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バトルステーツ・リベレイション〜若き番の叙事詩〜  作者: 騎士誠一郎
ランウェイの上できらめく影で、悪の笑いがこだまする
77/80

EP77 悪意の胎動 (前編)

グラビアの撮影で沼津を訪れた義人と美浦。

義人は、この日が美浦の誕生日であることを知ったうえで、最高のナイトパーティーを美浦にサプライズ!

義人と美浦の絆は、ますます強くなっていく。

シン・評議連合本部。

 夏の空気も入らぬ密室で、ただ事務机のランプだけが淡く光っていた。


「……到着したそうです」


 倉田の声は、いつになく震えていた。

 興行解体が雇った──クルド人工作員の一団が、日本の地下へ滑り込んだという報告だ。


「決行よ」

 対馬は、紅茶をひと口味わう程度の軽さで答えた。

「若者を“消費”させる祭典なんて、未来を腐らせる毒ですもの」


 倉田が慎重に言葉を選ぶ。


「……しかし、もし警察の初動が早ければ──」


「倉田くん」

 対馬は、微笑みながらも瞳だけは氷のように冷たかった。

「彼らは“跡を残さない”ことで生きてきた人たちよ。失敗はしないわ」


 その横で、俊永が明るい声を上げた。


「対馬さん、爆薬ルートもバッチリっす! あっちの倉庫にストック!」


「ありがとう、俊永ちゃん」


「えへへ」


 呑気なふたりとは対照的に、倉田だけが沈んだ影を落とす。


(……クルド勢力は最近、国境規制が厳しい。

 本当に“抜けられた”のか……?)


 その迷いを読み取ったのか、対馬が言った。


「慎重すぎるのよ、倉田っち」


「俊永。リスクというものは──」


「わかってるって。頂戴女子やってた頃の方がヤバかったよ」


 俊永は気楽にメイクを直し、対馬はそれに笑みを漏らす。


「男に媚びてるとろくなことがないという学びは、あなたにとって宝ね」


「だからフェミ仲間になれたんですってば!」


 そんな軽口を叩く二人の横で──。


『……倉田さん。クルド工作員の皆さんが“焼肉セット、最高だった”と村澤先生にお礼を言いたいそうで』


 興行解体からの電話が入った。


「ありがとうございます。先生に伝えます」


 倉田は電話を切りつつ、深いため息を漏らした。


(……贈賄みたいなことを、軽いノリでするな……)


 だが次の瞬間、対馬が声を上げた。


「先生、そろそろ政見放送の収録の時間じゃなくて?」


 村澤かずおが静かに立ち上がる。


「ふむ……参院選見送りの理由を述べる必要があるか」


 倉田・対馬・俊永に囲まれて、簡素なスタジオへ向かう。


「倉田くん、カメラはこう構えるの」


「対馬さん、こだわりが……」


「ほら、撮れ高ってやつ教えるから!」


「こらこら」

 かずおが苦笑しながら三人を諫めた。


 撮影開始。


「皆さんこんにちは。シン・評議連合代表、村澤かずおです」


 淡々と語るその声が、どこか異様な静けさを帯びている。


「今回の参院選は……“見送らせていただきます”。

 我が連合への風当たりが強く、予期せぬ妨害を懸念したためです」


 収録が終わり、5分休憩。


「お疲れ様です。このあとラジオ収録も入れておきますね?」


「音声だけなら危険が増すやもしれんが……良いだろう」


 倉田が焦る。


「しかし先生、計画に悪影響が──」


「構わんさ。ケーニッヒ次期大統領への牽制になればいい」


 それは、あまりにも軽い言い方だった。


 俊永がPCの画面を見せる。


「対馬さんが潰したコンカフェ動画と、興行解体の逮捕動画……先生の“メッセージ”に合うのを選んでおきました!」


「あら、もっといい素材あったと思うけど?」


「メッセージ優先したら、こうなったの」


「はいはい、揉めないで。中国大使館が待っている」


 かずおは、今日の最後の予定を告げた。


 ──在日中国大使とのディナー。


 車に乗り込み、古いレゲェを流しながら向かう。


「素敵な曲ですわね。今の若者向けソングは耳障りで」


「いや、Aポップとか世界で大人気だし!」


 俊永の声も、対馬は笑って流す。


「イケメン男子なんて、女性をトロフィー扱いする権力の象徴よ。

 フェミニズムの観点からは、抹消すべき文化だわ」


「イケメンアレルギー……ですか?」


「そうよ。私たちフェミは皆そう」


 異様な会話が続くなか、車は静かに中国大使館へ到着した。


 迎えたのは、中国人民統制会の若手代表──


「二年ぶりですな、村澤氏」


 信李魚(シン・リーユウ)。


 薄く笑うその目は、すべてを見透かしているようだった。


「信代表、ご足労いただかなくても」


「なに。──“ブラッディ・イヴ計画”を、アメリカに潰されるわけにはいかないのでね」


 対馬が息を呑む。

 倉田の背筋が凍る。


(……やはり、信代表までも……)


 かずおは薄く微笑み返した。


「では──始めましょうか。

 世界を変える“イブの夜”のために。」


 部屋の空気が、誰にも気づかれないほど静かに歪んだ。


 その歪みこそが──

 巨大な闇が動き始めた証だった。


次回は李魚とかずおが密談。

そして、義人と美浦はTGBMGCに向けてランウェイを意識したレッスンに?

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