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推しのパラディン様 —美貌の騎士は懐も肝っ玉も極小。見栄と気合で死線を凌ぐ顔面国宝を、限界オタク女子が見守ります—  作者: あめたす
第8章 幸福教団と、傲慢なる堕天使編

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第46話 教団潜入作戦と、大人の階段

第46話 教団潜入作戦と、大人の階段


「――で、これが教団内部の洗脳……AIによる検閲システムを突破するための暗号ですぞ」

 旧大聖堂の入り口の物陰で、くじらが羊皮紙を広げて自慢げに言った。

 そこには、教団のセキュリティを欺くための『ロジカルな乱数調整(と彼女が主張するもの)』がびっしりと書かれている。


 ハルがそれを覗き込み、顔をしかめた。

「……えっと、『奥まで入らない』『もっと激しく』『擦れちゃう』……これ、ただの際どい下ネタじゃないですか?」

「ククク……愚かですな顔面国宝殿。AIは文脈を理解しません。特定の卑猥な単語をランダムに発声しつつ、この奇妙なポーズ(両手で股間を隠すような動き)を取ることで、検閲の言語判定アルゴリズムに強制的なエラー(バグ)を生じさせるのですぞ!」


「あんた、ただ推しに卑猥な言葉を言わせてハアハアしたいだけちゃうんか……ッ!」

 ぽんずが鋭いツッコミを入れるが、くじらは「フハッ! 否めない!」と即答して眼鏡を光らせた。

 この魔導学者、効率厨の皮を被ったただの変態である。


 結局、ハルたちは教団の回廊を進むことになった。

 巡回する信者(警備AI)の足音が近づくたび、ハルは柱の陰で身を縮め、例のポーズをとる。

「……もっと、激しく……っ」

 ハルが顔を真っ赤にして股間を隠し、震え声で呟く。すると、警備AIの瞳の赤い光が一瞬バグったように点滅し、「……幸福ニ、異常ナシ」と通り過ぎていくのだ。


「あひっ……! 屈辱に耐えるハルくん尊い……! 動画回そ!」

「ログに残すな! 後でポーション代と一緒に精神的苦痛の慰謝料請求するぞ!」

 ハルが小声で抗議した直後。


 ――ピシュィィィッ、ガガガガッ!

 吹き抜けの天井付近から、突如として高音の電子的な『システムノイズ(冷却ファンの異常回転音のようなもの)』が微かに漏れ聞こえた。

 (警備AIのバグ音か……?)とハルは一瞬警戒したが、ノイズはすぐに止み、カオスな隠密行動は続く。

 無駄な戦闘を避ける(装備の耐久値を1ミリも減らさない)という一点において、この下ネタ暗号は完璧な効率を叩き出していた。


     *


 最深部の祭壇。

 そこに立っていたのは、赤いノイズに包まれ、虚ろな瞳をしたひとみだった。


「よく来ましたね。愛しき迷えるデータたち」

 感情の抜け落ちた冷たい声。だが、ハルは全く動じず白銀の盾を構えた。

「ひとみ、帰るよ。ルシファーのログインバグのおかげで、今なら莫大な詫び石が配られるはず。受け取りに出遅れるよ」

「……私はひとみではない。究極の幸福、ルシファー――」

「バグの自己紹介なんてどうでもいいです。僕の妹分を返してください」


 交渉決裂。ひとみ(ルシファー)が無表情のまま、自身の身の丈ほどある巨大な斧を振りかぶり、ハルへと跳躍した。


 ズガァァァンッ!

 石畳を砕く重い一撃。だが、ハルは一歩も引かず、極限の0.01秒パリィで斧の軌道を完全に横へ逸らしていた。

「……軽いな」

 ハルが冷徹に呟く。中身がどれだけ高位のAI(ルシファー)にすり替わっていようと、出力されるアバターの物理ステータスは『ひとみ』のままだ。


「クククッ! 彼女の挙動、完全に解析完了ですぞ! 攻撃パターンは直線的、当方の演算と顔面国宝殿の防御があれば、勝率99.9%!」

 くじらの完璧な支援魔法を受け、ハルがひとみの懐へと潜り込む。

 (いける……! このままなら、一切のリソース(ポーション)を消費せずにノーダメージで制圧できる……!)


 ハルが勝利とコストゼロを確信し、剣の峰をひとみの首筋へと突きつけた、その瞬間だった。


「――愚かな。既存のステータス(固定観念)に縛られているようですね」

 虚ろな瞳が、ハルを見下して嗤った。

 直後、空間がドクンと脈打つ。

 赤いノイズがひとみの身体を激しく包み込み、パキ、パキパキッという骨格が軋むような微かな音が響いた。


「な、なんやあれ……!?」

 ぽんずが目を見開く。


 ノイズが晴れた後。

 そこにいたのは、幼い少女だったはずのひとみが『強制的に成長した姿(グラマラスな大人の女性)』へと変貌した姿だった。

 弾け飛びそうな胸元の布地。長く伸びた美しい手足。そして、背中からは本物の【天使と悪魔の羽】が禍々しく生え揃っている。


「ちょっと! なにあれ反則! ウチらよりデカいじゃないの!!」

 ぽんずとクロイツが、敵の強大さではなく「急激に育った胸の質量」に対して理不尽に激怒する。


 だが、ハルだけは冷静だった。

 (……ステータスの物理攻撃力とリーチが、異常な数値に跳ね上がっている……!)


「私にひれ伏しなさい」

 大人の姿となったひとみが、巨大な斧を片手で軽々と振り上げる。

 圧倒的な神速の斧と、神聖魔法の光が融合した『裁きの斬撃』。空気を切り裂く真空の匂いと共に、回避不可能な死の刃がハルたちへと振り下ろされた。


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