EP66 An infiltration operation of love and friendship
無事にホテルに辿り着いた美浦は、義人とともに交流会へと向かう。
しかし、そんな時間にもエリィト学園の魔手が……!
交流会が終わった夜。
義人と美浦は、ホテルのレストランで静かに夕食をとっていた。
神戸牛ステーキの香りが立ちのぼり、テーブルには煌びやかなコース料理が並ぶ。
なのに、二人の表情にはどこか影があった。
「……やっぱり、私たちがこんな贅沢してていいのかなって、ちょっと思っちゃうよ」
「まぁな。俺たち、最近“有名税”がえげつないし」
稲毛アウルズは、毒親勢力にとって『もっとも邪魔』『もっとも憎い』存在になりつつあった。
だから届くメッセージは──
「“とっとと解散しろ”」
「“世界的に注目されるやつは死ね”」
「“うちの子の未来のために断罪してやる”」
そんな醜悪なものばかりだった。
「でも……爆弾の件、どうするの? 開会式で爆破なんてされたら……!」
「平気。すでに公安に依頼済みだ」
「えっ、いつの間に?」
「永瀬さんたちと連絡交換しておいて正解だったよ」
義人がさらりと言うと、美浦はほっと息をつく。
夕食を終え、二人はホテルのネオスフィア座席に座り──
「じゃあ……」
「BSOで軽く汗流しますか!」
二人は《BSO》へログインした。
◆
「んん!? あれ、アウルズの二人やんか!」
ログイン直後、キタのおかんの二人──たまも&きりかが駆け寄ってきた。
「たまもさん! きりかさん!」
久々の再会に、ヨシトもフォーミンも思わず笑顔になる。
「デジタル体育祭で暴れまくるって聞いたさかい、ログインして待ってたんよ!」
「うちらは部活で出場する《ドローン・エアレース》や!」
デジタル体育祭はVRスポーツだけでなく、ドローンのタイムアタックレースや、ARカードバトルまで盛りだくさん。
「ドローンエアレースは花形競技やて! 全国のフリースクールの自慢のドローンが集まってくるんや!」
胸を張る二人に、義人は興味深そうに頷く。
「ほな、久々にバトる? うちら、西日本で最強って呼ばれとるで」
「望むところ!」
こうして、稲毛アウルズ VS キタのおかんの再戦が決まった。
◆
戦場は《森林が呑み込んだ廃墟都市》。
<稲毛アウルズ VS キタのおかん──試合開始!>
「たまも!」
「任せぇ!」
二人がプラズマナイフ《イカヅチ》を構えて突撃する。
「フォーミン、援護!」
「了解っ!」
フォーミンの《ゲイボルグ》が閃き、たまもたちの進行を射撃で牽制。
攻防のテンポは、初対戦の頃よりはるかに洗練されている。
「フォーミンちゃん、狙撃だいぶ精度上がってるやん!」
「へへっ、先生に鍛えてもらってます!」
フォーミンは恥ずかしそうに笑って──
「でも、蹴り技も進化してますよ!」
《サイクロン・ノヴァ》を叩き込む!
一方で、義人ときりかは真っ向から斬り結んでいた。
「ヨシと、強なったな?」
「当然! 伊達に鍛えてないんで!」
一旦距離を取り、互いに笑みを交わす。
「ほな、こっちも本気出すで!」
「──こっちもだ!」
四人が本気をぶつけ合う白熱のファイト。
しかし結果は──
「……サドンデスでも決まらんか。ええ勝負やった」
引き分け。
悔しさよりも、互いを称え合う爽やかな空気が残った。
◆
「そういえば……エリィト学園、知っとるか?」
バトル後、ロビーでたまもが声を潜める。
「没落貴族の受け皿だとか、今の時代の“犠牲者”を名乗って妨害してくるって噂の……」
「公安にはもう伝えてある」
義人の言葉に、二人は目をむく。
「警視庁と繋がっとるんか!?」
「どんな縁つないどったん……!」
「まぁ、詳しくは大会当日にわかるよ」
挨拶を交わし、それぞれログアウトした。
◆
ログアウトした直後。
「よしくん! 公安から緊急連絡!
“テコンドー会場へ至急来てほしい”って!」
「了解。行くか、美浦!」
「メイクも落としたし──公安のお仕事モード、オン!」
二人はホテルを飛び出し、《神戸マリンフィールド》へ急行する。
そこはプロフットサルチームの本拠地で、さまざまな大会にも利用される巨大施設。
しかし今は──
「永瀬さん!」
「義人くん、美浦さん。状況は最悪です」
永瀬の顔は緊迫感に満ちていた。
「会場周辺に……エリィト学園のドローンが飛び回っています。
警察が近づけば、確実に“反応”するでしょう」
義人が暗視望遠鏡で見ると──
不自然にホバリングし、監視行動を取っている複数のドローン。
「遠隔操作か……!」
「ええ。家元が逮捕された過去を理由に、我々を“敵”とみなしているのでしょう」
永瀬は義人たちの携帯に、爆弾の位置を転送する。
「爆弾は会場内に4箇所。
警察の動きは読まれている……だからこそ──」
「──私たちが潜入するってことですね」
「頼みます。時間がありません」
「任せてください!」
◆
会場裏口。
二人はドローンの死角を縫うように移動していた。
「よしくん、これ……完全に《スニークヘッド》第8面だよ」
「だよな。VR版で死ぬほどやったし、やることはわかってる」
そのとき──
「あ、裏口の近くに誰かいます」
小声で美浦が告げる。
様子を伺うと、そこにはエリィト学園の学生が三人。
ドローンの制御卓を操作しながら監視していた。
「永瀬さん、ドローン制御所を発見」
<了解。そこを潰してください。
渡しておいた麻酔銃を使えば、静かに制圧できます>
義人は腰に装備された対人用麻酔拳銃を確認した。
射程20m、しかし効果は強烈。
三人。
制御卓はひとつ。
見つかればアウト。
「……やるしかないな」
次回は爆弾解除に美浦と義人が奔走!
タイムリミットは、消灯時間まで!?




