地方の現状(港町の場合)中
−行政施設に行った血晶騎士団員−
「へえ〜、ここが行政施設ねえ。随分と普通なもんだな。人の出入りが少し少ないか? まあいい、とりあえず監視だな」
騎士団員は近くの店で食事をしながら様子をうかがったり、裏道でぼろ布をかぶって浮浪者のふりをしたりしながら、行政施設を監視し続けた。
その甲斐もあって、騎士団員は裏口から行政施設に入っていく人々の中に、妙な連中が混じっていることに気づいた。
「なんだあ、あの武器を持った、服装だけは一丁前な汚そうな男たちは? 行政施設の人間っていうより、犯罪者みてえな野郎だな。……裏口は閉まってるから、しょうがないか」
騎士団員は裏口から入れないことを確認すると、施設内部の会話を聞き取るため、声を抑えて血晶魔法の詠唱を始めた。
「我、血晶騎士団なり。其の秘を暴きたまえ」
魔法が発動すると、施設内部から男たちの会話が聞こえてきた。
「あーあ、あの店の女、金を払いきやがったよ」
「あの女、いい女だからなあ。金を払わずに、そのまま好き放題したかったんだがなあ」
「ギャハハ! お前、あんだけの人数を犯しても、まだ足りないのかよ!」
「いやいや、しょうがない、しょうがない。金を払わない店の野郎が悪いんだよ。俺は慈悲で、女を差し出せば金の支払いは延期してやってもいいぜ、って言ってるだけだからなあ」
「ふへえ。その後、女を殺しちゃ意味ないだろうに」
「女が戻ってこないって知った男の顔は傑作だぜえ!」
「その男も使い道があるんだから、あんまり暴行して殺しすぎるんじゃないぞお。キャハハハ!」
騎士団員は聞こえてきた内容に顔をしかめ、手を握りしめた。
住民を脅し、女性を犠牲にし、それを笑い話にしている。騎士団員は怒りを覚えたが、今はまだ動くべきではなかった。
まずは、金を徴収しているのが誰なのかを探る必要がある。
騎士団員は再び血晶魔法を使い、自分の姿を隠すことにした。
「我、血晶騎士団なり。この身を惑わせたまえ」
魔法を唱えた騎士団員の姿を見つけられる者はいなかった。
騎士団員は行政施設内部の喧騒をよそに、書類が積まれている場所へと向かった。そこで目にしたのは、帝都用と書かれた決裁書類だった。
「おいおいおい、きったねえ書類だなあ。しかも、帝都用って書いてあるぞ。……ん? 帝都からもらっている金の使い道が『市民の安全確保』って書いてあるんだが? 市民の安全確保に金をかけてんのか、この町は?」
しかし、先ほど聞いた内容に関係する書類は見つからなかった。
騎士団員は、こういう場合、大抵は偉い人間のところに書類があるものだと考え、代官の部屋へ向かうことにした。
代官の部屋には、多くの検知魔法具や罠が仕掛けられていた。しかも、代官本人も部屋にいた。
それでも騎士団員は、気づかれたり検知されたりすることなく、書類を探し続けた。
そして、2時間後。
「ははっ、見っけ! 何々……店からの不当な料金徴収? 町人を売ったり、弄んだり? 帝都からの資金を使って海賊団の残党を雇い? 金は私腹を肥やすために使いまくってる? なんでこいつ、代官になれたのお?」
書類を読み進めた騎士団員は、さらに驚くべき事実を知った。
「あっ、代官になる前から海賊とつるんでて、無理やり代官になったのね。殺してやろうかこいつ」
騎士団員は代官を殺したいと思った。
しかし、代官を殺しただけでは根本的な解決にはならない。海賊の残党もどうにかしなければならず、連中を全滅させる必要もある。
騎士団員はひとまず行政施設を出て、もう一人の騎士団員と合流することにした。
「お前の方はどうだった?」
「真っ黒、真っ黒だぜ。行政施設はよお。まともな奴は辞めさせられるか、もっと酷いことに遭ってるかもなあ」
「港にそいつらの船があったぞ。おそらく、船の中に勢力図や人員に関する情報があるはずだ」
「これ、応援を呼んだ方がいいよなあ」
「俺ら2人でも勝てはするが、逃がしたり、無駄な犠牲が出たりする可能性があるな」
2人は魔法通信で帝都に連絡し、港町の現状や応援要請、海賊団の残党についてなど、さまざまな情報を伝えた。
帝都もこの事態を重要視したのか、応援はすぐにやって来た。
それも、一番強いタイプの奴らが。
2日後。
街から離れた場所に、血晶騎士団の鎧を着た集団がいた。
その前には、騎士団長でもあるカテルベクスの姿もあった。
全員が剣を上向きに構え、街の方へと向けた。
まるで、港町に巣食う悪を狙い定めているかのように。
―作者です―
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