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カサブランカ沖 5

 四方八方から包囲するように急降下した「瑞鶴」艦上爆撃機隊が、空母「サンガモン」に襲いかかった。

 

 徹甲爆弾が後部エレベーターを打ち砕く。

 2発目と3発目は飛行甲板中央部を貫通して船体の最深部で爆発し、4発目がガソリン庫で火災を発生させた。


 タンカーを護衛空母に改造した「サンガモン」は、装甲が無いに等しい上、他艦に補給するための重油を大量に積載している。


 重油は発火しにくいが、一旦燃え出すと燃焼温度が高く、消火が難しい。


 ガソリン庫が燃え上がり、加熱された重油に引火した「サンガモン」は、弾薬庫への注水も間に合わず、大爆発を起こして轟沈した。


 残る3隻の護衛空母「スワニー」、「シェナンゴ」、「サンティー」も、「サンガモン」の同型艦で、燃料を満載している。


 日本海軍がこれまで相手にしたアメリカ海軍の空母は、250キロ爆弾ではなかなかとどめを刺せなかったが、今回の護衛空母群はたちまち猛火に包まれ、やがて海中へとその姿を没した。


 だが、1隻だけ離れた位置にいた正規空母「レンジャー」は無傷だった。


 重巡「オーガスタ」艦上にあった護衛艦隊司令長官ヒューイット少将は、戦艦「ニューヨーク」、「アーカンソー」、「テキサス」、防空軽巡「シリアス」、「シラ」、小型護衛空母「ダッシャー」、「バイター」に輸送船団の護衛を命じると、戦艦「マサチューセッツ」、重巡「ウイチタ」、「タスカルーサ」、軽巡「ブルックリン」、「クリーブランド」を率い、空母「レンジャー」とともに日本艦隊へ向かって突進した。


 しかし、連合国海軍司令長官のイギリス海軍大将カニンガム卿が待ったをかける。

「連合国の主力空母は、今やレンジャー1隻となった。万一、アイゼンハワー大将率いる上陸部隊が、日本の空母機動部隊に捕捉され失われたならば、西部戦線の戦略は根本から崩壊する。

今は、自重する時だ。直ちに反転して輸送船団と合流し.撤退を援護せよ」


 他方、第3艦隊司令長官の山口多聞少将も、苦悶していた。

 第1次攻撃隊の夥しい戦死者には、慄然とせざるをえない。


 新型戦艦「マサチューセッツ」をはじめとして、敵艦隊の対空火力は恐るべきもので、雷撃隊は射点につく前に全滅、戦果を挙げた急降下爆撃隊も、復讐に燃えるF4Fの反撃に遭い、一部のベテランを除き、ほとんどが未帰還となった。


 世界最強の空母機動部隊と肩を怒らせたところで、飛行機とその搭乗員がいなければ海に浮かぶただの箱、人材も資材も乏しい日本がこんな消耗戦を続けていては、破綻するのも時間の問題だ。


 第2航空戦隊司令官の角田少将は、「見敵必殺」と追撃を進言したが、第3艦隊の任務はイギリスの継戦意欲を打ち砕き、戦争を終結させることで、たとえこの海戦に完勝したところで、本来の任務が果たせなくなっては元も子もない。


 山口少将は第3艦隊にマルタ島へ戻るように命じた。

 両軍は大きく距離をとって離れ、大西洋は束の間の平穏を取り戻した。

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