、また元気な姿で舞台に立ってくれたらいいと、そう思っていた。


 けれど、その気持ちは、いま目の前にいるアレクシスとの時間を損なうものではなかった。


 こうして一緒に音楽を聴き、感想を交わす時間も、リディアにとって大切なものになっている。


 アレクシスは、彼女の視線が舞台袖へ向かったことに気づいていた。


 ほんの一瞬のことだった。


 何かを探すようにも見えたが、すぐに戻ってきた彼女の表情は、いつもと変わらず穏やかだった。


 彼は何も尋ねなかった。


「参りましょうか」


「はい」


 アレクシスが差し出した手に、リディアはそっと自分の手を重ねた。



 ◆



 帰りの馬車の中。


 窓の外には、夕暮れの街並みが流れていた。店先には明かりが灯り始め、通りを行き交う人々の姿も、昼間とは少し違って見える。


「今日はありがとうございました、アレクシス様」


 リディアが、向かいに座る彼へ微笑みかけた。


「とても楽しかったです」


「それなら、よかった。私も楽しめました」


「また、こうして演奏会にご一緒できたら嬉しいです」


「もちろんです。リディア嬢がお好きそうな演奏会を見つけたら、お誘いしますよ」


「ふふ、楽しみにしています」


 リディアは嬉しそうに笑った。


 アレクシスも、つられるように口元を緩める。


 彼女と一緒にいると、音楽を楽しむということが、少し違った意味を持つようになった。


 演奏することだけが音楽ではない。


 誰かと聴き、感じたことを話し、相手の言葉から自分にはなかった景色を見つける。


 そんな楽しみ方があることを、彼はリディアと過ごすうちに知った。


 そして、彼女の隣にいるときの自分を、以前よりも気に入っていることにも気づいていた。


 セレスタンではなく、アレクシスとして。


 公爵家の跡継ぎでも、仮面の天才楽師でもなく、ただひとりの人間として。


 彼女と過ごす時間は、そんな自分を許してくれるような気がした。


 それでも、心のどこかには、まだ答えの出ない問いが残っていた。


 自分はもう一度、セレスタンとして舞台に立ちたいのだろうか。


 その答えは、馬車がヴァレンティン公爵家の屋敷に到着しても、見つからなかった。



 ◆



 その夜。


 夕食を終えたアレクシスは、自室に戻ると、しばらく書斎の机に向かっていた。


 けれど、手元の書類を読んでいても、文字が頭に入ってこない。


 ふと窓の外へ目を向ける。


 夜の帳が降りた庭には、月明かりが淡く差し込んでいた。


 静かな夜だった。


 アレクシスは椅子から立ち上がり、部屋の奥へと歩いていった。


 そこには、長らく開けていない楽器ケースが置かれていた。


 ヴィオラ・ダ・ガンバ。


 セレスタンとして舞台に立つとき、いつも手にしていた楽器だ。


 彼はケースの前で立ち止まった。


 蓋を開ければ、すぐに楽器が目に入るだろう。


 弓を持ち、弦に触れれば、音を奏でることだってできる。


 何も難しいことはない。


 それなのに、ここ数か月、アレクシスはその蓋を開けることさえためらっていた。


 楽器を見れば、きっと弾きたくなる。


 そして弾いてしまえば、また自分が何者なのか、考えずにはいられなくなる。


 セレスタンとして音楽を奏でていた自分。


 アレクシスとして、リディアと穏やかな時間を過ごしている自分。


 どちらも自分自身なのに、いまは以前のように、ふたつの顔を簡単に使い分けることができなかった。


「……困ったものですね」


 小さく呟き、アレクシスはケースの留め具に手をかけた。


 かちり、と音がする。


 蓋を開くと、見慣れた楽器が静かに横たわっていた。


 弦も、木の艶も、以前と変わらない。


 アレクシスはそっと楽器を取り出し、椅子に腰掛けた。


 膝の上に構える。


 弓を手に取る。


 その一連の動作は、身体が覚えていた。


 まるで、昨日も演奏していたかのように自然だった。


 彼はまず、弦をひとつずつ確かめるように音を出した。


 低く、柔らかな響きが部屋に広がる。


 次に、調弦を整える。


 弦の張り具合を確かめ、わずかなずれを直し、もう一度音を出す。


 耳を澄ませる。


 問題はなかった。


 指も動く。弓の運びも滑らかだった。怪我をする前と何ひとつ変わっていない。


 アレクシスは、試しに短い旋律を奏でてみた。


 それは、セレスタンとして何度も演奏してきた曲の一節だった。


 指は迷うことなく音をたどり、弓は弦の上を流れていく。


 久しぶりに奏でたはずなのに、音は驚くほど鮮明だった。


 やがて彼は、もう少し長く弾いてみようと思った。


 曲の続きを奏でる。


 旋律は静かに部屋を満たし、途切れることなく流れていった。


 最後の音を弾き終えたとき、アレクシスはしばらく動かなかった。


 ――弾ける。


 当たり前のことだった。


 それでも、改めて確かめる必要があったのだろう。


 自分の指は、まだ音楽を覚えている。


 この楽器を弾くことを、身体は忘れていない。


 彼は楽器を構え直した。


 今度は、別の曲を弾いてみる。


 少し前に演奏した曲。さらに昔、セレスタンとして初めて舞台に立った頃に弾いた曲。


 ひとつ弾き終えるたびに、次の曲が頭に浮かんだ。


 気がつけば、窓の外はすっかり暗くなっていた。


 それでも、アレクシスは楽器をケースに戻さなかった。


 どれくらい時間が経ったのだろう。


 時計の針は、とうに日付が変わったことを示していた。


 アレクシスは弓を下ろし、指先を軽く動かした。


 疲労はある。


 けれど、もう弾くのをやめようとは思わなかった。


 彼は、今日の演奏会を思い出していた。


 リディアが、音楽を聴きながら目を輝かせていたこと。


 同じ旋律を聴いても、自分とは違う景色を思い浮かべていたこと。


 そして、最後の曲について、音色が人の声に似ていると話してくれたこと。


 言葉にならない何かを、音楽で伝えようとしているようだった、と。


 アレクシスは、もう一度弦に弓を当てた。


 今度は、決まった曲を弾くつもりではなかった。


 ただ、頭の中に浮かんだ音を、ひとつずつ確かめる。


 低い音から、ゆっくりと旋律を組み立てる。


 少し弾いては止まり、音の並びを考える。


 別の音を重ね、気に入らなければ最初からやり直す。


 それは、かつて新しい曲を作るときに、何度も繰り返していた作業だった。


 けれど、今夜の彼は、いつもとは少し違っていた。


 以前なら、頭の中に明確なイメージを描き、それを音にすることを考えていた。


 だが今は、弾きながら、音がどこへ向かうのかを探している。


 静かな湖畔。


 月明かりに照らされた水面。


 隣に座り、楽しそうに音楽について語るリディアの横顔。


 彼女が、左手だけで奏でたリラの音色を美しいと言ってくれたこと。


 自分の大切な場所を、彼女も好きになりたいと言ってくれたこと。


 思い出すたび、旋律の表情が変わった。


 穏やかな音が続いたかと思えば、ふと、胸の奥にある何かを掬い上げるような響きが生まれる。


 寂しさだけではない。


 喜びだけでもない。


 大切なものが増えていくことへの戸惑いと、それでも手放したくないと思う気持ち。


 それらが、まだ名前のない旋律の中に、少しずつ溶け込んでいった。


 アレクシスは、夢中になっていた。


 弾いて、止まり、考える。


 そしてまた、弾く。


 時間の感覚は薄れていた。


 以前から、音楽に没頭すると周囲が見えなくなることはあった。


 けれど、こんなふうに、何かに導かれるように弾き続けたのは久しぶりだった。


 ようやく窓の外が白み始めた頃、アレクシスは弓を止めた。


 朝の光が、カーテンの隙間から細く差し込んでいる。


 部屋には、夜通し奏でられた音の余韻が、まだ残っているような気がした。


 アレクシスは楽器を膝に置いたまま、しばらくその場に座っていた。


 指先に、かすかな疲れを感じる。


 けれど、胸の奥は不思議なほど満たされていた。


 こんなにも長い時間、弾き続けていたことに、自分でも驚いていた。


 復帰するかどうか。


 セレスタンとして、もう一度舞台に立つのか。


 その答えは、まだ出ていない。


 仮面をつけて、人々の前に立つ自分を想像しても、以前と同じ気持ちにはなれなかった。


 けれど――。


 アレクシスは、膝の上の楽器を見つめた。


 音楽を奏でている間、彼は何も考えずにいられた。


 誰かに期待されているからでもない。


 セレスタンという名前を守らなければならないからでもない。


 ただ、弾きたかった。


 音を探し、旋律を紡ぎ、その先にある何かを見つけたかった。


 それだけだった。


「……そうか」


 小さく呟く。


 自分は、音楽が好きなのだ。


 その気持ちは、何ひとつ消えていなかった。


 アレクシスは、ゆっくりと息を吐いた。


 それから、まだ完成していない旋律を、もう一度だけ奏でた。


 夜明けの光の中で、柔らかな音色が静かに広がっていく。


 最後の一音が消えたあとも、彼はしばらく弓を下ろさなかった。


 指先がじんじんと疼いていた。


 弦を押さえていた指をそっと曲げる。皮膚が擦れ、熱を持っている。半年もの間、ほとんど触れていなかったのだから、無理もない。


 それでも、弾いている最中は気にならなかった。


 痛みを忘れるほど、夢中になっていたのだ。


 アレクシスは赤くなった指先を見つめ、苦笑した。


「……少し、やりすぎたな」


 そう呟きながらも、胸の奥は不思議なほど満たされていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。