無言
「いただきます」
基本それ以外は、無言で食事をする。
食べ終えた者はさっさと社務所へ行く。
「ごちそうさま」
皆がそう言い、流しに山の様に食器が積まれていく。
ゆっくり食べる者などいない。
社務所で仕事が詰まっているからだ。
おばさんの仕事のうちに食器の片付けも、当然含まれている。
紗和ちゃんと、食べる時間の方が長い。
片付けは2人でして良い事になっていたので、話をしながらゆっくり片付けが出来るのだ。
また、食事中にも御祈祷は来る。
すると、下っぱが行く決まりになっていて、1番若い佐々木君ばかり働かされる。
御祈祷が終わると、また戻って来て食事の続きを始める姿はいつ見ても可哀想だった。
冷めた食べかけのご飯をいつも、なんの文句も言わず食べる姿は、なんとも言えない気持ちにさせられた。
時間をずらして食べれば良いのに。
毎回同じ思いをしてしまうが、昔からの習わしには従うしかないのだ。
皆の食事が終わり、紗和ちゃんと2人で片付けをする。
1人は洗い物。
もう1人は拭きあげをして、食器棚に戻す。
片付けしている間は会話も出来た。
「今日も完食だね。」
紗和ちゃんに言われる。
「まぁ、カレーだからね。」
「結衣ちゃんはさぁ、なんか入れてよかったって思うんだ私。」
突然、紗和ちゃんに言われ驚く。
「なんで?」
「結衣ちゃんはさぁ。何というか安心する。私、鮎川さんが好きなの。付き合い初めで。でも、結衣ちゃんは取らないよね?」
取るも何も皆既婚者である。
「取らないし、止めない。」
私はそう答え続けて言う。
「私、散々友達の不倫見て来たけど、やめた人見た事ないもん。だから止めないし好きなのは仕方ない。後、鮎川さんはタイプじゃないから、安心して。私、色白な人が好きなの。」
鮎川さんは、外仕事が多く日焼けで真っ黒である。
「良かった、鮎川さんも結衣ちゃんみたいにぽっちゃりしてる子は苦手だって言うから。」
失礼な話である。
確かに結婚し、子供を産み体重は30kgは増え、可愛くもないが、私が太って安心だからと宮へ誘われたのだと思うと、不愉快な気持ちになった。
紗和は細身の美人だ。
前にいた、セクシーなおばさんの知り合いで、たまたまお参りに来た所を雇うと宮司が駄々を捏ねたらしい。
「今してる仕事を辞めて、私の所に来なさい。」
宮司はそう言い、帯の付いた札束を1つ紗和は渡されたのだと言う。
断る理由はなかったと。
「私黙っておくから。」
食器を洗いながら私は答えた。
「ありがとう!結衣ちゃんなら絶対理解してくれるって信じてたよ!」
嬉しそうに紗和ちゃんは言う。
食器の片付けも終わり、おばさんの部屋に漸く帰れる様になった。




