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気になるところ

「ファクト、ナナギから話があるんだって。一度部屋に行こう」


 食後、スライム叩きをするために家を飛び出していきそうな元気いっぱいのファクトを止めて、子供部屋にはいる。

 ファクトはなんだろう、と不思議そうに首をかしげた。

 ナナギはどきどきしっぱなしだった。

 それぞれのベッドに座った兄弟が、ナナギをじっと見つめてくる。


「え~と」


 ナナギは時間稼ぎめいたしどろもどろの前置きを置いて、切り出した。


「ずっと内緒にしていたことがあるんですけど、俺、実は《鑑定》スキルが使えるんです」


 ナナギからしてみれば、決心のいる告白だった。

 ファクトは純粋に驚いたのかぱちりと瞬いた。ネイヴァンの表情は特にかわらず、強いていえばやっぱりと言いたげな納得を浮かべていた。

 

「すごいぞ、ナナギ! 《鑑定》スキルを持っているのか、本の主人公みたいだ」

「もしかしたらと思っていたけれど、本当に持っているんだ。《鑑定》スキル持ちなんて、すごいじゃないか」


 何も知らない兄弟は純粋な賞賛をしてくれるが、ナナギにはそれがひどく後ろめたい。


「スライムのせいで倒れた後、なにもわからない俺は、周りにあるものがなんなのか知りたい、と強く思ったら《鑑定》が使えることに気づいたんです。それで、自分のことをはじめ、いろいろ《鑑定》してみて、お二人や旦那様や奥様の情報も勝手に盗み見てしまって……」


 二人とも、個人情報が見られていることに対して危機感がないのか、嫌悪もみせずに不思議そうにナナギを見つめていた。

 なにをそんなに気にしているのかわからないといった態度だ。


「それで、ファクトに雷魔法を薦めていたんだね。《鑑定》スキルはそこまでわかるんだ。ねえ、僕にはなにか才能があった? それともそんなに優れた能力はないのかな?」

「そっか、そうなんだな。ナナギ、ほかには? 俺にほかになにか才能があるのか!?」


 盗み見たという単語を聞き逃しでもしたのか、嫌悪を見せない。ネイヴァンもファクトも、新しいおもちゃを見つけたみたいに目をきらきらさせていて、ナナギが見た自分の情報が気になるらしい。


「お二人とも、気持ち悪くないですか? 勝手に《鑑定》したんですよ」


 ナナギが念押してたずねる。


「勝手に《鑑定》したことを気にしていたんだ」


「はい。ひとの秘密を勝手に見てしまったようで、すごく悪いことをしたとおもっています」


 しおらしく言うが、ネイヴァンとファクトは首をひねる。

 二人にはナナギの伝えたい深刻さが伝わらないらしい。

 子どもたちはナナギの謝罪をどう受け止めていいのか戸惑いながら、顔を見合わせている。

 そもそもナナギの罪科がわからないせいで、許す許さないの判断にすら至らず、話がまったくすすまない。三人の中でひたすら困惑の空気が満ちる。 


「それってそこまで気にすることなのかい? 使えるスキルを使うのって、そんなに悪いことなのかなあ」

 ネイヴァンはひとりごちる。


 ファクトは首をひねって腕を組み、考えこんだあとそうか! と閃いた。


「前に見た物語にあったんだ。本当の実力を隠していたい下級冒険者の主人公が《鑑定》を使われて、自分の得意なことを知られるのが嫌がってた。

ナナギが気にしてるのってそういうことか?

でも、そういうひとに《鑑定》して勝手に情報見るのはダメかもしれなけど、俺たちはふつうのひとなんだから、見られて困ることなんて、ないんだぞ。

あとは、悪いやつがこっそり《鑑定》して、まだ自覚はないけど才能がある子供がある子供をさらった話も読んだんだぞ。

でも、ナナギは知った情報を悪用したりしないよな? 何をそんなに気にするんだ?」


 うんうんとネイヴァンは弟の言葉に同意する。 


「そんなことより、ナナギ」


 ナナギの中でずっと燻っていた罪悪感は、そんなことで呆気なく流された。


(ええ? そんなことじゃなくないですか?)


 言い募ろうとするが、ネイヴァンとファクトの熱を持った勢いにまける。

 ベッドから乗り出して、聞いてくる。

 

「僕ってどんな才能があった?」

「そうだ! ナナギはどんな才能があるんだ?」


 こどもたちにとって勝手に《鑑定》されたことよりも、《鑑定》で知り得た結果のほうが大事だったのだ。

 

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