EP76 最高のパーティーは、最高に楽しむべし
優勝を惜しくも逃したものの、仙台晴天軍と映画館で映画を見る稲毛アウルズ。
見ている映画はなかなかのホラーものだったようで……?
数日後――。
義人は、美浦の“付き添い”という名目で沼津へやってきていた。
今日はとある雑誌の グラビア撮影。
そして義人には、光からの依頼がひとつ。
「藤宮くん、ごめんね。急に“相棒役”なんてお願いして」
「光さん、任せてください。俺、美浦の婚約者ですから」
――その一言で、美浦の耳がほんのり赤くなる。
◆ ◆ ◆
沼津市は、アニメ『ラブ&ブレイク』第2作「シャイニングディスカッション」の舞台としても有名な街だ。
コラボイベントの名残がそこここに残り、街全体が明るい。
「美浦ちゃん、義人くん、衣装入りまーす!」
「行くぞ、美浦!」
「うん!」
二人は更衣室へ消えていく。
今日のコンセプトは――
<稲毛アウルズの夏休み>
義人はホットパンツ系のスポーティ水着。
美浦は、以前、話題をさらった白×紺のヘルシービキニ。
カメラマンたちのテンションが一気に上がる。
「みぽりん、こっち向いて、口あけて〜……あーん」
「あ、あーん……?」
「よしキュン! バキューンって決めポーズ!」
「了解っ!」
――わちゃわちゃ感、MAX。
中にはマニアックな構図を狙うカメラマンもいて、美浦は休憩に入るなり、
「びっくりしたよ……まさか“そこ”撮るなんて」
「コスプレ界じゃ有名な人らしいからな……賛否は置いといて、技術はすごいって」
「雑誌に使いたいって言われちゃってさ……どんなページになるのかなあ」
二人は他愛ない笑いを交わす。
◆ ◆ ◆
「午後はクラフトコーラのLP動画だぞー! 二人とも移動お願いしまーす!」
「よしくん、今日ほんと大忙しだね」
「仕事、こなしていこう!」
芸能界デビューした義人と、復帰したばかりの美浦。
二人のグラビア仕事は、のちのプロゲーマー活動にも影響を与える“武器”になっていく。
その日の撮影をすべて終えた稲毛アウルズは、翌日の「一日警察署長」まで自由時間となった。
◆ ◆ ◆
夕暮れの沼津港。
メイクを落とした美浦は、年相応の少女のような素顔に戻っていた。
「えへへ……ラブ&ブレイクのロケ地で、よしくんとデート。ちょっとくすぐったいね」
「美浦、今夜の食事……奢らせてくれないか?」
「えっ!? だ、だめだよ! 私、そういうの……慣れてないっていうか……!」
「カップルなんだからさ。こういうのはやらせてよ」
「うぅ……わかったけど……」
だがコンビニでコーヒーを奢られると、
「……え? コーヒー?」
「な、なにか?」
「だって、よしくん急に奢るなんて……裏があるでしょ?」
「うぐっ……! と、とにかくスタッフが待ってるから! 撮影の続きがホテルなんだって!」
義人は強引に話題をそらし、二人は港から連絡船へ乗り込む。
「まさか、淡島ニュー広部で夕食!? 豪華すぎるよ!」
「まあ、着いてからのお楽しみってことで」
――実は義人には “ある計画” があった。
◆ ◆ ◆
「あっ、藤宮くん!」
桟橋で光が迎えてくれる。
「光さん、準備は?」
「もちろん完了よ。今日の主役は明石さんだから!」
「主役……?」
案内された先は、海を見渡すナイトプール横のテラス。
暖色のライトがキラキラと水面を照らしている。
そして――
「「「明石さん! HAPPY BIRTHDAY!!!」」」
スタッフ全員の声が、夜空に響く。
「え……私……?」
目を瞬く美浦。
テラスには豪華なBBQの食材、そして見たことのないほど美しいケーキ。
「よしくん……もしかして……今日の仕事って……」
「美浦の誕生日、ちゃんと祝いたかったんだ。芸能界復帰も兼ねて、盛大にな」
義人は照れくさそうに笑う。
その瞬間、美浦の肩が小さく震えた。
「明石さん!? 具合悪い?」
「ち、違うの……! うれしいの! 本当に……!」
美浦は涙をこぼしながら笑う。
「だって……こんな誕生日、今までなかったんだよ……!」
滝坂家時代、誕生日は祝われず、コンビニプリンで一人静かに済ませるだけだった。
その6年間が、一瞬で塗り替わっていく。
◆ ◆ ◆
「美浦、泳ごう!」
「うんっ!」
二人は水着に着替え、ナイトプールへ飛び込む。
「きゃははっ! 競争しよ、よしくん!」
「望むところだ!」
弾ける水しぶき。
夜景の光を反射するプールで戯れる二人の姿は、まるで1枚のグラビアそのものだった。
「おーい! 肉焼けたぞー! 上がっておいでー!」
美浦は勢いよくプールから飛び出す。
「すっごい……こんな高級肉、はじめて!」
もりもり食べる美浦の横で、義人はそっと小さな箱を差し出す。
「美浦、これ……誕生日プレゼント」
「え……?」
箱を開くと、純金の ペアリング が光っていた。
「ゲームショップのバイトで貯めたんだ。似合うと思ってさ」
「……っ!」
美浦は言葉の代わりに、そのまま義人へ飛びつく。
「よしくん……ありがとう! こんなに嬉しいプレゼント、初めて……!」
「おいおい、泣くなよ」
「えへへ……泣くよ。だって、幸せすぎるもん」
二人の指には、同じ模様の金のリングが寄り添って輝いていた。
その夜。
淡島の空には星が瞬き、テラスには笑い声とシャッター音が溢れる。
美浦にとって、そして義人にとっても――
忘れられない最高の誕生日。
沼津の夜景が、二人の記念日を優しく包み込んでいた。
次回は村澤たちが登場!
村澤たちの計画が徐々に明らかとなっていく。
そして、興行解体が用意した刺客も顔を見せておきますよ!!




