63.戦後処理
戦後処理
全てのフランス軍兵士が、戦意を完全に失い、鎧と手枷を付けて動けるようになるまでに更に一日半の時間が必要だった。
『えにし』鋼の束縛から、戦意を捨て、憎悪する事も諦めた者から、順に解放されていく。
最後まで、諦めの悪かったのはラヴニュ大佐だった。
一日目は口で、散々にオーストリア軍とプロイセン軍を罵り続け、二日目は味方の兵士に悪態をつき、終には、自軍の将軍を 能無しと罵り、ようやく喉の渇きと空腹に負け、大人しくなった。
捕虜となった内、領主の命令で徴兵された農民兵達は、いち早く戦意を失うか、端から戦意など持っていなかった。
その処遇は、解放され故郷へ送還されるか、オーストリアまたはプロイセンに、亡命しても良いとの選択肢が与えられた。
その結果、無理やり兵に取られ、故郷にも帰る場所がなくなった農民の多くが、亡命を希望した。
貴族の従者達も同様の処分を言い渡された。
貴族身分の処遇は、その貴族の領地が詳しく調べられ、身代金と引き換えに開放する旨の手紙が発送さた。
高額の身代金は、オーストリアとプロイセンで折半された。
これと並行して行われた交渉は、フランスからの賠償に関するものだった。
フランスの代表は、あくまで、プロイセンがオーストリアに侵攻した事に応じ、援軍を送ったとのだ、言い張り続けていた。
しかし、アントワーヌ将軍の所持品から、国王直筆のプラハ侵攻を指示した書簡が見つかった事で覆された。
その後の交渉の結果、ロレーヌ領を神聖ローマ皇帝フランツ公へ譲渡する事で決着が着いた。
「いやー、ロレーヌ領は、今回の稼ぎで買い戻そうと思っていたんだが、ただで取り戻せたよ。
これも、フリードリヒ王が口添えをしてくれたお陰だね。心から感謝する。」
「なんの。フランツ皇帝陛下の口添えで、ドイツ領内の領主共が、私に恭順を誓ってくれました。
お陰を持ちまして、ドイツを一つの国としてまとめることが出来ます。
こちらこそ、深く感謝しております。」
「これで、これからの戦争の形は大きく変化するだろう。
エウロパの国々が、いや、世界中の国が、人の命を懸けて争う事が、二度と起こらないことを願おう。」
「誠に、そう思います。
ああ、そう言えば、イギリスの国王より、今回の同盟にイギリスも加盟したいとの申し出がありました。」
「おや、イギリスもか?」
「と、申されますと…。」
「うん。私宛にも、スペインとネーデルランドから同じ様な手紙が来ていたね。」
「まるで、フランス包囲網ですな。」
「まあ、しばらくはフランスも大人しくなるだろうね。いや、そうである事を願うよ。」




