アプリ
ブルブルとスマホが鳴る。
今日は、桑さんと一緒の日だ。
桑さんは食事をとると、椅子に座ったまま寝る癖がある。
午後は殆ど寝て過ごす。
そんな桑さんと組むと吉日は大変だった。
全く起きないからだ。
私も最初は驚いたが、もう慣れた。
起きる事は無いのを、知っているから、スマホもいじり放題だった。
しかし、神職に見つかるとまずい。
特に宮司だけには絶対みつからない様にしなくてはならなかった。
私は、引き戸をチラリと見ると、人がくる気配は無い。
スマホを手に取り内容を確認する。
メッセージアプリの友達が追加されていた。
そこには、高水と書かれていた。
本人なのだろうか?
もう20年以上連絡は取っていない。
メッセージをみる。
愛らしいキャラクターのスタンプでただ一言、久しぶり。とだけ送られて来た。
まだ、お互い連絡先を残していたのか。
私は初恋の相手の連絡先を消せず、携帯からスマホに変える時ですら高水君の連絡先を入れていた。
それだけ、未練があるのか?
そう言われると、そうでもないのだが、今は大学卒業と共にお見合いで結婚した、平凡だけれど優秀な旦那と可愛い中学生の娘の3人で暮らしている。
働かなくても、十分な稼ぎをしてくる旦那になんの不満もなかった。
ただ、宮で働く事を両親が望んだ。
「滅多に付ける仕事じゃないのよ?」
そう言う母親に流された。
私はそれまで、仕事と言う物をした事が無かった。
優しい旦那は、
「結衣は家事と子育てをしてくれれば、何をしてても良いよ。友達とランチにいったり映画を観たり、好きに過ごして良いんだ。」
私が働きに出るそう言った時も、旦那は言った。
「それが結衣のしたい事なら、すれば良いし、嫌ならいつも通り子育てして、おいしいご飯を作ってくれれば、それで良いよ。」
旦那はどこまでも優しく、私の常に味方だった。
ただ、仕事以外の事は何も出来ず、家事は全く手に負えない人だった。
例えば、新婚時代つわりが重かった私に、炒飯を作ると言いキッチンに立ち、ただの無味の卵とご飯が炒まった物が出て来た。
「なんか結衣のと違う物が出来た。」
気まずそうに、焦げた調味料を全く使っていない炒飯を旦那は出して来た。
また、掃除はワイパーでシートを付けず一生懸命擦ったりして、みていて居た堪れなくなった。
そんな人が、今では会社の重役だと言うのだから、世の中わからない。
スマホの話に戻るが、さて、どうしたものか?
決して良い別れ方をした相手ではない。
しかし、わたしも紗和ちゃんに浮かされてたのだろう。
なんの気なしに。
「久しぶり」
と、メッセージを送信していた。




