第24話 レアドロップと、摩擦ゼロのバーサーカー
第24話 レアドロップと、摩擦ゼロのバーサーカー
砕け散ったアラタテの盾の破片が、無摩擦の床を滑っていく。
徴収獣コレクターが強欲な一つ目を光らせ、剥き出しになった一行へと巨大な爪を振り上げた。
ハルは慌てることなく、インベントリからもう一つのアイテムを取り出した。
ベリアル討伐時に獲得したレアドロップ品――『重力偏向の宝玉』。
それを、鏡面化した断頭巨斧の柄の根元に、ガチリと音を立ててはめ込む。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 断頭巨斧に【重力偏向の宝玉】を装着。
▶ 装備効果:《重力制御(ベクトル固定)》
▶ ※重量武器とのシナジー:極大
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「これ……なに?」
ひとみが戸惑いながら斧を受け取る。その異常な重量感が、宝玉の力によってピタリと一点(重心)に集約されていた。
「摩擦がないなら――」
ハルは、徴収獣の巨大な爪が迫る中、極めて冷徹な声で告げた。
「地面に頼るな。自分で回すんだ」
ハルの意図を理解し、ひとみの大きな瞳に、悲しみとは別の静かな『殺意』が宿る。
「……うん!」
ひとみは、摩擦ゼロの氷上のような石畳の上で、あえて無防備に両足の力を抜いた。
そして、宝玉の重力を『軸(支点)』にするように、自身より巨大な斧を思い切り横へと振るった。
ヒュンッ!
空気を裂く、鋭い風圧の音。
通常、巨大な武器を振るえば、その遠心力で身体が持っていかれる。それを防ぐのが足元の『摩擦』だ。
だが今、この空間には《ゼロ・フリクション》によって摩擦が存在しない。
摩擦がないということは――『回転運動のエネルギーロスが、完全にゼロになる』ということだ。
ヒュンッ、ヒュンヒュンヒュンッ!!
ひとみは、コマのようにその場で回転し始めた。
宝玉による重力固定が軸をぶらさず、摩擦ゼロの空間が彼女の遠心力を無限に加速させていく。
「……!?」
徴収獣が異常を察知し、慌てて爪を振り下ろす。
だが、遅い。
「止められない!」
無限加速に入ったひとみが叫ぶ。
「止めなくていい!」
ハルが叫び返す。「そのまま行けっ!」
ヒュゴォォォォォォッ!!
斧が空気を切り裂く音が、もはや悲鳴のような暴風音へと変わる。
ひとみの華奢な身体は完全に巨大な銀色の竜巻と化し、鏡面化された斧の刃が、光を乱反射させながら徴収獣めがけて一直線に滑っていく。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 【ウェイト・アドバンテージ】発動(極大)。
▶ 【バーサーク】発動(極大)。
▶ 【クリティカル確定】。
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四つのスキルと、理不尽なデバフの仕様ハック。
それらが完全に連鎖した、暴力の極致。
「おじさんを……返せぇぇぇぇぇッ!!」
ひとみの野生の殺意が爆発した。
ズガァァァァァァンッ!!!
鏡面化した斧が、徴収獣の理不尽なシステム干渉(光の座標指定)を完全に反射し、エラーを引き起こした無防備な装甲を紙切れのように粉砕する。
醜悪な一つ目が破裂し、強欲な獣は断末魔すら上げる暇もなく、光の粒子となってダンジョンの奥深くへと消え去っていった。
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【プレイヤー専用外部掲示板スレッド抜粋】
812: 匿名の狂戦士
おい誰か《名も無き廃墟》見てた奴いねえか!?
徴収獣コレクターの討伐ログ流れたぞ!
あいつのゼロ・フリクション(摩擦剥奪)、物理職絶対殺すデバフだろ!? どうやって削り切ったんだよ!
813: 匿名の盗賊
現場にいたんだが信じられないものを見た。
あそこの床、摩擦ゼロの氷上みたいになって誰も動けなかったのに、狂戦士の少女が重力宝玉つけた大斧を振り回して『人間コマ』になってた。
814: 匿名の重騎士
人間コマ……? 遠心力で自分ごと吹っ飛ぶだろ普通。
815: 匿名の魔術師
摩擦ゼロだから角運動量の減衰がゼロ=無限加速突入。
しかも例の白銀パラディンが即興で鏡面研磨した斧がボスの光学照準を全部跳ね返して、装甲の物理耐性エラー起こした瞬間に四重クリティカル直撃。
ボスが丸ごとミンチになって消し飛んだ。
816: 匿名の重騎士
物理エンジンハックしてボスを粉砕すんな。
ていうかあのパラディン、味方の重盾騎士が床に転がってる横で平然と斧研いでたぞ。頭沸いてんのかよ。
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