EP73 番のふくろう、敗北を噛み締めて その3
気晴らしのBSOでのんびりフリーウォークを楽しんだ義人と美浦。
美浦が寝ている間にお紳士様タイムを楽しんでいた義人だが、美浦に気づかれてしまう。
そんなこんなで、決勝戦!
果たして勝つのは!?
会場はすでに熱気で沸騰していた。
敗退した選手たちが息を呑み、観客席は波のようにざわめく。
<只今より、テコンドー決勝戦を行います>
その瞬間、空気が爆ぜた。
<千葉市立ふくろうスクール──稲毛アウルズ!
なお今回は天月学園からの要望により、MAVを使用した対戦となります>
ライトが走り、アウルズの二人が姿を現す。
義人は「ジェニー・春風」、美浦は「ミリア」。
ミラクルビーツ・ラブ&ブレイクの人気キャラそのままの完璧なコスプレだ。
「本気の推しで来た!?」 「アウルズ、わかってんなあ!!」
観客が揺れるほど叫びが飛ぶ。
<そして──私立天月学園・仙台晴天軍!>
対する二人は袴姿で静かに入場する。一刀斎と梢。
その足音だけで空気が締まった。
「さて、ここからだな……アウルズがどこまで食われるか」
会場の端。スルメ片手に見ている老人が一人。
デジタルスポーツ界の生きる伝説──東郷英二郎だ。
「先生、こんな地方大会まで……?」 「連勝の続く者ほど、敗北を知る必要がある。奢れば足元を掬われるでな」
英二郎は酒を口にしながら、ステージを鋭く見据える。
そのステージでは、両チームがMAVカプセルに乗り込んでいた。
バトルフィールドは旧日本武道館の完全再現空間。
空気が切り替わる。
「よしくん、ここで勝ってランウェイの勢い作るよ!」 「ああ、行くぞ!」
仙台晴天軍も静かに構える。
「いっくん……」 「ああ。──図に乗った番のふくろう、ここで落とす」
その言葉に、美浦は一瞬だけ眉をひそめた。
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開始の合図と同時に──、
「神風ッ!」
一刀斎が一瞬で距離を消し、美浦めがけて高速の右回し蹴りを繰り出す。
美浦は擦れるように回避。だが蹴撃の風だけで頬が切れた。
「は、速……!」
「美浦!」
援護に入ろうとした義人の頭上から、
「太刀霧」
梢が降ってきた。踵が床に叩きつけられ、衝撃波が走る。
「っ……!」
「よしくん、こいつら……!」 「ああ、完全に“落としに来てる”。殺気が違う」
一刀斎と梢は、回避した二人をむしろ愉しむように微笑んだ。
「どうやら余裕は本物らしいな、稲毛アウルズ」 「ならば──まずは小手調べだ!」
一刀斎が再び義人へ突っ込む。
「雷蹴!」
雷エフェクトをまとった渾身の上段回し蹴り。
「パリング──カウンター!」
義人は左腕で軌道を逸らし、即座に右回し蹴りを叩き込む。
見事なポイント奪取。観客席がどよめく。
「見事な精度だ」 「そいつはどうも!」
(……あいつ、戦いを“楽しんでる”!)
義人は背筋が震えるのを感じた。
一方、美浦は梢と丁々発止の攻防を繰り広げていた。
「楼龍ッ!」
梢のストレートキック。
美浦は紙一重で避け、左後ろ回し蹴りの反撃。
「あら、反撃もできるんだ?」 「見くびらないでください! これでもキャプテンです!」
胸を張る美浦。しかし──。
「でもね、あなた達……少し“調子に乗って”ない?」
梢の言葉に、義人と美浦は視線を交わす。
「負け知らずでTVも雑誌も君たちで埋まってる。
──それを見るたびに思うの。『甘えている』って」
その瞬間だった。
一刀斎が静かに、しかし鋭く言った。
「ここからだ。番のふくろう──お前たちは“地に落ちる”」
その一言で、会場の温度が一段冷えた。
仙台晴天軍の雰囲気が“戦闘集団”そのものに変わった。
「いっくん……」 「ああ。──これでウォームアップは終わりだ」
義人の背筋に嫌な汗が流れる。
仙台晴天軍から、凄まじい殺気が溢れ出した。
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「一刀斎!」 「梢!」
二人の気迫が、完全にアウルズを飲み込む。
「「我らが──<神撃攻征>で貴様らを地に堕とす!」」
会場の空気が歪んだ。
「よしくん!」 「一旦下がる!」
「──させぬッ!」
一刀斎の踏み込みは、まるで瞬間移動のようだった。
「パリングカウンター!」
義人は必死に押し返す。
「翠蜷局!!」
梢の高速回し蹴りが竜巻を作り、砂埃が舞い上がる。
視界が完全に奪われた。
「これ……!」 「美浦、気配だ! 目を閉じろ!」
二人は呼吸を合わせ、気配に集中する。
「──そこ!!」
義人の上段蹴りが一刀斎を迎撃。
一刀斎は一拍置いて距離を取り、楽しげに笑った。
「心眼か。ならば……もっと面白い」
美浦と梢が向かい合う。
「美浦、このままだと……」 「うん……私たち、負ける……!」
美浦の声に、観客がざわめく。
義人も気づいた。
世界的に有名になりすぎたことで、相手に本物の覚悟を引き出してしまっていることに。
「君たちは負ける運命だよ」
「その“甘え”ごと──」
「「ここで断ち切る!!」」
仙台晴天軍が襲いかかる。
「よしくん!」 「美浦! ここからは──本気だ!!」
二人も覚悟を決めた。
そして、静かに見守る英二郎。
「……アウルズは負けるな」
「えっ、先生……?」
「仙台晴天軍は“勝ちに来た”。覚悟の量が違う。
アウルズは栄光に守られすぎた。今、そのツケが来ておる」
英二郎は目を細めた。
「だが──敗北こそが飛躍の糧。
見せてもらおう。ここから先の“強敵”たちと戦うための第一歩を」
武道館が、決戦の音を響かせた。
次回、ついに決着!!
小話ですが、仙台晴天軍の技名はシャングリラフロンティアの墓守のウェザエモンの晴天流に対するオマージュの意味あいを込めています。
やっぱりカッコイイですよね。




