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第二章 ・ 音色

 


 アレクシスと初めて会ってから、数日が過ぎた。


 リディアは自室の机に向かい、先日の出来事を思い返していた。


 落ち着いた物腰に、誠実な話し方。こちらの話を丁寧に聞いてくれる姿勢も好印象だった。


 何より、音楽を好きだという気持ちを否定せず、もっと聞きたいと言ってくれたことがうれしかった。


「……素敵な方だったわね」


 ぽつりとつぶやき、リディアは頬に手を当てた。


 婚約については、まだこれから考えていく段階だ。けれど、もう一度会って、もっとお話ししてみたいと思っている。


 そんなことを考えていたときだった。


「お嬢様、ヴァレンティン公爵家からお手紙が届いております」


 侍女のマリーが、封蝋の押された封筒を差し出した。


「アレクシス様から?」


「はい」


 リディアは思わず背筋を伸ばした。


 封を切り、丁寧な筆跡を追っていく。


 そこには、先日の面会のお礼と、もう一度会いたいという言葉が綴られていた。


 そして、次の約束について、こんな提案が添えられていた。


『もしご都合がよろしければ、二週間後の演奏会にご一緒しませんか。王立アルトワ音楽堂の席を用意しております。先日のお話を伺い、リディア嬢がお好きな音楽を、私もぜひ聴いてみたいと思いました』


「……演奏会?」


 リディアの声が、みるみるうちに明るくなった。


 音楽が好きだと話したことを覚えていてくれた。それだけでもうれしいのに、わざわざ演奏会に誘ってくれるなんて。


「お嬢様、よかったですね」


「ええ! とても素敵なお誘いだわ」


 リディアは、もう一度手紙を読み返した。


 アレクシスと過ごす時間も楽しみだった。音楽についてもっと話を聞きたいと言ってくれた彼と、今度はどんな話ができるだろう。


 ふと、手紙に記された会場名が目に留まった。


「……王立アルトワ音楽堂?」


 リディアは顔を上げ、それから急いで机の引き出しを開けた。


 中から取り出した手帳を開き、次の公演日程を確認する。


 王立アルトワ音楽堂の欄に目を留めた瞬間、リディアの紫の瞳が輝いた。


「マリー!」


「はい、お嬢様?」


「セレスタン様が出演される演奏会よ!」


「まあ、それは楽しみですね」


「しかも、新しい曲を披露されるかもしれないって噂があるの」


 リディアは手帳を両手で握りしめた。


 大好きなセレスタンの演奏を聴けるだけでもうれしいのに、今回はアレクシスと一緒に行けるのだ。


 婚約者候補との二度目の約束。


 考えるだけで胸が弾んだ。


 リディアはさっそく返事を書き始めた。


 アレクシスへの感謝と、お誘いを喜んでお受けするという言葉を、できる限り丁寧に綴っていく。


 そして最後に、憧れの楽師が出演する公演なので、楽しみにしております、と一言だけ書き添えた。



 ◆



 約束の日。


 リディアはいつもより少し華やかなドレスを身につけ、玄関ホールでアレクシスを迎えた。


「本日はお誘いいただき、ありがとうございます」


「こちらこそ。お会いできるのを楽しみにしておりました」


 アレクシスは穏やかに微笑んだ。


 リディアの装いは上品で、どこかうれしさがにじんでいる。


 その様子を見て、彼は内心で小さく笑った。


 彼女が今日の演奏会を心待ちにしていることは、手紙の返事からも十分に伝わっていた。


 もっとも、彼女が楽しみにしているのは、隣にいる自分との時間だけではない。


 今夜、舞台に立つもう一人の自分――セレスタンのことも、同じくらい、あるいはそれ以上に楽しみにしているのだろう。


「では、参りましょうか」


「はい!」


 リディアはうれしそうにうなずいた。


 馬車が走り始めると、二人は最近読んだ本や、ベルフォール家の庭園の話などを交わした。


 穏やかな会話が続くなか、やがて話題は今夜の演奏会へと移った。


「今夜は、どのような曲が聴けるのでしょうね……」


「リディア嬢は、何か予想されているのですか?」


「詳しいことはわからないんです。お手紙にも書きましたけれど、憧れの楽師様が新しい曲を披露されるかもしれない、というお話だけで」


「憧れの楽師、ですか?」


 アレクシスが尋ねると、リディアは穏やかに微笑んだ。


「アレクシス様はご存じないかもしれませんが、仮面の楽師様と呼ばれている方なんです。セレスタン様とおっしゃって、今、王国中で人気を集めていらっしゃるんですよ」


「……ほう」


「セレスタン様は、旋律の奏で方が本当にお見事なんです。静かな曲でも、ただ穏やかなだけではなくて、音の奥にいろいろな感情が隠れているように感じるんです」


 話し始めたリディアの声に、少しずつ熱がこもっていく。


「低い音が続いているときに、ふと高い音が重なる瞬間があるでしょう? あのとき、まるで閉じていた窓が開いて、光が差し込んでくるような気持ちになるんです」


 リディアは両手を重ね、うっとりとした表情を浮かべた。


「それに、弓の使い方も本当に繊細で……。音を強く響かせるところだけではなく、かすかに触れるような音まで、すべてに意味があるように思えるんです」


 そこまで話して、リディアははっと我に返った。


「あっ……! 申し訳ありません。また、私ばかりお話ししてしまって」


「いいえ。とても興味深いお話しでした」


 アレクシスは、彼女が自分の演奏について語る言葉を、ひとつひとつ心に留めていた。


 舞台に立つ自分が、何を考え、どんな音を届けようとしているのか。


 それを彼女は、驚くほど丁寧に受け取ってくれている。


 リディアの言葉からは、セレスタンの演奏を心から愛していることが伝わってきた。


 そのことに、アレクシスの口元が自然とほころぶ。


「今夜の演奏が、ますます楽しみになりました」


「……そうおっしゃっていただけると、うれしいです」


 リディアは頬を染め、少し恥ずかしそうに微笑んだ。


 自分が演奏に込めた思いを、彼女はこれほどまでに感じ取ってくれていたのだ。


 音に託したものが誰かの心に届いている。


 その事実が、アレクシスの胸に静かな喜びをもたらした。


 セレスタンとして演奏を続けてきてよかった。


 そう思えるほどに。


 そんな彼女と、こうして隣り合って座っている。


 アレクシスにとっても、今夜は少し特別な演奏会になりそうだった。



 ◆



 会場に到着すると、すでに多くの観客が集まっていた。


 華やかな衣装に身を包んだ貴族たちが談笑し、係の者が客席への案内を進めている。


 アレクシスは事前に用意していた席へリディアを案内した。


「こちらでよろしいでしょうか?」


「はい。とても素敵なお席ですね」


 リディアは舞台を見つめた。


 楽器はすでに整えられ、譜面台の上には数枚の楽譜が置かれている。


 見慣れない表紙が目に入った。


 新しい曲だろうか。


 考えただけで、胸が高鳴る。


「アレクシス様、本当にありがとうございます。こんなに楽しみな夜をご一緒できるなんて」


「私も、あなたと来られてよかったです」


 アレクシスは微笑みながら、今夜の演奏会に思いを巡らせた。


 セレスタンとして舞台に立ったとき、隣に座るリディアはどんな表情を見せてくれるだろう。


 先ほどまで熱心に語っていた彼女が、実際の演奏を聴いてどんな感想を抱くのか。


 それを思うと、今夜の舞台に立つのがいつも以上に楽しみになった。


 やがて開演を知らせる鐘が鳴った。


 客席のざわめきが徐々に収まり、演奏家たちが舞台に姿を現す。


 リディアは背筋を伸ばし、舞台に集中した。


 最初の演目が始まる。


 最初の楽師が奏でる音色が会場に広がり、リディアは静かに聴き入った。


 アレクシスも隣で演奏に耳を傾けながら、時折、舞台袖の方へ視線を向けていた。


 セレスタンの出演時間が近づいている。


 そろそろだ。


 そのとき、客席の後方から一人の従者が近づいてきた。


 従者は周囲の観客に配慮しながら、アレクシスのそばで静かに頭を下げた。


「アレクシス様、申し訳ございません。お仕事の方で緊急の案件が……」


 アレクシスは小さくうなずいた。


「わかりました」


 そして、隣のリディアに向き直る。


「少々失礼します。すぐに戻りますので」


「あ、はい。どうぞお気になさらず」


 リディアは小さな声で答えた。


「申し訳ございません」


 アレクシスは立ち上がり、従者とともに静かに客席を離れた。


 その背中を見送りながら、リディアは少し残念な気持ちになった。


 公爵家の跡取りともなれば、演奏会の最中でも対応しなければならないことがあるのかもしれない。


 しかし、もうすぐセレスタンの出番なのだ。


 できればアレクシスにも、あの素晴らしい演奏を隣で聴いてほしかった。


 すぐに戻ると言っていたけれど、間に合うだろうか。


 リディアは舞台へ視線を戻し、次の演目を待った。


 若い楽師達の三重奏のあと、しばらくして、次の演奏家が舞台袖から現れた。


 黒いロングマントをまとい、銀の刺繍が施された衣装に身を包んだ楽師。


 髪も顔も覆い隠す、銀の装飾が刻まれた黒い鉄仮面。


 そして、手に携えたヴィオラ・ダ・ガンバ。


 リディアの呼吸が止まった。


 ――セレスタン様!


 胸の中で、思いきり叫んだ。


 会いたかった。


 この瞬間を、どれほど楽しみにしていたことか。


 セレスタンは舞台の中央へ進み、客席に向かって静かに一礼した。


 その姿を目にしただけで、リディアの胸はいっぱいになった。


 長い間、ずっと憧れ続けてきた人。


 その演奏を、今夜もこうして聴ける。


 リディアは両手を膝の上でそっと握りしめ、舞台を見つめた。


 セレスタンが楽器を構える。


 そして、最初の一音が響いた。



 ◆



 その少し前、舞台袖の奥にある控室では、アレクシスが黒いマントを羽織り、仮面を手に取っていた。


 従者は扉のそばに立ち、舞台脇から客席の様子を確認していた。


「お嬢様は、特に気にされたご様子はありません」


「……そうか」


 アレクシスは上着を衣装へ着替えると、頭部を覆う黒い仮面を装着した。


 鏡に映るのは、ヴァレンティン公爵家の跡取りではない。


 素顔も身分も隠し、音楽だけで人々と向き合う楽師、セレスタンだった。


「お時間まで、あと少しです」


「わかっている」


 今夜演奏するのは、自ら作り上げた新しい作品だった。


 旋律の流れも、音の重なりも、何度も考え直してきた。


 自分の思いを込めたこの曲が、客席の人々にどう届くのか。


 それを確かめるのが楽しみだった。


 そして、今夜はもうひとつ、気にかかることがある。


 客席にはリディアがいる。


 彼女はどんな表情で聴いてくれるだろう。


 新しい曲を気に入ってくれるだろうか。


 先ほど馬車の中で聞いた、彼女の熱心な語りを思い出す。


 旋律の細かな変化も、弓が生み出すかすかな音も、彼女は驚くほど丁寧に聴き取っていた。


 自分の演奏を、あれほど深く受け止めてくれる人がいる。


 そのことが、アレクシスにはうれしかった。


 これまで、特定の観客がどんな感想を抱くのか、これほど気にしたことはなかった。


 今夜、彼女がどんな思いで自分の音楽を聴くのか知りたいと思っている。


 その変化を意識し、アレクシスはかすかに苦笑した。


「……さて」


 小さく息を吐き、気持ちを整える。


「行こう」


「はい」


 従者が扉を開いた。


 アレクシスはヴィオラ・ダ・ガンバを抱え、舞台へと歩き出した。



 ◆



 新しい曲は、静かな旋律から始まった。


 深く落ち着いた低音が、夜の水面を思わせるように会場へ広がっていく。


 リディアは、すぐにその音の世界へ引き込まれた。


 初めて聴く曲なのに、不思議と懐かしい。


 静けさの中に、何かを待ち続けるような切なさがある。


 旋律はゆっくりと形を変え、少しずつ高い音へと向かっていった。


 リディアは息をひそめた。


 音が重なる。


 そして、ふっと途切れる。


 その短い沈黙のあと、再び旋律が戻ってきたとき、彼女の胸に熱いものが込み上げた。


 ――なんて、素敵なの……。


 セレスタンの演奏は、いつもそうだった。


 言葉で説明できない気持ちを、音でそっとすくい上げてくれる。


 悲しいのか、懐かしいのか、それとも幸せなのか。


 聴いているうちに、自分でもわからなくなる。


 それなのに、曲が終わる頃には、胸の中に確かなものが残っているのだ。


 リディアは舞台から目を離せなかった。


 その様子は、舞台の上のアレクシスにも伝わっていた。


 彼は演奏を続けながら、客席の中に彼女を見つけていた。


 真剣な眼差し。


 旋律が変わるたびにわずかに動く表情。


 そして、音が途切れた瞬間にさえ、次の一音を待つように舞台を見つめる姿。


 いつもの彼女だ。


 庭園で音楽を語っていたときと同じように、彼女は今、自分の好きなものに心を預けている。


 アレクシスは、最後の旋律を丁寧に奏でた。


 やがて、最後の音が会場に響き渡る。


 その余韻が消える直前、セレスタンは弓をわずかに動かした。


 弓の先端が、リディアのいる席へと向く。


 仮面の奥の視線が、まっすぐに彼女を捉えた。


 ほんの一瞬、目元が柔らかくなる。


 そして、最後の音が消えた。


 静寂。


 次の瞬間、盛大な拍手が湧き起こった。


 リディアは息をのんだまま、セレスタンを見つめていた。


 今、目が合った。


 弓の先端が、自分に向けられていた。


 ――えっ……?


 心臓が大きく跳ねた。


 ――今、私を?


 そんなはずはない。


 客席には大勢の観客がいる。たまたま視線が合っただけかもしれないし、弓の先がこちらを向いただけかもしれない。


 けれど。


 あの目元が、ほんの少し柔らかくなったのは?


 もしかして。本当に?


 何度も演奏会に通い、ずっと憧れ続けてきた人。


 そんなセレスタンが、自分を見つけてくれたのだろうか。


 考えれば考えるほど、胸が落ち着かなくなる。


 頬が熱い。


 嬉しいのに、信じられなくて、どうしたらいいのかわからない。


 リディアは慌てて拍手を送った。


 目の前のセレスタンを見つめながら、先ほどの一瞬を何度も思い返す。


 ――え?


 え……?


 セレスタンは、何事もなかったように立ち上がり、客席へ向かって一礼する。


 心臓がうるさい。


 頬が熱い。


 目の前の光景を、何度も頭の中で再生してしまう。


 ――今、私に?


 そんなはずはない。


 セレスタンは大勢の観客に愛されている演奏家だ。


 客席の一人ひとりを特別に意識しているとは思えない。


 けれど、リディアはこれまで何度も彼の演奏会に通ってきた。


 できる限り前の方の席を選び、彼の音を一音も聞き逃さないように聴いてきた。


 もしかしたら。


 ほんの少しだけでも。


 自分のことを覚えてくださっていたのだろうか。


 そう考えた瞬間、リディアの胸は喜びでいっぱいになった。


 セレスタンは、いつもと変わらぬ落ち着いた所作で、もう一度客席へ目礼し、静かに舞台袖へと退いていった。


 ――どうしましょう、マリー! 私、今、セレスタン様に……!


 もちろん、今ここにマリーはいない。


 リディアはひとり、胸の高鳴りを必死に抑えていた。


 それからの時間は、夢のように過ぎていった。


 曲が変わるたびに、楽器が変わるたびに、音の表情に心を奪われる。


 けれど、ふとした瞬間に思い出してしまうのだ。


 あの視線。


 そのたびに、リディアはひそかに頬を染めた。



 ◆



 すべての演奏が終わり、会場に明かりが戻った頃。


 リディアは、まだ夢見心地のままだった。


 今夜の演奏会は、きっと一生忘れない。


 あの弓の先。


 偶然かもしれないと何度も自分に言い聞かせても、胸の高鳴りは収まらなかった。


 そのとき、背後から聞き覚えのある声がした。


「リディア嬢」


 振り返ると、アレクシスが戻ってきていた。


「アレクシス様!」


 リディアは、思わず立ち上がった。


「一人にしてしまって申し訳ありません。席まで戻るのが間に合わず、後方で演奏を聴いていました。素晴らしい演奏会でしたね」


 アレクシスはリディアの様子をうかがうように、静かに微笑んだ。


「リディア嬢は、いかがでしたか?」


 その問いに、リディアは一瞬、言葉を失った。


 いかがでしたか。


 いかがでしたか、ですって?


「……アレクシス様」


「はい?」


「大変です」


 アレクシスは、少しだけ目を瞬かせた。


「大変、ですか?」


「はい。あの……セレスタン様が……!」


 リディアは言葉を探すように、両手を胸の前で握りしめた。


「演奏のあと、こちらを見てくださったんです!」


 アレクシスは、すぐには答えなかった。


「……ほう」


「本当なんです! ほんの一瞬だったのですけれど、確かに私の席の方を見てくださって、それから……弓で合図をくださったんです!」


 話しているうちに、リディアの声はどんどん弾んでいく。


「私、何度も演奏会に通っておりますけれど、あんなことは初めてで……! もちろん、勘違いかもしれません。でも、もし少しでも私のことを覚えていてくださったのなら……!」


 そこまで話して、リディアは両手で頬を押さえた。


「……どうしましょう。本当に、夢みたいです」


 アレクシスは彼女を見つめた。


 目の前のリディアは、頬を赤く染め、瞳をきらきらと輝かせている。


 つい先ほどまで、自分の演奏を聴いていた彼女だ。


 そして今、その演奏をした本人に向かって、自分だけに向けられたかもしれない合図について熱心に語っている。


 アレクシスは、こみ上げてくる笑いをなんとか抑えた。


「それは……とても、うれしかったでしょうね」


「はい!」


 リディアは迷いなくうなずいた。


「本当に、うれしかったです!」


「セレスタン氏も、熱心に聴いてくださる方がいらっしゃると知れば、喜ぶのではないでしょうか」


「そうでしょうか……!」


 リディアの表情が、さらに明るくなる。


「そうだといいのですけれど……。私、これからもずっと、セレスタン様の演奏を聴き続けたいです」


 その言葉に、アレクシスの胸が静かに温かくなった。


「……ええ。ぜひ、そうなさってください」


 自分の正体を明かすことはしない。


 彼女が喜んでいるのは、あくまでもセレスタンに対してだ。


 それでも、彼女がこれからも自分の音楽を聴きに来てくれるのなら。


 そして、いつか彼女が自分自身を見つめてくれる日が来るのなら。


 今は、この秘密を大切に抱えていよう。


「アレクシス様?」


 リディアが、不思議そうに首をかしげた。


「どうかなさいましたか?」


「いいえ。あなたがそんなふうに楽しんでくださることが、うれしいのです」


「……ありがとうございます」


 リディアは、照れくさそうに微笑んだ。


 その笑顔を見て、アレクシスもまた、穏やかに微笑み返した。


 帰りの馬車でも、リディアは演奏会の感想を語り続けた。


 新曲の旋律。心を揺さぶられた音の重なり。最後の一礼まで。


 同じ話を何度もしていることに気づいては、恥ずかしそうに謝る。


 けれどアレクシスは、そのたびに「もっと聞かせてください」と答えた。


 自分が奏でた音楽が、彼女の心に残っている。


 そして、彼女の喜びを、こうして隣で聞くことができる。


 それは、舞台の上で拍手を受けるのとはまた違った、特別な喜びだった。


 やがて馬車がベルフォール侯爵家に到着した。


「本日は、本当にありがとうございました。とても楽しかったです」


 リディアは、名残惜しそうにアレクシスを見上げた。


「私も、楽しい時間を過ごせました」


「また、こうしてご一緒できたらうれしいです」


「ええ。ぜひ」


 アレクシスが微笑むと、リディアも笑顔で礼をした。


 彼女はまだ知らない。


 今夜、自分が夢中になって語った相手が、すぐ隣で聞いていたことを。


 そして、あの弓先と視線が、偶然でも勘違いでもなかったことを。


 ただひとつ確かなのは、リディアが今夜、仮面の楽師から、忘れられない贈り物を受け取ったということだった。


 

◆



 王城で催される夜会は、いつにも増して華やかだった。


 大広間の天井からは無数のシャンデリアが輝き、磨き上げられた床には、豪奢なドレスや礼服をまとった貴族たちの姿が映し出されている。


 壁際には宮廷音楽家たちが並び、優雅な旋律を奏でていた。


 その華やかな大広間に、リディアはアレクシスと並んで足を踏み入れた。


 今夜、二人そろって夜会に招かれていた。


 正式な婚約には至っていないものの、二人の縁談が進められていることは、すでに貴族の間でも知られるところとなっている。


「リディア嬢、こちらへ」


 差し出された手に、リディアは微笑んで指先を重ねた。


「ありがとうございます、アレクシス様」


 今夜の彼は、いつにも増して目を引いた。


 仕立てのよい濃紺の礼服に、銀色の髪。


 落ち着いた物腰と涼やかな青い瞳は、華やかな夜会の中でもひときわ目立っている。


 そんな彼にエスコートされている自分を意識すると、リディアは少しだけ背筋を伸ばした。


 婚約者候補として、隣に立つのにふさわしい女性でありたい。


 そう思う一方で、アレクシスが自然に歩調を合わせてくれることが、嬉しくもあった。


「夜会はお好きですか?」


「そうですね。こうして皆様とお話しするのは楽しいです。ただ……」


「ただ?」


「音楽を聴いていると、ついそちらに気を取られてしまいますの」


 言ってから、リディアは小さく笑った。


「せっかくの夜会ですのに、少しもったいないですね」


「いえ。リディア嬢らしいと思いますよ」


 アレクシスは、何でもないことのように答えた。


 その言葉に、リディアは頬を緩める。


 以前、庭園を散策したときにも思ったことだが、アレクシスは自分の好きなものを否定しない。


 音楽の話をすれば、きちんと耳を傾けてくれる。


 夢中になって少しばかり話しすぎても、困った顔をせずに聞いてくれる。


 そんな彼と過ごす時間は、思っていた以上に心地よかった。


 やがて楽団の演奏が切り替わり、ダンスのための旋律が広間を満たした。


「一曲、お相手をお願いしても?」


 アレクシスが手を差し出す。


「喜んで」


 リディアはその手を取った。


 彼のリードは滑らかで、踊りやすい。


 ステップを踏むたびに、二人の距離が近づいたり離れたりする。


「お上手なのですね」


「ありがとうございます。リディア嬢もお上手ですよ」


「ふふ。練習いたしましたもの」


「では、私も練習の成果を褒めていただけたということですね」


「まあ。アレクシス様でも、そんな意地悪をおっしゃるのですね」


 リディアが笑うと、アレクシスも目元を和らげた。


 踊り終えた二人は、壁際で飲み物を受け取り、しばらく会場の様子を眺めた。


 宮廷音楽家たちが奏でる旋律は、よく知った優美な曲だった。


 その旋律に耳を傾けていたリディアは、ふと、近くにいた貴族たちの会話に気づいた。


「この曲、最近また人気が出ているそうですわね」


「ええ。巷で話題の仮面の楽師、セレスタン氏が演奏したことで、若い方々にも広まったとか」


 その名が聞こえた瞬間、リディアは思わず顔を上げた。


 セレスタン。


 三年前から、彼女の心を捉えて離さない、仮面の楽師。


 宮廷音楽家たちの演奏に耳を傾けながらも、リディアはつい、彼の演奏を思い浮かべていた。


「素晴らしい演奏をなさるそうですわね。私も一度、聴いてみたいものです」


「素晴らしい、ですか」


 別の女性が、意味ありげに扇を揺らした。


「確かに話題にはなっていますけれど、素顔も素性も明かさないのでしょう? 少々、怪しい気もいたしますわ」


「まあ、確かに。仮面をつけて演奏するなんて、ずいぶん芝居がかっていますものね」


 くすくすと笑い声が重なる。


 リディアの表情から、笑みが消えた。


 もちろん、セレスタンの正体を知らない人が不思議に思うのは仕方がない。


 彼自身が顔を隠しているのだから、疑問を持つ者がいてもおかしくはないだろう。


 けれど。


「……素顔を隠しているからといって、演奏まで疑われる理由にはならないと思います」


 気づけば、口を開いていた。


 女性たちがこちらを振り返る。


「まあ、あなたはセレスタン氏の演奏をお聴きになったことがあるの?」


「はい。何度も」


 リディアは、今度ははっきりと答えた。


「セレスタン様は、同じ楽器でも曲によってまったく異なる表情を引き出されます。繊細な旋律も、力強い旋律も、その一音一音に意味があるように感じられるのです」


 言葉にしているうちに、胸の奥にあった熱が、少しずつ大きくなっていく。


「演奏を聴けば、その方がどれほど真摯に音楽と向き合っていらっしゃるのか、伝わってくるものです。ですから、素顔を知らないというだけで、怪しいと決めつけるのは……」


 そこで、リディアは一度息を継いだ。


「少し、悲しいことだと思いますわ」


 女性の一人が、気まずそうに扇を閉じた。


「そんなに熱心にならなくても……ただ、思ったことを申し上げただけですのに」


「ええ。ですから、私も思ったことを申し上げているのです」


 リディアは穏やかな口調を崩さなかった。


 けれど、その瞳には、いつもの社交的な微笑みとは違う真剣さがあった。


 その様子を、隣で見守っていたアレクシスは、静かにグラスをテーブルへ置いた。


「リディア嬢のおっしゃるとおりだと思います」


 落ち着いた声だった。


 女性たちの視線が、今度は彼へ向く。


「素顔を明かしていないことと、演奏の価値は別の話でしょう。実際に演奏を聴いたこともないのであれば、なおさらです」


「ですが、正体が分からないというのは……」


「音色は嘘をつきませんよ」


 アレクシスは、微笑みさえ浮かべていた。


「少なくとも、演奏を聴きもしない方の憶測よりは、よほど雄弁でしょう」


 穏やかな言葉だったが、それ以上の反論を許さない響きがあった。


 女性たちは互いに顔を見合わせ、やがて話題を変えた。


 リディアは、ほっと息をついた。


 少し熱くなりすぎてしまったかもしれない。


 夜会の席で、あんなふうに自分の意見を述べることなど、普段ならあまりない。


 けれど、セレスタンのこととなると、どうしても黙っていられなかった。


「……アレクシス様、ありがとうございます」


「お礼を言われるようなことではありませんよ」


「でも、私、少しばかり意地になってしまって」


「そうでしたか?」


 アレクシスは、わずかに首を傾げた。


「私には、ご自分の好きなものを大切にしていらっしゃるように見えましたが」


 リディアは目を瞬かせた。


 それから、頬をほんのりと染める。


「……そうおっしゃっていただけると、嬉しいです」


 彼女が照れたように微笑む。


 その顔を見たとき、アレクシスの胸の奥に、小さな温もりが広がった。


 彼女はただ、音楽を楽しんでいるだけではない。


 自分が大切だと思ったものを、他人の心ない言葉から守ろうとする人なのだ。


 そして、その姿を見ていると、なぜだかもう少し彼女のことを知りたいと思う。


 何を美しいと感じるのか。


 何に心を動かされるのか。


 何を大切にして生きているのか。


 そんなことを、もっと知りたい。


「アレクシス様?」


 呼びかけられて、彼は我に返った。


「どうかなさいました?」


「いえ。少し考え事を」


「お疲れですか?」


「いいえ。楽しい夜会ですから」


 そう答えると、リディアは安心したように笑った。


 アレクシスは、その笑顔から目を離すのに、ほんの少し時間がかかった。



 ◆



 数日後。


 アレクシスのもとへ、一通の手紙が届けられた。


 差出人は、リディア・ベルフォール。


 封蝋にはベルフォール侯爵家の紋章が押されている。


 彼は封を切り、丁寧な筆跡で綴られた文面に目を通した。


 先日の夜会での礼と、楽しい時間を過ごせたことへの感謝。


 さらに、音楽について話したことが嬉しかった、という言葉が続いている。


 そして、手紙の終わり近くに、こんな一文が添えられていた。


『先日の夜会で、アレクシス様がおっしゃった「音色は嘘をつかない」というお言葉が、ずっと心に残っております。


 それをきっかけに、ひとつ詩を書きました。


 まだ拙いものではありますが、もしよろしければ、お読みいただけると嬉しく存じます』


 その下には、別の紙が一枚、丁寧に挟まれていた。


 アレクシスは、そっとそれを取り出した。


 そこには、短い詩が綴られていた。


『透明な旋律』


 人は仮面の向こうを知りたがり


 名もなき者に疑いの目を向ける


 けれど弦から生まれるひとつの音は


 誰かの心へまっすぐ届く


 飾られた言葉が風に消えても


 胸に残る響きは消えはしない


 その音に何を感じるか


 それは聴く者の心が知っている


 アレクシスは、しばらく紙を見つめていた。


 技巧を凝らした詩ではない。


 難しい言葉も、華やかな比喩もない。


 けれど、そこには彼女が信じているものが、まっすぐに書かれていた。


 人が何を言おうと、音楽は音楽として届く。


 姿が見えなくても、名が知られていなくても、その音に心を動かされることはある。


 彼女は、それを信じているのだ。


 アレクシスは、詩をもう一度読み返した。


 そして、ふと気づく。


 あの夜、彼女が自分の言葉を覚えていてくれたこと。


 何気なく口にしたひと言を、こんなふうに受け止め、自分の中で考え、詩にまでしてくれたこと。


 それが、どうしようもなく嬉しかった。


 自分の言葉が、彼女の心に残った。


 それだけのことなのに、胸の奥がじんわりと温かくなる。


 彼女にとって、自分はまだ婚約者候補の一人にすぎないのかもしれない。


 けれど、こうして彼女の考えに触れられることが、思いのほか心地よかった。


 アレクシスは、詩をそっと机の上に置いた。


 その題名を、もう一度見つめる。


『透明な旋律』


 彼は、これまで数え切れないほどの曲を演奏してきた。


 喜びも、悲しみも、憧れも、別れも。


 音楽に込める感情は、その時々で異なっていた。


 けれど、自分の中にあるものを、音に変えて誰かへ届けること。それだけは、ずっと変わらなかった。


 では、今の自分は何を伝えたいのだろう。


 詩の紙に、もう一度視線を落とす。


 リディアがこの詩を書いたとき、何を思っていたのか。


 どんな気持ちで、言葉を選んだのか。


 彼女の心を、もっと知りたい。


 そして、できることなら。


 自分の音楽で、彼女の心に応えたい。


 そう思った瞬間、アレクシスは小さく息を吐いた。


「……困ったな」


 誰に聞かせるでもなく、つぶやく。


 婚約者候補から届いた詩を読んで、こんなにも心を動かされるとは思っていなかった。


 ましてや、それを曲にしたいなどと考えるなんて。


 彼は椅子から立ち上がり、部屋の隅に置かれた楽器へと歩み寄った。


 夜の静けさの中、弦に触れる。


 低く、柔らかな音が生まれた。


 最初は、ただ詩の言葉を思い返しながら、旋律を探していた。


 けれど、弓を動かしているうちに、いつしか音の表情が変わり始めた。


 甘く、深く。


 胸の奥に秘めた熱が、静かに滲み出すように。


 これまでのセレスタンの曲にはなかった、艶やかな響き。


 音の余韻に、言葉にならない想いが残る。


 アレクシスは弓を止めた。


 自分が今、どんな気持ちで演奏していたのか。


 その答えを、まだうまく言葉にできなかった。



 ◆



 数週間後、セレスタンの演奏会が開かれた。


 リディアは、いつものように開演前から客席に座っていた。


 今日はアレクシスの予定が合わず、同行者はクラリスだ。


 膝の上には、使い込まれた小さなノート。


 過去の演奏会の日付や曲目、心に残った旋律や弓遣い。


 彼女が三年間にわたって書き留めてきた記録が、そこには詰まっている。


 今夜もまた、新しいページを増やすつもりだった。


 やがて客席の灯りが落とされ、舞台に一人の楽師が現れた。


 黒いマント、仮面をつけた、銀髪の演奏家。


 セレスタン。


 その姿を見た途端、リディアの胸が弾んだ。


 今夜も、彼の音楽が聴ける。


 いくつかの曲が演奏され、客席が静かな感動に包まれたあと、セレスタンが次の曲のために楽器を構えた。


「今宵は、また新しい物語を一つ」


 落ち着いた声が、会場に響く。


「曲名は――『透明な旋律』」


 リディアは、息を呑んだ。


 その名前には、聞き覚えがあった。


 いや、聞き覚えどころではない。


 自分が書いた詩と、まったく同じだった。


 心臓が、どくんと大きく鳴る。


 同じ名前の作品が、どこかに存在していたのだろうか。


 リディアは膝上の手帳を握りしめた。


 そして、セレスタンの弓が弦に触れた。


 最初の一音は、驚くほど静かだった。


 深く、澄んだ音が、会場の隅々までゆっくりと広がっていく。


 けれど、旋律が進むにつれて、リディアは胸の奥に不思議な感覚を覚えた。


 いつもと違う。


 今夜のセレスタンは、どこか違う。


 これまでの演奏にも、情感はあった。


 悲しみを帯びた旋律も、優しさを感じさせる響きも、何度も聴いてきた。


 けれど、今夜の音には、それらとは異なるものが宿っていた。


 甘く、艶やかで。


 ひとつの旋律が次の旋律へと移るたび、胸の奥をそっと撫でられるような感覚がある。


 切ないのに、温かい。


 遠くへ手を伸ばしているようなのに、何かを確かめるような確かな熱がある。


 まるで、誰かに伝えたい想いが、音になって溢れているようだった。


 リディアは、いつの間にか息をするのも忘れていた。


 ――こんな音、初めて。


 セレスタンは、何を想って演奏していたのだろう。


 そして、今夜は何を想っているのだろう。


 旋律の奥に感じる熱が、気になって仕方がなかった。


 曲が終盤に差しかかる。


 最後の旋律は、ゆっくりと伸びやかに奏でられた。


 その音は、まるで誰かへ届ける言葉のように、客席の上を通り抜けていく。


 やがて、最後の一音が静かに消えた。


 一瞬の沈黙。


 そして、会場いっぱいに拍手が広がった。


 リディアも、夢から覚めたように手を叩いた。


 素晴らしかった。


 今夜の演奏は、本当に素晴らしかった。


 けれど、拍手をしながらも、彼女の心はまだ曲の中に残っていた。


 何が違ったのか。


 どうして、あんなにも胸がざわめいたのか。


 リディアは手帳を開き、震える指先で文字を書き始めた。


『新曲「透明な旋律」


 これまでの演奏とは異なる、艶やかな響き。


 旋律に宿る熱。誰かに何かを伝えようとするような、甘く、切ない余韻』


 書き終えたあとも、リディアはしばらくペンを置けなかった。


 彼の演奏を聴き続けてきた。


 曲のわずかな違いにも、弓遣いの変化にも、気づける自信がある。


 だからこそ、今夜の演奏が特別なものだったことが分かる。


 けれど、その理由までは分からない。


 リディアは、舞台の上のセレスタンを見つめた。


 黒い仮面の下に、どんな表情が隠されているのだろう。


 今夜の彼は、どんな気持ちでこの曲を奏でたのだろう。


 知りたい。


 けれど、きっと知ることはできない。


 彼は、素顔を明かさない楽師なのだから。


 ◆


 演奏会が終わり、舞台裏へ戻ったアレクシスは、楽器をケースへ収めながら、先ほどの客席を思い返していた。


 新曲を演奏している間、彼は何度かリディアの姿を見つめた。


 彼女は、いつもと同じように真剣な眼差しで舞台を見ていた。


 けれど、曲が進むにつれて、その表情がわずかに変化していくのが分かった。


 驚き。


 戸惑い。


 そして、音の奥にある何かを探るような眼差し。


 気づかれただろうか。


 自分の中に生まれた、これまでとは違う感情に。


 アレクシスは、手元に置いた詩の写しを思い出した。


 リディアが自分に送ってくれた言葉。


 あの詩を読んだとき、彼女の心に少しだけ触れられたような気がした。


 そして、その気持ちに応えたいと思った。


 ただそれだけのはずだった。


 けれど、曲を作るうちに、音に込めるものが変わっていった。


 彼女の言葉を音にしたい。


 彼女に、この旋律を聴いてほしい。


 彼女が何を感じるのか、知りたい。


 そんな思いが、弓を動かすたびに胸の奥から溢れてきた。


 彼は小さく息を吐いた。


「……本当に、困ったものだ」


 今度は、先ほどよりも少しだけ苦笑が混じっていた。


 リディアは、自分の演奏を大切にしてくれている。


 それが嬉しい。


 彼女の心に届く音を奏でられたなら、もっと嬉しい。


 そして今、彼は彼女のことを、演奏会の客席にいる熱心なファンとしてだけではなく、一人の女性として考え始めている。


 その事実を、まだはっきりとは認められなかった。


 けれど、ひとつだけ確かなことがあった。


 次にリディアと会うとき、彼女がどんな顔で自分を見つめるのか。


 それが、今まで以上に気になって仕方がないのだった。

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