地方の現状(港町の場合)上
−血晶騎士団視点−
2人は3日後、怪しいとされた港町に到着した。
その町は規模が大きく、人通りも多かった。一見すると、特に問題のない活気ある港町に見える。
「何事もなく着いたな」
「そうだな……見た目には、特に異常がなさそうだ」
「いや、だからこそ妙なんだ」
「何がだ?」
「店に入っていく人の服装を、よく見てみろ」
「服装って、確かにみんなしっかりした服を着てるな。裕福そうな人ばかりじゃないか」
「そう、そこだ。町を歩いている人数に比べて、店の数が少ないと思わないか? それに、これだけ大きな港町なのに、町全体の様子がどこか不自然なんだ」
「言われてみれば……確かに妙だな」
「だろ? まあ、今の段階じゃ何とも言えん。手分けして調べてみるか」
「そうだな。そっちも気をつけろよ」
そこから2人は別れて行動することにした。片方は港町の行政施設へ、もう片方は店や港を調べることになった。
−港に来ている騎士団員−
「さて、港に来たわけだが……普通の港町に比べて船が少ないな。それに、あの船が掲げている旗、どこかで見たことがあるような……。しかも、あの船の船員、なんか汚ねえな」
船について詳しいわけではなかったが、騎士団員は港の様子に違和感を覚えていた。
しかし、見た目だけで判断するわけにもいかない。まずは情報を集めようと、港町の住民に話を聞いてみることにした。
人目につく場所で聞けば、情報が漏れる可能性もある。そこで、路地裏で座り込んで酒を飲んでいる老人に声をかけることにした。
案外、こういう浮浪者の方が、町の事情をよく知っていたりするものだ。
もちろん、情報を聞き出すための代価も用意してある。帝都で売られている、自分用に持ってきた酒だ。
「なんじゃ、ここらじゃあ見ない顔じゃのお。ひっく」
「すまんが爺さん、この酒をやるから、今この港町で起こっていることと、あの汚ねえ船のことについて教えてくれねえか」
「なんじゃ、そういうタチか。……って、この酒は帝都の酒じゃねえか! こんなもんをもらえるんなら、少し弾んで教えてやるよ」
酒を受け取った老人は、上機嫌に話し始めた。
元の代官はまともな人物で、町人や港を大切にしていたらしい。しかし、代官が新しく変わった途端、町の様子は一変したという。
輸入品には謎の追加料金が課され、町で営業する店からも上納金をせびるようになった。しかも、金を払わない店には、金で雇われた海賊が押し入り、店を荒らしていくのだという。
「へえ、随分と好き勝手やっている代官じゃないか」
騎士団員は呆れたように呟いた。
代官という立場を利用して住民から金を巻き上げ、逆らう者には海賊を差し向ける。これが本当なら、到底許される行為ではない。
「……そうか。あの旗は、ここら辺の滅んだはずの海賊の旗だ! てっきり、もういなくなったものだと思っていたんだが、こんなところにいやがったのか」
「気をつけろよ、若いの。あれは生半可な気持ちで手を出していい奴らじゃない。恐ろしく腕が立つし、残忍じゃ。自分たちを血晶騎士団と同じくらい強いと言っておるし、実際、そのくらい強いと思うのじゃ」
「へっ? あれが? 血晶騎士団と同じねえ……。にわかには信じられないが、まあ、忠告は受け取っておくよ」
騎士団員はそう答えたものの、老人の忠告を軽く受け流すつもりはなかった。
海賊の強さについては、まだ確かなことは分からない。しかし、滅んだはずの海賊が港に現れ、代官がその存在を利用しているのだとしたら、単なる汚職では済まされない問題だ。
「気をつけろよ、若いの。おぬしはおそらく、連絡係のようなもんじゃろ。上にしっかりと伝えておくれよ」
「そうかもしれんなあ、まあ情報提供、感謝するぜ」
そう言って、騎士団員は片手を上げ、その場を去っていった。
住民を苦しめる代官と海賊。その実態を知ったことで、騎士団員の胸には怒りが込み上げていた。
一方で、忠告をしてくれた老人のことは、なかなか面白い人物だとも思っていた。
騎士団員は怒りを胸に秘めながらも、口元にわずかな笑みを浮かべ、次の行動へと移っていった。
―作者です―
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