坪井弁護士さんですか?
「坪井弁護士さんですか?」
老弁護士のところに、公衆電話からきた着信は、開口一番そう言った。
「はい、私が坪井ですな。」
「私は岡田一郎です。純一郎、失礼、柴崎教授の知り合いです。」
「聞き及んでおりますな。」
「私に、例のブツの真正を証明させて頂きたい。」
「こちらこそお願いしたい。」
「条件があります。」
老弁護士は息を飲んだ。
「何でしょうかな?」
「このUSBメモリーをあなたに渡したのは、純一郎、つまり柴崎教授だと証言してください。必ずです。墓場まで持って行って下さい。それが条件です。」
「柴崎教授からの紹介ですから、彼も承認してるのですな?」
「もちろんです。」
「なら、構いませんな。」
「良かった。ねつ造がお嫌いだと聞いていたので、心配していたんですよ。」
「時と場合によりますな。」
「私ら2人は覚悟してます。」
「なら、結構ですな。お2人の正義感に敬意を表します。」
「はっはは、そんな大層なもんじゃありません。」
「いや、それでもです。」
「ありがとうございます。純一郎には、ぜひ感謝してやって下さい。彼には、一生に一度のお願いを聞いて貰いました。ま、私はすでに一生に一度のお願いを使っていたらしいのですがね。ワハハハハ……」
「大事な事を一つ伺っても?」
「何でしょう?」
「あなたは、どこの誰なのですかな?」
「失礼、私はーー」
老弁護士は、彼の立場を聞いた途端に、勝ちの未来が見えた気がした。




