第28話(2)
セリー
〔こちらふれあいホール〕
〔プリンセスコーデ会場の横で開催中のハンドメイドマルシェですが〕
〔特に言ってなかったけど、今年も服屋の志桜里ちゃんに委託販売してもらってまして、お陰様で盛況でございます〕
ーセリーが写真を送信しましたー
あまねん
〔SNSではこんなの出ますよ~って前以て紹介してくれてたけど、全部かわいくって、今見たらほとんど売り切れてました~!〕
セリー
〔今回、春にちなんで結構色々用意したんだけど〕
〔親子でつけてもらいたくて、お揃いをメインに作ってみました〕
〔好評で何より〕
潮
〔おいおい 出店するだなんて全く聞いてない件について〕
〔わいの分はちゃんと有るんでしょうな?〕
蛍
〔SNSちゃんと見ろ定期〕
〔セリーのSNSは全投稿1分以内にいいねしてる民が通りまーす〕
おその
〔ちなみに期間限定で投稿されてた萌ちゃんとセリーのかわいい商品見本2ショット、期間限定にも関わらず異例の10000いいね超えだったんやで〕
〔1日限定で公開されて、翌日には見れなくなってたけど、セリーファンはみんな保存して見返してずっと幸せな気分になってました〕
〔潮、貴様の知らないところでな!!〕
潮
〔あ…?なんだこいつら…SNS見てないってだけでクソみたいなマウント取ってきやがって〇すぞ…〕
〔こちとら中学生の頃からリアタイで関わり続けてる古参勢だぞ…デカい口叩くんじゃねぇぞ新規がよぉ…〕
おその
〔おっ 口悪の民さんチッスチッス〕
〔古参マウントかっけーすマジでウッスウッス〕
蛍
〔厄介ヲタクさん、マウントされてブチギレる〕
おその
〔はぁ、全く…虚勢を張り続けるのは得策ではありませんよ?〕
〔ほしいなら懇願してみな〕
潮
〔お願いします写真ください…〕
蛍
〔情緒不安定で草〕
かのあるふぁ
〔と、いうわけでぇ!!そんなみんな大好き大人気セリーの作品!!!〕
〔ギリ残ってたお星さまのお揃いブレスレット!色違い4人分(萌りんとあまねんとセリーとかのあの♡)確保してつけてみたにょーーーーーーん!!!!〕
ーかのあるふぁが写真を送信しましたー
潮
〔溜飲も下がってない内からブッこんできやがってこいつ〕
〔何でお前がそのメンツでお揃いの内の一人に入ってるんですかねぇ?〕
かのあるふぁ
〔あっごむ゛え゛ぇぇぇぇぇぇぇん!!!このブレスレット、4人用なんだよぬぇぇぇぇ!!!〕
おその
〔こいつ煽りの権化かよ〕
潮
〔じゃぁちょっくら合流してブレスレットもぎ取ってきます、か…〕
蛍
〔いや待て 分かった、こうしよう〕
〔そんなことしてもまた取り返されるだけ〕
〔だったらこっちはこっちでお揃いのもん買って見せつけてやろうぜ〕
おその
〔おお?面白い提案じゃないか ええやん〕
〔で、何のお揃いにする?〕
蛍
〔かのあ達がブレスレットでしょ?〕
〔じゃぁ…潮と私とおそので、お揃いのピカピカ光るカチューシャ買うのどう?〕
〔さっき屋台で売ってんの見たわ〕
潮
〔提案は良いのにチョイスがゴミィ!〕
〔近場の屋台で済まそうとしてて草〕
おその
〔何でカチューシャやねん〕
〔1人でどうぞ〕
蛍
〔まぁ待て待て 用途を考えてみよう〕
〔あ 運動不足解消の為に夜道を安全にジョギングする用はどう?〕
〔尚、ピカピカ光るのはカチューシャについてるクソデカリボンモチーフだけの模様〕
潮
〔暗がりで迫ってくる3つのリボンまぁまぁ怖くて草〕
おその
〔今世紀最大にいらなくて泣ける件について〕
セリー
〔あ そういえば、ハンドメイドコーナーでさっき、3つ合わせてくっつけられるクマさんのお揃いキーホルダー売ってあるの見つけたよ〕
〔買っとこうか?〕
蛍
〔おお!ええやないですかぁ!〕
〔ほなそれで〕
潮
〔ぴゃー あまりにも即決で草 躊躇ってものがないんか貴様には〕
〔そういうのはもっとこう、ガッツリなかよち!ズッ友だお!って感じのお友達同士でやるんじゃないの?〕
〔実はお揃いのクマのキーホルダー持ってるんですぅっていう感じのあれでもないでしょ我々〕
おその
〔ぇ?そんなこと言ったってさぁ〕
〔もう、一緒に住んじゃってるジャン…あたちたち…〕
蛍
〔ド、ド正論パンチキターーーー〕
かのあるふぁ
〔そうじゃん!24時間共にしてる日だってザラにあるじゃん!!これってもうガッツリなかよちジャン!〕
〔躊躇なんていらなかったんや!!!(迫真)〕
潮
〔確かに…よく考えたら既にズッ友なんて飛び越えて最早運命共同体だったわ〕
〔じゃぁあの、それでいいですはい〕
蛍
〔よろしくっす ウッス〕
〔私とおそのと潮でお揃いのもの持つんだ…って思ったら面白くてさっきから笑ってるわ〕
おその
〔何ワロてんねん定期〕
〔お前が始めた物語だろうが〕
セリー
〔幸いまだ残ってたから買っときました 面白いから絶対つけてね〕
〔あとで渡しまーす〕
おその
〔サンキューね ワイのはバンビさんに預けといてもらえたら〕
セリー
〔了解〕
蛍
〔あれ てかずっとメッセしてるけどおそのの方は大丈夫なん?〕
〔忙しくないんか?〕
おその
〔今はねー ご心配どうもどうも〕
〔これからキッチンカー出店でシールラリー始まるんで、景品交換台でスタンバイ中の民ですわ〕
〔もう少ししたら連絡取れなくなるんで、もし用事あったら景品交換のとこまで来てくれたらいますー〕
潮
〔大変やなぁ〕
〔じゃ、わいらもシールラリー張り切ってやっちゃいますか〕
〔えーと? ほーん、8枚が最大ね 余裕ですわ〕
おその
〔キッチンカーは全部で15店舗でてますん〕
〔8店舗回るってなったら結構な金額になっちゃうから、6枚にするか悩んだんだけどねー〕
〔ま、いっぱい美味しいものあるんでね ちまちま買うでも色々楽しんでもろて〕
潮
〔おけ 最後まで無理するなよー〕
蛍
〔水分ちゃんと取りなよぉ〕
おその
〔うぃ―〕
潮
〔ほな我々もそろそろ動きます、か〕
蛍
〔ちなみに大広場人が多すぎて怖いから今道の端で丸まってます我々〕
あまねん
〔えっええぇ…?!今の今まで…?!〕
潮
〔そう〕
〔蛍が「動けないぃぃ」とか言って隅で丸まってるもんだから、暇でずっとスマホいじってたわ〕
〔メッセなかったらこいつとかのあ置いて1人で帰宅するとこだった〕
かのあるふぁ
〔何か勝手にとばっちり喰らってて草ァ!〕
〔ちょっとぉ!かのあまで置いてかれちゃうところだったじゃんか!?〕
蛍
〔だってぇ 人混み怖いンゴォ〕
〔セリーと一緒だったら何故か人々が避けて道を譲ってくれるはずなんだけど、我々だと肩ぶつかりまくって気が付いたら道の端に…〕
潮
〔いやそれお前だけな?〕
〔マジで気付いたら隣にいなくて、振り返ったらあうあう言いながら道の端まで運ばれてんだけどこの人〕
かのあるふぁ
〔めっちゃ想像できて悲しい…!!〕
〔セリーたちはさ、何か触ってはいけないような神々しさで人々が自ずと避けていくじゃん?〕
〔で、潮はあの不気味な無表情さで前から来た人が勝手に避けてくんだけど〕
〔蛍ってびしばし人とぶつかってるよね何か!!何で???〕
蛍
〔いやワイが聞きたい定期〕
〔舐められがちで泣ける〕
潮
〔おい 誰が不気味だコラ〕
セリー
〔私は蛍の歩幅に合わせようと思って歩くけど〕
〔潮は人混みだと特に気にせずズカズカ進んで行くからね…〕
潮
〔堂々と進まないとこっちの進みたい方向が相手に伝わらないから逆に迷惑でしょうに〕
〔あ、どうしようどうしよう 前から来ちゃったどうしよう あう〕
〔って面して歩いてるから相手も「ん?この子はどっちに避けたいんだ?どっち行けば…あう」ってなっちゃうんでしょうが〕
〔オイコラ絶対ぶつかってくんじゃねぇぞワレェ って面して歩け?じゃないとお互いに進めないだろうがよ〕
セリー
〔血の気多すぎない?〕
〔そんな顔しなくても避けてくださるよ皆さん〕
おその
〔潮は圧で避けさせてるけど〕
〔セリーさんはその神々しさで「どうぞお通りください」と皆自ら道を譲らざるを得なくなってます〕
かのあるふぁ
〔え?!待って!!そういえばかのあも、圧かけてないのに勝手に皆が離れてくよ!?神々しいってコト?!〕
蛍
〔いや〕
〔まず声がでかいから関わりたくないし、2歳児並みかそれ以上に行動予測できなくていつぶつかってくるか分からないから距離空けちゃうよね〕
潮
〔あと手に持ってる物とか自分で把握できてないんだろうなって感じで、鞄とか傘とかアホみたいに振り回してるから近付きたくないよね〕
セリー
〔あと、ワンピースとか着てる時にどんな人混みでも無駄にくるって回って遊んでるから当たっちゃうんだよね〕
かのあるふぁ
〔そうならないように手を繋いであげてることが結構あるんだけど、かのあったら走りたくなって手離しちゃってぶつかっちゃうんだよね~〕
蛍
〔おかしいなぁ、萌りんはそんなことしないはずなのに おかしいなぁ〕
かのあるふぁ
〔オッ!オーバーキルすぎでしょ何この流れ?!1聞いたら100で返ってきたんだけど!!〕
セリー
〔4人行動始めてからのこの短時間で、既に何回「かのあ、邪魔になってるから避けて」「かのあ、鞄気を付けて」「かのあ」って呼びかけたことか〕
あまねん
〔たまに萌ちゃんがかのあの保護者してくれてる時もあるもんね…〕
蛍
〔おお 気付いてしまいましたか〕
〔普段皆で出かける時は、潮がかのあの手綱を握って行動を制御していたということに〕
あまねん
〔わ~!たしかに!4人行動始めてから、あれ?かのあと出かけるのってこんなに大変だったっけ?って思ってたけど!〕
〔今までは潮がいてくれたからかのあに注意してあげる必要がなかったのか~!〕
潮
〔出かけた時のかのあは、言うこと聞かない散歩中の犬だと思ってるから〕
〔勝手なことしようとしたらリードグンッって引っ張るしかないんだよね〕
〔人来たら首根っこ掴んで道の脇に寄せなきゃだし、鞄振り回してたら「こら、鞄」、走りだそうとしたら「待て」〕
〔それでも待てずに走り出したら、捕まえて落ち着くまでホールド これよ〕
セリー
〔普段から大変そうだなぁとは思ってたけど、潮なしでかのあとお出かけ予想以上に大変だった〕
〔リードなくてグンッってできないから、絶対追いかけなきゃいけないの草〕
〔マジでやりたくないから走りだすのだけやめてね?頼むよ?〕
おその
〔あの、20超えの成人女性にするお願いじゃないかもです〕
かのあるふぁ
〔そういえばさっきふれあいホールに到着する直前、あれ何だ?!ってきょろきょろしてたら道行く人とぶつかっちゃったんだよね…!〕
〔どうしよう!やっぱリード…!かのあにはリードの代わりになるものが必要なのカナ?!〕
あまねん
〔待って…!〕
〔私、この先ちゃんとかのあを止められるかな…?!心配になってきちゃった、潮~!戻ってきて~!〕
蛍
〔ガチで困惑させてて草なんよ〕
〔かのあちゃん本当に…君本当にさぁ…〕
潮
〔お子さんにリードつけて出かけるっていうのが倫理的に問題なのは分かる〕
〔でも20歳超えのかのあちゃんにリードつけるのはどうなんかな?倫理的にどう?〕
蛍
〔全然アリ〕
かのあるふぁ
〔ちょっと待ってアリなの?!?!かのあの意見が無視されてるのは倫理的にどうなの?!?!〕
潮
〔じゃぁ言うこと聞かんかいワレェ〕
〔そもそもなんで意思疎通できるはずなのにリードの必要性を協議しなきゃいけないんですかねぇ?〕
かのあるふぁ
〔ほげえええええええぐぅの音も出ないっぽーーーーーーー!!!!!〕
〔あうあうあー!君たちにはこの命尽きるまで恩を返し続けますん…ぐすん…〕
〔そういえばさっきもホールの中に超かわいいドレスみつけちゃって、あれ萌りんに似合いそー!!って勢いよく前のめりになってたらぶつかっちゃったんだった…はうぅ…〕
セリー
〔人が多いから、ちょっとぶつかるくらいはお互いに仕方がないと思うけど〕
〔かのあ起点でぶつかってるなら改善しようね〕
〔うちらが気を付けられるところは気を付けてみるから〕
潮
〔あぁ ちなみに普段走りだす時も「あ!あれ何ー?!」とか言って突然走り出すから気をつけて〕
〔ワイは「あ!」の段階で大概既に首根っこ掴んでる〕
セリー
〔いや、熟練の技すぎて無理なんだけど〕
〔「あ!」って聞こえて「ヤバい」って振り返った時にはもう走り去ってそう〕
〔かのあごめん、やっぱ無理かも〕
かのあるふぁ
〔え゛え゛えぇあまりにも判断が早くない?!〕
あまねん
〔セリーは萌ちゃん見なきゃだし、てことはかのあのお世話は今、私にかかってるってことだよね…?!〕
〔よし、がんばる…がんばるよ、私…!〕
〔さっきハンドメイドで調節可能なネックストラップっぽいやつ見つけたから、一応自分の鞄とかのあの鞄くくっとく!〕
潮
〔あぁ、やめた方がいいよ〕
〔すごい勢いで走り出すから、鞄につけたらこっちがバランス崩して怪我するんで〕
〔つけるなら、かのあの鞄と自分の手首くらいがいいと思う〕
〔ちなみに 急に引っ張られて皮膚擦れた時に痛くて〇ぬほどムカつくから、今つけてる日焼けのアームカバーの上からつけるのがおすすめっすね〕
セリー
〔もう既に試してて草〕
蛍
〔経験済みのやつの言葉厚みすごくて草〕
あまねん
〔勉強になるよ潮~!!〕
かのあるふぁ
〔びええええんみんなごめぇぇぇぇん!!!〕
潮
〔じゃ、そっちはそっちでかのあのお世話頑張ってもろて〕
〔こっちもさすがにこのまま時間潰すのは意味分かんないんで、大広場ちらっと見てくるわ〕
〔またお昼ごはんの時にでも合流しますか〕
セリー
〔了解〕
〔ハンドメイドもう少し見たらキッチンカーの通りに行くね〕
蛍
〔潮頼む、わいにもリードつけてくれェ…〕
潮
〔仕方ないな じゃ、かのあと人混み行く時につけてたカラビナフックでもつけてやりますか〕
〔あ、そういえば〕
〔忘れた時の為に、かのあの鞄に1個同じやつぶち込んでたんだったわ〕
〔あまねんそれ使っていいよ〕
かのあるふぁ
〔何じゃそれーーーーーーー!!!と思ったらホントにあった!!いつのまに!!〕
〔鞄ぐちゃぐちゃすぎて全然気づいてなかった!〕
あまねん
〔潮ほんとにありがと~!カラビナにリストストラップつけてある!すごい!〕
〔カラビナをかのあの鞄につけて、リストストラップを自分の手首につけました!潮感謝~!〕
潮
〔おう 我々も今つけたわ〕
蛍
〔やばい 繋げられただけなのに、一瞬で潮に一生ついていかなきゃいけないような気分にさせられたわ〕
〔圧倒的服従感〕
セリー
〔友達5人の内2人がカラビナで制御されてんのちょっと複雑な気持ちになるんだけど…〕
蛍
〔セリー、安心してくれ わいは制御されてるんやない。これは、牽引や…〕
セリー
〔そっか…〕
潮
〔ほんじゃま、お互いに安全にお祭り楽しみましょうってことで〕
〔またあとで〕
あまねん
〔はーい!またあとで~!〕
「おお、何か珍しい2人だね」
ーーー心地よいBGMが流れる、春祭り会場にて。
ようやく通りを抜けて大広場に到着した潮と蛍は、『はたらくくるま』のイベントを楽しんでいた春一たちを見つけた。
嬉しそうに列に並ぶ綾瀬と織寿に「久しぶりー」と声を掛けた後、春一と向き直って一応2人で行動している理由を説明をする。
「こんにちは春さん、お久しぶりです。チーム分けしたらこうなって。おいおい人数均等にしようぜって提案はしたんですけどね?」
「面白そうだから2人で行って来なよって言われて、こうなりました」
「あはは、先生コンビいいじゃんか。久しぶりに会っても登場が相変わらず仲良しで嬉しいよ。せっかくだから写真撮らせて」
「いやいや、やめてくださいよ春さん、我々そんな感じじゃないんで」
「ははは…え?」
潮が両手を挙げて言った、その手首にリストストラップがかけられ、その先が蛍の鞄とカラビナで繋がっているのを発見した春一の動きが止まる。
異様な状況を二度見して、春一は思わず聞いた。
「え…?ちょっと待って、何で2人カラビナで繋がってるの?どういう状況?」
「あぁ、迷子防止っすね。でも我々全然そういう感じじゃないんで」
「いや全然そんな感じに見えるけどね…?」
「いやいややめてくださいよ」
「君ら見てると面白くて飽きないよ本当」
言いながら、カラビナで繋がった2人を良い感じにツーショットでぱしゃり。
別段恥ずかしがるでもなくピースで撮影を受け入れた2人は、全く気にしていない様子で大広場の会場を見渡した。
「で、めちゃくちゃ賑わってますけど。どんなことしてんすか?」
「えっとね、さっきショベルカーとダンプカーとパトカー乗せてもらったから。今は白バイの試乗待ちだね。この次が消防車」
「俺ね、俺ね!今日絶対白バイ乗りたかったんだー!」
「うおー、いいね。綾瀬くんの白バイ超サマになりそう」
「ぼくはね、消防車乗りたいんだ!」
「お。ぴっかぴかの新1年生の織寿くんは消防車か。赤が似合うよね織くん」
「ご入学おめでとう。学校はどう?」
「ありがとう!えっとね!宿題は大変だけどね、お友達が増えてうれしい!」
「そっかそっか。何よりですな」
「あのね、あのね!かっこいい赤のグローブと、バットとボール、プレゼントしてくれてありがとう!」
「改めてになるけど、お祝い本当にありがとね。お陰様でどんどん上手くなってるよ」
「いいえいいえ、どういたしまして。お祝いできて嬉しいっす」
「すくすく育ってて、勝手に感慨深いです本当に」
「成長を見届けてくれる素敵なお姉さんたちがいっぱいいて、この子たちは幸せだよ」
そんな話をしている間に順番が来て、嬉しそうに白バイにのる綾瀬。
その姿を「こっち向いてー」とばっちり写真に収め、かっこいいぴかぴかのシールをもらったら。
続いては消防車の順番待ち。
商店街スタッフのてきぱきとした誘導で、列は滞りなくすんなりと動いていった。
「そういえば、今日はママと媛夏ちゃんはおうち?」
「うん!おうちでお留守番してる!」
「早いもんで今9か月くらいですよね?マジ会う度に美少女すぎてえぐすぎますよひめたそ。今日はお留守番かぁ。会いたかったなぁ」
「本当は一緒に来たかったんだけど…最近始めた伝い歩きの速度が早すぎて。人混みに行くと特にテンション上がってすごい勢いで壁際歩いて行っちゃうからさ、危なくて連れて来られなかったんだよね」
「おおぉ…?!」
「体力がえぐすぎてベビーカー乗ってくれないし、抱っこもおんぶもさせてくれなくてね…出かけ先は特に親の体力勝負になっちゃってる」
「あれ?もしかして春さんの身体能力を一番受け継いでるのが媛ちゃんの可能性有る?」
「マジで有り得るかもしれなくて夫婦でちょっと震えてる」
あっという間に消防車に乗る順番が回ってきて、綾瀬と織寿が消防士の服を着させてもらうのを見守る。
2人並んで消防士の格好になった姿に、潮達だけでなく周囲からも「お~」と声が上がった。
「待って…!あまりにも顔が良すぎる…!」
「言い方やめんか」
「いや映えがえぐいでしょこれは!三鼓キッズ恐るべし…」
「ごめん、2人の写真撮った後でいいから、俺も一緒に撮ってくれる?」
「もちろんでしょう!任せてくださいよぉ!」
カラビナを鞄につけたまま、専属カメラマンかというほど何度もシャッターを切る蛍。
それから消防車の前でもしっかりポーズを撮って写真を撮り終えると、消防士の服をきちんとお返しして、2人は「ありがとうございました!」としっかり御礼を言った。
「素晴らしいですな」
「みんな三鼓家に夢中すぎて、私がカラビナで牽引されてるってことに誰一人気が付いてなかったもんね」
「えぇ…それ牽引の扱いだったんだ?」
「そういうことにしといてやってください」
「めちゃくちゃたのしかったー!」
「消防車かっこよかった!」
「良かった良かった。まだ乗る?」
「ううん!楽しかったから大丈夫!お腹すいてきたし!」
「じゃぁそろそろキッチンカーのとこ行くか。シールラリーやってるんだよね?」
「ですです」
楽しいイベントだったと大広場から出て、隅の方に集まって早速商店街のチラシを開いて眺める。
どれにしようかなーとキッチンカーのメニューを選んでいた春一を見て、潮は提案してみることにした。
「ーー春さん、パニーニとか好きですか?友達のバンビが今回キッチンカー出してるらしいんですけど。一緒行きません?」
「え?あぁ、まさかあの、俺のブロマイドみたいなの作って渡したって人?」
「そうっす」
「うわー…迷う。芹が良く言ってるけど、その人のイタリアンめちゃくちゃ美味いんでしょ?パニーニ食べてぇ…!でも行ったら逆に俺が取って食われたりしないかな?大丈夫?」
「まぁ約束はできませんが、なるべく近づけさせないようにはするつもりではいるんで」
「パニーニってなに?食べ物?俺も食べたい!」
「蛍お姉ちゃんはね、ローストビーフにしたよ。潮お姉ちゃんはアボカドシュリンプ」
「うおー、いいなぁ。美味そうだな。よし、パニーニにするか」
「パニーニってやつ、ぼく、ママと一緒に食べたことある!トマトが入ってるやつが好き!」
「そしたらメニュー見て決めてもらおう」
農家カフェのキッチンカーメニュー表には、スモークサーモン、ローストビーフ、アボカドシュリンプ、ベーコンチーズの4種類で展開されていた。
春一と蛍はローストビーフ、綾瀬と織寿はベーコンチーズ、潮はアボカドシュリンプ。それから詩津へのお土産にスモークサーモンを選んだ後、一行は早速農家カフェのキッチンカーを目指して進み始めた。
「農家カフェかぁ…素敵じゃん。うちの虎哲も仲間に入れてやってくんないかな。一人で全部やってて寂しそうなんだよなアイツ」
「お、良いっすね。人手が要りそうかどうか聞いてみます?今回農家カフェを経営する運びになったのが栄さんって人で、あまねんの彼氏さんなんですよね。めっちゃ良い人ですよ」
「ええええ?!周ちゃん彼氏さんできたの?!おめでとう…!うわーなんか…本来妹の友達っていうカテゴリなのに、はなやぎ館って場所がもう妹の家族みたいなカテゴリになっちゃってて。不思議と我が事のように喜んじゃったよ」
「何かちょっと分かります。あまねんは友達のはずなんですけど、私も栄さんに大事な家族預けたみたいな気分ですもん」
「そうなっちゃうよなぁ」
しかし、そっかそっかー彼氏かーと嬉しそうな春一に、「カレシってなにー?」と聞く織寿。
微笑ましい光景を見つめながら、潮達は虎哲が栄とバンビと一緒に農家カフェで過ごす様子を想像してみた。
「うわ、何だろう。虎哲さんと栄さんとバンビさんの相性めっちゃ良さそうかも」
「分かる。バランス良さそうだよね」
「お米のメニュー考えてるなら喜んで提供するだろうし、とうもろこしもサラダに使えそうだし、虎哲が手伝えることは色々有りそうだけどな。前向きに検討してもらいたいね」
「尚、此処まで一切虎哲さんの意思を聞いていない模様」
「それが一番ウケるんよな」
「いやいや、虎哲なんて楽しいこと大好きマンなんだから。農家カフェやるらしいよーって言ったら絶対やりたい!って言い出すに決まってるって。聞かなくても分かるけど、一応聞いてみようか?」
そう言ってメッセで農家カフェの話を送信した瞬間、爆速で通知が鳴る。
笑いながら見せてくれたスマホの画面には、「絶対やりたい!」と前のめりな返答が書いてあった。
「ほーん。虎哲さんのことなら何でもお見通しってわけです、か…」
「なんかずっと言い方やめとけ?お前」
「お見通しっていうかまぁ、虎哲が分かりやすすぎるっていうか。てなわけで、聞くだけ聞いてみよう。面白そうな話教えてくれてありがとね」
「いえいえ。巡り合わせって大事ですから」
ーーー話している内に農家カフェのキッチンカーに辿り着いた。
忙しそうにしているバンビを遠目から見つめていると、ふと目が合う。
手を振る潮を横目に、バンビの視線は一瞬で春一へと釘付けになった。
バンビの動きが面白いようにぴたりと止まり、並んでいたお客も接客をしていた栄も何事かと困惑する。
「あ…やばいあいつ。春さん見て思考停止してる。ちょっと行ってきます」
「バンビさん、本当に春さんのこと好きなんだなぁ…」
「えーと、何か分からないけど、有難いってことでいいのかな?」
潮がキッチンカーの横から乗り込み、完全に固まっているバンビのお尻を何度も叩き上げる。
しかしびくともしない。
「おい!おいバンビ!すみませんっす栄さん」
「潮ちゃん久しぶり!来てくれてありがとう!この状況どういうこと?!」
再会の言葉も程々に、キッチンカーの中で状況に戸惑いながら笑う栄。
バンビの意識を戻す為に何度か頬をぱしぱししていると、突然バンビがはっとして我に返った。
「あえっ…?!あたし…もしかして夢の中にいたの…?!」
「うお、動いた」
「ちょっとやだ潮じゃない!!ねぇ今、王子様があっちからあたしを見つめてたのよ?!夢かしら?!」
「現実です。春さん連れてきてやったから、止まってないでかっこいいとこ見せつけてやれ。そして早くお客さんにパニーニを提供しろ」
「ええっ?!夢じゃないの!?ほんもの!?あそこにいるのは本物の王子様…!?てことは本物の王子様があたしを見てるの…?!あたしのパニーニ作りを見に来てくれたの…?!」
「お前がこの列を全部爆速でさばいたら、パニーニ買ってくれるってさ。王子様はうめぇローストビーフをご所望です」
潮とバンビが揃って視線を送ってくるのを感じて、ひらひらと手を振ってみせた春一。
状況を理解したバンビがその瞬間覚醒して、荒々しく作業を再開し始めた。
突如として爆速でさばかれていく列。
わけも分からないまま振り回されたお客さんたちだったが、パニーニを一口食べた瞬間、感じていた困惑など一瞬でどうでもよくなった。
美味しさににこにこと笑みを浮かべるお客さんたちの波をかきわけながら小走りで戻って来た潮に、春一は恐る恐る聞く。
「あの、何を言ってきたの…?」
「いやいや何も。春さんがうめぇローストビーフを所望してるって伝えてきただけっすよ」
「こんな風に人を動かす力が俺にあったなんてびっくりだよ」
「まぁ言うても結構並んでたんで、もうちょっと待ってもらって良いすか」
「全然大丈夫。しかし集客すごいなぁ」
「お、こんなんしてる間に芹たちも来ましたよ」
「ほんとだ。おーい、セリー!」
「やっほーーーー!!!きたよーーーーー!!!」
後ろから芹たちが合流する。
軽く挨拶を交わした後、そのまま一緒に列に並ぶことに。
「兄さん。大広場の方はどうだった?」
「おお。はたらく車のイベントなんて単体でも成立する企画なのに、上手く盛り込んでてすごかったよ。イベント目当てに行ってもお祭りでご飯食べて帰ろうって思うもんな。しかも商店街スタッフの人がめちゃくちゃ優秀で、列すらすら案内しててすんなり楽しめて良かった」
「めっちゃたのしかったー!」
「白バイ超かっこよかったよ!!」
「そっかそっか、2人とも楽しそうで何よりだよ」
「萌も、お姫様コーデ楽しかったか?」
「うん!たくさんお写真も撮ってもらったんだー!」
「母さんも見たいだろうから、あとで送っといて」
嬉しそうな萌と話している間にも、列は爆速で進んで行く。
会計をしている栄の顔が見えてきた頃、春一は満を持したように話題を持ち出した。
「そうだ。周ちゃん聞いたよ…彼氏できたんだって?多分、今あそこで会計してる人だよね?いやー、おめでたいなぁ」
「兄さん、聞き方おじさんすぎる」
「なんだよー。勝手に親戚のおじさんの気分なんだから、これくらい言わせてくれよー」
「えへへ!実はそうなんです~!農家カフェ始めるってことで、私もお手伝いする予定で!」
「あ。そうだ、その農家カフェなんだけど…虎哲とかってお手伝いに混ざったら邪魔かな?お米のメニューとか考えてる?」
「え!!すごい、丁度お米のメニュー考えてて!虎哲さんがお手伝いしてくださるって聞いたら、栄さんきっと喜びます!お話してみますね!」
「良かった良かった。よろしく伝えてもらえたら」
そこからも栄とのエピソードを聞きまくる春一の隣で、芹は潮と蛍にキーホルダーを差し出した。
「はい、潮と蛍。くまさんキーホルダー」
「うおおおかわいいけどガチでお揃いのクマさんでちょっと恥ずかしいカモ」
「え?お揃いのクマさんキーホルダー?ーーーあれ、さっき2人カラビナで繋がってたよね…?まさか…?」
「あ、名探偵やめてくださいね?」
「おい、誤解されるからやめんか貴様」
「ちなみにかのあと周も繋がってるよ」
芹が指差した先で、かのあと周が繋がったカラビナを春一に見せつける。
「仲良しなんだねぇ」と微笑ましく言った春一だったが、「リードです」と答えた潮に苦笑いをしてみせた。
「何だろう、仲良しだねぇで終わらせてくれないよねいつも」
「いやぁ。我々も仲良しだよねぇって言いたいんすけど、かのあがそうさせてくれない部分はありますね」
「はぁ?!!かのあのどこが?!どこがそう思わせてるわけ?!」
かのあと潮が小突き合いの喧嘩を始めた頃、前のお客はいよいよあと1人に。
今か今かと春一をちらちら見ながら最後の1人を見送ると、バンビのテンションは過去最高潮に上がった。
「ぃようこそーーーー!!!春一ちゃん!!ようこそバンビちゃんのバンビカフェ(仮)へーーーーっ!!!」
「あ…ど、どうも…」
「待って、バンビさん!バンビカフェはちょっと!さすがにちょっと協議しましょうそれは!」
笑い声を交えながら終えた、バンビと春一のファーストコンタクト。
春祭りを彩る陽気な音楽を聴きながら、潮たちの楽しい時間はまだまだ続いていく。
* * * * * epilogue
(は~~~~~いっ!!バンビちゃん特製のスペシャルローストビーフよーーーん♪がっっっつり食べちゃって…♡)
(あの、バンビさん…春さんと私のローストビーフの差がえげつないんですがそれは…)
(見なかったことにして頂戴!!蛍ちゃん、乙女のスペシャルメニューに野暮なこと言っちゃダメよっ!)
(はぇーこれが乙女のスペシャルメニューかー)
(すごい。あなたのことが好きです!って誰が見ても分かるようになってる)
(ほら、乙女って分かりやすいもんだからさ)
(あの、バンビさん。さすがに通常の倍の値段しそうなくらい詰めてもらってるんで、これは頂けませんよ?俺)
(え~~~何遠慮しちゃってんのもーーーーー!!!かわいいんだからもーーーー!!!このバンビちゃんがあげたいって言ってるんだから食べなさいよっ!もう!せめて胃袋掴ませなさいよこの!イケメンがっ!)
(兄さん。バンビさんが仰ってるからこの場は厚意として受け取って、一旦食べさせてもらおう)
(本当に?いやー申し訳なさすぎるけどな…今度何かでお返ししますね。じゃぁ、列もまだまだ並んでるんで、今回は有難く頂きます)
(ヤダ――!次があるの?!約束してもらっちゃった♪バンビちゃん、明日からもうきうきで生きちゃうわよ~~ん!)
(良かったねバンビ、って言いたいところだがちょっと待て。お前にとって幸せなこの機会を与えてやったというのに、ワイのアボカドシュリンプの海老が通常量なのおかしいだろやり直せ)
(何よん!別に今このアボカドシュリンプで返す必要ないでしょ?御礼は今度あんたが貰ってとびっきり嬉しいやつ渡すつもりだから、覚悟しときなさい!!)
(お…?ほなええか)
(ええ?!潮がとびっきり喜ぶもの?!何ぞそれは!!)
(潮が喜ぶもの…やばい興味ある)
(いや待て、そうじゃん。私がとびっきり喜ぶものって一体何よ?)
(ちょっと!適当に言ったんだから詰めないで頂戴!!何がいいかしらね?5日間ランチ無料で配達するわ!どうかしら!)
(めっちゃええやん)
(えええええええいいなぁぁぁぁぁぁ!!!!)
(え~♡そんなにほしがるなら、かのあちゃんにもあげるわよん♡ あたし最近かのあちゃんの配信見てるのよねぇ。あの、爆速で料理提供するゲーム!あれすごいじゃないかのあちゃん!感心しちゃうわぁ)
(えっええぇ…!う、うれしい…!てコトは、イタリアンのステージだけめちゃくちゃ張り切ってクリアしてたのバレちゃってる…!?)
(良かったなぁかのあ)
(早起きしてお祭り来て本当に良かったねぇ)
(もうホントだよ!!今日という日は何から何までサイコーだよ!!ありがとーーーーーう!!!)
(ーー皆さま毎度あり!今後とも農家カフェをよろしくね)
(栄さん、大人数で押しかけてすみません。ありがとうございました)
(いえいえ!来てくれてありがとう!まだまだ折り返しなんで元気でたよ!)
(めちゃくちゃ美味しかったです!!!ごちそうさまでしたぁ!!)
(農家カフェ楽しみにしてます)
(ありがとう!どんな風になるかまだまだ構想中だけど、みんなに喜んでもらえる形になった嬉しいな)
(あ!史さん!そうだそうだ、農家カフェについてなんですが、最強の協力者を得られるかもですよ~!)
(え?!なんだって?!詳しく聞こうか!)
第二十八話(二) 了




