EP59 パワーとスピードの先鋒戦
久々にBSOにログインした義人と美浦は、息抜きも兼ねてイベント戦を楽しんだ。
そして迎えた練習試合、沖縄のウチナンチュ学園と体育祭に向けた練習試合!
その先鋒戦が始まる!
顧問の檄が飛び、ふくろうスクール女子テコンドー部の士気は一気に最高潮へ。
場内にアナウンスが響き渡る。
<只今より、千葉市立ふくろうスクール・女子テコンドー部と
沖縄県立ウチナンチュ学園・混合テコンドー部の練習試合を開始します>
観客席がざわめき、緊張と期待が交錯する。
<それでは先鋒戦、入場!>
◆
「行くよ……! あたしのキックで嵐を起こす!」
ふくろうスクールからは、スピードスターのアリサが前へ。
一歩踏み出すたび、足元に風が巻くほど気合は満タンだ。
「オイラが相手さぁーー!」
対するは、アリサの二回りは大きい巨漢、
瑞希博──ウチナンチュ学園随一の怪物パワーファイター。
「瑞希くんは後ろ蹴りが主軸……一撃必殺タイプだね」
「しかも体育祭に向けて強化中、と聞いてる」
義人と美浦が冷静に読み取った。
<両者、構え>
アリサの鋭い目。
博の揺るがぬ軸。
<はじめ!>
◆
合図と同時に、アリサが風のように踏み込み、
膝へ狙い澄ました飛び蹴りを叩き込む!
ガンッ!
「さっすが。オイラの後ろ蹴りが脅威って、もう見抜いてるんだね?」
「先輩たちの分析があったので!」
「ははは、ばあちゃんの畑仕事で鍛えたパワーは伊達じゃないさ」
軽口の直後、博の回し蹴りが唸る。
咄嗟にガードするも、アリサの身体は吹き飛ばされ距離が開く。
「すっごい……! パワーが段違い!」
「君も速すぎて当てるの骨が折れるさぁ」
互いの実力に笑みを浮かべ、
熱気が立ちのぼるような友情の火が一瞬にして宿る。
「なら――全力で!」
「正々堂々と!」
「「勝負!!」」
◆
アリサの後ろ回し蹴り!
博は腕を盾にし、重い蹴り上げで迎撃!
「まだっ!」
アリサは空中で反転し、急降下キック!
博も上段蹴りで迎え撃つ。
爆ぜる風圧。
交錯する足技。
ポイントは完全に互角!
「このまま時間切れなら……」
「タイブレイクポイントマッチに移行するな」
勝敗は残り時間と駆け引き次第。
◆ <ハーフタイム>
二人は一度、息を整える。
「アリサちゃん、どう?」
「瑞希くん……あの体格であのスピード……!
でも崩すなら“あの技しかない”!」
──チェインガン・ラッシュ。
アリサが持つ連撃の極致。
スピードでパワーを上回る、唯一の勝機。
「一瞬のスキを……必ず突く!」
彼女の瞳が闘志で燃え上がる。
一方、ウチナンチュ側。
「瑞希、いい相手ができたな」
「へへへ……あの子、オイラと真正面からぶつかってくれる。最高さ」
主将コーイチが誇らしげに笑った。
◆ <ハーフタイム終了>
再び舞台へ。
「行くよ……!」
「こっから先は……!」
火花が散るような視線。
「「全力でぶつかるまでだッ!!」」
◆
アリサが飛翔。
博の後ろ蹴りがカウンターで襲う!
だがアリサは空中で方向を曲げる。
普通なら不可能な軌道だが、VRの身体操作なら可能。
「やるね、一宮さん!」
「あなたこそ、瑞希先輩!」
二人は笑っていた。
勝ち負けを超えた、“戦いの楽しさ”の笑み。
◆
その頃、顧問席では教師同士の緩いやりとり。
「すいませんね。うちの生徒が張り切りすぎて」
「いいんですよ。有坂先生。今年はMAVの二人もいますしね」
「藤宮くんと明石さんですね? マイクが気に入ってて……」
のんびりした会話をよそに──
◆ <タイブレイク突入>
「タイブレイクマッチか……」
「でも、あたしはまだやれる!」
二人の闘志は全く消えない。
「それじゃあ、僕の“フェイバリットドライブ”を見せてあげるよ!」
博が足を大地へめり込ませるほど踏み込み、低く構えた。
アリサの背筋が震える。
「ガードしても無駄さ。これは――」
地面を割らんとする勢いで博が突進!
「すべてを――突き破る!!」
巨躯から繰り出される飛び蹴り。
ぶつかる瞬間、空気が揺れた。
「奥義……海龍豪烈波!!」
海を割る暴威のごとき一撃。
アリサのガードごと防御を破壊し、
重い衝撃と共に連続ポイントが奪われる。
<試合終了! 勝者、瑞希博!>
ウチナンチュ学園が先取。
◆
「負けちゃった……でも……最高の試合だった!!」
アリサは涙まじりの笑顔。
次の目標を見つけた少女の眩しい顔だ。
「良かったよ。でも女の涙は――とっておくもんさ」
博がプロフィール画面を転送する。
「これって……!」
「最高の試合のお礼。いつでも連絡してね」
礼節と敬意が込められた交換。
「じゃあ、あたしも!」
アリサもプロフィールを返す。
青春特有の清々しい風が二人の間を通り抜けた。
◆ <5分間インターバル>
「アリサ、お疲れ!」
「悔いのない表情だね」
「はい! 完敗ですけど、すっごく勉強になりました!」
「それは何よりね」
美浦は次鋒戦へ視線を向ける。
「次は……美穂ちゃん!」
眼鏡と三つ編みの少女──
光宗あかり が一歩踏み出した。
静かな闘志を秘めた、技巧派の拳。
次鋒戦へ――!
次回は次鋒戦!
あかりの知略がバトルを制する!!




