第17話 (1)
春一
〔はなやぎの皆さん、お久しぶりー〕
〔おそのちゃん、春祭りのチラシどうもね。めっちゃ楽しみにしてます〕
おその
〔春さん、お久しぶりでっす〕
〔ぜひご家族でお越しくださいませ!〕
蛍
〔あれ、本当にお久しぶりな気がするけど?〕
潮
〔お久しぶりです〕
〔何やかんや、クリスマスにかのあのお祝い贈ってもらって以来じゃないすか?〕
かのあるふぁ
〔めっちゃ久しぶりだーー!!てか会ったのって、さんま焼きに来てくれた時以来な気が?!〕
あまねん
〔たしかに!お久しぶりだ〜〕
春一
〔そうなんだよね、ばたばたしてたもんで〕
〔というのも、ちょっと理由がありましてね〕
〔今日はそれもあって連絡しました〕
潮
〔おお、何やなんや〕
蛍
〔わくわく〕
春一
〔はい、では皆さん〕
〔突然ではありますが、良ければこちらをご覧ください〕
ー動画を送信しましたー
[ーーぼく、赤ちゃんといっぱい遊ぶよ!]
[母ちゃん、お腹重たいー?]
[はい、綾瀬、織寿。赤ちゃんは何月に生まれますか?]
[[7月ー!]]
[そう、7月。では詩津さん、早速ですが2人に赤ちゃんの性別を発表してください]
[はーい。何と、女の子でした]
[[えーーーー!!!]]
[妹だー!]
[おれ、優しくするよ!おままごともする!]
[そして、何と名前も決まっております]
[[えーーー!!!]]
[父ちゃん、一生懸命筆で書きました]
[すげー!これなんて書いてあるの?]
[はい。媛夏。君たちの妹は、ひめちゃんです]
[ひめちゃんかー!]
[ひめちゃーん、おにいちゃんだよー]
[あ、ぼくも!おにいちゃんだよーひめちゃーん。ねぇ母ちゃん、ぼくの声、聞こえてるかな?]
[きっと一生懸命聞いてるよ。2人に会いたくて、うずうずしてるかも]
[かわいい!]
[ひめちゃん、おれたち待ってるよー!]
春一
〔…はい、というわけで〕
〔ほのぼのホームビデオを見て頂きました通り何と私、三鼓春一〕
〔この度、3児の父になります〕
おその
〔うおーーーーーーまじかーーーーーー!!!〕
〔おめでとうございますーーー!!〕
蛍
〔こうしてまた、三鼓家に美人が生まれるのであった…!〕
〔おめでとうございます!〕
あまねん
〔わ〜!おめでとうございます〜!〕
〔2人がお腹よしよししてるのめちゃくちゃかわいい!赤ちゃんのお名前もとってもかわいい!夏がたのしみですね〜〕
潮
〔ひめちゃんかぁ…覚えやすくてよいですな〕
〔おめでとうございます〕
かのあるふぁ
〔ガチ!!!めでたい!!!おめでとうございまっっす!!!〕
〔萌ちゃんで充分すぎるほど幸せなのにまた推しが増える予感ーーー!!!〕
春一
〔みんな、ありがとね。萌と一緒に可愛がってくださいな〕
〔というわけで、何やかんやね。嫁さんのつわりが全然治らなかったり、妊娠中の体調が芳しくなくて入院になったりとか、なかなか安定しなくてね〕
潮
〔なんと〕
春一
〔今はお陰様でかなり良くなって、春祭りも行けそうってことだったんで〕
〔いきなり大きいお腹見たらびっくりするだろうと思って、こんな形で報告させてもらいました〕
かのあるふぁ
〔いやぁ!!まじでびっくりしたから先に教えてもらってて良かったぁ!!〕
〔商店街で馬鹿でかい声で「ベイビーマ?!?!」って叫ぶとこだった!!〕
おその
〔私もマ?!くらいは叫んでたかもしれん〕
あまねん
〔入院って…!大変だったんですね…お嫁さんも春一さんもお疲れ様でした…!〕
春一
〔うーん、上2人は順調だったんだけど、今回は嫁さんの体調も妊娠の経過も良くなくてね〕
〔入院中は本当、もしかしたら万が一があるかも…って、俺も嫁さんもしばらく気が気じゃなかったからさ。無事に報告できて本当良かったよ〕
蛍
〔知らない間にめちゃくちゃ大変だったんですね…〕
〔赤ちゃんがお腹で育つって本当にすごいことだ。お疲れさまです〕
春一
〔ありがとね。大変なのは嫁さんなんだけど、俺も同じようにはらはらしちゃってさ〕
〔ひとまず安心してるところ〕
おその
〔何事もなくて本当に何よりでした…〕
〔商店街一帯に、人が混雑してても妊婦さんや車椅子の人とか、小さなお子さんもゆっくり歩けるレーンを設けてるので、是非無理せずゆっくり楽しんでくださいねー〕
春一
〔おお、そういうの助かるなぁ〕
おその
〔個人個人が避けてあげようって思わなくてもいい環境があるのが大事かなって〕
〔なるべくそのレーンを守ろうって人がその場に何人かいるだけで、意外と無理なく歩けたりするものですよね〕
潮
〔そういうレーンが“ある”っていうことが重要よな いい試みだと思います〕
おその
〔どうもね〕
潮
〔いやー春祭り、どんどん楽しみが増えていくなぁ〕
あまねん
〔ほんとに楽しみ〜!〕
蛍
〔三鼓家来たらめっちゃ目立ちそうだ〕
潮
〔いや本当、人混みだとちょっとした騒ぎになるよ〕
〔芹と話してるだけで結構目立つんだけど、そこに春さんが来ようもんならもう一瞬で視線倍増です〕
〔それが家族単位だからね、やばいよ〕
おその
〔確かに目立ちそう〕
春一
〔え?別に人多いとこ行って困ったことないけどな〕
潮
〔それは…高嶺の花すぎてファンの民度が良いからじゃないすかね〕
〔あと、何かの力に守られてる感がすごいっす〕
〔結界張られてるんかなって思うっす〕
おその
〔うわー、結界めっちゃ分かるー〕
〔絶対守られてるよなって気するの分かる〕
かのあるふぁ
〔あ、でもでも!〕
〔波動がある程度高いと、波動の低い人からは見えなくなるって何かで聞いたことあるよ!!それもあるかも!?〕
おその
〔何やそれ〕
〔神様が見えないのと一緒か〕
かのあるふぁ
〔って、あまねんが言ってた!!〕
あまねん
〔波動が上がると、自分の周波数が変わっていくんだよね〕
〔拾える音も光も変わっていくから、波動が低い場所とか人とは交わらなくなる〕
〔って、おばあちゃんが言ってたよ〜〕
潮
〔あぁ、でも広い意味で行くとゲームのランクと同じなのかもね〕
〔一個下のランクとしか一緒にランクできないみたいな〕
〔同じゲームの中なんだけど交わらない みたいな感じか〕
かのあるふぁ
〔いや低ランク帯は修行の場所だからガチで!!高ランク帯の人とはゲームにならないよねお互いに!!〕
〔上に上がってくとさ、ランク低い時にやってたことってしなくなるじゃん?やった方がいいこととか、やっちゃダメなことも見えてくるし、色々分かってくるし!〕
潮
〔そんで、沼ってる時は何か改善しなきゃいけないことがある時なんだよね〕
春一
〔やっても良いこととダメなことって教科書に載ってるわけじゃないから、かのあちゃんの言う通り色んなことに揉まれた後に「分かってるかどうか」が大事で〕
〔それは培ってきた経験とか感情で分かっていくものだから〕
〔同じように修行して、同じように分かってる人とまた別の学びへと切磋琢磨していくのかもね〕
〔それが周ちゃんの言う、周波数の変化の一端なのかな〕
かのあるふぁ
〔ふぁー…!!あまねんの話聞いた時にそう思ったけど言語化できなかったことを!さらりと!!〕
〔それなんです春さん!!さすがっす春さん!!〕
おその
〔てことはつまり、三鼓家はランクがめちゃくちゃ高いから、低ランク帯と関わって修行する必要がないってことかー〕
春一
〔いやいや、何かめちゃくちゃ褒められてるけどさ〕
〔そんな立派なもんじゃないよ 毎日修行してるし〕
〔朝5時から瞑想して、山で滝行の日々だよ〕
潮
〔いやぁ、ガチの修行してて草なんよなぁ〕
おその
〔てかそもそも毎日欠かさず何かやってるっていうこと自体が魂レベルの高さを物語ってるよね〕
〔しかも自分を鍛える系のやつ毎日とか 無理っす〕
春一
〔そうかな?おそのちゃんだって、和菓子作る為に早起きして、おじいちゃんのところで修行してるでしょ〕
〔俺からしたらそっちの方がすごいよ〕
〔努力だけじゃないことを日々やってのけてる人は、本当にすごいと思う〕
おその
〔おっふ…〕
春一
〔おっふ…?〕
蛍
〔おっふですねこれは…〕
おその
〔返答のレベルが高すぎるんよなぁ〕
潮
〔まぁ、とりあえずさ〕
〔高ランク帯で名を馳せてくるとさ、何かしらに守られたりすることもあるわけじゃん〕
〔この人たちはもう、そういう領域なのよ〕
蛍
〔見えざる結界張られてても全然不思議じゃないね〕
〔でも高ランク帯にいたらいたで、低ランク帯とは違う悩みも更なる高みにいく為の障壁もあるんだろうなぁ〕
かのあるふぁ
〔春さん!!自分も高みに行きたいっす!!さっきみたいな、春さんのめっちゃレベル高い一言くださいっす!!もっと聞きたいっす自分!!〕
春一
〔あれ、俺何かめっちゃ煽られてない?〕
蛍
〔どんな無茶振りよ…〕
かのあるふぁ
〔あええぇ?!煽ってないし無茶振りしたつもりもないんだが…?!〕
〔どうやったら春さんみたいになれるんすか!!自分知りたいっす!!〕
春一
〔じゃ 朝5時に山集合ね 滝行から始めようね〕
かのあるふぁ
〔いや…っ!!〕
潮
〔嫌は草〕
かのあるふぁ
〔い、育成方法の変更を希望します!!スパルタじゃないやつで!!かつ短期間で!!お願いします!!〕
潮
〔おい、千里の道も一歩からやぞ〕
蛍
〔ローマは1日にしてならずやぞ〕
おその
〔雨垂れ石を穿つやぞ〕
かのあるふぁ
〔いやかのあが滝行したとして得られるものなんて、滝に打たれた全身の鈍痛と倦怠感と体調不良だけだよ絶対!!千里の道普通に一歩目で引き返しちゃうよ!!〕
〔せめて瞑想とかならワンチャンある?!〕
春一
〔あー 瞑想って実は難しいんだよ、かのあちゃん〕
〔でもかのあちゃんは、もしかするとゲームしてる時が一番本来の瞑想の感覚に近いのかもね〕
かのあるふぁ
〔え、そうなの?!?!どゆこと?!瞑想深すぎだろ…てことは、ゲームすることでかのあは既に修行をしていた…?!〕
潮
〔まぁ、それでなくてもかのあちゃんは普段から強烈なアンチに耐えまくってるからなぁ〕
〔毎日苦行に耐えてると思ったら、実は春さん並みに修行してるのかもしれん〕
かのあるふぁ
〔確かに苦行ではある…〕
〔でもかのあはそれ以上に、活動自体が楽しいから万事オッケー!!〕
〔楽しいだけじゃないけど、好きな活動して誰かを笑顔にしてる自分を誇りに思ってるよ!!〕
春一
〔俺をすごいみたいに言ってくれてるけどさ〕
〔かのあちゃん、君は本当にすごい子だよ〕
かのあるふぁ
〔ええ!?なんか唐突に褒められて草!!!〕
蛍
〔ええと…おめでたい話から一体なぜ かのあが凄いって話になったのか…〕
潮
〔かのあちゃんの凄いところなんて話してたらキリないからこのくらいにしとこう〕
かのあるふぁ
〔えぇ?!ホント?!別にもっと聞きたいけど?!?!〕
潮
〔いや かのあは3上げて5落として7上げるくらいが丁度良いんだよね〕
おその
〔絶妙に分からなくはないな〕
かのあるふぁ
〔何で一回マイナスにするの!!てか最後はMAX値にしろや!!〕
春一
〔まぁまぁ〕
〔そんな感じで以上、近況報告も兼ねた連絡でしたということで〕
〔それじゃ 春祭り当日、楽しみにしてるねー〕
潮
〔はーい〕
〔お気をつけて〕
あまねん
〔楽しみにしてます、お気をつけて〜!〕
ーーーそして、春祭り当日。
立派な春祭りの看板を掲げた、商店街の入り口。
そこへお昼前に集合した面々は、いつも以上に活気のある賑やかな商店街を見て思わず感嘆の声をあげた。
「いいねぇ、盛り上がってますねぇ」
「めっちゃ良い匂いする!!!やばい!!!」
食欲のそそる匂いに迎えられて、通りへと足を踏み入れる。
ゆっくり歩くレーンと通常のレーンに区分された通りは、人が多い中でもしっかりと配慮があり、確実に幾分か進みやすくなっているようだった。
「これが例のレーンか。いいね、心配りが見えるのって」
「あれ。あっち側に向かってる人が多いけど、皆大広場に移動してるのかな?」
「確か、お昼は軽食がメインで出てるんじゃなかったかな」
「美味しいものたくさんのお祭りでホント最高」
「止まってメニュー見よー」
休憩スペースで立ち止まり、持ってきていたチラシや、公式ホームページからダウンロードしておいたデータを各々確認する。
「夕方からの晩ごはんプレート企画でも色んなものをたくさん食べられるように、ってことで、お昼は軽いメニューが多いみたいね」
「お祭りって夕方までだらだら買って食べちゃうもんね。終わった後お腹の空き具合微妙で、夜何食べようか迷うやつ」
「お。和食屋さんから、だし巻き卵とおにぎり出てるらしいよ」
「私はね、お肉屋さんがパン屋さんと合同で出してるハンバーガーが気になってるんだ〜」
「わいは喫茶店のホットサンドとコーヒーっすね」
「いや聞いてるだけで限界にお腹空くよーーー!!!全部美味しそうすぎて結局夕方を待てずにお腹いっぱいになりそう!!」
「お子さま用のメニューもたくさんあって、すごく良いね〜。お昼は屋台みたいにして出てるみたいだよ」
「楽しみすぎるー!!早く買いに行こう!」
そうして、うきうきしながら足を踏み入れると。
混雑しないように考えられた大広場には、お店の名前が掲げられた屋台がずらりと並んでいた。
その大広場の前の広い芝生では、商店街のキャラクターが描かれたレジャーシートが大中小と用意されており、商店街でお買い物した人に無償で配られている。
かわいらしいモチーフのピンで四隅を軽く打ち込めば、小さなお子様連れでも気軽に食べやすいイートスペースとなり、既に多くの人が利用して食事を楽しんでいた。
他にも、机や椅子など十分に用意されており、大広場は「美味しいを楽しむ」ことをコンセプトに作られた今回の春祭りにおいて申し分ない空間になっていた。
「すごいなぁ。色々考えられてるのが素人目にも分かるね」
「ステージの演者さんとかを呼ばない代わりに、そこのコストをレジャーシートとか持ち帰り用の紙バックを作って配る分とかに充ててるんだって」
「ええやん」
「そこに行っただけで何か貰えるのってすごくいいね〜」
「今回限定のグッズが貰えるわ、人多いのに混雑してないわ、道どころかゴミ箱すら綺麗だわ、運営さんの頑張りが見えますなぁ」
「そういえば、こんなに人がいるのにゴミとか全然ないね。どのゴミ箱も本当に綺麗。というかあのゴミ箱いいなぁ、分かりやすくて捨てやすい」
「人混みにあんまり疲れないのもすごいな〜。レーンもそうだし、整備の人の誘導とかもあって歩きやすいね」
「え?!てかねぇちょっと待って、さっきからBGMめっちゃ良くない?!普通に好きかも!!どのフリー素材か教えてほしい!!」
「えーと、おそのの幼馴染の人が作ったって聞いた気がするけど。あ、ほら。チラシに載ってるよ。BGM制作…理助さんだって。URLも載ってる」
「チャンネル登録するわ!!」
「さてさて、それじゃどんどん好きなもの買って行きましょうかね」
「「「はーい!」」」
たくさんの屋台の列に、それぞれ並んでいく。
そして周はハンバーガーを、蛍はホットサンドを、潮はだし巻き卵とおにぎりを、かのあはお子さまバスケットを各々買い終えたところでーーー、
「やぁやぁ諸君、ようこそ春祭りへ」
「あ、おそのキターーー!!やっほー!!お疲れー!!!」
スタッフの腕章をつけ、ライスバーガーを手に持ったおそのと合流。
その楽しそうな笑顔に、はなやぎの面々の顔も綻んだ。
「お疲れー。お昼休憩?」
「そうそう。お客さんが大広場に集中してる内にささっと食べちゃおうと思って」
「いいね、じゃぁ早速かわいいレジャーシートもらって芝生に移動しますか」
「ねぇねぇ、それ何のライスバーガー?!美味しそう!!」
「チキンカツしそ明太チーズやね」
「何それめっちゃ美味しそう!!」
「トッピング自由なのよね。ここ、最近商店街の空き店舗に入ったお店なんだけど、テイクアウトも配達もやってるからおすすめよ」
「最高じゃん」
「はなやぎのテイクアウトメニューが増えたね」
お昼休憩に入ったおそのと話しながら芝生へ移動していると、一際目立つ家族連れを発見した。
かのあが おーい、と手を振ると、全員が嬉しそうに手を振り返す。
「こんにちはー。三鼓家の皆さん、お揃いで」
「おー、来たか」
「「こんにちはーー!!」」
「ファーーー…!春一ジュニアズ…顔整いすぎぃ……」
三鼓家の面々と合流して、隣のスペースにレジャーシートを広げる。
落ち着いた後に改めて向き合うと、春一のお嫁さんがぺこりと頭を下げた。
「こんにちは、春一の嫁の詩津です。主人がいつもお世話になってます!」
「初めまして、こちらこそいつもお世話になってます〜!体調は大丈夫ですか、無理せず!」
「ありがとうございます!随分良くなりました」
「こんちゃーーー!!春さんからいつも美味しいもの頂いてますーー!!!あざますーー!!」
「良かったです!私もクロモンの実況見てました、わずかでもお祝いできて嬉しいです」
「お…あ…あ…なんてこった…初めまして……美人すぎる……!」
「ファ…眩しすぎて直視できん…これが陽の気…後光が見える…!」
「なんか、過剰に褒められている気が…。初めまして!これからもよろしくお願いします」
「よ…よろしくお願いしまっしゅ…!」
「あ、あの…お、お身体っ大事にされてくだしゃ…!」
「独特なコミュ障発動するのやめて?」
あわあわする蛍とおそのに、潮が呆れて言う。
詩津はそんな潮に向かって改めて笑いかけた。
「潮ちゃんはお久しぶりだね。ところで、こちとらもう毎日のように更新待機中なんだが?進捗はいかが?」
「お久しぶりです。あざす、鋭意執筆中ですしばしお待ちを」
「推しの出番は5割り増しで…頼む…!今妊娠中のメンタルジェットコースターで、潮ちゃんの小説が私の生きる糧になってるから…!」
「安心してください。詩津さんの為に今、そのキャラのサイドストーリー書き進めてるんで」
「本当!?神現る!」
「あれ?これはもしかして、思った人と違うかもしれんな…」
「後光が差してるのは間違いないんだけど、もしかするとこっちが焼け焦げないタイプの後光かもしれんなこれは…」
「俺にはその後光ってのはちょっと分かんないけど。詩津の部屋にはさ、付き合ってる時から持ってる薄い本とか、いまだに普通に本棚に置いてあったりするよ」
「神絵師による逸品ぞ。私の宝物ぞあれは。いつでも目につくところに置いて癒されてます」
「子供が産まれてからはなかなか行けなくなったけど、コミケから帰宅した後はこの人部屋にこもっちゃうからさ。数日一言も交わさなかったし連絡もなかったなぁ」
「おぉ…何やら同じ匂いがしますねぇ。こんな美人が…最高かよ…」
「詩津さん、よかったら後で語り合いませんか。あとよかったら私の作ったコスプレとか着ませんか」
「急に流暢に喋り始めてて草」
「ぜ…是非お願いします!ちなみに蛍先生、単行本全部持ってます。美尾推しです」
「美尾推し…!?分かってらっしゃる」
「もし差し支えなければ名賀くんとの絡みが多いととても助かるんですが…!」
「美尾名賀です?名賀美尾です?」
「あ、へへ…美尾名賀で…へへ…」
「へへ…了解っす…へへへ…」
盛り上がっている横で、春一は2人の息子の背中に手を添えて、自己紹介するよう促した。
「さて、お母さん達は楽しそうだから。2人はこっちでご挨拶できるかな」
「こんにちは、綾瀬です!小1です!」
「こんにちは、織寿です!年長さんです!」
「か…かわいい〜!」
「待ってイケメンすぎる…!!やばすぎでしょ顔面!!」
「顔面言うな」
「おれね、かのあさんのゲームのやつ見てるよー!にろ!」
「えNIRO見てんの!?やば!!小1で逸材現る!!FPS好きなんだ!」
「子供に人気のジョナバルーンショットあるじゃん、あれ2人ともめちゃくちゃ上手いよ」
「ジョナバル!?かのあお姉ちゃんもジョナバルめっちゃ得意だよ!今度一緒に遊ぼう!!」
「ホント!?やったー!」
「春一ジュニアのFPS力、とくと味わってやろうじゃないか!!」
「ちなみに俺譲りの動体視力だからね。ただのキッズじゃないところを見せつけてやれ2人とも」
「「はーい!」」
「一緒に遊ぶ日呼んで〜。お菓子いっぱい作っちゃうから!」
「「やったー!」」
楽しそうな2人に、周とかのあの顔も綻んだ。
初めましての交流を済ませて朗らかな空気に包まれる中。
潮がきょろきょろと辺りを見回す。
「ところで、芹と萌は?」
「さっき合流して、お昼ご飯買いに行ってたけど。あ、ほら」
春一の言葉に潮が振り返ると、多くの視線を集めながら大広場からこちらへ向かってくる芹と萌の姿が見えた。
はなやぎの面々に気がついた萌が、目を輝かせて駆け寄ってくる。
「わーい!みんないるーー!!」
「萌、転ぶから走らないよ」
芹も小走りでその後を追い、大広場にはなやぎのメンバー全員が合流した。
「芹さん。春色のカーディガン素敵です」
「ありがと」
「ねぇねぇ、見て、萌のお子さまバスケット!」
「あ!萌ちゃん、かのあと一緒だよー!!」
「ほんとだー!おそろいだね!」
「セリーは何買ってきたの?良い匂いする〜」
「クレープ屋さんのお惣菜クレープ。ヤンニョムチキンとサラダと、あとチーズが巻いてあるやつ」
「チーズとろっとろじゃん!うまそー」
「早速食べまっしょい」
レジャーシートをくっ付けて、全員で元気良く「いただきまーす」と手を合わせる。
各々の昼食を広げて、まずは一口。
その美味しさに、思わず自然と頬が緩んだ。
「おいしーー!!さいこーーー!!!」
「美味しいなぁ」
「春さんのは何すかそれ?」
「魚屋のミニ海鮮丼と、あさりの味噌汁だね」
「うわー!迷ったんだよなぁ海鮮丼。あさりも良い匂いするー」
「ぼくはね、ちらし寿司だよ!」
「おれはお好み焼き!母ちゃんはビビンバ!」
「全部美味しそう…」
「この上、夕方からはまた別メニュー出るって。マジすかおそのさん?」
「今回飲食店は料亭の息子を中心にめちゃくちゃ張り切ってるからね。うちが大広場に出るのは夕方からだけだけど、昼から大広場に出てるお店は本当に大変だったと思う」
「でもいいよね、大広場だけでご飯が解決するから、歩き回って探さなくていいし」
「そうそう。結局お祭りって、お店の中より屋台とかでご飯が完結しがちだからさ。フードロス対策もあって大広場に出てるお店は今日だけ店舗では営業しないことにしたみたい。その代わり座って食べられる場所はかなり多く設けてるね」
「どんなメニューがあるかお店に入らなくても分かるし、美味しそうなお店も探しやすいし、すごく良いと思います。確実に次に繋がるよね」
「分かる。俺ここの魚屋さん行ったことなかったけど、今回で好きになったよ。血抜き処理完璧。魚買う時は次から此処で買っちゃうわ」
「テイクアウト用の紙バッグもかわいいし。ごひいきに、のフォントも好きだな。お気に入りのお店が見つかったら通っちゃいそう」
「いやぁ、春祭りの企画書5冊分が報われますわ」
「練りに練ったんだねぇ」
「多分今日終わったら数日燃え尽きるよ我々」
皆んなで和気藹々と食べ進める昼食。
雰囲気の良いBGMに癒されながら、話は弾んでいく。
「あー、こんなに美味かったらもう、夕方からの企画も楽しみだわ」
「まぁまぁ、飲食以外もめちゃ頑張ってるから、夕方までそのへんも行ってみてみ。今回ハンドメイド作家さん達に協力してもらって、色々かわいいものが出てるよ」
「あ!そうそう!今回本屋さんが作家さんと一緒に作ったっていう、しおり!前情報出てから絶対欲しかったんだよ私!行かなきゃ!」
「気に入った作家さんの商品が買えるページは、ホームページから飛べるようになってるんだ。セリーにも協力して頂きました」
「いやいや、服屋さんに私の作品ブースを設置して頂けるってことだったんで。私は喜んで出しただけですが」
「お、それは見に行こうぜ。そして買おうぜ」
「あ、ハンドメイド友達がね、時計屋さんで時計をモチーフにあしらったハンカチとか小物を置いてるんだけどね。かわいいからオススメ」
「ええやん」
「あと、文房具屋さんでも、別の友達がシャーペンとかボールペンにつけられるアクセサリー置いてるから、そっちもオススメしとく」
「全部行こうず」
「遠方の作家だから、お祭りの日に行かなくてもこうやって並べてもらえて嬉しいって言ってたよ」
「こちらこそ協力してもらって助かりますよ。良いものはたくさんの人の目に触れるべきだよね」
「私、芹ちゃんの作品、午前中に早速買いに行ったんですよ。文房具屋さんにも行って、ほら、これ…あ゛!いたたた…!」
鞄からハンドメイド作品を取り出して見せた詩津が、辛そうに顔を顰める。
一瞬でその場にいた全員が慌てふためいて、その身体を労った。
「母ちゃん大丈夫?」
「だ、大丈夫ですか?!きゅ、救急車ですか?!」
「あ!いや、大丈夫、大丈夫…!お腹の子がめちゃくちゃ元気良くて…あばらを蹴られると思わず声が出てしまうんです、お騒がせしましてすみません…!」
「なんだー、良かった!ぼくびっくりしちゃった」
「あ゛ーーー私もびっくりしたぁーー良かったあぁーーここで産まれちゃうのかと思ったーー!!」
「お腹の赤ちゃんに内側から攻撃受けるの普通にめっちゃ辛そうなんだが」
「私も萌によくやられてたなぁ…頭で膀胱押されるのもキツいですよね」
「そう…それが正直一番辛いよね…ただでさえ圧迫されてトイレ近いのに…」
「まじで大変そう」
「お腹大きいとトイレ行くのも一苦労だからね。貧血だし」
「あの、本当に無理しないでくださいね。トイレは、コミュニティホールの中のトイレが一番広くて綺麗ですよ」
「有難う…!その情報めちゃめちゃ助かります」
後で行こう、と微笑んだ詩津。
優しくお腹をさする詩津の姿に、大事ないと分かったはなやぎの面々はほっと一息ついた。
「いや、しかしすっごいなー!お腹の中に赤ちゃんが入ってるって、本当に不思議!!」
「体辛くないですか?テーブルに移動します?」
「大丈夫です、お気遣いありがとうございます!」
「見てるだけで大変そうだ」
「あの、詩津さん。お腹って…触っても…良かったりしますか…」
「勿論です!待ってくださいね、動いてるタイミングで触ってもらいたいなぁ…」
「はわわ恐縮です…!」
「かのあもーー!!」
「う、動いたぁ!」「私も、私も!」
と、楽しそうな様子を眺めた後、潮は隣でフライドポテトを食べる萌に微笑みかける。
「萌、いとこが増えるね。嬉しいね」
「うん!萌ね、いっぱい遊んであげるんだ」
「なんか、萌がお腹にいたのがもう4年も前のことだから…詩津さんのお腹見てたら懐かしくなっちゃう」
「芹の大きくなったお腹撫でた時のことまだ覚えてるよ。あの時動いてた赤ちゃんが、萌なんだよなぁ。不思議だわ」
「萌も、ひめちゃんみたいにママのお腹にいたもんね!」
「お。もしかして、お腹にいた時のこと覚えてるの?」
「ふふ。内緒!」
「内緒かぁ」
和やかな雰囲気の中、美味しい昼食はあっという間に食べ終わった。
片付けをしながらゴミ箱を見つけようと顔を上げた蛍だったが、慌ててさっと視線を下げる。
「いやぁ……今更ながら、三鼓家とご飯は目立ちますなぁ。こんなに端っこなのに視線を感じるのやばすぎるよ。普段自分がどれだけ誰の視界にも入ってないかって思い知らされますわ」
「大体はなやぎにこもってるもんね」
「3日くらい引きこもって寝ずに漫画描いて、明け方にコンビニ行った時の空気しぬほど美味いよ本当」
「やばいこと言ってるって」
「太陽を浴びなさいよ太陽を」
「煮詰まった時に外に出て月の光は浴びてるから大丈夫。あと、太陽はセリーに会った時に眩しいって感じるからそれで充分」
「それビタミンD出るの?」
「溢れ出る」
「溢れ出ないで。外出て」
「今日は眩しい三鼓家にも会えて、いい天気で太陽も浴びれて最高ですわ。たっぷり充電してまた部屋に引き篭もるよ」
「私もほとんど変わんない生活だから何も言えんわ。篭ろうぜ相棒」
「かのあも篭もるーー!!」
「君たち…はなやぎ館があって本当に良かったね…」
春一がしみじみと言ったところで、片付けは終わり。
レジャーシートを畳んで、忘れ物の確認。
ゴミ箱へゴミを捨てて、面々は大広場を後にした。
「さてさて、引き続きお祭り楽しみますかー」
「せっかくキッズが3人いるんだし、子供用のイベントも行こうよ!!かのあも楽しみたい!!」
「子供用のイベントはこっちの通りにあるよ。突き当たりで隣の通りに入ったら雑貨屋さんとかいっぱいあるから、マップ見てみて」
「いいね。その後こっちに行けばパン屋にも行けるじゃん」
「ルート良すぎぃ!完璧ぃ!」
「んじゃ、私は休憩終わりだから。また夕方の大広場で会いまっしょー」
おそのが手を上げて和菓子屋の方へと歩いていくのを、全員で見送る。
「また後でねーー!がんばってーー!!」
「ふぁいとー」
「ありがとーまたねー」
おそのと分かれて、一行はひとまず先程説明のあった通りの方へと向かうことにした。
「芹と萌もアイデア出したって言ってたけど、何のイベントがあんの?」
「えっとね。今持って歩いてる子も多いけど、おもちゃ屋さんの前で風船を膨らませるお手伝いをすると、手首につけて歩けるミニバルーンが貰えたり」
「かわいいお手伝いだなぁ」
「あとは、駄菓子屋さんで3つ買ったらスタンプカードがもらえるんだけど、各店舗とかスタッフの腕章つけてる人からスタンプ押してもらえたり」
「スタンプラリーはやっぱ何やかんや楽しいよなぁ」
「スタンプの個数ごとにもらえるものがちょっと違ってね。全部集めると、各個数ごとに貰えるプレゼントを全部入れた、商店街のキャラクターの保冷エコバッグが貰えるよ。商店街の出口で交換してもらえるんだ。年齢制限なし」
「よっしゃ張り切ってやるぞーー!!!」
「あとは、ふれあいホールで本格的なお買い物のおままごとができたり、外の小さい広場でボールプールが出てたり。大したことは言えなかったけど、私が提案したのはこのくらいかな?他にも色々やってるみたいだよ」
「萌、楽しみ!早く行こう!」
「ぼく、あの風船ほしい!」
「おれスタンプめっちゃ押してもらう!!」
「よっしゃ、行きますか」
子供用のイベントがある通りでは、たくさんの子供たちが楽しそうに笑っている様子が窺えた。
萌と綾瀬、織寿もそこへ加わり、大人も置いていかれないように小走りで向かう。
「詩津。2人のこと見とくから、好きなとこ回ってきたら?子供たちについて回ったらしんどいだろう」
「確かに」
「えっ…でもそんな…いいの?」
「お、そしたら詩津さん。良かったら私と色々見て回りませんか。何かあった時に1人じゃ危ないですし」
「えっ?!蛍先生と?!いいんですか?」
「話したいことも色々ありますし…へへ…」
「嬉しい…!」
「楽しんできてください!」
「じゃぁ、都度連絡取りながら。夕方また合流しますか」
「了解、ありがとうね。皆さんもすみません。綾瀬、織寿。パパとお姉ちゃんたちの言うことよく聞くんだよ」
「「はーーい!!」」
「ちなみに…まずはおトイレに行ってもよろしいでしょうか蛍先生…」
「勿論です最優先でしょうそれは!なんだっけ、コミュニティホール…マップマップ、マップ見なきゃ」
蛍と詩津が別行動することに決まり、コミュニティホールの方へと歩いていく。
その後ろ姿を見送ってから、面々は改めて通りを見遣った。
「よーし、楽しむぞー!」
「パパ、ぼくもおしっこ…」
「春一おじさん、萌もおトイレ行きたい…」
「よーし、トイレ行くぞー!」
「まずはトイレだね。あっちにあるみたいだよ」
「いそげいそげー」
ーー春祭りの前半を終え、子供たちの笑い声と一緒にどんどん活気付いていく商店街。
美味しいと楽しいを携えて、お祭りは後半戦へと向かっていく。
* * * * * epilogue
(今回、各トイレに子供用の取り付け便座が備えつけられてるんだって)
(ありがたすぎるだろそれ)
(これからもイベントの度に使用するからってことで、結構な数用意したみたい)
(じゃぁ今回持ち運び用の折り畳み便座出さなくていいのか。良いこと聞いた、よし男子トイレ行くぞー)
(はーい)
(綾瀬も行っとけよ)
(えー?おれ出ないよー)
(絶対トイレ出て10分くらいしたらトイレ行くって言い出すんだから)
(えー。はーい)
(お利口さんだなぁ)
(かのあ5歳くらいまでおむつだったからなー。萌ちゃんすごいよー!)
(萌、おむつかゆいかゆいになっちゃうから頑張ったの)
(かわいい…)
(おむつのところ汗で肌荒れしちゃうんだよね。トイトレさせて、すぐ外せたから本当に良かった)
(えらいなー!かのあ今でもトイレ行くの面倒臭くて、いっそおむつにしよっかなーって迷う時あるのにぃ)
(20歳過ぎておむつ迷うのやめて?)
(上手におトイレできたよー!)
(萌ちゃんすごい!!えらい!!)
(折り畳み便座ってどうしてもちょっと薄いから、こうやって補助便座置いててもらえるとすごい助かるよ。周、荷物持っててくれてありがとう)
(ううん、全然大丈夫!でもお母さんって、持って歩くものいっぱいあるんだね…。折り畳みの便座と、お尻拭きと、ゴミ袋とティッシュとお着替えとタオルと、おやつと…他にもたくさんだ。セリーのお母さんの部分見ると何か、ふあーっていう気持ちになるんだよね。分かる?)
(めっちゃ分かる。何かきゅんっていうか、とぅんくっていうか)
(何それ。けど、赤ちゃんの時はもっとたくさんあったからなぁ。そう思ったら、萌も大きくなったね)
(うん!萌、たくさん大きくなって、おねえさんになるんだー)
(かわいい…)
(かわいい…!!)
(それでね、ママと今よりもーっと、いーっぱいお出かけするの)
(かわいすぎだろ!!)
(さて、じゃぁ外に出て、お祭り楽しみますか)
(はーい!)
第十七話(一) 了




