束縛
帰って来た紗和ちゃんは、明らかに様子がおかしかった。
おばさんの部屋で仕事をしてると、
「結衣ちゃん、ごめんね。ただいま。」
と言い、おばあちゃんの様に腰が曲がっていた。
「どうしたの?」
私は聞いた。
「鮎川さんに、旦那に見つからない2人になれる場所に行きたいって言ったら、ホテルに直行された。」
机に突っ伏して、涙声である。
「あぁ、それ誘われたと思ったのかもね。」
私は答える。
ふと腕を見ると、赤く紐で縛られた跡があった。
「どうしたのそれ?!」
「縛られた。どうしよう。旦那に見つかったら殺される。」
泣きじゃくる紗和ちゃんに
「ちょっと待ってて。」
と言い、キッチンでお湯を出しぬるま湯を作りタオルを浸す。
おばさんの部屋に桶を持って行き、紗和ちゃんの腕にしほばった暖かいタオルをあてる。
「これでどうにかなれば良いけど。手だけ?後は大丈夫?」
「足も」
そう言うと、スカートを捲り上げると膝から足首にかけ、赤い紐の跡がある。
どんなセックスして来たんだよ!
私は怒りが込み上げて来た。
「結衣ちゃんの言う通りにしとけば良かった。」
した事を後悔している様子だ。
「ずっと、やめてって言っても聞いてくれないし、痛いだけだった。」
私は頷きながら紗和ちゃんの話を聞いた。
「でも、まだ好き。」
意味がわからない。
こんなひどい事をされているのに、まだ好きだと言う。
紐の跡は薄くはなったが完全には消えない。
時間も遅くなり、そろそろ帰らなければ余計に怪しまれてしまう。
「紗和ちゃん、今日はお弁当でも買って、体調悪そうにして寝ちゃいな。流石にこれは1日じゃ消えないよ。」
私がそう言うと、紗和ちゃんは黙って頷いた。
しばらく沈黙があった後、紗和ちゃんは言った。
「私、宮司の愛人になれとも言われてる。男の人はセックスばかり考えてるんだね。お金積まれて雇われたけど、宮司は立場があるから、遠回しにしか言わないから、鮎川さんは油断してた。」
私は頷きながら、紗和ちゃんの足を暖める。
「でも、好きなんだ。何でだろう。こんなにされてるのに。」
私は
「わからない。けど、良くない事だと思うよ。」
と、だけ伝え
「さぁ、もう時間だから帰ろう。」
と、キッチンに向かい。タオルを洗濯物に出し湯を捨てた。
「結衣ちゃんは、いつでも優しいね。」
紗和ちゃんは、そう言った。
だが、私の腹の中では怒りが収まらなかった。
あれだけ忙しい思いを私達がしているなか、2人は緊縛プレーを1日中して遊んでいたのだから。
「お先に失礼します。」
社務所に声を掛けて帰る。
今日1日のバタバタで残業が残っているのだ。
森君は剥れながら、
「お疲れ様でした」
と返す。
佐々木君は、私達の存在にも気付かず仕事に没頭していた。
鮎川さんだけにっこりと笑うと
「また明日。」
と、紗和ちゃんに告げた。
その異様な様子に、私は直ぐに帰りたくなった。
「お疲れ様」
紗和ちゃんは言った。
人の気も知らずに。
紗和ちゃんは車に乗り込むと、さっさと帰って行った。




