第21話 僕っ娘バーサーカーと、最弱に見える最強職
第21話 僕っ娘バーサーカーと、最弱に見える最強職
「……嘘やろ。中身、女の子やったん……?」
ぽんずが目を丸くして固まる。
ホラー映画の殺人鬼のマスクの下から現れたのは、中性的な美少年風の顔立ちをした、華奢なショートヘアの少女だった。
「もぐもぐ……ん? 食べないの?」
少女は口の端にパンくずをつけながら、不思議そうに首を傾げる。
「いや、その……『金曜日よりの使者』さんが、まさか女子だとは思わなくて」
ハルが引きつった笑顔で答えると、少女はあっけらかんと笑った。
「ああ、名前長いよね。本名の『ひとみ』でいいよ。よろしく、ハル兄ちゃん!」
初対面のハルをあっさりと「兄ちゃん」呼ばわりし、ひとみはケラケラと笑う。
その隣で、アラタテがため息をつきながら自分のマントを外し、ひとみのダボダボの肩に無言でバサリと掛けた。
「……おじさん。僕、寒くないよ?」
「いいから着てろ。HPリソースが減る」
「でも、おじさん寒くないの?」
「俺はタンクだから平気だ」
そう言いながら、アラタテは「……寒い」と小さく震えた。
(完全に親子だ……)
ハルたちは微妙な顔で二人を見つめる。
ほっこりする光景だが、ひとみの横に無造作に置かれている武器のスペックだけは、全くほっこりしていなかった。
「……ひとみちゃん。その斧、装備条件のSTR(筋力)要求値、250くらいありませんか?」
「うん。僕のSTR、257だからギリギリ持てるよ」
「STR極振り!? 防御力は!?」
「4だよ」
「……四!?」
「うん。装備すると防御力+3になるから、全裸よりはマシなんだよね!」
「誤差の範囲じゃないですか!!」
ハルが思わず大声でツッコミを入れた、その時。
ズズン……!!
廃墟の瓦礫が崩れ、異様なプレッシャーを放つ影が姿を現した。
全身に無数の宝飾品をジャラジャラとぶら下げた、醜悪な一つ目の獣。
隠しエリアの中ボス――プレイヤーの金、アイテム、HPまでも強奪する強欲の権化《徴収獣コレクター》だった。
「わあ、おっきい! 僕がやる!」
ひとみが目を輝かせ、自分より巨大な断頭巨斧を軽々と持ち上げる。
「待て、ひとみ! お前は防御力が低すぎる!」
アラタテが慌てて立ち上がり、タワーシールドを構えた。
「じゃあ、おじさんが盾になってよ!」
「最初からそのつもりだ! 俺がヘイトを取る、後ろから殴れ!」
王道MMOの基本戦術。タンクが壁になり、アタッカーが火力を出す。
アラタテが盾を鳴らしてヘイトスキル《挑発》を発動し、徴収獣のヘイトを一点に集める。
その背後から、ひとみが巨大な斧を構えて跳躍した。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 狂戦士『ひとみ』の固有スキル【ウェイト・アドバンテージ】発動。
▶ 武器重量(極大)に比例し、物理攻撃力およびクリティカル率が上昇。
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「いっけえええええッ!!」
華奢な少女の体から、物理法則を無視したような凶悪な風切り音が鳴り響く。
ドゴォォォォンッ!!
巨斧の一撃が徴収獣の装甲に直撃し、凄まじい衝撃波が廃墟に吹き荒れた。
「すげえ……!!」
ハルが目を見張る。STR極振りの火力と、巨大武器の重さを完璧に乗せたロマン溢れる一撃。
だが、徴収獣は倒れない。一つ目を赤く光らせ、不気味な咆哮を上げた。
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【SYSTEM MESSAGE】
▶ 【徴収獣コレクター】が広域干渉デバフ《ゼロ・フリクション(摩擦剥奪)》を発動。
▶ フィールド全体の摩擦係数が著しく低下します。
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「……えっ?」
ひとみが次の一撃を放とうと踏み込んだ瞬間。
ツルンッ、と。
彼女のブーツが、あり得ないほど滑らかに石畳の上を滑った。
巨大な斧の遠心力と自重を「足元の摩擦」で制御していたひとみは、完全に体勢を崩して宙に放り出されてしまう。
「あ……ッ!」
無防備に体勢を崩したひとみ(防御力4)めがけ、徴収獣の致死の爪が容赦なく振り下ろされる。
「ひとみッ!!」
アラタテが血相を変え、巨大な大盾を構えて少女の前に飛び出した。




