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年下のねーさん 〜歪んだ瞳に映るもの〜   作者: 太ったカッパは川底を歩く


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第10話

窓際に座り、花びらが舞い散った桜の長い影を眺めていると、日直当番が終わった佐藤が戻ってきた。

「今年は、桜の写真は撮ったのか」佐藤は窓から校庭の桜を見下ろしながら聞いてくる


「最高の一枚さ。叔父さんにも褒めてもらえた。」


校庭からは運動部の掛け声が聞こえる。


彼は何かを決断したように話始める。

「先日は、美咲ちゃんにかまってもらえたか」表情と会話が一致しない。


「こってりと絞られたよ。」


「…それは、一ノ瀬、…お前が悪いんだ」


わかっている。


「彼女をどうしたいんだ」


「まだ、そばに置いておきたい」


弱弱しい声で返すのが精いっぱいだった。


「学校中から変な目で見られてもか」


長い沈黙を、肯定と受け取られる。


「一ノ瀬、解決策はわかっているだろう」


簡単だ。僕が長男に戻れば、それでいい。



紫のジャージを着てコートに立つ美咲と、同じジャージを着てボールを拾う少女がいる。

その少女は美咲のそばへ近づき、楽しそうに何かを話していた。あれが噂のことちゃんで間違いないだろう。


「彼女も一ノ瀬に好意がある……気がする。関係を一歩踏み出してもいいんじゃないか」


「僕は、美咲が大変な時に真琴を優先した。そんなことはできない」


「結城に未練はあるのか。もういいじゃないか。兄弟から、ほんの少し仲の良い関係になっても」


佐藤は、僕の心を整理するみたいに、わざと踏み込んだ発言をしてくる。


その言い方が、少しだけ救いに聞こえた。

だが、また美咲との関係を壊すのが怖くて、僕は動けない。



「僕は、ねーさんの弟さ、それでいいんだよ。」


「一ノ瀬が選んだことだ。暫くはそれでさ。」


佐藤は不敵に笑い。


「…もしかして、…兄弟でそれは無いだろう」


彼の呟きは良く聞こえなかった。



「佐藤、美咲に怒られた件で、ファミレスでおごる約束忘れていないよな」


帰宅部の僕が教室に遅くまで残っていたのはそのためだ。


「わかっている。俺に任せろ」どんと胸をたたく姿はたのもしい。


「一ノ瀬、俺はポテトが食べたい」


「そうか。」彼のお金だ好きに使えばいい。


「すまん。参考書を買ってお金がない事をさっきまで忘れていた。」


申し訳なさそうな彼が続ける。


「ポテト代は頼む、相談乗ってやったんだからそれくらいはいいな。」


これは割り勘と言うのだ。佐藤は常識を身につけた方がいい。


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