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推しのパラディン様 —美貌の騎士は懐も肝っ玉も極小。見栄と気合で死線を凌ぐ顔面国宝を、限界オタク女子が見守ります—  作者: あめたす
第4章 名も無き廃墟の狂戦士と不屈の盾編

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第25話 砕けた盾と、金曜日よりの使者

第25話 砕けた盾と、金曜日よりの使者


 ズガァァァァンッ!!

 徴収獣コレクターが完全に粉砕され、大量の光の粒子となって消滅する。

 無摩擦空間のデバフが解除され、ひとみは勢い余って石畳に膝から崩れ落ちた。


「はぁっ……はぁっ……」

 静寂を取り戻した廃墟に、少女の荒い呼吸だけが響く。


-----------------------------------------

【SYSTEM MESSAGE】

▶ ボス《徴収獣コレクター》の討伐を確認。

-----------------------------------------


「……えっ?」

 ひとみが絶望に目を見開く。

 ハルは安堵の息を吐きながら、ボスが落としたドロップアイテムの海(金貨や修繕素材)を血眼でかき集めていたが、ぽんずとクロイツは顔を青ざめさせた。


「あかん! アラタテさん、息してへん!」

「最上級のポーションを使いました……! 傷は塞がりましたが、のダメージが深すぎて、しばらくはまともに動けない状態です……ッ!」


 HP自体は回復したものの、アバターの限界を超える深刻なダメージを負ったため、アラタテはしばらく戦線から離脱せざるを得ない状態に陥っていたのだ。


「ゴホッ……ゲホッ……」

 生々しい咳き込みと共に、アラタテが薄く目を開ける。

「おじさん……っ!」

 ひとみが弾かれたように飛びつき、彼の太い首にすがりついて号泣した。

「……泣くな……タンクが壁になるのは、当たり前だろ……」

 アラタテは力なく笑い、自らのタワーシールドを持ち上げようとしたが、今の彼には、もはやその重い盾を1ミリたりとも動かすことはできなかった。


「……おじさん。どうして僕を守ったの?」

 ひとみが涙でぐしゃぐしゃになった顔を上げる。


「理由なんて、あとからつければいいだろ」

 アラタテは、自嘲気味に笑って言った。

「やりたいからやる。守りたいから守る。不器用でも、自分で選んだんなら、それでいいじゃねえか」

「……おじさん」

「いいか、ひとみ」

 アラタテは、自分より巨大な斧を握りしめる少女に優しく目を向けた。

「お前は、生きてるんだ。生きてるうちは、やりたいことやったほうが面白いだろ。誰かを守りたいって思うなら、好きなまま守れるくらい強くなりな」


 それは、前線を退くことになった不屈のタンクからの、次代の戦士への確固たる『生きていることの肯定』というエールだった。


 ひとみはアラタテの言葉を胸に刻むように深く頷き、斧をひょいと肩に担ぎ直した。

 そして、ハルの前へと歩み寄り、深く、深く頭を下げた。


「僕の命は、ハル兄ちゃんに預けるよ」

「……はい?」

 金貨を数えていたハルが、間抜けな声を上げる。

「僕、兄ちゃんのパーティーに入るね。おじさんにこんな怪我をさせた奴らを……絶対にぶっ殺す」

「待て」

 倒れたままのアラタテが、嫌な予感を覚えて横槍を入れる。


「職業はバーサーカー。食費は自分で稼ぐよ!」

「そこは助かる」

 ハルが食いつく。

「レイドも最前線で行ける!」

「そこは困る」

「PvP(対人戦)も大好き!」

「頼むから帰ってくれ……」


 ひとみが無邪気にケラケラと笑い、ハルが頭を抱え、ぽんずとクロイツが深い溜息をつく。

 新たな仲間が加わった――かに見えた、その時。


 ビィィィィィィィッ!!


 空が、不気味などす黒い色へと染まった。

 暗雲の中から、街全体を覆い尽くすほどの『巨大な黄金の天秤』が、ゆっくりとその姿を現す。


-----------------------------------------

【SYSTEM MESSAGE】

▶ 警告:【強欲の天秤・マモン】の本格的な広域侵攻を検知。

▶ 全プレイヤー領域へのシステム干渉を開始します。

-----------------------------------------


 チャリン……。

 空から、大量の金貨が雨のように降り注いできた。

 だが、それは恵みの雨ではない。触れればHPとリソースを強制的に奪い取る、致死の呪詛だった。


「……嫌な予感しかしない」


 冷たい金属音が響く中、ハルが虚無の瞳で呟いた。

 セフィロト幹部・マモン。

 自分たちの財産を守り抜くための、壮絶なレイド戦が幕を開けようとしていた。



【SYSTEM SECRET LOG:対象プレイヤーの現実リンクデータを開示します】


■ アバター名:キムチ

・ジョブ:密売商人(スマグラー)

・現実氏名:木村(きむら) 千佳(ちか)

・年齢/職業:25歳 / 証券会社のデータアナリスト

・特記事項:現実の職業柄、数字と相場を読むプロ。しかし裏の顔は、壁打ち同人作家(即売会の大手サークル主)。ゲーム内でハルに高値でアイテムを売りつけつつ、特等席でハルの「苦痛に歪む美少年フェイス」を隠し撮り(スクショ)し、それを素材に新刊を執筆するというエコシステムを構築している。


■ アバター名:金曜日よりの使者

・ジョブ:狂戦士(バーサーカー)

・現実氏名:金丸 ひとみ

・年齢/職業:12歳 / 小学生

・特記事項:現実では重い病を患っており、病を患う前の自由を求めベッドからVR世界へとダイブした。ハルに出会い、大斧を振り回す楽しさを知った。


■ アバター名:アラタテ

・ジョブ:槍盾騎士(ランサー)

・現実氏名:荒原(あらはら) 忠幸(たてゆき)

・年齢/職業:45歳 / 市役所職員(窓口対応)

・特記事項:日々クレーマーの対応に追われる疲れ切った公務員。ゲーム内では誰かを守るために「盾」を選んだ。ひとみとの疑似親子の絆に救われていたが、ハルの登場により「盾役としての格の違い」を見せつけられ、現在は保護者目線で彼らを微笑ましく見守る立ち位置に落ち着いている。


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