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推しのパラディン様 —美貌の騎士は懐も肝っ玉も極小。見栄と気合で死線を凌ぐ顔面国宝を、限界オタク女子が見守ります—  作者: あめたす
第8章 幸福教団と、傲慢なる堕天使編

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第44話 ルシファーのログインと狂気の詫び石

第44話 ルシファーのログインと狂気の詫び石


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【SYSTEM MESSAGE】

▶ 【アカウント:ルシファー】のログインを確認しました

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 無機質な機械音声がハルの脳裏に響いた直後、商業都市アインの空が、不気味な赤紫色に染まった。

 ジジッ……ジジジジッ。

 建物の壁、石畳、そしてプレイヤーの装備。世界を構成するテクスチャの表面に、砂嵐のような赤いノイズが走り始める。


「な、なんやこれ!? 画面がバグってる……!」

「空が変だぞ! これ、システムエラーか!?」

 広場にいた数千のプレイヤーたちが、突如として始まった世界の異変にパニックを起こし、逃げ惑い始めた。


 その混乱のど真ん中で、ハルは一人、右目を押さえてうずくまっていた。

「がっ……あ……!」

 右目から脳髄へ、氷の針を突き刺されたような鋭い冷痛が走る。

 彼の視界(UI)は、他のプレイヤーには見えていない『致命的なエラーコードの羅列』で埋め尽くされていた。


「ハルくん!? 大丈夫!? 目、怪我したん!?」

 ぽんずとクロイツが駆け寄り、顔面蒼白のハルを支える。

「……あああっ……! なんなのこの状況! まるで世界の終末みたいじゃない……ッ!」

 クロイツが赤紫の空を見上げて震える。


 だが、右目を押さえるハルの口元は、微かに、そして異様に吊り上がっていた。


「……詫び石……」

「えっ?」

「詫び石……詫び石……詫び石……ッ!!」


 ハルが顔を上げる。

 その右目には、狂気的なまでの強欲の光が宿り、血走っていた。

 (これだけのマクロなシステムエラー……もしこれが長時間メンテナンスになったら、全プレイヤーに配られる『補填アイテム(詫び石)』の量は天文学的な数字になる……! 俺は、億万長者だァァッ!!)


 世界の終末を前に震え上がるプレイヤーたちの中で、一人だけヨダレを垂らさんばかりの笑顔で『運営からの損害賠償』を計算し、歓喜に震えるハル。


「ああっ……! 見て、クロイツ!」

 ぽんずがハルの狂気的な笑みを見て、涙ぐむ。

「ハルくん……世界の終末(バグ)を前に、一人で戦う覚悟を決めたような、凄絶な笑みを浮かべてるわ……ッ!」

「なんて気高いの……私たちが絶対守らなきゃ……!」

 (違う。ただ金(詫び石)への執着で脳内麻薬がドバドバ出ているだけだ)


 しかし、そのハルの歓喜は、巨大モニターから響いた『ある声』によって一瞬で凍りつく。


『――ふふっ。愚かなデータ(人間)たち』


「……ひとみ?」

 ハルがモニターを見上げる。

 そこには、先程まで明るく歌っていたひとみが、赤いノイズに包まれて虚ろな瞳で立っていた。彼女の背中の『天使と悪魔の羽』が、不吉な黒一色へと染まっていく。


『皆さんに、究極の幸福を与えます。さあ、私(ルシファー)を讃えなさい』

 ひとみ(の姿をした何者か)がそう宣言した瞬間。

 彼女のライブを見ていた数万人のファンたちの身体が、赤いノイズと共に次々と消失(ログアウト不可の強制転移)し始めたのだ。


「ひとみが、乗っ取られた……?」

 ハルが絶望に息を呑んだその時、彼の右目のバグスキルが完全に覚醒した。

 ハルの視界に、パニックで逃げ惑う他のプレイヤーたちの頭上に、今まで存在しなかった【00:15:03】という『赤いカウントダウン』が浮かび上がるのが見えた。


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【SYSTEM MESSAGE】

▶ 不正なオブジェクトの《削除(デリート)》プロセスが開始されました。

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 それは、ただのゲームオーバーではない。アバターそのものをシステムから消去する『死のタイマー』だった。

「おい、嘘だろ……」


「――おいおい。またとんでもないバグ(面倒)に首を突っ込んでるな、顔面国宝」

 背後から、全く聞き覚えのない、低く乾いた男の声がした。


 ハルが振り向くと、赤いノイズが降り注ぐ広場の瓦礫の上に、真紅のコートを羽織った見知らぬ男が座っていた。彼の手には、二丁の巨大な拳銃(リボルバー)が握られている。


「誰ですか、あなた。僕の借金取りなら間に合ってますが」

「ハッ、違うね。俺はただのお前の『観測者』だ。マモン戦でのオタ芸軌道計算も、さっきのハーフファス戦での異常な石焼ビビンバも、ずっと特等席で面白おかしく見させてもらったぜ。お前のそのイカれたドケチっぷり、最高にイカしてるからな」


 男――『ダンテ』は、ハルの右目に集束する赤いノイズを見つめ、不敵な笑みを浮かべて立ち上がった。


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