不穏分子の対処法
シトリーが言うに、かつて辿った未来において入学当初ルーシャン嬢は聖女候補でありながら学園で孤立していたらしい。
魔法の才能は貴族の血筋に開花するものであると言う事と、魔法の属性は生まれ付きの属性から変わる事はないと言う事実は常識として誰もが理解している事だ。
水性の系譜の生まれでありながら、火性の聖女候補に選ばれる事は深海魚が空を飛ぶ様なものだ。
しかし、魔女の末裔であるのならば話は少々異なってくる。
入学から初めての課題は自らの魔法属性を正しく理解し、フィールドワークで知見を広げる事。
魔女の末裔であるルーシャン嬢はフィールドワークにおいて【めざめの霊廟】を偶然にも発見し、霊廟に魔女が足を運んだと言う事実のもと生まれ持った水性の性質に加えて火性の性質を手に入れたそうだ。
【めざめの霊廟】に眠るのは、表の歴史から抹消されたこの国の建国を支えた大魔女であり、魔女が霊廟を訪れると末裔に力を授けると伝わっている。
魔女は先天的に二属性持ちであるか、大魔女縁の地で後天的に二属性持ちになる事があると、魔女の村の存在を知るラグナート卿はご教授下さった。
「よく、こんな分かり難い場所にある霊廟を見付ける事が出来たものだね」
『わたしも、王国で忌み嫌われる魔女に関わる遺構がこの様な場所にあるとは存じ上げませんでした』
【めざめの霊廟】は王都から徒歩で3日程の、50年前に無人となってから廃墟も同然である教会の祭壇の、神像の足元にある隠し扉の先にある。
魔女の村の出身者であるならば兎も角、魔女の村出身の祖母の血は引いているものの、王都で準騎士の娘として育ったルーシャン嬢がこの場所に辿り着けるものだろうか。
『お父様が仰るには、有り得ないそうです。魔女の村の血を引いていたとしても、霊廟の扉を開く事が出来るのは、魔女の村の出身者だけである筈だ、と』
村の住人が外界の人間と結ばれる時、外界においての魔女の評判は痛い程に理解している為に子孫には決して血筋を明かさずに普通の人間として生きる道を選ぶものだ。
態々、迫害を受ける様な技術を子孫に伝授する事はない筈である、とラグナート卿は仰っていた。
「ですが、ルーシャン嬢のお祖母様のナタリー・ルーシャン様が転生者である、と推測すればルーシャン嬢に魔女の技術を教授した可能性があると考えられますわ」
異世界人や、転生者は自分の知る物語とこの世界が酷似している事で、自分達の知る物語から大きく外れる事を嫌う事がある、と耳にした事がある。
そうして発生した混乱をラグナート家に伝わる時戻しの禁術で国内が大きく混乱する事態を回避してきた、と言う訳だ。
異世界の技術で発展したものもあるが、国を乱し、時には戦争の火種にもなり得る事象を振りまかれてはたまったものではないからね。
魔女の村の人間が国で忌避される理由は、彼らの犯した罪を代わりに背負う生贄羊に選ばれる事が多くあったからだ。
死人に鞭を打つ様な真似はしたくはないが、ルーシャン嬢の祖母がルーシャン嬢に物語を託す様な真似をしなければ、とは少しだけ考えてしまうかな。




