帝国の現状(港町の場合)下
−血晶騎士団団長カテルベクス−
よもや、このような代官がいたとは。挙げ句の果てには、海賊に金を払い、街を襲わせているとはな。カテルベクスはそう思いながら、代官を捕らえ、海賊を皆殺しにするため、街へと剣を向けた。
その剣は、彼自身の信念でもある、帝国のために捧げた剣だった。
カテルベクスは、その場にいる血晶騎士団の全員とともに、大規模強化魔法の詠唱を開始した。この魔法は複数人での詠唱が必要だが、参加する人数が多ければ多いほど強くなる、血晶騎士団お得意の魔法であった。
その場にいる20人による一斉詠唱が始まった。
「我ら! 剣と鎧を国に捧げ! その道を先で作るものなり!」
「我ら! 剣と鎧を国に捧げ! その道を繋ぎ守るものなり!」
「血晶に! 民を! 祈り守らんとする騎士団長なり!」
「血晶に! 民を! 祈り守らんとする騎士団員なり!」
「我らを繋ぎたまえ! 遥か強き血晶よ!」
「我らを繋ぎたまえ! 遥か強き血晶よ!」
詠唱が始まると、全員の周囲に結晶が生え始めた。
鎧は赤く、赤く光り始め、剣には結晶のようなものが線を描くように現れ、見事な色彩を生み出していった。
やがて、強化魔法の詠唱が終わった。
カテルベクスは剣を横向きに構え、腰の位置に据えた。そして港の船を見据えると、街の外から思い切り剣を振り抜いた!
血晶魔法によって強化された剣撃は、その威力を遺憾なく発揮した。
港に停泊していた船は、まるで紙でも切るかのように上下に斬り分けられた。
海賊船の上にいた海賊もどきたちは、身体を上下に分断され、全員が死亡した。船の上部もごっそりと切り落とされた。
しかし、船倉に押し込まれていた町人たちには、一切の被害がなかった。船を沈没させることもなく、海賊だけを仕留めるという神業だった。
その間にも、ほかの騎士団員たちは強化された身体能力を遺憾なく発揮し、行政施設や町の掃討へと向かっていた。
−騎士団員(行政施設)−
「なっ、なんでお前ら血晶騎士団がっ!」
「いやだああ、死にたくなっ……!」
行政施設に向かった騎士団員たちは、目についた海賊を片っ端から斬り殺しながら、代官のいる部屋へと向かっていた。
代官の部屋の前には、少し強そうな海賊がいた。しかし、騎士団の姿を見るだけで恐怖し、片方は叫びながら漏らしてしまう始末だった。
そんなわけで、騎士団員たちは割とあっさりと代官の部屋に入った。
「なっ、なななんで血晶騎士団がっ! 来ないんじゃなかったのかよお⁉︎」
「お前にはさまざまな犯罪の容疑がかかっている。抵抗してみろ! 殺すからな!」
「ひいっ! 俺は何もしてない、してないからああ! 来るなあ、来るなああ! こっちへ来るなああ!」
喚き散らしてうるさい代官を、騎士団員は殴り飛ばした。
代官は冗談のように部屋から吹き飛び、地面に落ちたところで気絶した。
予定どおり帝都へ連れて行くため、騎士団員は代官を縄できつく縛り上げた。そして騎士団員の一人が代官を担ぎ、そのまま走り出した。
その後、残った騎士団員たちは行政施設内を徹底的に掃討し、施設の中を赤く染め上げてから出てきた。
−騎士団員(港)−
「なんで船が上下バラバラになってんだよお! あそこにはっ!」
「知らねえよっ! って、誰だお前っ!」
港に向かった騎士団員たちが目にしたのは、言い争う海賊どもと、何が起こったのか分からず、とりあえず急いで家に戻ろうとしている町人たちの姿だった。
騎士団員は、敵と味方を見分けやすいことこの上ないと思いながら、仲間たちとともに海賊を片っ端から斬り殺していった。
町では強くても、所詮は海賊。正規の騎士団員には遠く及ばない実力しかなかったのだ。
騎士団員が見覚えのある路地裏に差しかかったとき、パニックになった海賊が、今まさに逃げようとしていた老人を斬り殺してどかそうとしていた。
騎士団員は力を込めて剣を投げた。
剣は海賊の背中に勢いよく突き刺さった。その威力は凄まじく、海賊の身体は引っ張られるように吹き飛び、バラバラになっていった。
騎士団員は、見覚えのある老人に声をかけた。
「爺さん、全然海賊は血晶騎士団ほど強くねえぞ」
「おっ、お主、あの時の! 血晶騎士団員だったのか!」
驚く老人を横目に、騎士団員は投げた剣を回収した。そして、まだ街に残っている海賊を掃討するため、裏路地から出ていった。
−血晶騎士団団長カテルベクス−
海賊の掃討は、3時間ほどで終わった。
その後、騎士団員たちは市民に、代官はすでに捕まったこと、そして現在、別働隊が市民の家族を取り戻しに向かっていることなどを伝え、安心させようとした。
しかし、市民たちは突然の事態の変化に混乱していた。家族を取り戻せるかもしれないという希望もあり、街はパニックのような状態になった。
騎士団員たちは、その混乱を抑え続けた。
そして丸一日が経過した頃、別働隊が無事に救出された人々を連れて街へと戻ってきた。
家族が無事だったことを喜ぶ人々がいる一方で、家族が死体となって見つかったり、行方不明のままだったりする人々もいた。騎士団員たちは、そうした人々にも親身に寄り添った。
さらに2日後には、亡くなった人々の葬儀も行われた。
その後、数名の騎士団員を街に残し、ほかの騎士団員たちは帝都へと戻っていった。
帰路につくカテルベクスは、街を救えた喜びを感じる一方で、救えなかった帝国国民のことを思い浮かべていた。
そして、帝国はこれから変わっていくだろうという予感を胸に、帰路を進んでいった。
―作者です―
気に入ったり、続きが気になるならブックマークや感想よろしくお願いします
あなたの応援で執筆しています




