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彼女が現実逃避しすぎて異世界の神になった  作者: 青我
Another World――第三章――
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――異世界書紀―― 第三章 第六節 舞台裏の魔女②

[*Topicks*]〈バグ発生時の対応について〉

 ゲームをプレイ中にバグを発見した場合は速やかに管理者まで報告してください。

 むやみに接触するなどして個人のキャラクターデータの破損があった場合責任は負いかねます。

 ゲーム内のNPCやモンスターなどが不自然な動作を繰り返していたり、ノイズが発生したり、クエストが強制終了したりなどはバグが原因と考えられます。



 ##w L0@di…9*



 おかしい。

 城についてから、妙な感じがする。

 何かこう、頭がずっしりと重くなったと言うか、ノイズが走ると言うか……。


 アイシャの部屋は城内居住区の1階メインフロアの近くにあった。

 城の中庭付近から1階メインフロアへは、回廊を真っ直ぐに進んだ場所にある。城は街の北部に位置している。城門から真っ直ぐ抜けたすぐのところが行政区、そこから中庭の庭園を抜けて行くとそこに居住区がある。


 中庭を過ぎたあたりから、視界をノイズが走るようになった。

 それが、居住区に差し掛かったあたりから急に激しくなった。

 頻繁に起こるわけではないが、どうやらここに秘密があることは確かなようだ。


「それで、トコローテちゃんは何が知りたいの?」

「うーん……そうだなぁ。この街の歴史が知りたいなぁ」

「歴史? うーん……歴史かぁ……」


 何かを考えているのか、アイシャは腕を組んだり、手を頰に当てたりとうーんうーんと唸っていた。

 しばらくして、思い出したかのように「そういえば……」と呟いた。


「歴史といっても、この街の出来事と言えば悲劇の一族のお話しか聞いたことがないの」

「悲劇の一族……って、チャダ……なんとかって言う没落貴族の話か?」

「そう! それそれ! なーんだ、知ってるんじゃん。私が話すまでもないよーあんな有名な話」


 やっぱりヒントになるような話は得られないか……。

 俺は諦めかけていた。


「かわいそうな話だよねー。養子に火をつけられて屋敷ごと全員亡くなっちゃったなんてね」


 ん――?

 養子……?


「その……チャダなんとかって一族に養子なんていたのか?」

「え? 知らないの? そりゃあもう美人で気立てが良くて話しやすくて踊りが上手で……あ、ここだけの話、王家に嫁ぐ話まで出ていたらしいんだけど、突然気が狂ったように暴れ出したらしいよ」

「美人ってことは……その養子は女だよな? チャダなんとか家には息子はいなかったのか?」

「チャダルヌーク家ね! うーん……そこまで詳しくは知らないけど、ご長男様がいらっしゃったはずですが、確か戦死なされていたはず」


 養子は女……?

 息子は戦死……?

 じゃあ、あの幽霊騒動の青年は……。

 俺が黙り込んだのをきっかけに、立てかけられていたデッキブラシがその体を起こした。


「ごめんね。話の横槍を入れるようだけど――」

「で、デッキブラシが喋った!?」

「あ……うん。このデッキブラシは、前世は人間だったから喋れるんだよ」

「そ、そう……なんだ」

「で、話を戻すけど――。街の幽霊騒動は聞いたことあるかしら?」

「あー、三番街の幽霊の噂ねー。聞いたことはあるけど、詳しくは知らないかな。なんか、幽霊騒動は街のイメージを悪くするとかで、王家がその話をしないようにしてるから」

「なるほど……王家が、ね。じゃあ、最後の質問。ヴァジア・ルスト・チャダルヌークという青年のことは聞いたことある?」

「ヴァジア……聞いたことないなぁ……あ、チャダルヌーク家の唯一の生き残りであるあの方なら知っているかも……」


 アイシャから城の話を聞いていたが、俺には妙な胸騒ぎがしていた。

 自分に迫っているであろう、おそらく、バグの存在に――。


「あ、ちょうどお戻りになられたみたい!」

「なぁ、そのチャダルヌーク家の生き残りって……」


 俺たちの意思を確認するまでもなく、アイシャは俺とデッキブラシを抱え上げるとすぐに部屋を出て、一階のメインフロアへと向かった。

 メインフロアへと近づくにつれ、ノイズがより激しくなっている……。

 これは、きっと――今回の重要人物と出会えるに違いない――。


「アイシャ……教えてくれ、誰なんだ? その生き残りは!」

「それはもちろん! カリン・マギサ・フィリア様に決まってるじゃない」


 居住区のメインフロアに立つ、高貴な女性の姿があった。

 燃えさかるような赤いドレスに身を包み込み、冷ややかな表情と、それに似合わぬ眼光の強さを秘めた王女――。


 俺の知る、カリンと瓜二つの女がそこにいた――。


「そこのメイド――。城内に得体の知れぬ者を入れるなんて、一体何を考えているのかしら?」


 その鋭い眼光は、まっすぐに俺へと注がれていた。


「その下等な魔物もろとも、その女を投獄せよ」


 そう言うと、カリンと瓜二つのその王女はフロアの階段をゆっくりと上っていった。

 アイシャは一体何が起こったのか理解できないまま、俺とデッキブラシと共に地下監獄へと押し込まれることとなった。



 N## 70@+1…;*



「なんで!? なんでこんなことになっちゃったの!?」


 涙目で訴えてくるアイシャをなだめながら、看守が詰所に戻るのを見計らっていた。


「すまない。アイシャに迷惑をかけるつもりはなかったんだが……」

「私、これからどうしたらいいの? 監獄行きになった人は一生出てこられないってみんな言ってるし……」

「まぁ、その噂を確かめたかったんだけどな」


 牢獄の扉が閉じられる音が響くのを確認してから、俺はその場に横たわったままのデッキブラシに話しかけた。


「で、何か説明することはないのか?」

「……」

「はぁ……。まぁ、気にはなるが、今は時間をやる」

「あら、優しいのねートコローテ様ったら」

「で、デッキブラシさん。ここに来たかったんだろ? 散策しに行くか?」


 そう言うと、デッキブラシはどういう原理かその毛先のついた板の部分を上手に足にして立ち上がり、歩き始めた。つまりは一緒に行くということだろう。

 俺たちはもう一つの目的を果たすために牢獄内を散策し始めた。

 どこに行くのよー! と泣き喚くアイシャには悪いが、少しの間だけ我慢していてもらおう。


 ユカリと訪れた時には感じたことのない強烈な臭いと陰鬱な湿った空気――。

 この監獄の奥から感じる禍々しい怨念のような気配が、ノイズとともに頭に響く。

 果たして、この先に手がかりとなる“その男”がいるのだろうか――。

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