EP55 訃報と決意の涙を胸に
無事に東京駅に到着したものの、ジョウンの襲撃で一時騒然となったが、美浦が彼を一蹴!
警視庁や鉄道警察から表彰を受け、ヒーロー扱いになったのもつかの間、愛知県警から思わぬ訃報が?
数時間後。
義人は両親の幸太郎、道子と共に、愛知県警本部の安置所へと足を運んでいた。
「姉は……殺されたんですかッ!?」
その声は震え、叫びにも近かった。
──最悪の知らせが届いたのは数時間前。
義人はすべてを投げ出し、リニア特急に飛び乗って名古屋へ来た。
「悲しいですが……遺体は激しく焼損していました。ただ、歯科治療痕と、焼け残ったパーソナルナンバーカードから身元が特定されました。藤宮優子さんで間違いありません」
鑑識の言葉は重く冷たく、容赦がなかった。
義人は叫ぶこともできず、ただ静かに泣いた。
脳裏に浮かぶのは、あの頃の姉の声だった。
『お姉ちゃん、このプリン美味しい!』 『義人、半分こだよっ!』
よく笑い、よく怒り、よく泣いた。
どこにでもいる普通の姉弟だった。
──だが、優子は13歳のとき“夢”を見つけた。
偶然つけたテレビ。
全国アナウンサー総選挙で、ステージ中央に立つグランプリ受賞者。
『私……あの場所に立つアナウンサーになる!』
あの日の目の輝きが、義人の脳裏に焼き付いていた。
その日から優子は、道子と幸太郎の応援をうけ、トーク・発声・所作──あらゆるスキルを磨き続けた。
18歳で上京。
アナウンサー専門学校へ。
入学式では会場が“ざわつくほどの”決意を語った。
『私は報道の自由を守るアナウンサーになります! どんな抑圧にも負けません!』
そして──
偶然の名古屋旅行で、憧れの“グランプリアナ”との運命の邂逅。
『どうすれば……私もグランプリを?』
『三つよ。現場で磨いた“知識”。自分を律する“外見と内面”。そして“基礎スキルをアップデートし続けること”。』
優子はその三つを胸に刻み、
20歳で日京テレビへ入社。
新人ながら現場を駆け回り、その名を全国に広め始めていた。
──そう、“広め始めていた”だけだった。
夢はここで途切れた。
「日京テレビには……何て、伝えれば……」
義人の震える声に、鑑識が答える。
「担当ディレクターに君と会うよう伝えています。すぐ来るはずです」
しばらくして、日京テレビの女性ディレクターが応接室へ姿を現した。
「あなたが義人くんね……優子さんから、よく聞いていました」
彼女は深々と頭を下げる。
「私が……もっと守れていれば……優子さんは、殺されずに済んだのかもしれない!」
ディレクターの声は震え、怒りと無力感が混じっていた。
近年、報道現場は内部で大きな分断が起きていた。
政府寄りプロパガンダを遵守する“真面目世代”。
それを拒み、正面から権力と戦う“キラキラ世代”。
優子は後者の象徴だった。
ネット配信ニュースで共産主義を正面から批判し続けたアナウンサーたちは、次々に処罰されていった。
そんな中、優子はひとり、毅然と立っていた。
「あなたが悪いわけじゃない。顔を上げてください」
義人の声は、弱々しくも芯があった。
それは“ある決意”に向けて固く結ばれた目の色だった。
「姉は……アナウンサーとして、使命を全うしていましたか?」
「えぇ……優子さんは真っすぐに向き合っていました。視聴者の中にも、彼女に救われた人が確かにいました」
「……よかった」
義人は涙を拭った。
優子が“使命”を果たしたなら──
自分も果たす番だ。
「鑑識さん。テロリストたちは……どこに拘置されているんですか?」
「東京の多摩拘置所だが……まさか話を? 世界的テロ組織のリーダーだぞ?」
「だからこそ、俺は話したい。彼らの言葉に……何かある気がする」
危険だとわかっている。
それでも、立ち止まる気はなかった。
警官が護衛を約束すると、義人は深く礼をした。
「父さん、母さん……姉さんの葬儀の準備をしよう。今、俺ができることをやるよ」
その言葉は、彼の背中を確かに押していた。
(姉さん……見ていてくれ。俺は戦う。この世界がどうなろうと……俺は“プロゲーマー”として、この世界と向き合って生きる)
その決意は、静かに、しかし確実に世界を照らし始めていた。
───
数日後。
優子の葬儀は静かに執り行われた。
日京テレビの関係者、美浦も参列していた。
「よしくん……私まで呼んでくれるなんて」
「姉さんにも、美浦を紹介したかったからさ」
儀式後、遺体は浅間山の“溶岩エネルギー火葬場”へと運ばれた。
送迎ヘリの中で、美浦が尋ねる。
「よしくんのお姉さんって……どんな人だったの?」
「優しくて……怒ると超怖い。でも、誰よりも努力する人だったよ」
思い出を語る義人に、幸太郎が軽口を飛ばした。
「まあ、美浦ちゃんは義人の許嫁だしな」
「な、なに言ってるんだよ父さん!!」
「……ありかも」
美浦は小さく呟き、頬を赤く染めた。
──こうして葬儀は終わった。
───
そして数日後。
多摩拘置所。
「……なぜ貴様が、俺と面会を?」
鉄格子越しに、テロ組織《クルド解放戦線》のリーダー・マグルが義人を睨む。
「あなたと、話がしたかったんだ」
義人の声はわずかに震えていたが、その目は揺らがなかった。
「目的は何だ? 俺たちは世界的組織の端くれだぞ?」
「あなたに……どうしても聞きたいことがある」
次回、義人とマグルの対話はなにを意味するのか?
そして、美浦と大塚のカフェでのんびりとデート!?




