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蜥蜴の尻尾

マルード伯爵令嬢の主導で捕縛された、北部地域の井戸に設置されている魔道具の核(コア)を抜き、他国に売り飛ばした下手人は8人。


うち、ひとりが捕えられている牢に足を運ぶ。


「私は何も間違った事はしていない!北部地域の人間は王家に対して叛意がある、これは当然の報いだと、叔母上も仰っていた!」


牢で威勢の良い声を張り上げているのは、ルシアン・キュティレット子爵令息。


義母上を心から信奉する、義母上の甥子である。


「生活用水として利用される井戸を問題なく利用する為の要である魔道具から核(コア)を抜き取る事は、殺人や放火に並ぶ重罪であるし、ましてや、稀少品である魔道具の核(コア)を売り飛ばしたとなるとかなりの悪質な犯罪行為であると王国の法は判断する。


貴族であり、王妃陛下の縁戚であると言う事ならば尚更、その罪から逃れる事は出来ない」


貴族だから、義母上の甥子だから。


それを理由に見逃せば、民衆からの反感を買う事は明らかである。


父上は義母上に甘いが、国王として為すべき責務は全うする方である。


「王妃陛下の縁者であるせめてもの情けとして、君は毒杯を賜る事となった」


「―――は?」


義母上は捕えられた下手人の中にルシアン(甥子)がいると知ると、発狂する勢いで取り乱し、議会が終了すると同時に父上の執務室へと向かって行った。


本来ならば、絞首か斬首の2択であるところを、義母上の甥子と言う事から毒杯を賜ると言う選択を父上はされた。


王家の秘毒だ、確実に死に至り神の御許に導かれると聞いている。


義母上は王妃となってから初めて、父上は国王である、と言う事実を思い知った様だ。


現在義母上は表向き、離宮にて静養されている事になっているが、実質、謹慎処分である。


「嘘だ、だって、叔母上が、絶対に助けてくれると…」


「重罪を犯した君を解放するには、死を以ての解放しかない。そういう事だ」


義母上が謹慎処分を受けた理由は、もうひとつ。


「君は、何処で王家の秘毒を手に入れた?」


貴族牢には、兄上の婚約者を害するとシトリーが教えてくれたディルマ侯爵令嬢もいる。


核(コア)泥棒の下手人として捕縛される時、丁度、キュティレット子爵令息がディルマ侯爵令嬢に王家の秘毒を渡すところだった。


「それを言えば、処刑を免れるのか?」


「いいや?君の処遇は変わらない。王族でもない君が、王家の秘毒を手にしていた事実の確認だ。核(コア)の窃盗のみならず、王家の秘毒の窃盗も行ったとなれば、父上や義母上の温情を取り消して他の下手人と同様の刑を受ける必要があると進言しなくてはならないから、その確認だ」


彼に義母上が融通したのであろう事は分かりきっている事実だ。


だからこそ、父上は義母上に離宮への静養を命じた。


―――犬の様に首を括るのも、胴体と別れを告げるのも御免こうむる、と言ったキュティレット子爵令息は王家の秘毒の出処が自身の叔母、義母上である事を白状した。


結果、義母上の謹慎処分は無期限のものとなり、ディルマ侯爵令嬢は王家の秘毒を兄上の婚約者に使用するつもりだった事から、厳しい監視下に置かれる北塔への幽閉が決定した。


父上は、兄上の婚礼に伴う国王への即位を以て離宮で静養する義母上の傍に付く事を決定された。


婚礼までの間にフローラにもしもの事があれば、と兄上はカペリート公爵令嬢を常に傍らに置き、番犬の様に睨みを効かせていたのだった。

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