EP60 脳筋と知略の次鋒戦
ふくろうスクールとウチナンチュ学園の練習試合が始まった。
先鋒戦は、期待の新星・一宮アリサ!
得意のスピードで善戦するも、瑞希博のパワーファイトに惜敗。
そして迎えた次鋒戦、ふくろうスクール・女子テコンドー部の頭脳、光宗あかりが出陣!
果たしてその実力やいかに!?
普段は女子テコンドー部のマネージャーとして裏方に徹している光宗あかり。
しかし、補欠選手としての潜在能力は、部内でひそかに一目置かれていた。
「あかりちゃん、どうしたの?」
「……次鋒戦に出場させてください! 私の“知略”がどこまで通じるのか、確かめたいのです」
その瞳には覚悟が宿っていた。
蓄えてきた知識──無数の戦術、データ、分析。
それがどこまで通じるのか。
その答えを、彼女自身が欲していた。
「わかったわ。でも、絶対に無茶しないでね」
「ありがとうございます!」
あかりはアバターを道着姿へと変更し、静かに舞台へと上がった。
◆
「おっしゃ! 次はあたしの番だね!」
ウチナンチュ学園から飛び出してきたのは、銀髪サイドアップのパワー系女子──
島崎ことり。
与那国島出身のウミンチュガール。
その筋力と体力は、まさに“海育ちの怪力”。
「あたしのパワーで全部まとめて粉々にしてやるさ!」
「それは……どうかしら?」
筋力バカ vs 策略メガネ。
相反する二人が対峙し、
<両者、構え──>
<始め!>
試合が開始された。
◆
「おりゃーッ!!」
開幕、ことりの正面飛び蹴り。
威力は凄まじい──だが、あかりの瞳は揺れない。
(飛び蹴りは失敗した瞬間、向きを変える際の“慣性”で必ず隙が生まれる!)
読み切った。
スッ──。
理想角度での回避。
「あらっ!?」
ことりが体勢を崩した瞬間、あかりの軽い足払いが刺さる。
ドサッ。
(……練習試合だからこそギリ許される技。これは使う価値がある)
冷静に状況を分析し、次の打ち手を組み立てる。
「くそったれ! この臆病メガネ!!」
「あら? 臆病は言いすぎですよ。今日からは──」
ヒュンッ!
鋭い回し蹴りがことりの頬スレスレを通る。
「“胡蝶の策士”と、呼ばせてほしいですね」
その姿は静かに、しかし確実に“戦う知性”。
「知恵と武術の組み合わせは……やっぱり手強いねぇ」
恵が苦笑する。
脳筋タイプが最も苦手とする“知性派ファイター”。
その典型が、光宗あかりだった。
◆
「そして、脳筋ファイター最大の弱点は!」
あかりが華麗なステップで翻弄し──
「な……!?」
「“不規則な動き”をされると、対応しきれなくなること!」
ことりの意識が一瞬ぶれる。
その一瞬で──
上段回し蹴り、クリーンヒット!
──ハーフタイム。
「お疲れ様」
美浦が声をかける。
「すみません……私が次鋒戦に出たいなんて言ったばかりに」
「良いんだよ光宗さん。君の知略は十分すぎるほど発揮された!」
義人は満足げだ。
一方その頃──
「あのインテリメガネ……ムカつくわけさ……!」
ことりが奥歯を噛みしめる。
「落ち着け。相性が悪いだけだ」
コーイチがなだめるが──
ことりの瞳は、獲物を狙う獅子のようにギラついていた。
「大丈夫。デリートまではしないよ?
ウミンチュ魂、見せつけるだけさ!」
◆
後半戦開始。
(冷静になった脳筋タイプは厄介! 策を全部投じないと勝てない……!)
あかりは警戒レベルを最大まで引き上げる。
「おりゃーッ!」
ことりの中段回し蹴り。
あかりはバックステップで避けながら下段蹴りで応戦。
「そんな小細工……あたしの力でねじ伏せる!」
ことりが飛び膝蹴りで強襲。
避け切れず、あかりに直撃した。
「やっぱり……“冷静な脳筋”は手強い……!」
それでも、あかりの思考は止まらない。
距離をとり──
瞬時に反撃プランを再構築。
「距離は逃がさないよ!」
「やっぱりことりちゃんは接近戦特化……!」
義人と美浦も冷静に観察していた。
「いくよ! あたしのフェイバリットドライブ──!」
ことりの右足に力が集まる。
「必殺──チーターラッシュ!!」
高速連打のキックが嵐のように襲う。
目で追えない速度。
だが──
(読めてる……!)
あかりは最小限の防御で嵐を凌ぎ切った。
「あ、あたしのフェイバリットを捌いた……!?」
「あなたの技は……対策済みです!」
今度はあかりが高速機動で撹乱。
中段蹴りを連続でねじ込む。
「秘技──ロウリュウランブル!」
灼熱の乱舞攻撃。
その勢いは観客席を沸かせた。
──そして。
<試合終了!>
『勝者、ふくろうスクール女子テコンドー部──光宗あかり!』
先鋒戦の敗北を取り返し、勝負は振り出しに戻る。
◆
「光宗さん!」
ことりが真っ直ぐに歩み寄ってきた。
その顔には、悔しさよりも尊敬の色。
「完敗だったよ。あんたの頭脳が……こんなにすごいなんて思わなかった」
「こちらこそ、ありがとうございました」
固く握手を交わす二人。
知略と筋力──相反する力がぶつかり、
そして互いを認め合った瞬間だった。
◆
──だが、その熱戦を陰から見つめていた者がいた。
「……ほう。光宗あかり。あの知能指数、利用価値が高い」
「予定を早めますか?」
「いや……まだだ。だが“2年後”までに確保しろ。あれは使える」
黒い影が、仄暗い笑みを浮かべる。
◆
「あかりちゃんは、将来は世界を変えるスパコンを作るのが夢なんだって!」
「そうなのか。二年後が楽しみだな!」
義人と美浦は、無邪気に笑っていた。
──この日までは。
光宗あかりの夢が、
2年後に“国家レベルの闇”に踏みにじられることを。
彼らはまだ、知るよしもなかった。
次回は一旦箸休め。
ブラックジェノサイド事件と労働自由監視隊の歴史と、山城ボビーの手腕が語られる!!




