二つの太陽と、終わらない円舞曲(ロンド)
12月 6日
僕の一日は、二つの異なる太陽によって支配されている。
一つ目の太陽は、朝の四時に昇る。パン屋のオーブンの真っ赤な火だ。
知能年齢二十四歳の僕は、今やパン屋の経営と製造のすべてを統括している。だが、僕はあえて一人の職人として、以前と変わらず粉にまみれて生地をこねる。
ギルバートさんがかつて言った「理屈じゃない」という言葉の真意を、僕は今、高度な物理学と心理学の双方から理解し、実践している。客の顔色を見て、その日の湿度の変化を肌で感じ、最適な発酵時間を一秒単位で調整する。
「ガイ、お前がいると店が生きているみたいだ」
ギルバートさんはそう言って、僕がシステム化した台帳を片手に、誇らしげに客を迎え入れている。僕が作った「職人の勘の言語化」は、彼にとっても新しい発見の連続のようだった。
そして、二つ目の太陽は、夜の十時に灯る。大学の研究室の白い蛍光灯だ。
昼間の「パン粉の匂い」を消臭し、僕は「C・C」という記号となって、自分自身の脳波と格闘する。
僕が取り組んでいるのは、この一年間の「安定」を、なんとかして延命させるための分子モデルの構築だ。顕微鏡の中に浮かぶ僕の神経細胞は、昼間に焼いたパンの気泡によく似ている。しかし、こちらはいつ破裂して霧に消えるかわからない、危うい均衡の上に成り立っている。
「ガイ、君はいつ寝ているんだ?」
ミラー先生が心配そうに声をかけてくるが、僕は笑って答える。
「二十四歳の僕には、眠る時間さえもったいないんです。今の僕には、世界のすべてが手に取るようにわかる。この視界を、一分でも長く繋ぎ止めておきたい」
昼の僕は「人々の幸福」を作り、夜の僕は「自分の存在」を刻む。
この矛盾した二重生活が、今の僕を最も強く「人間」らしくさせている。
帰り道、深夜の町を歩きながら、僕は冷たい空気を深く吸い込む。
パンをこねる手の温もりと、キーボードを叩く指の鋭さ。
その両方を持っている今の僕は、間違いなく、人生で最も輝いている。
たとえこれが、砂時計の最後の砂が落ちる前の、一瞬の閃光に過ぎないとしても。




