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はなやぎ館の箱庭  作者: 日三十 皐月
第2章 「箱庭の夢語」
27/39

第17話 (2)



 


〔こちらハンドメイド作品巡り中〕



ー写真を送信しましたー



〔ご覧の通り、セリーのコーナーめっちゃ売れてます〕

〔付近にいるお子さん連れのママさん達から「最高…」「至高…」って聞こえてきてて私も嬉しい〕


〔至高…〕


セリー

〔嬉しいな〕

〔そういえば…この前幼稚園で、あんまり話したことないママさんたちに「春祭り出店するってSNS見ました、絶対行きます!いつも応援してます!」って声掛けてもらったよ〕

〔それだけ言ってすぐ走り去って行っちゃったんどけど、その方達かな?〕


〔いつも声掛けずにネットで作品買ってたんやろなぁ〕


セリー

〔ぱっと見ただけでも皆さんピアスとか指輪とかつけてくれてるの分かって、感動しちゃった〕


あまねん

〔セリーの作品、ママさんがつけやすいように配慮してあるものが多いもんね〜!〕

〔セリーを応援したい気持ちと、作品そのものが欲しい気持ちが同じくらいあるのって本当にすごいと思う!〕


セリー

〔こういうものがあるといいな、って思うものを作れて、これがほしかったんだ、って買ってくれる人がいる〕

〔すごく幸せなことだなーってしみじみ思います〕



〔そんな感じで、こちらは今きゃっきゃうふふしながら楽しんでいるわけですが〕

〔そっちはどんな感じすか〕



セリー

〔こっちはね、萌と綾瀬が大きいボールプールを楽しんでて〕

〔織寿は子供服専門店が今回の為に用意したっていうカッパ着て、シャボン玉ゾーンでハシャいでる〕


〔何それめっちゃ楽しそう〕

〔カッパ着るのもわくわくしていいね カッパ着るほどシャボン玉噴射されるのすごない?〕


〔係の人がクソデカバブル銃構えてお立ち台から発射してたり〕

〔クソデカ輪っかにシャボン玉作って子供たち包んでたり〕

〔スプリンクラーみたいな装置にエアー送ってシャボン玉四方八方に飛ばしてたり〕


セリー

〔子ども達も電池式のボタン押したらシャボン玉がぶわーって出てくるおもちゃ手渡されててね}

〔楽しそうに遊んでるよ〕


〔良いですなぁ〕


あまねん

〔ちっちゃい子ってシャボン玉好きだよね!私もお姉ちゃんと一緒に遊んでたな〜〕


〔ちなみに20歳児のかのあちゃんも混ざって遊んでる〕

〔ノリノリである 最早現役のそれすらある〕


〔楽しそうで何よりですわ〕

〔まぁかのあはさておき 子どもたちが遊んでる間、大人はどんな感じよ?〕


〔退屈しないようにシアターが出てたり〕

〔おしゃれな飲み物の販売が充実してたり、映えな感じの軽食も出てたりして普通に楽しい〕

〔ほーん これが映えですかぁ…〕



ー写真を送信しましたー



〔あー…食べ物は映えてても画角がうんこすぎて草生えますわ〕

〔映え勉強しろください〕


〔こうか〕



ー写真を送信しましたー



〔いや自撮りがもろに被っちゃってる、食べ物にもろ被りしちゃってるって〕

〔あとその顔は一体何なのさ}


〔自撮りやり慣れてない顔やね〕


セリー

〔草 保存したわ〕


〔あ…急に恥ずかしくなるやつやめて〕



セリー

〔まぁでも本当に、大人も充分楽しいよ〕

〔かのあもだけど、兄さんも全力でシャボン玉で遊んでるし〕


〔それな〕

〔バブルガン発射しながらパルクール披露しててほんま草なんだわあの人〕

〔さっきからヒーローショーみたいになってて有り得んくらい盛り上がってる〕



ー動画を送信しましたー



〔なんだこれ〕

〔かっこよすぎだろ〕

〔お嫁さん横にいるけど堂々と保存したわかっこよすぎて〕


〔外国の方も「忍者…!」って嬉しそうに動画撮ってるよ横で〕


セリー

〔勘違いした大人の方々がシャボン玉液入れる容器にお金入れ始めてて草〕

〔兄さん焦ってて草〕


あまねん

〔めちゃくちゃ必死な、違います!そういうのじゃないです!って声が聞こえてくるね…〕


〔春さんはあれだよね、どこでも生きていける人だよね本当に…〕



セリー

〔まぁ、とりあえずこっちはこんな感じだけど。蛍たちはどう?〕

〔詩津さん楽しんでる?〕


〔はい なんと、こっちはですね〕

〔今飲み物休憩してるからこうしてゆったりスマホいじりつつ話してるけど、この時間までガチずーーーーーーーっと盛り上がってました〕

〔今日を以て我々は同志です〕


〔おー 良かったね〕


〔何か歩幅とか話のペースとかも合うから、めっちゃ居心地良いんよな〕

〔もしかしてあれなのかもしれん、詩津さんと私は運命のソウルメイトなのかもしれん〕


セリー

〔よほど気が合ったんだね、良かったね…〕


〔いや、実際結構コアなところで気が合う人ってなかなかいなくない?〕

〔レアでしょこれ 美人な友達ができてテンション上がっちゃってますこれ〕


あまねん

〔話のペース合うのって大事だよね!好みが合ったら尚更だよ〜〕



おその

〔おつかれー 皆さん楽しそうで嬉しいですなー〕

〔ところで、写真屋のおっちゃんがワンコイン写真サービスやってるよ〕

〔潮たちが来てるって言ったら、撮りに行くってさ〕

〔伝えとくぜい〕



あまねん

〔おその〜!お疲れ様!〕


〔お疲れー〕

〔それは是非撮ってもらいましょう〕


おその

〔そっちがパルクールで盛り上がってるってSNSで見て、今移動してるみたいなんで〕

〔広報の写真もお願いしてるんで、さっきの動画見る感じだと春さんが広報載るの確実ですねこれ〕


〔お 切り抜いてはなやぎに飾ろうぜ〕


セリー

〔やめてやめて、調子に乗るんだから〕

〔あ 萌がボールプールやめて、ふれあいホールのお買い物ままごとやりたいみたいなんで、ちょっと移動してきます〕


おその

〔お、いいね。デザイン凝ってるんで是非楽しんで来てねー〕


セリー

〔ありがとう、おそのも無理せずね〕

〔じゃぁ、蛍たちもまた後で〕


〔ほーい、引き続き楽しんでね〕

〔こっちも楽しみまーす〕


おその

〔皆さん楽しんでくださいなー〕








「あまねちゃん、これくださいな」



ーーふれあいホールにて。


[お買い物ってどうやるの?]をコンセプトに、おもちゃで丁寧に用意されたお買い物コーナー。


子供の身長に合わせて作られた棚にお肉やお野菜のおもちゃなど様々並べられ、本物さながらのレジ台もたくさん置かれており、全体的に可愛らしい雰囲気で模られた空間はまさに小さなスーパーそのもの。


そこへボールプールを終えて移動してきたのは、芹と萌。

そして、付き添いで着いてきた周。


店員役を買って出た周がレジで待っていると、可愛らしいお客さんがやってきた。



「にんじん、じゃがいも、たまねぎ、おにくにカレールー…。萌ちゃん、カレーを作るの?」


「うん!ママと一緒に作るんだ」


「かわいー!」



そんなやり取りの後、よくできたレジで品物をスキャンして、購入前とは別の色のカゴに移していく。



「600円です〜」


「はーい」



おもちゃのお金を受け取り、商品を袋に入れて。

それを品物返却用に置かれたカートに戻せば、一連のおままごとは終わり。



「良くできてるなぁ」


「あまねちゃん、萌、今度はレジのお姉さん役やりたいな」


「いいよ!何買おうかな〜」


「周、ありがとうね。相手してもらって」


「いやいや!私も楽しいよ!こんなに良くできてたら大人もわくわくしちゃうね」



楽しそうな子供達に混ざって、果物や小麦粉、卵や牛乳などをカゴに入れていく。

一つ一つ精巧に作られたそれはおままごとセットとして予約注文ができるらしく、その旨を記されたチラシが子育て中の親御さんの手に次々と収められていくのが見えた。


友人が真剣に取り組んだ催しがどこにいても賑わっているのを肌で感じて、周も嬉しくなる。



一生懸命におままごとを楽しむ子供達を見て微笑ましい気持ちになりながら、萌たちの待つレジへと向かっていると。


2人の側に、にこやかな写真屋の店主の姿が見えた。



「おー、周ちゃん!来たよ、おじさんだよ!写真撮りに来たよ!」


「おじさん!お久しぶりです〜。かわいいカメラ!写真を撮って周ってらっしゃるんですよね」


「そうそう!僕のポラロイドちゃんで、その場で写真を手渡してるんだ。ママさん達にすごく喜んでもらえて僕も嬉しくてね」


「お母さんとお子さんが一緒に写ってる写真って意外と貴重ですからね」



話しながら、芹と萌がにこやかに並ぶ姿を写真に収めて、そのまま手渡す店主。



「20分くらいで浮かび上がってくるからね。ポケットとか鞄の中に持っててね」


「ありがとうございます。嬉しいな、はなやぎのメンバーといると素敵な写真いっぱい撮ってもらえて本当に幸せ」


「おじさん!萌、あまねちゃんとも撮りたい!」


「もちろんだよ!はい笑ってー!」


「あぁ、ちょっと待ってください、お金を…」



お金を渡そうとした芹を制して、周と萌が微笑み合う姿をぱしゃり。

店主はにっこり笑って、出てきた写真を芹に手渡した。



「さっきね、芹ちゃんのお兄さんを写真に収めてきたんだよ。撮ってくださいと言わんばかりのオーラですごいね彼。僕のこのかわいい一眼レフでいっばい撮ってきたよ。見てこれ」


「わー…写真の腕が良すぎて…」


「すごい!!映画のワンシーンみたいですね!」


「ママ、春一おじさんかっこいいね!ポスターの写真みたい!」


「おお!ポスターか、いいね!広報に掲載していいかお兄さんに許可を貰いに行った時写真を見せたんだけど、もうすごく喜んでくれてね。それがいい、ポスターにしてプレゼントしよう」



芹が受け取ったポラロイド写真を鞄に入れると、続いて一眼レフでも撮っていく店主。



「あ!そういえば、かのあちゃん達もいっぱい撮ってきたよ。またはなやぎに色々送っとくからね!」


「わ!嬉しいな〜!楽しみです!」


「なんて言いつつ。さぁ遊んで遊んで!たくさん撮っちゃうからねー!」


「わーい!」






ーーそうして一通り楽しんだ後、芹たちはホールを後にして、店主と共にシャボン玉ゾーンへと向かった。



「わ!見て、綾くんと織くん楽しそう!」


「萌も行っておいで。ほら、カッパ着て」


「ありがとう、ママ。行ってきまーす!」



カッパを着た萌が嬉しそうに笑って駆け出すと、綾瀬と織寿のところへ合流。

それから係の人にバブルガンを手渡され、シャボン玉を楽しむ様子を店主がぱしゃり。



「めっちゃ良い写真」


「かわい〜!かわいすぎる〜!」


「潮ちゃんはやらないのかい?アンニュイな感じで座ってるのを撮るのも楽しかったけど、シャボン玉でハシャいでる姿もちょっと見てみたいなぁおじさん」


「いやいやおじさん、ハシャぐなんてそんな。キャラじゃないんで…」



など話していると、不意にかのあが全速力で駆けてきた。


どこから手に入れてきたのか手には大きなバブルガンを携えており、それは周囲にいた芹たちの予想通り、余所見していた潮に向かって勢いよく発射される。



「おーーい!潮ー!!おりゃーーー!!」



「バブワァァッ!はぁ?!何だよこいつ!キレそう!」


「ばっ…ばぶわぁって……ぷっ…ぶわははははぁ!!泡まみれで草ぁーーー!!!」


「おい、誰かバブルガンを私に寄越してくれ。もう絶対に許さん。あいつを泡まみれにするまで今日は眠れん」


「はいどうぞ」


「オラァァーー!待たんかクソガキ(21)ーーー!!」


「ぎゃーーー!!インドア対決きちゃーーー!!」


「どっちがインドア最弱か勝負じゃーーー!!」



芹からバブルガンを受け取り、潮がシャボン玉ゾーンを爆走する。

般若の形相の潮から必死に逃げるかのあだったが、ハシャぎすぎたせいで既にぼろぼろだった為すぐに捕まって泡まみれになっていた。



「何故あの状態で潮に喧嘩を挑んできたのか、逆に気になるよ」


「あ、潮も倒れちゃった」


「私も人のことは言えないけど、私以上に普段走ることのない2人だからね…」


「うん…2人が走るの見てて、何かアキレス腱心配になっちゃった」


「いいねぇ、楽しそうだねぇ。若いっていいねぇ」



2人の楽しげな様子もばっちり写真に収めたところで、店主は次の撮影地へ向かう為に立ち上がった。



「今回のメインの晩ごはんプレート企画も、たくさん写真を撮る予定でね。それまでたくさんの親子に写真をプレゼントをしながら、おじさんもお祭りを楽しんでくるよ」


「本当にありがとうございました。写真いつも助かります」


「思い出が目に見える形で残せて嬉しいです!」


「いやいや、これがおじさんの生き甲斐なんだよ。いつも楽しそうな様子を撮らせてくれて、こちらこそありがとうね」


「またお願いします!」



写真撮りますの看板を掲げて、親子の写真を撮りながら遠ざかっていく店主。


その後ろ姿を見送った後、シャボン玉を楽しんだ面々がぞろぞろと戻ってきた。



「いやー、めっちゃ楽しかったわ。パルクールがあんなに喜んでもらえるとは」


「パパかっこよかった!おれもやりたくなった!」


「もう大きくなったからやってもいいでしょ?今度教えて!」


「じゃぁ、まずは体の動かし方を知るところからだな」


「「はーい!」」


「おじさん、萌にもできる?」


「できないことなんてないさ。大事なのは、地球の鼓動を聞いて、体の気の流れを良く知ること。あとは、できるビジョンを想像すること。それさえできれば、後は身体が勝手に動くよ」


「萌、一緒にがんばろーぜ!」


「うん!」



平和な三鼓家の後に続いて、ふらふらな潮とかのあが仲良く歩いてくる。



「あーーーーーー…楽しかった。シャボン玉なんて何年振りにやったんだか。足がプルップルだわ。かのあとじゃれ合うだけで生まれたての子鹿みたいになってるわ」


「はぁ…はぁ…無理…歩けない…潮ーーーー!!おんぶーーーー!!おんぶしてーーー!!!」


「無理に決まって……グァァ」


「オギャァァ」


「何をしてるの君たちは」



かのあに乗っかられた潮が膝から崩れ落ちて、2人広場に突っ伏して倒れた。

芹が呆れたように言って、駆け寄った周が2人にそれぞれ手を貸す。



「いたたた…ありがとあまねん」


「えーん!!痛いよーー!顔面かばって両手ついたら小石めちゃくちゃ刺さったーー!!」


「私に咄嗟にかのあを支えようとついた膝と肘に小石ぶっ刺さってるわ」


「はいはい。2人とも、あとで絆創膏あげるからね〜」



全員で休憩処に移動して、各々水分を取り、潮とかのあは周に絆創膏を貼ってもらったりしながら、次の行動について話し始めた。



「よーし、じゃぁおもちゃ屋さんのとこでミニバルーンもらって、駄菓子屋さんでスタンプカードもらってくるか」


「わーい!萌、ミニバルーンもらえるの楽しみにしてたんだ!」


「割れちゃうから遊び終わった後に貰いに行こうねって約束してたもんね」


「その後はハンドメイド作品見て回って、パン屋さんに寄って、あもなちゃんを見に行こう」


「やば!!あもなのことすっかり忘れてた!!……メッセきてた!待ってるよーだって!」


「あもなちゃんに会えるの楽しみだな〜!」 


「フレンチトーストも楽しみなんよなぁ」


「パン屋さんに寄ったりしてスタンプ集めながら大広場に向かってたら、丁度企画が始まるくらいの時間になるんじゃないかな」


「よしゃー!じゃ、とりあえずミニバルーンとスタンプカードもらいに行こー!!」



各々トイレを済ませた後、早速おもちゃ屋さんでお手伝いをしてミニバルーンをゲットする。


その足で駄菓子屋でお買い物をして、全員がスタンプカードを手に持った。


駄菓子屋のおばあちゃんに1つ目のスタンプを押してもらって外へ出ると、一行は雑貨屋の立ち並ぶ通りへ移動を始める。



「バルーン、ピンクでかわいい!」


「おれ黄緑ー!」


「水色ー!」


「良かったね皆」


「懐かしいね、ぱちってしたらくるってなるブレスレット。これに風船がついてるの、すごくいい!腕からするって落ちないし、手も空くし、飛んでいかないし」


「まじでめっちゃ懐かしい。そんでもってかわいい」


「スタンプカードも凝っててかわいいね。集めたくなる」


「景品がもらえる個数のところに宝箱のマークが描いてあって、小さい子でもかのあちゃんでも分かりやすくて良きですな」


「ちょ待って!!あと4個でケーキ屋さんのラングドシャクッキーもらえるらしいよ?!集めよ早く!あ、すみません係の人ー、8人分押してくださぁーーーい!」



そんなこんなで一つ、また一つとスタンプをゲットしながら、一行はハンドメイド作品の立ち並ぶ通りに辿り着いた。



「商品汚したりしたら申し訳ないから、子どもたちと待っとくよ」


「ありがとう、兄さん」


「よっしゃ、じゃぁ係の人探してスタンプいっぱい押してもらうぞー」


「「「はーい!!」」」



子供達を連れてスタンプを押してもらう為歩き始めた春一にお礼を言って、一行は本屋でしおりを手に入れたり、可愛らしい作品を見て回ったり。


各々気に入ったものを購入して歩く内、芹の作品が置かれた服屋さんに到着した。



「さてさて、芹の作品はっと…」


「あ、三鼓さん!見てください、めっちゃ売れてますよ!」


「わお」



入ってきた芹を見るなり店員さんが興奮気味に言って、芹の作品が置かれたコーナーを見ると。


ほとんどの作品が売れている状態且つ、芹の登場に幾人かが小さく黄色い声をあげた。



「たくさんの方が買って行かれたんですけど、ほとんどの方が三鼓さんのファンなんです〜!って仰ってました!」


「わー、有難いです。嬉しいなぁ」



黄色い声をあげた人たちが、芹に向かって購入した作品を控えめに掲げる。

芹が頭を下げて御礼を言うと、隣にいた潮が目の前にあった2つの作品を店員さんに差し出した。



「じゃぁこの2つを…芹の最古参ファンであるこの私が買わせて頂こうか」


「またそんなこと言って…。何でその2つ?バッグチャームはともかく、ブレスレットなんかつけないでしょ潮」


「つけますー。芹の作品ならボディピアスでもつけますーピアスホール惜しげもなく開けてやりますー」


「え!それマ?!ちょ、めっちゃ面白そうだからへそピ作って潮にプレゼントしてよセリー!」


「いやあの…穴開けて芹の作品つけるならせめて見えるところを開けさせてほしいんだが?」


「へーそ出し!へーそ出し!!」


「私が一番得しないんだよ、私のヘソ出しなんて。ぽんぽん痛くなっちゃうでしょーが」


「じゃ鼻ピにしよ鼻ピに!!」


「てか何でお前がノリノリなんだよおかしいだろ」



お会計を終えて、芹の作品をゲットした潮が早速嬉しそうにブレスレットをつける。

つまんないのー、と頬を膨らませるかのあと交互に見つめて微笑みながら、芹は店員さんに頭を下げた。

 


「作品を置いて頂いて有難うございました。お陰様でたくさんの方に買ってもらえて本当に嬉しいです」


「いえ、こちらこそ!作品と一緒に服もたくさんご購入頂けて、うちも有り難かったです!」


「また今度ゆっくり買いに来ます。おばあちゃんのお店を受け継いで、改装されたんですよね。ご年配の方も若い方も一緒に買えてステキなお店」


「う、嬉しい…ありがとうございます、お孫さんが帰った時に寄れるって喜んで頂けてます!またのご来店、お待ちしてます!」



最後に、作品コーナーを写真に収めて。

鞄にチャームもつけてドヤ顔の潮を先頭に、面々は服屋を後にした。



「いやぁ、さすがの芹さんですな」


「何か勝手に誇らしかったよ〜!私まで嬉しくなっちゃった!」


「お。お帰りー、売れてた?」


「うん。ありがたいことに」


「ママ、良かったね!すごいね!」



潮たちがハンドメイド作品を見ている間、春一と一緒にスタンプを増やして進んでいた子どもたちは、嬉しそうにスタンプカードを掲げて見せた。



「見て!おれスタンプこーーんなに集めたよ!」


「すっごーーー!!!めっちゃいっぱいだ!!」


「係の人見つけて片っ端からスタンプ押してもらってたからね」


「ありがとう、兄さん。お陰でゆっくり見れた」


「なんのなんの。役に立てたなら良かったよ」



その後もスタンプを押してもらいながら進んでいると、遠くの方にパン屋の看板が見えてくる。



「着いたね。明日の朝食べるパンとか買っちゃおっかなー」


「いいね!かのあもそうしよーっと!」


「パン屋見終わったら丁度晩ごはんの企画始まるんじゃないかな?」


「あ、でも待って。織寿くんたち、疲れてない?そこに丁度休憩コーナーがあるけど…喉乾かない?大丈夫?」


「うん!ちょっと喉乾いた!」


「ちょっとだけ座る!」


「頑張って歩いたもんね。ちょっと飲み物休憩しようか。そこのお店で買おう」


「おーけー。ついでだし、買ったものまとめたりしながらちょっとSNSとか見ようよ」


「いいね!!」



パン屋に入る前に休憩を挟むことにした一行。


多くの人の笑顔が溢れる商店街に、祖父の跡を継ごうと頑張る大切な友人の姿が思い浮かんだ。






* * * * * epilogue






(わ〜!パルクールの動画、SNSたくさん上がってますよ)


(うお、本当だ。俺がいる。何か変な気分だなー)


(春祭りのタグも盛り上がってますな。昼の軽食の写真もめっちゃある)


(え、こんなのも売ってあったんだ…!美味しそう、お店覚えておこう!)


(食べ物の写真、商店街の写真、こんなものがあって楽しかったよーみたいな写真とか。良いお祭りなのが伝わってすごく良いね)


(てかSNSが盛り上がってるの普通にすごない?!集客神ってるんだけど!)


(ほんとそれな。時間とお金のかかった凝った企画して、尚且つお客さんも充二分に集められるってマジですごいと思うわ)


(運営に有能な人が複数いると、大きな物事も事細かに大きく成功するっていう。良い例だね)


(気兼ねなくゆっくり歩けるから、ご年配の方ものんびり楽しめてるみたいだし)


(老若男女が楽しめるコンテンツすごない?!お祭り最強説ある?!)


(いくつになっても、お祭りに行ったっていうそれだけで結構な満足感があるような気がする。なんでだろう?)


(お祭りそのものの本質や意味を、魂が記憶してるからだろうね)


(お、また何やら難しいことを)



(しかしあれだよね、春祭りっていうのがまた良いよね)


(他の夏祭りが有名な地域みたいに花火打ち上げたりはできないから、じゃぁあえてこの商店街伝統の春祭りで夏祭り並みに盛り上げてみようか!ってなったっておそのが言ってたけど、大成功だよね〜)


(夏祭りは他所が大規模にやるだろうからうちは春祭りで。いやぁ、良い発想だと思います)


(夏は夏で何かやるのかな?)


(他と被らない日取りで、今回の春祭りを踏まえた上で削れるところを削りながら上手くやる、みたいなことは聞いてるけど)


(いいねいいね)


(今回は、“どこまでやれるか”っていうより“今後どこまでやるのが丁度良いのか”を測る為だったとも言ってたし。何か色々考えててすごいなぁって思いました。日下部潮)


(おぉ、突然の感想文)


(何か色々すごいなぁは草)


(何か、それはそれとしてこのキウイスムージーめちゃくちゃ美味いなぁって思いました。次はバナナスムージーをお腹いっぱい飲みたいなぁって思いました。蘇芳かのあ)


(勝手に飲めやって思いました。日下部潮)


(喧嘩なら買うぞって思いました。蘇芳かのあ)


(久々にミルクセーキ飲んだけど美味しかったから、今度自分でも作ってみようかな〜って思いました!柏手周)


(5リットル作っておいてって思いました!蘇芳かのあ)


(業者かって思いました。三鼓芹)


(君たちは本当…いつも楽しそうでほっこりしていいなぁって思いました。三鼓春一)



(さて、飲み終わったしそろそろパン屋行きますか)


(うん!!このしゅわしゅわのパイナップルジュースおいしかった!)


(おれもー!マスカットのジュース美味かった!)


(萌も、桃のスムージー美味しかった!)


(((ごちそうさまでした!)))


(えらいなぁ。ご馳走様です)


(ごちそうさまでした!!)








第十七話(二) 了





ーーーーーーー



作中のポラロイドカメラについて、

オールドレンズ・カメラ専門店 株式会社フォレストカメラさんの動画を

参考にさせて頂きました


⭐︎Polaroid 690 SLRの使い方を解説【ポラロイドカメラ】

https://youtu.be/E_NBT17ZVDk


詰め込まれている技術を思うと

見ているだけでわくわくしますね




2023.8.25 日三十ひさと 皐月さつき





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