妖精管理官は出勤中 その一
班目優斗は、不安定な世情に対応するために大学は法学部に進み、公務員の資格を取って警察庁に入庁する事も出来た。
だが、自分が配属された部署が対妖課だったことで、自分の選択がどこで間違ったのか頭を抱えて悩むしかない。
妖精管理官は、まず魔法使いでなければ事件に対応できやしないのである。
よって、対妖課の妖精管理官は、対妖課のドルイドとしか呼ばれない。
「おかしいよ。童貞だがまだ三十になっていないし、幽霊だって見たことが無い鈍感な俺がどうして対妖課?ドルイドになんなきゃならないわけ?」
班目は自分の手の中にある配属書を何度も見直していたが、そこに印字されている字が変わることはなく、華々しい人生設計が崩れていく音しか聞こえなくなっていった。
「ああ、ちくしょう。どうして五年前に世界が滅びなかったのか!」
ばん!
背中を大きく叩かれて、班目は驚きながら後ろを振り返った。
そこで班目は目を瞠った。
そこには大柄で派手な男が立っていたのだ。
百七十四センチしかない班目が見上げる事になるぐらいに、班目の背中を叩いた男は長身で、きっと百九十近くはあるのだろうと班目は考えた。
ただし、背が高いから圧倒されたのではない。
その男が目を瞠るぐらいに整った姿形だったからだ。
長身の身体は細身であるが警察官らしく鍛え上げられている上に、手足はモデル並みに長くてしなやかだ。
浅黒い肌に似合う彫りの深い目鼻立ちには、闇夜のような真っ黒の瞳が輝き、髪の毛は烏のように艶やかな黒味である。
そんな美丈夫は班目を見下ろして、ふん、と鼻を鳴らした。
あ、そうか、先輩には挨拶か!
班目はそう気が付いて急いで敬礼をした。
「わたくし、本日より配属となりました、班目優斗と申します!」
男は左手で口元を押さえて、さらに班目を右手で突き飛ばした。
「何を!」
班目は突き飛ばされて気が付いたが、班目がぼやッと立っていたそこは男子トイレの入り口で、美丈夫はそこに駆けこんでいくや、物凄く大きな嘔吐の音を中から響かせてきたのである。




