EP72 番のふくろう、敗北を噛み締めて その2
天月学園の一刀斎とふくろうスクールの義人は焼肉屋で初邂逅。
そして、扇治郎とかつての教え子である供花は、この先が荒れそうな予感を感じていた。
「ど、どうしてこうなったんだ……」
義人はベッドに横になりながら、半ば呆れ、半ば覚悟を決めていた。
理由はただ一つ── 美浦が自分を抱き枕にして寝ている からだ。
腕に押しつけられる柔らかな感触。
鼻先をくすぐる甘い香り。
そして、美浦の小さな寝息が胸板に落ちてくる。
(これ、健全な高校生男子には耐久テストだろ……)
事の発端は、焼肉を食べて部屋に戻り、いつも通りBSOへログインした時だった。
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「やっほー! 今週のBSOニュースは夏休み直前の大型アプデのお知らせでーす!」
レイナの明るい声が、ログインした義人と美浦──いや、ゲーム内ではヨシととフォーミンだ──を迎える。
サーバーが一週間以上メンテに入るという告知を受け、二人は“最後の夜”の気晴らしにフリーウォークへ向かった。
「ヨシとくんが誘ってくれたなら、喜んで!」
にこっと笑ったフォーミンは──
次の瞬間、とんでもない姿で現れた。
「えへへっ、気合い入れて、水着スキン買いました!」
「……は?」
現れたフォーミンは、銀色の スリングショット水着。
布の面積はミニマム、迫力はマキシマム。
重力に逆らうように“そこ”が揺れていた。
「このまま私と溺死しましょう!」
「それ狙いかぁーーっ!!」
フリーウォークは自由探索のはずだが、ヨシとはほぼ泳げなかった。
精神的に。
──そして、夜はまだ終わらない。
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◆
「はぁ、美浦のやつ……リアルだったら殺人罪だぞ……」
ようやくログアウトした義人は、眠っている美浦を横目にステラリンクを起動した。
折りたためる携帯型VRシステム。
ホーム画面には扉状に並ぶソフト。
「あった……<ラビットクラブ>!」
18禁恋愛シミュレーション、AIバニーガールと飲んで親密度を高める紳士の社交場だ。
「いらっしゃいませ!」
出迎えたのはメインヒロインのNANA。
キャストAIの動きは最新アップデートで人間に近い。
「よっち、久しぶり。今日は一緒に飲む?」
「もちろん。いつもの頼む」
バーチャルのカクテルが並び、会話が進み、
NANAが酔い始めたその時──
「ねぇ、私の唇……触ってみる?」
個室へ誘い込まれ、ASMRサービスが始まる直前──
ゲームが強制ログアウトした。
「な、なんだ!?」
ステラリンクを外す。
目の前には──
「私が寝ている間に、AMSR体験とは……いい、ご身分ですね?」
美浦。
笑顔。
しかし目は笑っていない。
「いや、これは誤解で……!」
「私だったら──」
美浦は義人の左耳に顔を寄せ──
「こう、しちゃう」
甘咬み。
「っ……!!?」
唇の柔らかさと、浅い歯の感触。
背筋に電流が走る。
「や、優しくしてください……」
「OK。優しくするね」
そう言った美浦は、義人をベッドに押し倒し、
そのままぎゅっと抱きついて寝息を立て始めた。
温もり、柔らかさ、甘い香り。
体中の感覚がざわつく。
(……これ、試練?)
そして、気づけば義人は美浦の上唇を指でめくっていた。
「八重歯……かわいすぎるだろ」
完全敗北だった。
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◆3
翌朝。
「今日は“稲毛アウルズ”としてのあなたたちが戦う日よ!」
供花の声が部屋に響き渡る。
義人と美浦は飛び起きた。
「十分寝れました!」
「お肌の調子もバッチリです!」
二人の顔はきのうよりも少し近く、
どこか揺るぎない絆が宿っていた。
東北の侍。
関東のふくろう。
領有を懸けた因縁の決勝戦。
そして──
この戦いは“稲毛アウルズの未来”を決定づける転換点となる。
次回はいよいよ決勝戦開幕!
ちなみに、ラビットクラブはバニーガーデンへのオマージュを込めたゲームで、お紳士様なら、ドキッとする場面が多くありますよ?




