第28話(2)
ーセリーが写真を送信しましたー
セリー
〔こちらふれあいホール〕
〔プリンセスコーデ会場の横で開催中のハンドメイドマルシェですが〕
〔特に言ってなかったけど、今年も服屋の志桜里ちゃんに委託販売してもらってまして、お陰様で盛況でございます〕
あまねん
〔全部かわいくって、今見たらほとんど売り切れてました~!〕
セリー
〔今回、春にちなんで結構色々用意したんだけど〕
〔親子でつけてもらいたくて、お揃いをメインに作ってみました〕
〔好評で何より〕
潮
〔おいおい 出店するだなんて全く聞いてない件について〕
〔わいの分はちゃんと有るんでしょうな?〕
セリー
〔SNSではちゃんと前以て告知してたけどね?〕
潮
〔ゑ?〕
蛍
〔こいつ SNSちゃんと見ろ定期〕
〔セリーのSNSは全投稿1分以内にいいねしてる民が通りまーす〕
おその
〔ちなみに期間限定で投稿されてた萌ちゃんとセリーのかわいい商品見本2ショット、期間限定にも関わらず異例の10000いいね超えだったんやで〕
潮
〔ゑ?〕
おその
〔1日限定で公開されて、翌日には見れなくなってたけど、セリーファンはみんな保存して見返してずっと幸せな気分になってました〕
〔あー マジで超かわいかったなー〕
〔あw SNS見てないんだっけ?wメンゴメンゴでござるwww〕
潮
〔あ…?なんだこいつら…SNS見てないってだけでクソみたいなマウント取ってきやがって〇すぞ…〕
〔こちとら中学生の頃からリアタイで関わり続けてる古参勢だぞ…デカい口叩くんじゃねぇぞ新規がよぉ…〕
蛍
〔厄介ヲタクさん、マウントよわよわで草〕
〔ブチギレの民と化す〕
おその
〔おっ ブチギレ口悪の民さんチッスチッスwww〕
〔古参マウントかっけーすマジでウッスウッスwwww〕
セリー
〔マウントどころか寝技決められてない?〕
潮
〔大丈夫、まだタップしてないから行ける まだ行ける〕
おその
〔はぁ、全く…虚勢を張り続けるのは得策ではありませんよ?〕
〔ほしいなら懇願してみろ青二才がよぉ〕
潮
〔お願いします写真ください…〕
蛍
〔いやタップアウト秒速すぎんか?〕
かのあるふぁ
〔と、いうわけでぇ!!そんなみんな大好き大人気セリーの作品!!!〕
〔ギリ残ってたお星さまのお揃いブレスレット!色違い4人分(萌りんとあまねんとセリーとかのあの♡)確保してつけてみたにょーーーーーーん!!!!〕
ーかのあるふぁが写真を送信しましたー
潮
〔おい、タップアウト直後でまだ全く溜飲下がってないのにブッこんできやがってこいつ〕
〔誰かゴング鳴らしてくれ やってやんよ〕
〔何でお前がそのメンツでお揃いの内の一人に入ってやがるんですかねぇ?〕
かのあるふぁ
〔あっごむ゛え゛ぇぇぇぇぇぇぇん!!!このブレスレット、4人用なんだよぬぇぇぇぇ!!!〕
蛍
〔ROUND2!!ファイッ!!!〕
おその
〔こいつ煽りの権化かよ〕
潮
〔ちょっくら合流してブレスレットもぎ取ってくるわ〕
〔タップアウトするまで追い詰めてくるから待っててくれ〕
〔ビデオ通話するわ〕
かのあるふぁ
〔待って本気のやついるんだけど!!!やばい!!瞳孔開いてない?!ねぇ瞳孔開いてない?!〕
蛍
〔まぁ待て 分かった、こうしようよ〕
〔そんなことしてもまた取り返されるだけ〕
〔だったらこっちはこっちでお揃いのもん買って見せつけてやろうぜ〕
潮
〔いや 何で?〕
〔何の解決にもなってない件について〕
おその
〔おお ええやん〕
〔で、何のお揃いにする?〕
潮
〔何でノリノリなの?〕
〔こっちでお揃いいらないんだけど セリーのブレスレット欲しいんだけど〕
蛍
〔えーとぉ かのあ達がブレスレットでしょ?〕
〔あ!じゃぁ…潮と私とおそので、お揃いのピカピカ光るカチューシャ買うのどう?〕
〔さっき屋台で売ってんの見たわ〕
潮
〔ゴミチョイスゥ!〕
〔あのさぁ、せめて対抗できそうなもんチョイスしてくれない?それならええか…って気にさせて?近場の屋台で済まそうとするな?〕
おその
〔さすがに擁護できんわ 何でカチューシャやねん〕
〔1人でつけてどうぞ〕
蛍
〔まぁ待て待て 気が早いんだよ君たちは…まずは用途を考えてみなさいよ〕
〔あ じゃぁ、運動不足解消の為に夜道を安全にジョギングする用はどう?〕
〔尚、ピカピカ光るのはカチューシャについてるクソデカリボンモチーフだけの模様〕
潮
〔ゴミで草〕
〔暗がりで迫ってくる3つのリボンまぁまぁ怖い件について〕
おその
〔今世紀最大にいらない件について〕
セリー
〔3人で不服そうにつけてるの想像しただけで面白いんだけど〕
〔あぁ そういえば、ハンドメイドコーナーでさっき、3つ合わせてくっつけられるクマさんのお揃いキーホルダー売ってあるの見つけたよ〕
〔それならどう?買っとく?〕
蛍
〔ええやん〕
〔ほなそれで〕
潮
〔ぴゃー あまりにも即決で草 躊躇ってものがないんか貴様には〕
〔そういうのはもっとこう、ガッツリなかよち!ズッ友だお!って感じのお友達同士でやるんじゃないの?〕
〔実はお揃いのクマのキーホルダー持ってるんですぅっていう感じのあれでもないでしょ我々〕
おその
〔ぇ?そんなこと言ったってさぁ〕
〔もう、一緒に住んじゃってるジャン…あたちたち…〕
蛍
〔ド、ド正論パンチキターーーー〕
かのあるふぁ
〔そうじゃん!24時間共にしてる日だってザラにあるじゃん!!これってもうガッツリなかよちジャン!〕
〔躊躇なんていらなかったんや!!!(迫真)〕
潮
〔確かに…よく考えたら既にズッ友なんて飛び越えて最早運命共同体だったわ〕
〔じゃぁあの、それでいいですはい〕
蛍
〔よろしくっす ウッス〕
〔今日から私とおそのと潮でお揃いのもの持つんだ…って思ったら面白くてさっきから笑ってるわ〕
おその
〔何ワロてんねん定期〕
〔お前が始めた物語だろうが〕
セリー
〔幸いまだ残ってたから買っときました 面白いから絶対つけてね〕
〔あとで渡しまーす〕
おその
〔サンキュー〕
潮
〔お揃いじわじわ来てるわ とりあえずありがたく受け取っとくか…〕
蛍
〔明日からつけような♡〕
〔あれ てかずっとメッセしてるけどおそのの方は大丈夫なん?〕
〔忙しくないんか?〕
おその
〔ご心配どうもどうも〕
〔今はねー これからキッチンカー出店でシールラリー始まるんで、景品交換台でスタンバイ中の民ですわ〕
〔もう少ししたら連絡取れなくなるんで、もし用事あったら景品交換のとこまで来てくれたらいますー〕
潮
〔大変やなぁ〕
〔じゃ、わいらもシールラリー張り切ってやっちゃいますか〕
〔ほーん、8枚が最大ね 余裕ですわ〕
おその
〔キッチンカーは全部で15店舗でてますん〕
〔8店舗回るってなったら結構な金額になっちゃうから、6枚にするか悩んだんだけどねー〕
〔ま、いっぱい美味しいものあるんでね ちまちま買うでも色々楽しんでもろて〕
潮
〔おけ 最後まで無理するなよー〕
蛍
〔水分ちゃんと取りなよぉ〕
おその
〔うぃ―〕
潮
〔ほな我々もそろそろ動きます、か〕
〔お互いに安全にお祭り楽しみましょうってことで〕
〔またあとで〕
あまねん
〔はーい!またあとで~!〕
「おお、何か珍しい2人だね」
ーーー心地よいBGMが流れる、春祭り会場にて。
ようやく通りを抜けて大広場に到着した潮と蛍は、『はたらくくるま』のイベントを楽しんでいた春一たちを見つけた。
嬉しそうに列に並ぶ綾瀬と織寿に「久しぶりー」と声を掛けた後、春一と向き直って一応2人で行動している理由を説明をする。
「こんにちは春さん、お久しぶりです。チーム分けしたらこうなって。おいおい人数均等にしようぜって提案はしたんですけどね?」
「面白そうだから2人で行って来なよって言われて、こうなりました」
「あはは、先生コンビいいじゃんか。久しぶりに会っても登場が相変わらず仲良しで嬉しいよ。せっかくだから写真撮らせて」
「いやいや、やめてくださいよ春さん、我々そんな感じじゃないんで」
と言いつつ、カメラを向けられて自然と同じポーズで写真を撮る2人。
春一に生暖かい笑みを向けられても全く気にしていない様子で、2人は早速大広場の会場を見渡した。
「で、めちゃくちゃ賑わってますけど。どんなことしてんすか?」
「えっとね、さっきショベルカーとダンプカーとパトカー乗せてもらったから。今は白バイの試乗待ちだね。この次が消防車」
「ほえー」
賑わっている会場を感心した様子で眺める2人に、綾瀬と織寿が嬉しそうに声を掛ける。
「俺ね、俺ね!今日絶対白バイ乗りたかったんだー!」
「うおー、いいね。綾瀬くんの白バイ超サマになりそう」
「ぼくはね、消防車乗りたいんだ!」
「お。ぴっかぴかの新1年生の織寿くんは消防車か。赤が似合うよね織くん」
「ご入学おめでとう。学校はどう?」
「ありがとう!えっとね!宿題は大変だけどね、お友達が増えてうれしい!」
「そっかそっか。何よりですな」
「あのね、あのね!かっこいい赤のグローブと、バットとボール、プレゼントしてくれてありがとう!」
「改めてになるけど、お祝い本当にありがとね。お陰様でどんどん上手くなってるよ」
「いいえいいえ、どういたしまして。お祝いできて嬉しいっす」
「すくすく育ってて、勝手に感慨深いです本当に」
「成長を見届けてくれる素敵なお姉さんたちがいっぱいいて、この子たちは幸せだよ」
そんな話をしている間に順番が来て、嬉しそうに白バイにのる綾瀬。
その姿を「こっち向いてー」とばっちり写真に収め、かっこいいぴかぴかのシールをもらったら。
続いては消防車の順番待ち。
商店街スタッフのてきぱきとした誘導で、列は滞りなくすんなりと動いていった。
「そういえば、今日はママと媛夏ちゃんはおうち?」
「うん!おうちでお留守番してる!」
「早いもんで今9か月くらいですよね?マジ会う度に美少女レベルましましすぎてえぐすぎますよひめたそ。今日はお留守番かぁ。会いたかったなぁ」
「うーん、本当は一緒に来たかったんだけどね…最近始めた伝い歩きの速度が早すぎて。人混みに行くと特にテンション上がってすごい勢いで壁際歩いて行っちゃうから、危なくて連れて来られなかったんだよね」
「おおぉ…?!」
「体力がえぐすぎてベビーカー乗ってくれないし、抱っこもおんぶもさせてくれなくてさ…出かけ先は特に親の体力勝負になっちゃってる」
「あれ?もしかして春さんの身体能力を一番受け継いでるのが媛ちゃんの可能性有る?」
「マジで有り得るかもしれなくて夫婦でちょっと震えてるよ」
あっという間に消防車に乗る順番が回ってきて、綾瀬と織寿が消防士の服を着させてもらうのを見守る。
2人並んで消防士の格好になった姿に、潮達だけでなく周囲からも「お~」と声が上がった。
「待て…!あまりにも顔が良すぎんか…!」
「言い方やめんか」
「いや映えがえぐいでしょこれは…三鼓キッズ恐るべしっすわ…」
「ごめん、2人の写真撮った後でいいから、俺も一緒に撮ってくれない?」
「もちろんです!任せてください」
頼まれて、専属カメラマンかというほど何度もシャッターを切る蛍。
それから消防車の前でもしっかりポーズを撮って写真を撮り終えると、消防士の服をきちんとお返しして、綾瀬と織寿は「ありがとうございました!」としっかり御礼を言った。
その様子を、潮と蛍が微笑ましく見つめる。
「いやぁ、素晴らしいですな」
「めちゃくちゃたのしかったー!」
「消防車かっこよかった!」
「良かった良かった。まだ乗る?」
「ううん!楽しかったから大丈夫!お腹すいてきたし!」
「じゃぁそろそろキッチンカーのとこ行くか。シールラリーやってるんだよね?」
「ですね」
楽しいイベントだったと大広場から出て、隅の方に集まって早速商店街のチラシを開いて眺める。
どれにしようかなーとキッチンカーのメニューを選んでいた春一を見て、潮は提案してみることにした。
「春さん、パニーニとか好きですか?友達のバンビが今回キッチンカー出してるらしいんですけど。一緒行きません?」
「え?あぁ、まさかあの、俺のブロマイドみたいなの作って渡したって人?」
「そうっす」
「うわー…迷う。芹が良く言ってるけど、その人のイタリアンめちゃくちゃ美味いんでしょ?パニーニ食べたすぎる…でも、行ったら逆に俺が取って食われたりしないかな?大丈夫?」
「まぁ約束はできませんが、なるべく近づけさせないようにはするつもりではいるんで」
「猛獣か何かじゃないよね?」
「ねぇねぇ、パニーニってなに?食べ物?俺も食べたい!」
「そうそう、美味しい食べ物。蛍お姉ちゃんはね、ローストビーフにしたよ。潮お姉ちゃんはアボカドシュリンプ」
「うおー、いいなぁ。美味そうだな。よし、パニーニにするか」
「パニーニってやつ、ぼく、ママと一緒に食べたことある!トマトが入ってるやつが好き!」
「そしたらメニュー見て決めてもらおうかな」
農家カフェのキッチンカーメニュー表には、スモークサーモン、ローストビーフ、アボカドシュリンプ、ベーコンチーズの4種類で展開されていた。
春一と蛍はローストビーフ、綾瀬と織寿はベーコンチーズ、潮はアボカドシュリンプ。それから詩津へのお土産にスモークサーモンを選んだ後、一行は早速農家カフェのキッチンカーを目指して進み始めた。
「農家カフェかぁ…素敵じゃん。うちの虎哲も仲間に入れてやってくんないかな。一人で全部やってて寂しそうなんだよなアイツ」
「お、良いっすね。人手が要りそうかどうか聞いてみます?今回農家カフェを経営する運びになったのが栄さんって人で、あまねんの彼氏さんなんですよね。めっちゃ良い人ですよ」
「ええええ?!周ちゃん彼氏さんできたの?!おめでとう…!うわーなんか…妹の友達っていうカテゴリ超えて不思議と我が事のように喜んじゃったよ」
「何かちょっと分かります。あまねんは友達のはずなんですけど、私も栄さんに大事な家族預けたみたいな気分ですもん」
「そうなっちゃうよなぁ」
しかし、そっかそっかー彼氏かーと嬉しそうな春一に、「カレシってなにー?」と聞く織寿。
微笑ましい光景を見つめながら、潮達は虎哲が栄とバンビと一緒に農家カフェで過ごす様子を想像してみた。
「うわ、何だろう。虎哲さんと栄さんとバンビさんの相性…めっちゃ良さそうかも」
「分かる」
「お米のメニュー考えてるなら喜んで提供するだろうし、とうもろこしもサラダに使えそうだし、虎哲が手伝えることは色々有りそうかな」
「尚、此処まで一切虎哲さんの意思を聞いていない模様」
「いやいや、新しい楽しいこと大好きマンだから。農家カフェやるらしいよーって言ったら絶対やりたい!って言い出すに決まってるって。聞かなくても分かるけど、一応聞いてみようか?」
そう言ってメッセで農家カフェの話を送信した瞬間、爆速で通知が鳴る。
笑いながら見せてくれたスマホの画面には、「絶対やりたい!」と前のめりな返答が書いてあった。
「ほーん。春さんは虎哲さんのことなら何でもお見通しってわけです、か…」
「言い方やめとけ?」
「お見通しっていうかまぁ、虎哲が分かりやすすぎるっていうか。てなわけで、面白そうな話教えてくれてありがとね」
「いえいえ。巡り合わせって大事ですから」
ーーー話している内に農家カフェのキッチンカーに辿り着いた。
忙しそうにしているバンビを遠目から見つめていると、ふと目が合う。
手を振る潮を横目に、バンビの視線は一瞬で春一へと釘付けになった。
バンビの動きが面白いようにぴたりと止まり、並んでいたお客も接客をしていた栄も何事かと困惑する。
「やばいあいつ。春さん見て思考停止してる。ちょっと行ってきますわ」
「バンビさん、本当に春さんのこと好きなんだなぁ…」
「反応に困るけど、有難いってことでいいのかな…?」
潮がキッチンカーの横から乗り込み、完全に固まっているバンビのお尻を何度も叩き上げる。
しかし、びくともしない。
「おい!おいバンビ!すみませんっす栄さん」
「潮ちゃん久しぶり!来てくれてありがとう!で、この状況どういうこと?!」
再会の言葉も程々に、キッチンカーの中で状況に戸惑いながら笑う栄。
バンビの意識を戻す為に何度か頬をぱしぱししていると、突然バンビがはっとして我に返った。
「あ、あえっ…?!あたし…もしかして夢の中にいたの…?!」
「うお、動いた」
「ちょっとやだ潮じゃなーーい!!ねぇ今、王子様があっちからあたしを見つめてたのよ?!夢かしら?!」
「現実です。春さん連れてきてやったから、止まってないでかっこいいとこ見せつけてやれ。そして早くお客さんにパニーニを提供しろ」
「ええっ?!夢じゃないの!?ほんもの!?あそこにいるのは本物の王子様…!?てことは本物の王子様があたしを見てるの…?!あたしのパニーニ作りを、見に来てくれたの…?!」
「見に来てくれたどころか、この列を全部爆速でさばいたらパニーニ買ってくれるってさ。王子様は、バンビの作ったうめぇローストビーフをご所望です」
潮とバンビが揃って視線を送ってくるのを感じて、ひらひらと手を振ってみせた春一。
状況を理解したバンビがその瞬間覚醒して、荒々しく作業を再開し始めた。
突如として爆速でさばかれていく列。
わけも分からないまま振り回されたお客さんたちだったが、パニーニを一口食べた瞬間、感じていた困惑など一瞬でどうでもよくなった。
美味しさににこにこと笑みを浮かべるお客さんたちの波をかきわけながら小走りで戻って来た潮に、春一は恐る恐る聞く。
「なんか解決したみたいで良かったね。で、あの、何を言ってきたの…?」
「いやいや何も。春さんがうめぇローストビーフを所望してるって伝えてきただけっすよ」
「まさかこんな風に人を動かす力が俺にあったなんて。びっくりだよ」
「まぁ言うても結構並んでるんで、もうちょっと待ってもらって良いすか」
「全然大丈夫。しかし集客すごいなぁ」
「お、こんなんしてる間に芹たちも来ましたよ」
「ほんとだ。おーい、セリー!」
「やっほーーーー!!!きたよーーーーー!!!」
後ろから芹たちが合流する。
軽く挨拶を交わした後、そのまま一緒に列に並ぶことに。
「ーー兄さん。大広場の方はどうだった?」
「おお。はたらく車のイベントなんて単体でも成立する企画なのに、上手く盛り込んでてすごかったよ。イベント目当てに行ってもお祭りでご飯食べて帰ろうって思うもんな」
「しかも商店街スタッフの人がめちゃくちゃ優秀で、列すらすら案内しててすんなり楽しめて裏方完璧でしたわ」
「めっちゃたのしかったー!」
「白バイ超かっこよかったよ!!」
「そっかそっか、2人とも楽しそうで何よりだよ」
「萌も、お姫様コーデ楽しかったか?」
「うん!たくさんお写真も撮ってもらったんだー!」
「母さんも見たいだろうから、あとで送っといて」
「お子さんが楽しめる企画が成功するの、ほんとすごいと思う」
嬉しそうな萌たちと話している間にも、列は爆速で進んで行く。
会計をしている栄の顔が見えてきた頃、春一は満を持したように話題を持ち出した。
「そうだ。周ちゃん聞いたよ…彼氏できたんだって?多分、今あそこで会計してる人だよね?いやー、おめでたいなぁ」
「兄さん。聞き方おじさんすぎる」
「なんだよー。勝手に親戚のおじさんの気分なんだから、これくらい言わせてくれよなー」
「えへへ!実はそうなんです~!農家カフェ始めるってことで、私もお手伝いする予定で!」
「あ。そうだ、その農家カフェなんだけど…虎哲とかってお手伝いに混ざったら邪魔かな?お米のメニューとか考えてる?」
「え!!すごい、丁度お米のメニュー考えてて!虎哲さんがお手伝いしてくださるって聞いたら、栄さんきっと喜びます!お話してみますね!」
「良かった良かった。よろしく伝えてもらえたら」
そこからも栄とのエピソードを聞きまくる春一の隣で、芹は潮と蛍にキーホルダーを差し出した。
「てなわけではい、潮と蛍。くまさんキーホルダー」
「うおおおかわいいけどガチでお揃いのクマさんでちょっと恥ずかしいカモ…」
「何それ。2人でお揃い?かわいいことするなぁ」
「私と萌ちゃんとかのあとセリーでお揃いのもの買ったので、こっちはおそのと潮と蛍でお揃いです!かわいいですよね~」
「仲良しなんだねぇ」と微笑ましく言った春一だったが、「かのあが芹とお揃いのもの買っちゃったーって喧嘩打ってきたんで、仕方なくです」と答えた潮に苦笑いをしてみせた。
「何だろう、仲良しだねぇで終わらせてくれないよねいつも」
「いやぁ。我々も仲良しだよねぇって言いたいんすけど、かのあがそうさせてくれない部分はありますね」
「はぁ?!!かのあのどこが?!どこがそう思わせてるわけ?!」
かのあと潮が小突き合いの喧嘩を始めた頃、前のお客はいよいよあと1人に。
今か今かと春一をちらちら見ながら最後の1人を見送ると、バンビのテンションは過去最高潮に上がった。
「ぃようこそーーーー!!!春一ちゃん!!ようこそバンビちゃんのバンビカフェ(仮)へーーーーっ!!!」
「あ…ど、どうも…」
「待って、バンビさん!バンビカフェはちょっと!さすがにちょっと協議しましょうそれは!」
笑い声を交えながら終えた、バンビと春一のファーストコンタクト。
春祭りを彩る陽気な音楽を聴きながら、潮たちの楽しい時間はまだまだ続いていく。
* * * * * epilogue
(は~~~~~いっ!!バンビちゃん特製のスペシャルローストビーフよーーーん♪がっっっつり食べちゃって…♡)
(あの、バンビさん…春さんと私のローストビーフの差がえげつないんですがそれは…)
(見なかったことにして頂戴!!蛍ちゃん、乙女のスペシャルメニューに野暮なこと言っちゃダメよっ!)
(はぇーこれが乙女のスペシャルメニューかー)
(すごい。あなたのことが好きです!って誰が見ても分かるようになってる)
(ほら、乙女って分かりやすいもんだからさ)
(あの、バンビさん。さすがに通常の倍の値段しそうなくらい詰めてもらってるんで、これは頂けませんよ?俺)
(え~~~何遠慮しちゃってんのもーーーーー!!!かわいいんだからもーーーー!!!このバンビちゃんがあげたいって言ってるんだから食べなさいよっ!もう!せめて胃袋掴ませなさいよこの!イケメンがっ!)
(兄さん。バンビさんがこう仰ってるから…ひとまずこの場は厚意として受け取って、一旦食べさせてもらおう)
(本当に?いやー申し訳なさすぎるけどな…今度何かでお返ししますね。じゃぁ、列もまだまだ並んでるんで、今回は有難く頂きます)
(ヤダ――!次があるの?!約束してもらっちゃった♪バンビちゃん、明日からもうきうきで生きちゃうわよ~~ん!)
(良かったねバンビ、って言いたいところだがちょっと待て。お前にとって幸せなこの機会を与えてやったというのに、ワイのアボカドシュリンプの海老が通常量なのおかしいだろやり直せ)
(何よん!別に今このアボカドシュリンプで返す必要ないでしょ?御礼は今度あんたが貰ってとびっきり嬉しいやつ渡すつもりだから、覚悟しときなさい!!)
(お…?ほなええか)
(ええ?!潮がとびっきり喜ぶもの?!何ぞそれは!!)
(潮が喜ぶもの…やばい興味ある)
(いや待て、そうじゃん。私がとびっきり喜ぶものって一体何よ?)
(ちょっと!適当に言ったんだから詰めないで頂戴!!何がいいかしらね?5日間ランチ無料で配達するわ!どうかしら!)
(めっちゃええやん)
(えええええええいいなぁぁぁぁぁぁ!!!!)
(え~♡そんなにほしがるなら、かのあちゃんにもあげるわよん♡ あたし最近かのあちゃんの配信見てるのよねぇ。あの、爆速で料理提供するゲーム!あれすごいじゃないかのあちゃん!感心しちゃうわぁ)
(えっええぇ…!う、うれしい…!てコトは、イタリアンのステージだけめちゃくちゃ張り切ってクリアしてたのバレちゃってる…!?)
(良かったなぁかのあ)
(早起きしてお祭り来て本当に良かったねぇ)
(もうホントだよ!!今日という日は何から何までサイコーだよ!!ありがとーーーーーう!!!)
(ーー皆さま毎度あり!今後とも農家カフェをよろしくね)
(栄さん、大人数で押しかけてすみません。ありがとうございました)
(いえいえ!来てくれてありがとう!まだまだ折り返しなんで元気でたよ!)
(めちゃくちゃ美味しかったです!!!ごちそうさまでしたぁ!!)
(農家カフェ楽しみにしてます)
(ありがとう!どんな風になるかまだまだ構想中だけど、みんなに喜んでもらえる形になった嬉しいな)
(あ!史さん!そうだそうだ、農家カフェについてなんですが、最強の協力者を得られるかもですよ~!)
(え?!なんだって?!詳しく聞こうか!)
第二十八話(二) 了




