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推しのパラディン様 —美貌の騎士は懐も肝っ玉も極小。見栄と気合で死線を凌ぐ顔面国宝を、限界オタク女子が見守ります—  作者: あめたす
第5章:黄金の宝物庫と強欲の天秤編

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第26話 降り注ぐ絶望と、天使と悪魔の結成

第26話 降り注ぐ絶望と、天使と悪魔の結成


 チャリン……チャリン……。

 空から降り注ぐ大量の金貨は、見とれて手を伸ばしたプレイヤーの身体を容易く貫通し、光の粒子に変えていく。


「ぎゃあああっ!? HPが……俺の全財産がゼロに!!」

「逃げろ! あれに触ったら終わりだ!!」


 廃墟エリアにいたプレイヤーたちが恐慌状態に陥り、逃げ惑う。

 それは、触れた者のHPと所持金(リソース)を強制没収する、セフィロト幹部・マモンの理不尽な広域干渉だった。


「ぽんず! クロイツ! アラタテさんを瓦礫の下へ!」

 ハルが叫び、ひとみが巨大な斧を構えて動けないアラタテの前に立つ。

 その間にも、空からは無慈悲な黄金の雨が降り注ぐ。


「修理費が!」

 ガィィィンッ!

「ポーション代が!」

 ガガキィィンッ!

「オイル代がァァァァッ!!」


-----------------------------------------

【SYSTEM MESSAGE】

▶ パラディン『ハル』による【打ち払い(パリィ)】連続成功を検知。

▶ 対象:マモン広域干渉オブジェクト(黄金弾)×142

-----------------------------------------


 ハルは瓦礫の前に立ち塞がり、白銀の盾と剣を超高速で振り回していた。

 極限の0.01秒パリィ。視認すら困難な速度で降り注ぐ致死の金貨を、彼は狂気じみた集中力で『一枚残らず』弾き落としていく。

 彼の頭にあるのは仲間を守る高潔な意志などではない。「絶対に一枚もシステムに払わない」という、極度の貧乏性と執念(キレている)だけだった。


「ハル……あんたって人は……ッ!」

 ぽんずが口元を手で覆う。

「自分を盾にして、身を削ってまで私たちを守ってくださるなんて……なんて気高い自己犠牲(ナイト)なの……ッ!」

 クロイツが感極まって涙ぐむ。


 (違う。ただ金を取られるのが死ぬほど嫌なだけだ)

 重傷で身動きが取れないアラタテだけが、その見事なすれ違いに一人で真顔になっていた。


 だが、弾けども弾けども金貨の雨は止まらない。

 ハルの息が上がり、浅い呼吸が白銀の甲冑の中で熱くこもる。

「……マモン本体を叩かないと、ジリ貧です!」


 その時、黄金の雨を切り裂くように、一つの巨大な影が舞い降りた。

 全身を純白の騎士甲冑に包み、巨大な両手剣を背負った男。トップギルド『虎竜の道標(ラオプ・ヴェーク)』のマスター、ロードだった。


「相変わらず、狂った生存能力をしているな。あの時のお人好しのパラディン君」

「……ロードさん。どうしてここに」

「幹部討伐だ。マモンの仕様はすでに特定した。あいつを引きずり下ろすには、専用のレイドエリアに『50人』のプレイヤーを同時侵入させる必要がある」

 ロードが頭上の巨大な黄金の天秤を睨みつける。


「だが、マモンの広域干渉のせいで、前衛のタンク連中が根こそぎ破産(リタイア)させられた。俺たちロードの精鋭だけでは、どう足掻いても前衛が足りない」

「つまり……?」

「君のその異常な『弾き』の技術が必要だ。俺たちのレイドに強制参加してもらう」

 ロードがハルを指差す。「報酬はマモンのドロップ品の優先選択権。悪くない取引だろう?」


 ハルが「報酬」という言葉にピクリと反応した瞬間。

「ちょっと待ったぁぁぁ!!」

 物陰から、ぽんずとクロイツが物凄い勢いで飛び出してきた。二人の隣には、なぜか密売商人のキムチまでが胡散臭い笑顔で並んでいる。


「ウチらのタレント(推し)を勝手に連れ回さんといてくれます!? 契約交渉なら、プロデューサーでありマネージャーのウチらを通しなさい!」

「え? タレント……?」

 ロードが困惑する中、ぽんずがキムチに目配せをする。


「キムチはん、準備はええな?」

「バッチリっすよォ。ウチの『極上顧客』たちを50人、手配済みッス」


 ドドドドドドッ!!

 廃墟の奥から、色とりどりの装備を着たプレイヤーたちが雪崩れ込んできた。

 吟遊詩人、踊り子、生産職、商人……トップギルドの精鋭とは程遠い、戦闘力皆無の非戦闘員たち。その全員が、なぜか「ハル」や「ひとみ」の手作りうちわ(パリィして!うちわ)を握りしめている限界オタク女子たちのフルコースだった。


「はい衣装チェンジ急いで! アタシらのユニットが世界を救うで!」

 ぽんずとクロイツが強引にハルとひとみを引っ張っていく。


「え、ちょっと待って……これ、何!?」

 数分後。

 ソナタが絶句する前で、ハルは白銀を基調とした無駄に布面積の多い【天使】の装束を。ひとみは黒と赤の【悪魔】の装束(絶対領域が強調された小悪魔アイドル仕様)を強制的に装備させられていた。


「このヒラヒラ(フリル)の厚みが衝撃吸収材になってる……悪くない合理性です」

 ハルがロジカルな理由だけで真顔で納得し、ひとみは「動きやすーい!」と巨大斧を振り回してはしゃいでいる。


「……お前ら、ふざけてるのか?」

 ロードが青筋を立てる中、突如として足元の陣が光り輝いた。


-----------------------------------------

【SYSTEM MESSAGE】

▶ プレイヤー50名の同時接続を確認。

▶ 大規模レイドダンジョン《黄金の宝物庫》へ強制転移します。

-----------------------------------------


「強制転移!? ちょ、ちょっと待て!」

 ロードの制止も虚しく、ハルとひとみ、そして48人の非戦闘員(限界オタク)たちは、マモンの本拠地である絶望の密室へと転送されていったのだった。


【プレイヤー専用外部掲示板スレッド抜粋】


901: 匿名の盗賊

おい! 空から降ってくる金貨に絶対触るな! 所持金とHP全部持っていかれるぞ!!

タンク連中が次々と自己破産して消えてってるんだが!?


902: 匿名の剣士

無理ゲーだろこれ……って、おい広場見ろ!

あの顔面国宝パラディン、落ちてくる金貨を全部盾と剣で弾き落としてるぞ!

「オイル代がァァァ!」とか叫びながらパリィ連発してんのヤバすぎる。


903: 匿名の魔法使い

うおおお! 虎竜の道標(ラオプ・ヴェーク)のロード御大が直々に勧誘に来たぞ!

やっぱりあのパラディンの異常な生存能力、トップギルドも放っておかなかったか!

これでマモン討伐の最強レイド組むんだな!


904: 匿名の斥候

【悲報】パラディン、トップギルドじゃなくて『パリィして!と書いてあるうちわを持った大量の非戦闘員(女)』と一緒にレイドに突入。

しかもなぜかヒラヒラの天使のコスプレ着せられてた。隣には悪魔コスのロリっ子。


905: 匿名の重装兵

は??? お前何言ってんの???

マモンのレイドはペナルティ連帯責任だぞ!? 非戦闘員なんて連れてったらペナルティの罰金で全員一発破産だろ!

ていうかロードさん、陣に取り残されて一人でめちゃくちゃキレてたぞ……。

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