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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第3章 「箱庭の連想」

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第28話(1)




おその

〔えー もう既にご存知の方もいると思いますが〕

〔今年も春祭りの季節がやってきました〕

〔とりあえず今年も栄さんがチラシ作ってくれたんで 公式HPから見てもろて〕


ーおそのがURLを送信しましたー



蛍

〔春祭りついにキターーーーーー〕

〔逆におそのから春祭り案内メッセ来るまでHP見ない縛りしてた民なので早く詳細求む〕


潮

〔何の意味があるの?その縛り〕


セリー

〔春祭りきた!ちなみにHPの春祭り専用ページ、既に5周はしてます〕


あまねん

〔わ~!春祭りだ~!あれからもう1年が経ったなんて驚きだよ…!楽しみ!〕


かのあるふぁ

〔やったーーーー!!!今年はどんな美味しいご飯がたっくさん出るのかな?!かな?!〕



おその

〔はいー 皆さん良い反応をありがとう〕

〔今年はですね 前年度の春祭りで各店舗にお陰様でご贔屓様ができまして〕

〔ご贔屓様の会社の近く、大きな施設の近く、地元のイベントなどに呼ばせてほしいとのご要望を受け 各飲食店でキッチンカーの導入が始まってます〕


潮

〔ほう?〕


おその

〔というわけで 今年はそのキッチンカーをメインに、前回好評だったテイクアウトプレートを使用しながら〕

〔「春祭り:キッチンカーを巡って集めよう、商店街シールラリー!」を開催します〕


セリー

〔888888888888888〕


蛍

〔88888888888888〕


おその

〔温かい拍手、誠にありがとうございます〕

〔集めたシールの数に応じて商店街の景品や商品をプレゼントしまーす〕

〔去年も春祭りランチで出店してたクレープ屋さん、新作美味かったからオススメでーす〕


蛍

〔何楽しそうなこと計画してやがる〕

〔行くわ〕


潮

〔去年芹がヤンニョムチキンの総菜クレープ食べてたんだっけ?美味そうだったから新作期待〕

〔美味しいもの食って景品も貰えるなんて神か? 絶対行こ〕


おその

〔クレープ屋さん、今回はサーモンカツらしいっすわ〕

〔最近空き店舗に入ったお好み焼き屋さんもキッチンカー出してくれるらしくてね 美味いよ〕

〔大阪で生まれて広島で育ったから両方作れるらしい どっちも最強に美味い〕


蛍

〔最強のハイブリッドじゃん〕


セリー

〔サーモンカツのお惣菜クレープ美味しそう〕

〔お好み焼き、県外民しか言えないことだと思うけど正直どっちも同じくらい好きなんだよね〕

〔ありがたい〕


おその

〔あい ぜひぜひ行ってみてくらはい〕

〔さらにですね、もう話聞いてる人もいると思いますが〕

〔栄さんが始める農家カフェの先駆けとして、この度バンビさんも春祭りでキッチンカー出店してくれるらしいっす〕

〔パニーニがメインって言ってた 詳しくはバンビさんのSNSからメニュー表どぞー〕


潮

〔なんてこったい 買いですな〕


おその

〔そういえば、バンビさんは午前中の御神輿から参加するらしいぞ〕

〔超戦力だ!!万歳!!ってじいさんばあさんがめちゃくちゃ喜んでた〕


セリー

〔え バンビさん御神輿参加するの?〕

〔萌も子ども神輿参加するからそのまま見に行こうっと〕


かのあるふぁ

〔ナ、ナンダッテー!?!?〕

〔見に行きますん!何時から?!〕


おその

〔子ども神輿は9時から 男衆神輿は9時30分から〕

〔男衆神輿が出発したら、そのまま着いて歩いてささっと祭り会場行ってもろて〕


かのあるふぁ

〔く…ッ?!9時だと…?!〕

〔分かった!完徹で行くわ!!〕

〔よっしゃ、夜通し配信して寝ずに行くからね…!萌りん、バンビさん、待ってて!〕


潮

〔は? じゃぁワイも完徹で御神輿見に行かなきゃじゃん〕

〔何があろうと一応1ファンとして配信は見逃せないでしょうが〕

〔あーぁ 昼ご飯に合わせて行こうと思ってたのに〕


おその

〔もしかして:アホ〕

〔毎度毎度、お前たちは何故睡眠時間を削ることしかできないのか?〕


かのあるふぁ

〔だって萌りんとバンビさんの法被姿絶対見に行きたいんだもん゛!!!〕

〔寝過ごしたら見れないじゃん゛!!!〕


蛍

〔あのさぁ 起こしてあげるからきちんと寝ろ定期〕

〔完徹して一緒に出掛けた日のあなたたちマジで眠そうでこっちまで眠くなるのよ〕


セリー

〔同感すぎて〕

〔一緒に行きたいんだったら、金曜日そっち泊まろうか?〕


潮

〔わーい〕


蛍

〔わーい〕

〔朝ごはん何かなぁ わくわく〕


セリー

〔お祭りでたくさん食べるだろうから、朝はおにぎりと卵焼きくらいでどう?〕

〔で、萌の子ども神輿の集合時間が8時40分だから8時15分には出る予定〕

〔というわけで8時前には叩き起こすことになると思うけど、それでも良いなら〕


かのあるふぁ

〔う゛う゛ーーーーーーん!!!!〕

〔8時前う゛ーーーーーーん!!!〕


潮

〔芹も泊まるし、美味しい朝ごはんも食べられるし、かのあは起こしてもらえるし、ワイも昼まで寝られるし〕

〔良いことづくめですやん ほなそれで〕


かのあるふぁ

〔はぁ?!何で?!こいつ何で昼から合流するつもりでいるワケ!?〕

〔かのあが朝から行くなら一緒に行くでしょ普通に!!〕


潮

〔いや…眠いし…〕

〔萌の法被姿は芹が写真送ってくれるし、バンビの法被姿なんて興味ないし…〕

〔こちとら昼飯と夜飯食いに行く感じなのに、朝から行く必要有りますかねぇ?〕


かのあるふぁ

〔ナニイッテンダ!!!〕

〔かのあが朝から行くってなったら潮も朝から行くの!!決定なの!!〕

〔引き摺ってでも連れて行くから!!〕


潮

〔ナンデヤネン定期〕



おその

〔あのー 小競り合いしてるとこ申し訳ないけど、とりあえずまだ説明の途中なんで続けますねー〕

〔まぁそんな感じでバンビさんたちが出店してくれるのと…〕

〔あと、前に紅葉見に行った時に弁当作ってくれた三毛のところから、はなやぎ弁当が出まっす〕


セリー

〔ええ!やった!嬉しい〕


あまねん

〔やった~!〕


蛍

〔おいおいマジですか はなやぎ弁当キターーーーー〕


おその

〔値段も変わらず500円なんで、晩御飯用に買って帰ってもいいし。ぜひ食べてもろて〕

〔それでもって、あもなちゃんのところのパン屋からは新じゃがとほうれん草のキッシュと、苺デニッシュ〕

〔うちの和菓子屋からはミニ鯛焼きが出まーす 食べてねー〕

〔ま、そんなこんなであとの詳細はURLのチラシ見てもろて〕


潮

〔目白押しとはまさにこのことですなぁ〕

〔楽しみにしてますわ〕


おその

〔ありがとね 子ども向けのイベントも充実してますんで〕

〔大広場では地元の方の協力の元、パトカーとか白バイとか消防車とか、あとショベルカーとかダンプカーが来ます〕

〔で、ふれあいホールではお姫様になれるイベントもやってますぞ〕


セリー

〔チラシ見てから萌が早く行きたいってずっと言ってる〕

〔神イベントをありがとう〕


おその

〔へへ かわいくおめかししたら、是非広報誌の写真撮らせてくれー〕

〔商店街の美容室に協力してもらって、野菜を使って作った食べられるメイクでメイクアップ(500円)、ヘアアレンジ(500円)が可能でね〕

〔あと、写真館のおじさんのポラロイド撮影(500円)、服屋さんと手芸屋さんが共同で作ったドレスの貸し出し(500円)で、全部こみこみでもきっかり2000円でお姫様になれます〕


かのあるふぁ

〔神イベじゃんマジで!!〕

〔かのあもやってもらいたーーーーーい!!〕


おその

〔かのあちゃんが精神年齢5歳くらいなのは分かってるんだけどね〕

〔お子さんたち楽しみに来てもらってるんで、今回は小学生までのお子様限定でやらせてもろてます すまんやで〕


かのあるふぁ

〔ほげええええええええええええ〕


潮

〔そりゃそうやろ〕


蛍

〔お姫さまになりたいなら今まで作ったドレスどれか貸してあげるから、頼むから子どもたちの中に混ざって順番待つのだけはやめてくれよなマジで〕


かのあるふぁ

〔ええええええええええ!!!結果オーライじゃん!やったーーー!〕


セリー

〔え 私も普通にやりたいんだけど〕


蛍

〔ほな今度そのイベントはやろう 張り切って用意するわ〕


潮

〔はなやぎお姫様企画キター〕

〔芹のドレス姿拝めるなんて最高だわ すぐやろう〕


蛍

〔お前もやるんやで お姫様〕


潮

〔えっ…〕



おその

〔クソ楽しそうなイベント企画してるとこわるいけど続けるやで〕

〔コミュニティセンターの方では、木材店さんが大型遊具の制作をしてくれたらしいので〕

〔こちらはお子さんたちに無料で遊んでもらえますということで〕


あまねん

〔えー!めちゃくちゃ良いじゃん!商店街どんどん充実していくね~〕


おその

〔そうなんでやんす〕

〔そんでもって最後 17時から、夜イベントについてですが〕

〔各イベントを引き上げた大広場、ふれあいホールにて屋台が展開されまっす〕


潮

〔ほう?〕


おその

〔肉屋と魚屋主体の元、「丼!丼!鉢!鉢!(ドンドン!パチパチ!)」のテイクアウトイベントが行われまーす〕

〔詳しくは割愛するんでメニュー見てほしいんですが、丼ものと鉢ものが出ますんで〕

〔夜まで腹いっぱいたくさん楽しんでくださいな〕


潮

〔おいおい 朝から夜まで盛沢山ですなぁ〕


おその

〔今の子どもたちが積極的に春祭りに参加してくれて、「たのしい!」って思ってくれたら〕

〔その子たちが大人になった時、おばあちゃんになった我々の代わりにまた商店街盛り上げてくれるかもしれないじゃん?〕

〔だから、今やれることを全力で取り組もうと思ってさ〕

〔盛り込みましたよ えぇ〕


蛍

〔おい やめろ〕

〔意外といつもちゃんと考えて生きてるキャラやめろ〕

〔解釈不一致すぎるから〕


おその

〔どういう意味やねん〕


蛍

〔頼むからお前は今しか生きてないような顔して生きててくれ〕


おその

〔解せぬわ〕


潮

〔どんな懇願?〕



おその

〔ま てなわけで春祭りのご紹介でございました〕

〔ご清聴ありがとうございました〕

〔是非参加してねー〕


あまねん

〔楽しそうすぎて待ちきれない!いつもがんばってて偉いよおその!楽しみに待ってるね~!〕


おその

〔ありがとねあまねん マジ天使〕

〔じゃ かのあは早起きがんばって〕


かのあるふぁ

〔はいいぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〕

〔皆々様、どうぞよろしくお願いしますぅーーー!!!〕












「は…早起きして見に来て、良かった…!」



ーーー待ちに待った、春祭り当日。


祭囃子が鳴り響く商店街入口にて。

寝ぐせをそのままに服だけ着替えているかのあが、法被姿の萌を見つめてしみじみと溢す。



「早起きて。何回起こしても起きなかったやつが何を言ってやがるのか」


「それは!!!ごめん!!!でも言われた通りにちゃんと寝たから!ちゃんと22時に寝て10時間寝たから!」


「まぁ、普段徹夜配信で朝7時に寝て、夜20時に起きて配信つけて、深夜3時に寝るかのあちゃんが朝に活動してるだけ偉いか…」


「そう思ったら22時寝の8時起きは一旦すごい、か…」


「そだよ!!我ながら奇跡に近い現象だよ!!」


「現象…?」


「マジで一旦寝たにも関わらずかのあが朝に活動できてるっていう現象がすごい!!」


「クッソ他人事で草」


「私たちが無理やり此処まで運んでなかったら普通に17時まで寝てそう」



蛍と潮が呆れ気味にかのあに言った後。

大人たちの説明と注意事項を一生懸命聞く子どもたちの姿を微笑ましく見つめていた芹と周が、潮たちを見つけて駆け寄ってきた。



「ーー良かった!間に合ったんだね。もう、全然来ないからどうなることかと思ったよ~」


「もう今日は絶対昼過ぎないと来ないだろうねって話してたからさ。来てて普通にびっくりした」


「いやーー!!絶対に萌ちゃんとバンビさんの法被姿を見るんだという強い意思を感じたよね!!気合だよね!!愛だよね!!」


「なんか台詞が他人事すぎない?」


「まぁ、あれだからね。実際は私たちが部屋から引き摺り出して車にぶち込んだだけだから。自分で起きれなくて寝ながら運ばれただけだから正直ワケ分かってないのよ。ただの寝起きなのよこの子」


「潮に、引き摺ってでも連れてく!とか言いながら、逆に引き摺られてきましたこの人」


「そう!!そうなるだろうと思って、ちゃんと外出できる格好で寝てたの!いやー!大成功だったね!!」


「そう!じゃないんよ」


「大成功だったね!じゃないんよ」


「ま、とにもかくにも無事見れたってことで、結果オーライか。お疲れ2人とも」



跳ねた横髪を揺らしながら「萌りーん!」と声を掛けたかのあに、にっこりと微笑む萌。


そして9時の合図で太鼓が打ち鳴らされ、子どもたちによって御神輿が担がれる。

これから30分ほど街を練り歩く予定の子ども神輿が、入口から元気よく遠ざかっていった。



「はうぅ…!がんばってる萌りんかわいしゅぎゆ…!!しっかし、我ながらホンットぎりっぎりだったぁーー!!!」


「商店街入口出発が9時だったから、あとちょっと遅れてたら見れてなかったかもね」


「我々8:40かのあ叩き起こす、8:42かのあ車ぶち込み、8:55商店街駐車場到着、8:58商店街入口だったもんな」


「刻むのやめてね?」


「我こそは、部屋から2分でかのあを車にぶち込むRTA優勝候補なり」


「そんなRTA誰も参加したくない件について」


「潮マジでありがとう!!潮のRTAのお陰で萌りんの法被姿が無事拝めましたってコトで!優勝賞品としてかのあちゃんの配信特別ギフトプレゼントするね!!」


「は?何やそれ普通にありがとう。なんだ、RTAして良かった」


「おい、私も手伝ってますが。何貰えるか知らんけどわいにもそれを寄越しなさい」



何貰えんの?内緒!

など3人の和やかな会話を見届けて、芹と周は子ども神輿の方へと歩き始める。



「じゃぁ、着いて歩くので私たちは一旦此処で。バンビさんの神輿姿お写真送ってね」


「みんなまたあとで~!」


「了解。また後で」


「またねー!!こっちも萌りんの動画待ってまーす!!」


「はーい」



芹と周に手を振り、可愛らしい子ども神輿と一緒にその背中を見届けた後。

ーー程なくして、男衆の担ぐ神輿が掛け声と共にやってきた。


商店街に新しくできたというジムの会員たちも参加しているらしく、神輿の周りには筋肉隆々な法被姿の男性たちが集っている。


その前方で視線を集めるのは、負けじと筋肉を魅せているバンビの姿だった。

ルートの説明を受けつつ黙って注意事項を聞く姿に、周囲の女性たちから黄色い声が漏れる。



「いやぁバンビさん、さすがに目立つなぁ」


「やばい…!!めっちゃかっこいい…!バンビさんほんとにめっちゃかっこいい…!!はぁはぁ…」


「はぁはぁやめて?本当にやめて?」



見つめていたかのあも例外ではなく、どきどきと胸を高鳴らせながらバンビの様子を眺め続ける。

やがて商店街入口出発の時間になると、若い衆によって神輿が担がれた。


その周囲を商店街の店主たちや地域の年配男性たちが囲み、団扇や扇子を使って盛り上げていく。



「じゃぁ出発しますよー!皆さん、張り切って進んでいきましょう。ではせーの!!わっしょい!」


「「「「わっしょい!!」」」」



活気溢れる掛け声が商店街を駆け抜けて行った。

太鼓の音と共に進み始めた神輿に向かって、かのあが待ち切れないといったように大声を上げる。



「バッ…バンビさぁぁぁーーーーーん!!」


「バンビいいよーかっこいいよー」



潮も合わせて大きく声を掛けると、気が付いたバンビが満面の笑みを向けた。

その瞬間を動画に収めていたかのあが、ノックアウトパンチを喰らったように打ちひしがれる。



「うぐぅ…!!さ、最高の瞬間が撮れてしまったぁ…!!!」


「良かったね」


「あの美男子の口からバンビ節が出てくるなんて、誰も想像できないでしょうなぁ」


「バンビさんこの後出店もするなんて…大変だよ!絶対買いに行かなきゃ!!」


「バンビのパニーニ、正直ガチ美味いから覚悟した方が良いよ」



男衆神輿を見届けた後、続いて女衆神輿が到着した。

その中におそのの姿を見つけて、3人の顔が「おっ」と更に明るくなる。



「おいおい待て待て、あの子御神輿参加するとか言ってましたっけ?動画動画」


「はーん。男衆神輿行ったらすぐ着いて歩けって言ってたのはこの為です、か」


「えええええおその法被姿かわよーーーーー!!!待って、バレる前にめっちゃ写真撮るわ!!任せて!!」



激写するかのあを横目に、目敏く潮たちの姿を見つけたおそのがあからさまに嫌そうな顔をしてみせた。

説明を受ける女衆から抜けて、ぱたぱたと走り寄ってくる。



「何してんの。男衆が行ったら行けって言ったでしょうが」


「えぇ?おそのちゃーん…御神輿参加するなんて聞いてませんよ?こんな可愛い姿するなら最初から言ってくださいよぉ」


「キモ♡ 実は去年もこっそり担いだんだけどね。バレちゃったか…あ、良かったら参加します?」


「おそのの可愛い姿動画でバッチリ収めとくから大丈夫♡」


「やめとけ♡ じゃ、お祭り楽しんでー」


「そっちこそ無理せずね」



やがて女衆神輿も太鼓の音ともに出発して、入り口から遠ざかっていく。

法被姿の凛々しいその姿に、蛍たちは少し感心していた。



「何か、本来はああいうの絶対やりたくないって言うタイプなのにね。おそのの商店街にかける想いは一入(ひとしお)ですなぁ。我が友ながら感動しちゃった」


「そだね。本気で取り組んでる姿、ぐぅかっこいいわ」


「ちょっと見て見てーー!!クッソかわいいおそのちゃんめっちゃ撮れちゃったんぬーーー!!!帰ったら前の動画作成アプリでめっちゃ良いの作っちゃうわ!」


「期待してます」


「有り得ないくらいかわいいやつで頼む」


「任せろ!!」



ーーーその後、無事に全ての御神輿が神社へ到着。

潮達も遅れて神社へ合流すると、ご褒美のジュースとお菓子を貰った萌がバンビとおそのと3人で記念撮影をしていた。


遠目からそれを確認したかのあが、するすると叫びながら人混みをかき分けて進んで行く。



「ふ、ふおーーー!!!不思議な3ショット待ってーー!!撮らせてーーー!!!」


「お、おお?!3人共待ってーー!おじさんにも撮らせてーー!」



かのあが駆け寄った後ろから、写真館の店主が慌てて駆けていった。

何事かと人混みがスペースを空けてくれた道を、これ好機と潮と蛍がささっと抜けていく。



「良い3ショットじゃんか」


「こっち見てー!!こっち見てーー!!」


「知り合いっていうか、ファンみたいなやついない?」


「待って!!かのあちゃん待って!!おじさんに広報の写真撮らせて!!まず撮らせて!!」


「ほらほらかのあ、邪魔しないで」


「びょええええええ」



そこからしばらく撮影が続き、ヒーローポーズを撮ったりお姫様ポーズを撮ったり。

無事に撮影が終わると、3人はとても楽しそうに手を取り合った。



「ーー萌ちゃん、バンビさん、御神輿お疲れさまでした。本当にご協力ありがとねー。お陰様で良いお祭りになりますよ」


「ちょっとやだーー!こちらこそよーん!御神輿担がせてもらえるなんて、貴重な体験だわ!楽しい時間をありがとう!!」


「萌も、すっごく楽しかった!またやりたい!」


「そう言ってもらえて何よりですわ。ちなみに今更確認なんですけど、今の写真広報載っても大丈夫ですか?」


「勿論よ!じゃんじゃん載せちゃって頂戴!」


「あざすあざすー。おじさーん、広報オッケーでーす」


「もうめちゃめちゃ使わせてもらうよ!ありがとうね!」



そんなやり取りの後、法被を脱いで、全員でしっかりお参りをした。

心地よい風が吹き抜けて、お祭りの匂いが届いてくる。


神社を後にして通りに出ると、バンビは早速と言ったように声を上げた。



「さ!!じゃぁ、あたしたちはこの奥の商店街大広場前で、キッチンカー出してるから!もし食べるなら特別に用意して置いといてあげるわよん」


「ナンダッテーーーー?!特別神待遇じゃん」


「うれしい~!じゃぁ、お願いしちゃおっか…!」


「いいわよーん!シールラリーもやるんでしょ?袋に一緒に入れとくからね」


「ありがたし!!じゃ、じゃぁ早速注文!メニューメニューっと!!」


「かのあちゃんのはいつも通り別メニュー用意してるわよん。何個かパターン用意してみたんだけど、どうかしら?確認してくれる?」


「ふぉっふぉわーーーーぉ!!あ、ありがとうごじゃりますすす…!!」



それぞれがメニューを見ながら注文して、バンビが手慣れた様子でスマホにメモしていく。



「下拵えは済んでるから、あとは挟んじゃうだけなのよねー。お昼時、適当な時間に取りにおいで!」


「マジでありがとね」


「お忙しい中感謝です~!キッチンカー、史さんもいらっしゃるんですよね?」


「そうよ!私は調理担当、サカちゃんが会計!だから来たらサカちゃんに色々やってもらって頂戴ね!伝えとくわ!」


「了解っす。あぁ、パニーニ楽しみすぎる」



「じゃ、またあとでねーん!」と颯爽と自分の店へ向かったバンビと、「ほんじゃまたー」と緩く立ち去ったおそのを見送って、面々は改めてお祭り会場を見渡した。



「いやぁ、今年も盛り上がりそうですなぁ」


「バンビの店は昼頃に行くとして。それまで何する?萌のお姫様コーデでもしに行く?」


「いいね~!そうしよっか!」


「確かに、汚れちゃうしお昼ごはん前に可愛くしてもらった方が良さそうね。じゃぁ、そうしようかな」


「人多いだろうし、大所帯で行ったら混雑しちゃわないかな?分かれて行こうか!」


「あぁ、そういえば。大広場のはたらくくるまゾーンに兄さんたちが来てるらしいよ」


「んじゃそっちルートと、お姫様ルートで分かれよう」


「オッケー。じゃ、懐かしの裏表でもしけこみます、か…」


「えー!?グーとパーで分かれましょーよ!!」


「はい?うらうらうらうらうらおもてだろうが」


「どっちでもいいよ…」


「萌、うらうらうらうら…が楽しそうだからそっちやってみたい!」


「お姫様がこう言うておりますぞ」


「じゃぁそれで!!」


「ほなやりますかい。せーの、」



「「「「「うらうらうらうら、うらおもて!!」」」」」









*   *   *   *   *   epilogue








(びょええええええええかんわ゛い゛いぃぃぃぃぃぃぃ)


(萌ちゃーん!こっち向いて~!)


(2000円でこのクオリティは破格だね)


(潮と蛍に送り付けてやろう!!セリーも横に立ってー!)



(ぶふぉwwwめっちゃ指くわえてるスタンプ返ってきたwwwwwウケるwwwww)


(リアルで草生やしたみたいな喋り方するのやめてね?)


(あ゛!!お返しに写真送ってきたぞ!!これは…!三鼓チルドレンズ!!!)


(お、無事会えたんだね。良かった良かった)


(わぁ、綾くんと織くんだ~!かわいい!そういえば、織くんって春から小学生になったんだよね?新1年生、おめでたい!)


(そうそう。ランドセル背負って綾くんと並んで登校班混ざってんの、我が甥ながらマジでめっちゃかわいいよ)


(や~~~~それはカワイすぎる~~~…!!)


(そういえば潮がそんなこと言ってた!!おめでたーーーい!!てかはなやぎからまとめてお祝い送っとくねーって潮が言ってたけど、何あげたんだろ??)


(潮、綾くんの時にサッカーボールとかっこいいスパイクとトレーニングシューズ送ってくれてたんだよね。だから今回織くんには、かっこいいグローブと野球のバットとボールが届いてたよ)


(うおーーーー!!!めっちゃええやん!!)


(前回も今回も事前に本人に聞いてくれたみたいで。綾くんはサッカークラブ入りたい!って言って、織くんは少年野球入りたい!って言ったっぽくて。2人ともめちゃくちゃ喜んでました。ありがとね)


(2人ともがそれぞれの競技でエースポジション取ったらかっこいいね~!)


(めっちゃ有りそう!!大会見に行かなきゃ!!)


(是非見に来てあげて。きっと喜ぶよ)


(そう思ったら、萌ちゃんも、いよいよ来年から小学生なのか~…感慨深すぎる…!)


(ほんとにね。色々準備しなくちゃ)



(ママ、見て見て!写真の店主さん!)


(おーーー!お待たせ―!中々繁盛しててね!随分待たせちゃったね!おおおお萌ちゃんかわいいじゃないかー!早速良い感じに撮っちゃうよー!)


(順番キタ!写真おねがいしまーーーっす!!!)


(任せて任せて!皆で撮るならスマホでも撮ってあげるからね)


(わーい!お願いします~)


(まずは萌ちゃんから、こっちに立ってもらって……うーんいいね!!被写体が良すぎるね!!あと何枚か撮らせてね!!)


(えへへ)


(うごおおおおちょっと待って、萌たそマッジでかわいすぎるんやが…!そのままでもえげつないほどかわいいのに、ヘアメイクとドレスが…!!えっぐいバフが…!!かのあ、しあわせ…!)


(このセリーにしてこの萌ちゃん有りって感じすぎるよ~!萌ちゃんカワイイ~!!)



(よし!!じゃぁ、次はお母さんとセットでツーショット撮ろうかね!ほらほら、セリーちゃん!)


(ありがとうございます、すみません。お願いします)


(遠慮せず!!もっとくっついて!自然なショットも撮るからね!!)


(あの、おじさん…ありがたいんですが、次に待ってらっしゃる方々いらっしゃいますから…うちは簡単にでいいので…)


(ん?!?!何を言うんだい!おじさんはね!撮りたい時に撮りたい瞬間を撮るお仕事をしています!!)


(あ、はい…すみません…)


(セ、セリーが圧で黙らされた…!!おじさん、なんてやつだ…!!)


(おじさんは今ゾーンに入ってるからね!!止まらないからね!!)



(よしよし!!じゃぁ最後皆で並んでもらおうかな!)


(ママ)


(ん?どした?)


(萌ね、皆とお写真撮れて嬉しい)


(がわ゛い゛いいいいいいいいいい!!!)



(はい、行くよー!おじさんのカメラ見てね、せーの!にっこりーー!)


((((にっこりー!))))









第二十八話(一) 了






ーーーーーーーーーーーーーーーーーー



※9.3 修正及び追記


御神輿の様子について、以下の動画を参考にさせて頂きました


*https://youtu.be/PUwEFkvDf0c?si=m_VASULX-WB_pImk

*https://youtu.be/OVGIDLjfASk?si=G2UYuVhexSFLo6Om

VIRTUAL KYOTO 様


はなやぎの商店街は少し小さめの規模感をイメージして書いております

京都、いつか行ってみたいなぁ




2026.9.3 日三十(ひさと) 皐月(さつき)




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