第30話 黄金の竜巻と、反射する小悪魔
第30話 黄金の竜巻と、反射する小悪魔
空中に、数万枚の金貨が凝縮された『巨大な黄金の塊』が浮かび上がった。
それは、ハルと48人の女子たちのシンクロしたオタ芸(ペンライトのヘイト誘導)によって、マモンの放った全方位弾幕が特定の空間で激突し、身動きが取れなくなった姿だった。
完全にシステムエラーを引き起こし、マモンの動きがピタリと止まる。
「今だッ!!」
ハルが光の指揮棒の動きを止め、叫ぶ。
「任せて!!」
その声に応え、ひとみが悪魔のドレスのフリルをはためかせながら、宝物庫の壁を蹴って高く跳躍した。
彼女が握りしめているのは、ハルが研磨し、鏡面化させた『断頭巨斧』。
――そして彼女の足元には、マモンの広域干渉によって生み出された『摩擦ゼロ』の空間が広がっている。
「いっけえええええッ!!」
ひとみは空中で自らをコマのように回転させた。
通常ならば遠心力で身体が弾き飛ばされるところを、ハルから託された『重力偏向の宝玉』が重心を完璧に固定する。摩擦ゼロの空間によるエネルギーロス無しの無限加速。
小柄な少女の身体が、黒と赤のドレスの残像を引きながら、巨大な銀色の竜巻へと変貌していく。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 狂戦士『ひとみ』が【ウェイト・アドバンテージ】発動(極大)。
▶ 【バーサーク】発動(極大)。
▶ 攻撃対象:マモン広域干渉オブジェクト(黄金の塊)
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「いけえぇぇひとみッ!! ぶっ飛ばせえぇ!!」
アリーナ席の女子たちが、喉が裂けるような声で声援を送る。
*
病室のベッドの上。
水晶球の中継映像を見つめていたアラタテの手から、うちわが止まる。
分厚い包帯に覆われた不屈のタンクは、画面越しに跳躍する少女の姿に、思わず息を呑んだ。
(……いけ、ひとみ)
その口から漏れたのは、ただの応援ではない。まるで我が子の成長を信じる、切実な親の祈りのようだった。
*
「天使(ハル兄ちゃん)の言う通りに……昇天しろォォッ!!」
極限まで加速した銀色の竜巻の中で、ひとみの野生の殺意が爆発した。
鏡面化された断頭巨斧が、空中で凝縮された『巨大な黄金の塊』を横殴りにフルスイングで打ち抜く。
ズドォォォォォォォンッ!!!
それは単なる物理攻撃ではない。
空中に密集し、衝突で極限まで圧縮された金貨の群れ(莫大な運動エネルギーの塊)を、ひとみの鏡面斧が『反射』し、システム干渉ごとマモンの本体へ逆流させたのだ。
「ギギャァァァァァァァッ!?」
強欲の天秤・マモンが、自らが放った数万発の散弾のエネルギーを一点に凝縮して打ち返され、醜悪な断末魔の悲鳴を上げる。
鼓膜が破れそうな甲高い金属の炸裂音と、肌を焦がすような強烈な摩擦熱。
黄金の塊はマモンの強固な装甲を紙切れのように粉砕し、その巨大な天秤の本体を跡形もなく吹き飛ばした。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ セフィロト幹部《強欲の天秤・マモン》の完全討伐を確認。
▶ 大規模レイド《黄金の宝物庫》、クリア。
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光の粒子が、宝物庫の空を美しく舞い散る。
それは、ただの直感と貧乏性から生まれた盤面ハックと、ひとみの純粋な殺意がもたらした、最強のワンターン・キルだった。




