あゆちゃん。
次の日仕事に行くと鮎川さんと、紗和ちゃんの様子が明らかに違っていた。
朝礼で見つめ合い、おばさんの部屋に午前中から鮎川さんはやって来て言った。
「午後から紗和と出かけてくる。」
紗和ちゃんも嬉しそうに、
「わかった。」
と、笑顔で返す。
また行くのか、そんな思いが心をよぎる。
「御新鮮の買い出しだから、時間がかかる。」
鮎川さんはそんな言い訳をした。
山程あるだろうが!
心の中で、イラつきでも口には出せない。
「では、午後に。」
そう言うと出て行った。
「今日宮司、午後からいないんだぁ」
悪びれもせず紗和ちゃんは言った。
「て言うか、昨日大丈夫だったの?旦那さん。」
「あぁ、パチンコで勝ってたみたいで留守だったから、先に寝たふりした。」
紗和ちゃんは、けろっとしている。
ここの家は紗和ちゃんの収入と、旦那のパチンコだけで生計を立ててると言う。
どうやってそんなお金が?
紗和ちゃんとも、桑さんと同様に収入格差があるのだ。
嫌気がする。
その日のご飯当番は紗和ちゃんだった。
午前中、暇だったのでキッチンに行く物音が聞こえ、そっと覗きに行った。
すると、紗和ちゃんと鮎川さんは、2人でイチャイチャと、キッチンでくっつきながら話をしていた。
その様子は完全に新婚さんだった。
私はため息を吐くと、部屋に戻った。
スマホを眺める。
また、メッセージ来ないかな。
高水君の事を思う。
そう都合良く来ない。
お札場から呼ばれ御朱印を書き、また平凡な日々が来るのだと思う。
午後からは、また1人か。
仕事は、山の様にある。
遊んでる場合ではないのだ。
明日は休日で、巫女がバイトしに来る事になっていた。
明日は桑さんと一緒だ。
実質、今労働してるのは私だけじゃないか。
それも、仕方ない事なのかな?
権禰宜には逆らえないよね?
他の人も、おかしいって思わないのかな?
私は昨日、泣きながら帰って来た紗和ちゃんが、今日になって、まだ鮎川さんとイチャイチャしている意味がわからなかった。
普通嫌いになりそうなものだけれど。
人ってわからないな。
ぼちぼち来るお札場で接客をしながら、私は思った。
お昼になり、キッチンに行くと紗和ちゃんは、チャーハンしか作ってなかった。
すると、宮司が直ぐキッチンに来て怒鳴った。
「なんですか!このご飯は!私は外で食べますよ!」
そう言うと、チャーハンが盛られた皿を何故か私に突き返して来た。
私じゃないのに。
ふに落ちなかったが、仕方なく受け取る。
「あー、怒っちゃったか。」
紗和ちゃんは、もぐもぐとチャーハンを食べながら言った。
「まぁ、さっさといなくなってくれて助かる。洗い物頼んで良い?私も早くあゆちゃんと出かけてたい。」
勝手な事を言うと、食べ終わった食器を流しに置き、
「じゃ、行ってくるね。」
と、出て行ってしまった。
残された私は、黙々と洗い物してると、背後から佐々木君が言った。
「あんまり、干渉しない方が身の為です。丸聞こえですよ。」
そう良い残し去って行った。




