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誰が召喚したか知りませんが、私は魔獣ではありません  作者: もっけのさひわひ


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器がデッケぇな

「穴熊隊長、ハンゾウさん、それとジョジー。そんなわけで私は行ってきます。大丈夫ですよね?」


 急な出張が決まったので、主だったプロジェクトメンバーに集まってもらいました。


「まかせろ。ひめ」


 うぉう! キキィ!

 特殊部隊第七歩兵隊、通称穴熊の隊長が拳を挙げれば、その肩でフワフワお猿のジョジーも同じように小さな拳を上げる。


「こちらもお任せを。『暇してる影』も各隊、予定通りに出立させておきましょう。それにしても、一体いつから私の名が知られていたのかと。さすがはミカ様、抜け目ない」


 ぐふっふっふっふ。


「たまたま集会所にいた人から聞いたんですよ。ていうか普通にその名前で暮らしてましたよね? それより聞いてくださいよ! 私のいた世界にも『服部半蔵』っていう有名な忍者、つまり影の人がいたんです! もーハンゾウさんって名前聞いた瞬間大興奮! 偶然とはいえすごくないですか! 名前まで伝説だなんてさすがはシータイの最強影!」


 ぐふーっ、とハンゾウが吹き出す。


「我らが姫は、まこと奇特でございますねェ。そんな伝説を好む姫がどこの世界におりましょうか」

「奇特とはなんですか。あっちの世界じゃ忍者は大人気なんですからね?」

「ひめ。ぁなぐま、ひとり、連れてけ」

「はい。ちなみに硬派なドワーフも大人気です」


 私が返事するやいなや、今回の作戦に参加しない予定のドワーフが一人フル装備で駆けてきた。今日も背中に担いだゴツいツルハシがイカしている。


「マネジさん」

「お呼びですか公式聖女様」


 シュバ。あらかじめ呼んでもないのに当然のように飛んで出てきたのは、深緑の猟犬ファンの集い北の辺境エリア統括者である。


「どこに潜んでるんですかとはもう訊きませんけど……」

「ええ、余計なことは聴かないように徹底しております」

「気をつけてくださいよ? ただでさえザコルに首根っこ掴まれてるんですから」


 彼は子爵家の機密をうっかり聴かされたことがある。それはもううっかりとしか言えないうっかりで。ザコルの『ミツジの息子だから大丈夫』という口添えがなければ子爵邸から出してもらえなかったかもしれない。


「そちらの団体のことは私が詳しくない以上、完全に丸投げになっちゃいますけど……いや、本当に気をつけてくださいよ?」

「ええ、お任せください。我ら素人集団ですが、推しの不利益になるようなことは絶対にいたしません。必ずや益をもたらしてみせましょう!」

「はい。では手短になって申し訳ないですが、後はよろしくお願いします」

『はっ』


 特殊部隊隊長と影と影に憧れる自称素人はその場にひざまずき、そして散った。





「いやあ、何度も見てもただのOLだったとは思えないなあ。あんなに慕われちゃって。影ばっかりだけれど」

「……私も幾度となくミカに仕事を投げてきた自覚はあるが、お前に呑気な言い方をされると腹が立つのは何故だろうなオーレン」

「なな、なんでだよお、僕だってちゃんと相談には乗ってるしセオドア君と連絡取り合ったりしてるよおお」

「………………」


 ザコルが胡乱な瞳で父母を見つめている。

 オーレンもイーリアもああ見えて忙しい。それにコード・エムは、サカシータ領よりもテイラーを始めとした他領にメリットのある作戦だ。だから、この場でのテイラー勢筆頭、つまり私の仕切りでいいのだ。


「町長様。代理は誰を立てましょう」


 そうマージに尋ねたのは町長屋敷メイド長アデリである。名は最近知った。


「そうねえ、執事長の選定がまだだったわね」

「適任がおりませんもの、仕方ございませんよ。このアデリでは役不足でございますしねえ」


 同じ使用人でも執事には執事、メイドにはメイドの仕事があるようで、町政に関わる仕事は執事の領域らしい。ちなみに、執事長と一緒に捕まった男性使用人は、次期執事長として教育中の者だったようだ。


「マージ。ちょうどいい暇人がいますよ」


 ぐい。


「えっ」


 てってって。ザコルに無理矢理腕を引かれ、バランスを崩したオーレンがマージとメイド長の前に躍り出る。


「まあ、旦那様」

「えっ? はっ? ほぉっ!?」

「おお、名案だなザコル。現地で役に立たんなら、現地に行くマージのために役立てばいいのだ」

「はぁっ!? ほほっ、本気で言っているのかいリア!! ぼぼ、僕を一人ここここに残して」

「そうだな、山に再び行くかここに残るか選ばせてやろう。山に行くならチベトとの交渉に立ってもらうぞ」

「ひいいいいいそそそんなああああ」


 どんだけ長老が怖いんだ……。

 ぽん。震え上がるオーレンの肩に優しく手が置かれる。


「若様、お久しぶりですなあ」

「モリヤぁ!!」


 うわーん、と若様ことオーレンはモリヤに泣きついた。モリヤはオーレンよりも歳上、むしろその親世代に近い。モリヤにとっての『旦那様』とは、オーレンの父ジーレンなのだろう。


「ここではお一人ではありませんよ、このモリヤがついておりますから。さあ、落ち着いてください。あまり震えると肩の上のお孫様が落ちますよ」


 あれは元騎士団長じゃない方のモリヤだな。何となく気配がまろやかだ。


「わっ、わあごめんよイリヤにゴーシ、情けないとこばかり見せて……っ」


 肩に守り神を乗せていたことはすっかり忘れていたらしい。


「ううん。おじいさまはつよいしカッコいーからゼンゼンだいじょーぶです!」

「ゴーシぃぃぃぃ」


 なんでも肯定してくれる孫は貴重な存在である。


「ゴシ兄、器がデッケぇな……」

「それなだよエビー」


 そんなビッグなゴシ兄は、悩み顔の従弟の方にも顔を向ける。


「イリヤ、おまえはせーじょさまといっしょに行くのか?」

「えっと、でも……」

「イリヤくん」

「はっ、はいミカさま」

「行くでしょ?」

「えっ、あっ、でも僕、母さまにまってるように言われたんです。僕も、しんじる、って……」

「緊急事態だからいいんじゃない? って、私も怒られるかもしれないけどね。どう? 一緒に怒られに行かない?」

「……っ、いく、行きます!! いっしょにおこられる!!」


 ぱっ、イリヤはオーレンの肩を降りて駆け出す。そして私に激突する前にザコルに捕まった。


「イーリア様、ミカ様。ゴーシと私はここでお待ちしています」

「ララ、すまんがその木偶の棒を頼んだぞ」

「はい。お任せください」


 ララは、オーレンにとって貴重な『家族枠』の女性である。ララもその立場を自覚しているようで、当然のようにオーレンの世話係を引き受けた。


「ゴーシくんも、後はお願いね」

「うん。おれもおじいさまといっしょにいるよ。あと、あしたも山のたみがイジめられないよーに見とく」


 えっ、とラーマがゴーシの方を見る。今日一日、彼に護られていたことを今知ったらしい。


「ちょっと、今、山の民がイジメられないように、って言ったかい? もう、シータイの連中はやりたい放題だなあ……。安心してくれ、ラーマ君。僕がいる限り君達に害が及ばないようにするよ」

「も、申し訳ございません。元はといえば、私どもの勘違いで民の皆様の不興を買ったことが原因でして。しかし聖女ミカ様が庇ってくださいましたし、どうやらゴーシ様にもご配慮いただいていたようで」


 アセアセ。


「おれ、せーじょさまに言われてまもってただけだよラーマさん。きょうはいろいろ教えてくれて、ありがとうございました」

「ゴーシ様……」


 ラーマもゴシ兄の器のデカさに感動している。


「はあ、ザコルじゃないけれど、ミカさんが良識ある人で本当によかったよ」


 そんな良識があると思われている私だが、一方で爆弾ミカ坊とも呼ばれている。人間、色んな面を持ち合わせているものだ。


「ラーマさんはどうしますか。案内してくれるっておっしゃってましたよね」

「は、ご、ご同行させていただけるので!?」

「そうですねえ、神官全員は乗れないかもですが、ラーマさんだけなら連れて行けると思います。朱雀様も一緒に飛んでくれるならですが」


 キョエ?

 朱雀が首をかしげる。


「イリヤくん。一緒に来てくれるよう、朱雀様に頼める?」

「はい! スザク、スザク。『乗せろ』『飛ぶ』です!」


 キョエエエ!!

 朱雀は嬉しそうにバサバサと翼を羽ばたかせてみせた。




つづく

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