やっぱりまだ口を噤むこと
問い詰められてたじたじしているナナギの脳裏に真っ先に浮かんだのは、神の加護に関してだった。
(言うべきか、言わざるべきか)
言ってしまってもいいと思う反面、厄ネタが潜んでいそうな懸念で正直に告げるのをためらう。
神の加護というのは、珍しいものだ。人伝にそれを知っていたし、実際に《鑑定》で確認して加護持ちの少なさをわかっている。
そんななかナナギたちは複数の神の加護をもち、なおかつ神々の代表である凄そうな神様の加護が与えられている。
ナナギがずっと不安に思っていることは、その大きすぎる加護によって厄介ごとが舞い込んでこないかということだ。
そうして過剰なまでの加護の理由という答えのわからない事柄を抱え込むというのは、幼い子供たちにとって重荷にしかならないのではないだろうか。
何も知らないままでいたほうが、幸せでいられるのではないだろうか。
一方で、神の加護のことを知っていたほうが、差し迫ったなにかが起きた時、覚悟ができるのではないかという可能性もあるのだ。
(いや、そもそも俺の杞憂でお二人はそれも気にしないでけろっとしていそうではあるけれど。頭はいいけど、まだ幼いし、ありがたくはあるが面倒ごとの種になりそうってのまでは考えが及ばなさそうだしなあ)
そうした思案の末、臆病なナナギは神の加護に関しては告げず、どんなスキルが向いているかを教えるだけにとどめることにした。
ネイヴァンには武芸一般の才能があること、父親と同じように絵を描くことが向いていて、それだけでなく芸術方面の才能もあること。
ファクトは雷魔法のほかに光の神が司る魔法全てが向いていることと、文の読み取りや執筆の才能があること。
ナナギ自身のどんなスキルが才能があるかについてもつまびらかに語った。
「へえ、僕って画才があるんだ。今までそんなことおもったことなかったなあ」
「いきなり上手くなるってわけじゃあないですし、研鑽を続けていったら、すごい絵が描けるんじゃないですか?」
「本好きだから、自分で書くのも面白そうだぞ」
「そっちですか? 光魔法に治癒魔法、伝達魔法と聖魔法。これをきっちりと鍛えれば神官様にだってなれますよ」
「俺は神殿の図書館で働きたいだけで、癒しの神官さまじゃないんだから、いいんだ」
「それに神学校はそもそもお金がね、光の魔法の才能があってどれだけ勉強して頭がよくても、まずそこで躓いてしまうよ。それこそ光の神様の加護でもあれば、奨学金がもらえるかもしれないけど」
「あー」
このような感じで、話題はあちことに飛び午後は結局スライム叩きにはいかず、おしゃべりに終始した。
《鑑定》スキルは三人だけの秘密という運びになり、そしてこれからのざっくりとした予定が決まったのだ。
三人が掲げる目標は、見習い職のほこらにいくこと。
そこにいたるまでのステップとして、
・得意な戦闘に役立つスキルをのばす。
・ネイヴァンは武芸全般の才能を潜ませているが、一点集中で今も使っている剣と盾のスキルレベルをあげる。
・ナナギは槍スキル、スライム叩きのために《索敵》スキルもできるだけのばす。
・ファクトは雷魔法の起動札に毎日お祈りして、雷魔法スキルをあげる。
・ある程度レベルを上げつつお金をためて、装備を整えてから森の浅いところのスライム以外の魔物を倒せるようにする。
そして、三人でレベル10になってほこらに行って、見習い職になる、
それとレベル10になるまでに時間がかかるのは確定で、その間にナナギは十五歳になるから、就職先を見つけなければならない。
「俺としては、料理スキルを伸ばして最終的には料理人が夢ですけれど、今のところは《薬学》と《錬金術》の才能も活かしたいし薬師さんのところで働かせてもらうのはどうだろって考えてます。料理スキルは日々のお手伝いでスキルを伸ばせるんですけど、こっちのふたつはせっかくの才能の伸ばし方がないんですよね」
とてつもなく宝の持ち腐れなのが惜しいのだ。
HP結界を修復するヒールボール作りや、解毒薬、病気の薬をつくっている老婆が村に住んでいる。
ナナギは近々そこに掛け合うつもりだった。
「もう少し大きな町だったら真贋魔法スキルで計算の手伝いの仕事もひんぱんにあったんだろうけどね」
ネイヴァンは残念そうにいう。
「そもそも真贋魔法はまだ覚えてないから、覚えるかもわかない魔法でお仕事手伝います! って掛け合えないですよ」
「それもそうだね」
ファクトは眠っている途中に寝落ちして寝息をたてていた。
「あ、そうだナナギ。僕に封厄スキルと滅厄スキルってあった?」
思い出したようにネイヴァンは問うた。
「はい、ごくごくわずかなレベルですが、ネイヴァンさまは血統スキルというものを持っていました。実はなにかすごい血筋だったりするんですか?」
ナナギは触れていいのかためらいながら問う。
「僕を産んでくれたお母さんが、帝国貴族だったんだって。帝国貴族には厄族と戦うことができる二つのスキルの血統スキルをもっているんだ。僕も持ってるけど、低いんだあ」
すこしだけ残念そうだった。わかってたけど、としょんぼりとつぶやく。
「僕の父親が違う姉さん……といっても、帝国の貴族の血が濃いと、どちらでもある身体で生まれて、男性になるか女性になるかは、後天的に決まるものだから、今の段階では確定お姉さんではない人がいるんだけど」
「おあ!? ……はい」
ネイヴァンが両性具有だと知っていなかったら、頭が混乱しそうな情報をいきなり告げられてナナギは変な声がでた。
(その父親が違うお姉様の話って突っ込んできいていいことなんですか?)
「正確には女の子として育てるって産みの母が決めたからお姉さんって呼んでるんだけど、姉さんはこの二つのスキルを昔から使いこなしていて、本当に格好いいんだ。ナナギは会ったことがないけど、いつか紹介したいな」
「そ、そうなんですか、紹介してもらえるのを楽しみにしています」




