第27話 推し活レイド開幕と、最前線のアリーナ席
第27話 推し活レイド開幕と、最前線のアリーナ席
強制転移の光が収まると、そこは文字通りの『黄金の密室』だった。
天井まで金貨や財宝が積み上げられた巨大なドーム状の空間。その中央に、圧倒的な威圧感を放つ黄金の天秤――セフィロト幹部《強欲のマモン》が鎮座している。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 大規模レイドダンジョン《黄金の宝物庫》での戦闘を開始します。
▶ ※ペナルティ警告:レイド参加者の死亡時、生存者全員の所持金から強制的に莫大な罰金を徴収します。
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「ば、罰金……!?」
ハルの顔からサァッと血の気が引いた。
参加者50人のうち、48人は戦闘力皆無の非戦闘員(オタク女子)だ。彼女たちが一人でも死ねば、ハルは一瞬で莫大な借金を背負い、全財産(ポーション代)を失うことになる。
「絶対に……絶対に一枚も払わないぞォォッ!!」
ハルは天使の装束(白銀のフリル衣装)を翻し、血走った目で最前線へと飛び出した。
「ハル兄ちゃん、僕も手伝うよ!」
悪魔の衣装(絶対領域全開の小悪魔ドレス)を着たひとみが、自分より巨大な『鏡面化された断頭巨斧』を担いでハルの背中にぴたりと張り付く。
「……で、あなたたちは何をしてるんですか?」
ハルが後ろを振り返ると、信じられない光景が広がっていた。
マネージャーのぽんずとクロイツが、宝物庫の安全地帯(と思われる壁際)にパーテーションを張り巡らせ、レジャーシートを広げていたのだ。
「はい、関係者(非戦闘員)の皆さんはここからアリーナ席になります! 戦闘中のフラッシュ撮影は禁止やで!」
「推しの尊い姿を目に焼き付けてくださいねー!」
ぽんずとクロイツの誘導に従い、46人の女子たちが『パリィして!』と書かれたうちわや双眼鏡を構え、完全にライブ会場のノリでスタンバイを完了させていた。
「キャー! 天使と悪魔の背中合わせ尊いーッ!」
「ハルくんの腰のライン、たまらん……ッ!」
「ひとみきゅんの絶対領域、最高ーッ!!」
黄色い歓声が宝物庫に響き渡る中、マモンが召喚した無数の『黄金の防衛兵器』がハルたちを取り囲んだ。
四方八方から放たれる、重く鋭い黄金の槍の雨。
「いくよ、ハル兄ちゃん!」
「合わせろ!」
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ パラディン『ハル』が【盾の偏向】を発動。
▶ 狂戦士『ひとみ』が【大旋風(暴風)】を発動。
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ガキィィンッ!!
ハルが盾の絶妙な角度調整で重い槍の軌道を上空へとそらす。
同時に、背中合わせのひとみが巨大斧をフルスイングし、凄まじい遠心力で『暴風』を巻き起こした。ハルが弾き損ねた質量の軽い破片や魔法弾が、その暴風によって次々と物理的に弾き飛ばされていく。
天使と悪魔(暴風)が交差する、美しくも泥臭い完璧なペア防衛陣形。
「ハル兄ちゃん、僕ら本当にアイドルみたいだね!」
死闘の最中、ひとみが悪魔の羽を揺らしながら無邪気に笑う。
「……そんなこと言ってる余裕があるのか!」
ハルは肺が焼けるような浅く熱い呼吸を繰り返し、極限の集中力で防衛線を維持していた。
背後では、女子たちが「尊い……!」「なんて美しい連携……ッ!」と叫びながら、禁止されたはずのフラッシュ撮影をバシャバシャと無慈悲に行っている。
死と隣り合わせの血みどろの防衛戦と、熱狂するライブ会場という地獄のようなコントラスト。
だが、そのいびつな均衡は、マモンの行動によってあっけなく崩れ去る。
ギギギギギ……ッ!!
中央の巨大な黄金の天秤が、不気味な音を立てて傾き始めた。
マモンの周囲に、数千、数万という尋常ではない数の金貨(黄金散弾)が中空に浮遊し、ハルたちに狙いを定める。
「な、なんだあれ……」
ハルが絶望に息を呑む。
マモンが第二形態へ移行し、回避も防御も不可能な『全方位の黄金散弾』を放つモーションに入ったのだ。




