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推しのパラディン様 —美貌の騎士は懐も肝っ玉も極小。見栄と気合で死線を凌ぐ顔面国宝を、限界オタク女子が見守ります—  作者: あめたす
第4章 名も無き廃墟の狂戦士と不屈の盾編

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第21話 僕っ娘バーサーカーと、最弱に見える最強職

第21話 僕っ娘バーサーカーと、最弱に見える最強職


「……嘘やろ。中身、女の子やったん……?」

 ぽんずが目を丸くして固まる。

 ホラー映画の殺人鬼(ジェイソン)のマスクの下から現れたのは、中性的な美少年風の顔立ちをした、華奢なショートヘアの少女だった。


「もぐもぐ……ん? 食べないの?」

 少女は口の端にパンくずをつけながら、不思議そうに首を傾げる。

「いや、その……『金曜日よりの使者』さんが、まさか女子だとは思わなくて」

 ハルが引きつった笑顔で答えると、少女はあっけらかんと笑った。


「ああ、名前長いよね。本名の『ひとみ』でいいよ。よろしく、ハル兄ちゃん!」

 初対面のハルをあっさりと「兄ちゃん」呼ばわりし、ひとみはケラケラと笑う。

 その隣で、アラタテがため息をつきながら自分のマントを外し、ひとみのダボダボの肩に無言でバサリと掛けた。


「……おじさん。僕、寒くないよ?」

「いいから着てろ。HPリソースが減る」

「でも、おじさん寒くないの?」

「俺はタンクだから平気だ」

 そう言いながら、アラタテは「……寒い」と小さく震えた。


 (完全に親子だ……)

 ハルたちは微妙な顔で二人を見つめる。

 ほっこりする光景だが、ひとみの横に無造作に置かれている武器のスペックだけは、全くほっこりしていなかった。


「……ひとみちゃん。その斧、装備条件のSTR(筋力)要求値、250くらいありませんか?」

「うん。僕のSTR、257だからギリギリ持てるよ」

「STR極振り!? 防御力は!?」

「4だよ」

「……四!?」

「うん。装備すると防御力+3になるから、全裸よりはマシなんだよね!」

「誤差の範囲じゃないですか!!」


 ハルが思わず大声でツッコミを入れた、その時。


 ズズン……!!


 廃墟の瓦礫が崩れ、異様なプレッシャーを放つ影が姿を現した。

 全身に無数の宝飾品をジャラジャラとぶら下げた、醜悪な一つ目の獣。

 隠しエリアの中ボス――プレイヤーの金、アイテム、HPまでも強奪する強欲の権化《徴収獣コレクター》だった。


「わあ、おっきい! 僕がやる!」

 ひとみが目を輝かせ、自分より巨大な断頭巨斧を軽々と持ち上げる。


「待て、ひとみ! お前は防御力が低すぎる!」

 アラタテが慌てて立ち上がり、タワーシールドを構えた。

「じゃあ、おじさんが盾になってよ!」

「最初からそのつもりだ! 俺がヘイトを取る、後ろから殴れ!」


 王道MMOの基本戦術。タンクが壁になり、アタッカーが火力を出す。

 アラタテが盾を鳴らしてヘイトスキル《挑発》を発動し、徴収獣のヘイトを一点に集める。

 その背後から、ひとみが巨大な斧を構えて跳躍した。


-----------------------------------------

【SYSTEM MESSAGE】

▶ 狂戦士『ひとみ』の固有スキル【ウェイト・アドバンテージ】発動。

▶ 武器重量(極大)に比例し、物理攻撃力およびクリティカル率が上昇。

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「いっけえええええッ!!」


 華奢な少女の体から、物理法則を無視したような凶悪な風切り音が鳴り響く。

 ドゴォォォォンッ!!

 巨斧の一撃が徴収獣の装甲に直撃し、凄まじい衝撃波が廃墟に吹き荒れた。


「すげえ……!!」

 ハルが目を見張る。STR極振りの火力と、巨大武器の重さを完璧に乗せたロマン溢れる一撃。

 だが、徴収獣は倒れない。一つ目を赤く光らせ、不気味な咆哮を上げた。


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【SYSTEM MESSAGE】

▶ 【徴収獣コレクター】が広域干渉デバフ《ゼロ・フリクション(摩擦剥奪)》を発動。

▶ フィールド全体の摩擦係数が著しく低下します。

-----------------------------------------


「……えっ?」

 ひとみが次の一撃を放とうと踏み込んだ瞬間。

 ツルンッ、と。

 彼女のブーツが、あり得ないほど滑らかに石畳の上を滑った。

 巨大な斧の遠心力と自重を「足元の摩擦」で制御していたひとみは、完全に体勢を崩して宙に放り出されてしまう。


「あ……ッ!」

 無防備に体勢を崩したひとみ(防御力4)めがけ、徴収獣の致死の爪が容赦なく振り下ろされる。


「ひとみッ!!」

 アラタテが血相を変え、巨大な大盾を構えて少女の前に飛び出した。


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