一本釣り
超大型のクラーケンをジシュカ将軍が釣り上げた、と言う話が飛び込んで来たのは王子宮のガゼボでシトリーと魔法研究の息抜きにおやつを食べようと言う話をしていた時だった。
領地で謹慎中では?と言う疑問が湧いたが、ジシュカ将軍が大人しく謹慎を受ける筈もないかと納得し、魔法通信機の画面に映るジシュカ将軍と、将軍の釣り上げた超大型のクラーケンを眺めた。
一般的なクラーケンが全長凡そ15メートルに対して、映像に映るクラーケンはその3倍はあろうかと言う大きさをしていた。
ジシュカ将軍が釣り上げたクラーケンの姿を見た第8皇子は、恐ろしさのあまり泣きじゃくって失禁し、公務を取り止めたいと父親である皇帝陛下に訴えているそうだ。
こんなものを釣り上げるジシュカ将軍は人間ではないとも言っているらしい。
「ジシュカ将軍は鬼人族だから、人間ではないのは確かだね」
帝国への忠義の証として自ら角をへし折ったと言う話は割と有名なんだけれど、知らないのかな?
「釣り上げたクラーケンはどうなるのでしょう?」
「魔物研究の研究室に回されるだろうね」
「あんなに大きなクラーケンさんが収まる水槽が帝国にはあるのですね」
解体されてから研究室に回されると思うのだけれど、シトリーが可愛いから突っ込まないでおいてあげよう。
あれだけの巨体が出没したとなると、大規模な討伐部隊が組まれる事になるだろう。
魔物討伐に名高い第3皇子あたりと伯父上が協力する事になるだろう。
「これで、おおよその問題はルーシャン嬢だけ、となりますのね」
早く憂いが取り除かれ、卒業した暁には殿下と口付けを交わしたいですわ、とシトリーはいじらしい事を言ってくれた。
「口付けだけ、で良いのかい?」
もう王子妃である、と言う事実を思い出したのか、シトリーは頭から湯気が出る勢いで顔を真っ赤に染め上げた。
何か言おうと口をパクパクとさせる姿はとても愛らしい。
命は惜しいので、今は揶揄うだけに留めているけれど、無事に学園を卒業して関係を公表出来る様になった暁には溶ける程に愛情を注ぐ事は心に決めている。




