第13話
ねーさんが試合に出られないまま、チームは準々決勝まで進んでいた。
手持ち無沙汰になった僕は、ねーさんが出場しないのなら、適当なところで負けてくれたらいいのにと思い始める。
だが、彼女たちの努力を踏みにじるような考えだと気づき、少し遅れて自分が恥ずかしくなった。
どこまで勝ち進むのかはわからないが、最後まで応援することを心に誓った。
コートの中では、リズミカルにボールをつく音だけが響いている。
シュッとガットが空気を切る音が鳴り、打ち出されたボールは高く跳ねて、コートの奥へと弾んでいく。
朝比奈の打ち出すボールに対戦相手は対応できず、悔しそうに足元の砂を蹴っていた。
このコートは、彼女に与えられた最高の舞台のように見えた。
面白いように彼女のサーブが決まっていく。
その一方で、朝比奈の表情は少しずつ強張っていくように見えた。
次の瞬間、打ち出されたボールは二度続けてネットにかかった。
「うー」
朝比奈は小さくうめき声をあげ、握っていたラケットを地面に落とした。
「颯希ちゃん」
真琴がベンチから勢いよく飛び出してきた。
朝比奈は右肩を押さえ、苦悶の表情を浮かべている。
真琴に遅れてやってきた顧問とチームメートに支えられ、朝比奈はベンチへと戻っていった。
コート内では、審判と各高校の顧問が何かを話している。
やがて無情にも、審判から朝比奈の棄権が告げられた。
対戦相手はさっきまでとは一変し、大きな声でガッツポーズをしていた。
顧問が一人の生徒を呼び、深刻な表情で何かを伝えている。
顧問と何人かのオレンジのウェアの女の子たちに支えられ、朝比奈がコートの外へ歩いていく。
彼女は痛みなのか悔しさなのか、目に涙をためていた。
彼女を見つめる真琴は、何かを決意したような真剣なまなざしをしていた。
僕はその光景を複雑な気持ちで見ていた。
朝比奈の棄権により、我が校は次に負ければ敗退という状況に追い込まれていたが、真琴と他のメンバーの活躍で県大会出場をかけた準決勝まで進むことができた。
しかし、チームの主軸である朝比奈を失ったチームは、脆いものだった。
最初の選手は長く続く試合を何とか勝ち切ったようだったが、続く真琴は、気づいたときにはすでに負けていた。
次の選手が勝たなければ、県大会に出場できない。
ベンチのメンバーは全員、暗い顔をしている。一人を除いて。
一人の選手がゆっくりと立ち上がり、紫色のジャージのズボンを脱いだ。
壁に立てかけていた白いラケットを手に取り、何かに祈るような表情を浮かべた。
深呼吸をして、コート中央へ歩いていく。
勝負の舞台に立っていたのは、ねーさんだった。




