EP54 10時09分 東京駅到着
義人と美浦はなんとか爆弾の解除を試みる中、それに気づいたテロリストたちが反撃する。
義人の機転を利かせてこれを退け、爆弾の解除に成功する!
爆弾は止まり、列車は救われた。
喧騒が消えたスプリームクラスで、ようやくふたりはベッドに倒れ込んだ。
「ふかふかだぁ……!」
美浦はシーツに顔を埋め、まるで子どものようにとろける。
「それじゃ、今日は――」
「よしくんの腕枕で!」
勢いよく抱きついてくる美浦。
緊張の糸が切れたのか、そのまま小さく寝息を立て始めた。
淡い吐息が義人の胸を震わせる。
「……おやすみ」
ようやく訪れた、ほんの束の間の平和だった。
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「畜生……なんで俺たちがこんな……!」
拘束されたマッドが毒づく。
クルド解放戦線は全員、東京駅で引き渡しを待っていた。
「敗北は敗北だ。だが、メディアに恐怖を刻んだのは確かだ」
マグルは静かに、自分たちの“終わり”を受け入れていた。
彼はまだ信じていた。
──自分たちが倒れても、どこかで同志が復讐を果たすと。
一方のジョウンは荒れ狂っていた。
「納得できない! また死刑なんてごめんだ!!」
富裕層を狙った暗殺と爆破。
貧困と嫉妬が生んだ“狂気の死刑囚”。
そんな男が、皮肉にも列車ではただの捕虜だった。
「ジョウン、静かにしろ。
……日本のバカメディアを黙らせたのは事実だ」
そう言いながら、マッドは例の映像を思い出す。
優子の乗ったヘリが撃墜される映像──
日本中の報道機関を震え上がらせた“恐怖の脅迫メッセージ”だ。
アインクラッド号は速度を落とし、静かに東京へ向かっていた。
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「よしくん! 朝日キレイだよ!」
「本当だ……」
沼津の海岸線に、まぶしい太陽がのぼる。
義人と美浦は、まるで“世界に取り残された二人きり”のように眺めていた。
「豪華列車で、朝日まで見れるなんて最高!」
美浦の笑顔は、昨夜の危機がまるで嘘のようだった。
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朝食は昨日注文した広島のすき焼き弁当。
希少部位・こうねを甘辛く煮込んだ逸品だ。
「あ、この肉うまっ!」
「真空保管のおかげだね」
テレビをつけると、事件一色だった。
『こちらが日京テレビ中継ヘリの墜落現場です――』
燃え上がる残骸。
だが義人はまだ、その中に姉・優子がいたことを知らない。
『爆弾は謎の人物によって解除された模様です。
名もなきヒーローの働きと見る声も……』
美浦は頬張りながら言う。
「名もなきヒーロー……だって」
「はは……誰のことだろうな」
ふたりは、ただ静かに駅弁を食べ続けた。
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アナウンスが響く。
<まもなく東京駅に到着いたします>
「ようやく着いたね!」
「いやぁ、職場体験にしてはハードだったな……」
スプリームクラスを降りると、
ちょうどクルド解放戦線が鉄道警察に連行されていた。
「お前らのせいでッ!!」
怒り狂ったジョウンが義人へ飛びかかる――
その瞬間。
「野蛮ね。そういうの、嫌い」
美浦の後ろ蹴りが炸裂。
ジョウンは吹っ飛んだ。
「こ、この女……韓国武術を……!」
永瀬公安が近づいてくる。
「爆弾を解除し、自動運転を修正したのは……あなたたちですね」
「え?」
「本庁に報告済みです。後ほど、表彰があります」
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二人は後に警視総監から
《警視庁特別十字勲章》 を授与され、
AJRからは鉄道が生涯乗り放題の
《プライマルパス》 を受け取った。
帰宅すると、両親が泣きながら抱きしめてくる。
「義人……本当に無事でよかった……!」
「心配したんだぞ!」
「……ごめん」
その時、電話が鳴った。
幸太郎が受話器を取る。
「はい、藤宮です」
そして、表情が凍りついた。
<愛知県警です。
ご家族にとって大変つらい知らせになるかもしれません。
……すぐに、県警本部へお越しください>
──義人はまだ知らない。
あのヘリに乗っていたのが、姉・優子だったことを。
次回、義人に訪れる悲しい別れ。
それは、次の物語への布石となる。




