地方の現状(農村の場合)
−血晶騎士団視点−
「なあ、俺らって血晶騎士団だよな?」
「そのはずだな」
「なら、なんでこんな走ってるんだ?」
「任務だから……だと思うぞ」
今、俺たちは道を、魔法で肉体と風向きを調整しながら爆走している。
どうしてこうなったのかというと、話は少し前まで遡る。
「俺とこいつに偵察任務ですか?」
「そうだ。正確に言うなら、地方の監査任務だな」
そう俺たちに言っているのは、血晶騎士団の現騎士団長であり、帝国最強の剣であるカテルベクス様だ。
いきなり呼び出されたと思ったら、いきなり地方に行けと言われて、正直困惑している。
「なんだ、不満か?」
「いやっ、不満とかじゃなく、なんでいきなり地方監査なんかするんですか?」
「そうですよ。確かに地方監査は必要ですけど、上の人たちがそういうのを上手くやってくれているんじゃないんですか?」
「それがな、今回はちょっと毛色が違うんだ。どうやら地方で腐敗が蔓延しているのを皇子様が直接見て、直接皇帝陛下に調査の依頼を出したらしいのだ」
「皇子様……あっ、いつも剣に乗って空飛んでる、あの皇子様ですか!」
「ああ、あの人だ。あと、剣じゃなくて、うちの宝具のファリアンクルな。そこ間違えるなよ」
「へー、直接見てきたなら、地方の腐敗も信憑性がありそうですね」
「まあ、俺たち下っ端には拒否権なんて、そもそもないんですが」
「そういうわけだ。準備が出来次第、この港町と農村に行ってきてほしい。とりあえず、この二つが一番怪しいそうでな。見てきてほしいんだと」
「はっ!」×2
準備が終わり、とりあえず近い農村の方に行ってみようと思い、俺たちは2人で道を4日ほど走り続けた。走った方が馬より早いからだ。
そして農村に着いた俺たちを待っていたのは、あまり気分のいい光景ではなかった。
「おらっ、寝てんじゃねえよっ! 起きろ、役立たず! さっさと働けよ、ゴミどもがっ!」
村の中心で、肥え太った男が子供を叩きながら叫んでいた。
周りの村人の中で、おそらく子供の親であろう夫婦が頭を地面に下げながら、何度も許しを願っている。
「どうか、我が子供を殴るのをおやめください! もしお怒りが収まらないのなら大人に! どうか、子供だけはお助けください!」
「黙れえ! ゴミどもは代官である俺に逆らってもいけないし、ガキだろうがなんだろうが俺の持ち物だから好きにしていいんだよお! そういえば、いつ俺に意見を言っていいと言った? お前、生意気だなあ? オラッ! 痛いよなあ。これはお前が俺に逆らったからだぞ!」
男は苛立つと、今度は夫婦を殴り始めた。
「どうか、子供だけでも! どうか!」
「はははっ、無様あああ。死んだ方がマシだな。代官に逆らった罰だ」
男は腰につけていた剣を、初心者丸出しの手つきで抜いた。
そして、夫婦を斬り殺そうと歩み始める。
その瞬間、2人は迷わなかった。
目の前で無実の民が暴行され、さらに殺されようとしている。
男の行動、言動、そして現在の状況、血晶騎士団として、無実の人を斬ってはいけない。
ならば、斬るべきは誰なのか、2人の答えは決まっていた。
現代官であるこの男は、帝国の害である。
自らに肉体強化をかけながら、1人が男を凄まじい力で蹴り飛ばした。
男の体は村の外まで吹き飛んでいき、そこへもう1人が追いつき、拳を顔面に叩き込む。
男はバネのように跳ねながら、さらに森の方へ弾き飛ばされた。
「ぐ……あ……」
起き上がろうと呻く男を前に、2人は血晶魔法の宣誓を始める。
「我、血晶騎士団なり。剣は民のために」
「我、血晶騎士団なり。盾は民のために」
「我、血晶騎士団なり。鎧は民のために」
「我の道を、血晶の名において誓おう」
2人の剣には血晶のような物体が見え始め、鎧は赤く光りだした。
男は必死に逃げようとする、しかし、2人は止まらない。
「死ね」
1人が縦に、1人が横に剣を振る。
男の体は十字に斬り裂かれ、そのまま死亡した。
その後、2人は村人たちに自分たちが血晶騎士団であることを説明した。
代官を殺したのは職務の一環であり、なんの問題もないこと。
そして、あの男は代官として民を守るどころか、民を傷つける帝国の害であり、代官とは呼べない存在だったこと。
突然目の前で代官が殺された村人たちは、当然すぐには納得できなかった。
それでも2人は時間をかけて説明し、なんとか全員を説き伏せた。
やがて村人たちの表情から恐怖が薄れていき、安心と平穏が戻ってきたことを2人は実感した。
「本当に……もう、あの男は来ないんですか?」
「ああ。少なくとも、あいつがこの村に戻ってくることはない」
「よかった……本当に、ありがとうございます……!」
2人は感謝されながら、その村で起きたことや代官について、帝城にいる騎士団長にも分かるように魔法通信を行い、状況を伝えた。
その後、村人たちにこう伝える。
「しばらく代官は来ないが、しばらくしたら俺たちの仲間が来る。だから、それまで協力してほしい」
「分かりました……!」
2人は村人たちに泣きながら感謝されながら、その村を後にした。
しばらく歩いたところで、1人がぽつりと呟く。
「ここまで……酷かったのか」
「皇子様の言うとおりだな」
「この様子じゃ、港の方も何があるか分からねえ」
「ああ。さっさと港に行くぞ」
2人は先ほどよりも早く走りながら、港へ向かっていったのだった。
―作者です―
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